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第6話 絶望
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俺は無造作に蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられた。
蒸せると口から血を吐き出したが、歯を食いしばって何とか立ち上がり、痛む脚を引きずりながら必死に逃げ回った。
最初の一撃を耐え抜いたようだが、壁に激突したために体が痛むも、奇跡的にまだ生きていた。
いや、そうじゃない。ボスの顔を見るとニタニタしているようにしか見えない。つまりわざと致命傷を負わせなかったんだ。
蹴り飛ばす必要はない。
その巨大な足で俺の頭を踏みつければ、まるでスイカのようにヘルメットの中は真っ赤になり俺は死んだだろう。
二本の角を持つ、一つ目の巨人が棍棒を振りかざして俺を追い詰める。その背後から響く地面が割れるような音に、心臓が締め付けられる。次の瞬間、体が熱くなり鋭い痛みが走った。
「ぐわっ!」
左腕に視線を落とすと、二の腕から先が消えている。血が勢いよく噴き出し、視界が真っ赤に染まった。自分の叫び声が耳をつんざく。体中を襲う痛みと恐怖に、心臓が壊れそうだ。
『なんで俺がこんな目に・・・?』
俺の心の叫びを巨人は楽しむかのようにゆっくりと近づいてきた。その一歩一歩が、俺の絶望をさらに深める。
棍棒が再び振り下ろされたり、蹴りが繰り出されるたびに俺の体は吹き飛ばされ、地面を転がったり壁にぶつかった。俺は血反吐を吐きながら、何度も立ち上がると再び吹き飛ばされた。その間に左腕の切断面には新しい皮膚が再生され、血は止まっていた。
だが、ボスは明らかに俺をいたぶっており、楽しんでいるもある。殺そうと思えば何度でも殺せる力を持っているはずなのに、なぜこんなに無情に俺を痛めつけるのか。
「もう、無理だ。耐えられない。頼むから一息に殺してくれ・・・」
視界がぼやけ、意識が遠のきかけた。その瞬間、再び蹴られて俺は吹き飛び、背中から壁に激突した。背負っていたリュックがクッションになったが、ぱりん、と乾いた音が響き、青白い光が俺の周りを包み込んだ。
「これ・・・は?」
始めてみたがスキルオーブを使った時のエフェクトだと思う。かすかに覚えているが、少し前に9階層の最奥で倒した魔物がドロップしたオーブ・・・。その光は俺の体に吸い込まれるように入ってきた。
「積算ダメージ反射・・・」
手に入れたスキルの名前が頭に浮かぶ。それが何を意味するのか、正直よくわからない。しかし、この状況で何かできることがあるとしたら、このスキルに賭けるしかない。
『このまま死ぬわけにはいかない。恋人もいないまま、こんな死に方なんて・・・』
巨人が再び棍棒を振り上げたその瞬間、俺はなんとか腕をかわし、かわしざまに巨人の足にしがみついた。そして、全身の力を振り絞る。
「お返しだ!」
力一杯叫びながらダメージ反射を発動した。
巨人の四肢が一瞬で吹き飛んだ。
吹き飛んだ腕が俺の胸に当り、その衝撃でまたもや吹き飛んだ。
俺は壁に激突し、その時に頭を打ち付けたことにより意識が遠のいた。
・
・
・
目が覚めるとボスは四肢を失っていたがまだ生きており、少しだが手足が再生を始めていた。
しかし、まだ何かをできるほどではなかった。
『森雪さん・・・彼女は無事かな。あんなに優しいのに、こんなことに巻き込まれて・・・』
俺は落ちている腕にはめていた時計を見たが、日付の数字が一つ上がっていたことから丸一日気絶していたようだ。
左手に握られていたバットを拾い、身動きできないボスの頭に何度も何度も打ち下ろした。10回以上打ち付け、渾身の力で打ち付けたが、最後の一撃、つまりトドメの一撃が頭に当たると、ボスはエフェクトと共に霧散した。
その瞬間、俺の心に安堵が広がると同時に、孤独感が押し寄せた。
(なんだ、この虚無感は…?)
仲間たち?に見捨てられ、孤立したままの俺。新司に対する憎悪が心の中で渦巻く。彼が俺を荷物持ち扱いにしたのはよい。だが、仲間を守るどころか俺を生贄にして逃げ出したことが、俺の心をさらに深く傷つけた。
「どうしてこんな世界で生きているんだろう・・・?」
俺はそう呟くとぼんやりと考え込む。生き残ったとしても、この先に何が待っているのか。母親が寝込んでいる家に帰り、家族の世話を延々とする。この先細々と生きていく・・・そんな未来にまるで暗闇の中に消えていくようだった。
ボスが崩れ落ち、ダンジョンの最深部に静寂が訪れ感傷に浸っていると、突然脳内に謎の声が響いた。
「限界突破――レベル1で最下層のボスを単独撃破。エラー検知――潜在能力上昇中・・・」
何かが起きていることは理解できたが、疲れと興奮でその意味を深く考えることはできなかった。
数秒後、俺はただ倒れ込むようにその場に座り込んだ。息が荒く、体の震えが止まらない。ボスを倒したことで自分が強くなったのだろうか? だが、内側から湧き上がるのは尋常ではない力というか魔力?のようだった。
一瞬体が引きちぎられそうになり、激痛がほとばしりのたうった。
しかし、激しい頭痛が数秒ほどすると、不意に痛みが消え何もなかったかのように俺はその場にいた。
後日俺は自分がSランク以上の潜在能力を得たことを知る。しかし、当面はその力を完全に発揮できない。自分の体が、いや、脳がブレーキをかけている感覚があった。潜在能力はもうすでに"人外"の領域に達しているのだと分かり、体が出来上がっていないため能力の殆どを封印され、順次解放することになることを知るのはまだ先のこと。
それでも漲る力に少し混乱した。
「俺は一体、どうなってしまったんだ・・・」
・
・
・
・
**銀治のスキル解説コーナー**
【積算ダメージ反射】
**スキルランク**: ユニーク
**効果**: 一定時間に受けたダメージを蓄積し、次回の攻撃時に相手に反射する。
**詳細**: このスキルは、戦闘中に受けたダメージを蓄積し、その蓄積量を次の攻撃に加える形で反射します。たとえば、銀治のHPが100で、戦闘中に50のダメージを受けた場合、50のダメージではなく、総HPに対して受けたダメージの比率として、銀治の受けたダメージ率は50%なので、相手のHPの50%をダメージとして返すことができます。
*例:*
例として相手のHPは2000。
銀治がHP100の状態で、敵から50のダメージを受けたとします。これにより50%の蓄積ダメージがたまり、その蓄積量が次の攻撃に追加されます。もし、銀治がこのスキルを発動して攻撃した場合、相手のHPが2000なので、その50%、つまり1000のダメージを与えることができ、敵の体力を大幅に削ることが可能です。さらに、蓄積ダメージが100%に達した場合、相手に即死のダメージを与えることも可能です。
*ポイント:* 銀治のHPが多ければ多いほど、蓄積されるダメージが増え、反射時に与えるダメージも大きくなります。このスキルは、強敵との戦闘で絶大な効果を発揮し、銀治が逆境を跳ね返すための切り札となります。
蒸せると口から血を吐き出したが、歯を食いしばって何とか立ち上がり、痛む脚を引きずりながら必死に逃げ回った。
最初の一撃を耐え抜いたようだが、壁に激突したために体が痛むも、奇跡的にまだ生きていた。
いや、そうじゃない。ボスの顔を見るとニタニタしているようにしか見えない。つまりわざと致命傷を負わせなかったんだ。
蹴り飛ばす必要はない。
その巨大な足で俺の頭を踏みつければ、まるでスイカのようにヘルメットの中は真っ赤になり俺は死んだだろう。
二本の角を持つ、一つ目の巨人が棍棒を振りかざして俺を追い詰める。その背後から響く地面が割れるような音に、心臓が締め付けられる。次の瞬間、体が熱くなり鋭い痛みが走った。
「ぐわっ!」
左腕に視線を落とすと、二の腕から先が消えている。血が勢いよく噴き出し、視界が真っ赤に染まった。自分の叫び声が耳をつんざく。体中を襲う痛みと恐怖に、心臓が壊れそうだ。
『なんで俺がこんな目に・・・?』
俺の心の叫びを巨人は楽しむかのようにゆっくりと近づいてきた。その一歩一歩が、俺の絶望をさらに深める。
棍棒が再び振り下ろされたり、蹴りが繰り出されるたびに俺の体は吹き飛ばされ、地面を転がったり壁にぶつかった。俺は血反吐を吐きながら、何度も立ち上がると再び吹き飛ばされた。その間に左腕の切断面には新しい皮膚が再生され、血は止まっていた。
だが、ボスは明らかに俺をいたぶっており、楽しんでいるもある。殺そうと思えば何度でも殺せる力を持っているはずなのに、なぜこんなに無情に俺を痛めつけるのか。
「もう、無理だ。耐えられない。頼むから一息に殺してくれ・・・」
視界がぼやけ、意識が遠のきかけた。その瞬間、再び蹴られて俺は吹き飛び、背中から壁に激突した。背負っていたリュックがクッションになったが、ぱりん、と乾いた音が響き、青白い光が俺の周りを包み込んだ。
「これ・・・は?」
始めてみたがスキルオーブを使った時のエフェクトだと思う。かすかに覚えているが、少し前に9階層の最奥で倒した魔物がドロップしたオーブ・・・。その光は俺の体に吸い込まれるように入ってきた。
「積算ダメージ反射・・・」
手に入れたスキルの名前が頭に浮かぶ。それが何を意味するのか、正直よくわからない。しかし、この状況で何かできることがあるとしたら、このスキルに賭けるしかない。
『このまま死ぬわけにはいかない。恋人もいないまま、こんな死に方なんて・・・』
巨人が再び棍棒を振り上げたその瞬間、俺はなんとか腕をかわし、かわしざまに巨人の足にしがみついた。そして、全身の力を振り絞る。
「お返しだ!」
力一杯叫びながらダメージ反射を発動した。
巨人の四肢が一瞬で吹き飛んだ。
吹き飛んだ腕が俺の胸に当り、その衝撃でまたもや吹き飛んだ。
俺は壁に激突し、その時に頭を打ち付けたことにより意識が遠のいた。
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目が覚めるとボスは四肢を失っていたがまだ生きており、少しだが手足が再生を始めていた。
しかし、まだ何かをできるほどではなかった。
『森雪さん・・・彼女は無事かな。あんなに優しいのに、こんなことに巻き込まれて・・・』
俺は落ちている腕にはめていた時計を見たが、日付の数字が一つ上がっていたことから丸一日気絶していたようだ。
左手に握られていたバットを拾い、身動きできないボスの頭に何度も何度も打ち下ろした。10回以上打ち付け、渾身の力で打ち付けたが、最後の一撃、つまりトドメの一撃が頭に当たると、ボスはエフェクトと共に霧散した。
その瞬間、俺の心に安堵が広がると同時に、孤独感が押し寄せた。
(なんだ、この虚無感は…?)
仲間たち?に見捨てられ、孤立したままの俺。新司に対する憎悪が心の中で渦巻く。彼が俺を荷物持ち扱いにしたのはよい。だが、仲間を守るどころか俺を生贄にして逃げ出したことが、俺の心をさらに深く傷つけた。
「どうしてこんな世界で生きているんだろう・・・?」
俺はそう呟くとぼんやりと考え込む。生き残ったとしても、この先に何が待っているのか。母親が寝込んでいる家に帰り、家族の世話を延々とする。この先細々と生きていく・・・そんな未来にまるで暗闇の中に消えていくようだった。
ボスが崩れ落ち、ダンジョンの最深部に静寂が訪れ感傷に浸っていると、突然脳内に謎の声が響いた。
「限界突破――レベル1で最下層のボスを単独撃破。エラー検知――潜在能力上昇中・・・」
何かが起きていることは理解できたが、疲れと興奮でその意味を深く考えることはできなかった。
数秒後、俺はただ倒れ込むようにその場に座り込んだ。息が荒く、体の震えが止まらない。ボスを倒したことで自分が強くなったのだろうか? だが、内側から湧き上がるのは尋常ではない力というか魔力?のようだった。
一瞬体が引きちぎられそうになり、激痛がほとばしりのたうった。
しかし、激しい頭痛が数秒ほどすると、不意に痛みが消え何もなかったかのように俺はその場にいた。
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それでも漲る力に少し混乱した。
「俺は一体、どうなってしまったんだ・・・」
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**銀治のスキル解説コーナー**
【積算ダメージ反射】
**スキルランク**: ユニーク
**効果**: 一定時間に受けたダメージを蓄積し、次回の攻撃時に相手に反射する。
**詳細**: このスキルは、戦闘中に受けたダメージを蓄積し、その蓄積量を次の攻撃に加える形で反射します。たとえば、銀治のHPが100で、戦闘中に50のダメージを受けた場合、50のダメージではなく、総HPに対して受けたダメージの比率として、銀治の受けたダメージ率は50%なので、相手のHPの50%をダメージとして返すことができます。
*例:*
例として相手のHPは2000。
銀治がHP100の状態で、敵から50のダメージを受けたとします。これにより50%の蓄積ダメージがたまり、その蓄積量が次の攻撃に追加されます。もし、銀治がこのスキルを発動して攻撃した場合、相手のHPが2000なので、その50%、つまり1000のダメージを与えることができ、敵の体力を大幅に削ることが可能です。さらに、蓄積ダメージが100%に達した場合、相手に即死のダメージを与えることも可能です。
*ポイント:* 銀治のHPが多ければ多いほど、蓄積されるダメージが増え、反射時に与えるダメージも大きくなります。このスキルは、強敵との戦闘で絶大な効果を発揮し、銀治が逆境を跳ね返すための切り札となります。
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