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第1話 プロローグ

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 俺は市河 銀治。
 市内の学校に通う普通の高校3年生だ。
 彼女いない歴=年齢で、いろんな意味でさえない最低ランクであるFランクハンターだ。

 どうしてこうなった・・・今、荷物持ちとして半ば強制的に参加したというか、させられたレイド戦で死にかけている。クラスのカースト上位に無理やり参加させられており、入口を開けたままにするためのポイントを死守する番を担った。
 だが、イレギュラーなボスが出たことにより、俺を贄にして皆逃げていき、ポイントを離れたから扉は閉まってしまい脱出できなくなった。俺は騙され、牽制するからボスがお前を見ていない隙に入口に来いと言われるも・・・そこを離れた瞬間扉は閉まった。

 痛む足を引きずりながら、俺は必死に逃げ回った。二本の角を持つ、一つ目の巨人が棍棒を振りかざして俺を追い詰める。その背後から響く地面が割れるような音に心臓が締め付けられ、次の瞬間、体が熱くなり鋭い痛みが走った。

「ぐわっ!」

 左腕に視線を落とすと、二の腕から先が消えている。血が勢いよく噴き出し、視界が真っ赤に染まった。自分の叫び声が耳をつんざく。体中を襲う痛みと恐怖に、心臓が壊れそうだ。

(なんで俺がこんな目に・・・?)

 巨人は楽しむかのようにゆっくりと近づいてきた。その一歩一歩が、俺の絶望をさらに深める。脚が振られ棍棒が再び振り下ろされるたびに、俺の体は吹き飛ばされ、地面を転がる。

 最初は何とか躱したが、今では身構えて耐えるサンドバッグになっていた。

 棍棒を使う時は俺が立ち上がるのを待ち、頭を狙わずに腹などを殴る。

 血反吐を吐きながら俺は何度も地面に叩きつけられた。その間に、左腕の切断面には新しい皮膚が再生され、血が止まった。
 俺の持つスキル【自己回復(小)】のお陰で失血死だけは避けられそうだが、大して変わらない。死ぬのが遅くなり、苦しむ時間が長くなるだけだろう。

 殺そうと思えば何度でも殺せる力を持っているはずなのに、俺をいたぶって楽しんでいるのは明らかだ。

 なぜこんなにも無情に俺を痛めつけるのか。

「もう、無理だ。耐えられない。頼むから一息に殺してくれ・・・」

 視界がぼやけ、意識が遠のきかけた。その瞬間、再び蹴られて俺は吹き飛び、背中から壁に激突した。荷物待ちとしてリュックを背負っていたが、幸い?それがクッションになり、またもや死ねなかった。

 ぱりん、と乾いた音が響き、青白い光が俺の周りを包み込んだ。リュックの中にはレイド戦参加者がボス部屋への道中に倒した魔物からドロップされたアイテムが入っており、それが割れた音だ。

「これ…は?」

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 第1話

 約20年前、世界中に突如としてダンジョンが現れた。当初はファンタジー世界の魔物が現れ、大混乱に陥った。日本でも主要な神社の近くにダンジョンが現れ、その関連性が議論されている。特に異様なのは伊勢市(三重)近辺で、伊勢神宮内宮を中心として半径20キロ以内に10ものダンジョンが存在し、特異点と呼ばれている。

 ダンジョンから湧き出た魔物により多大な被害が出るも、初期は自衛隊と警察による封じ込めが行われた。魔物を倒すと魔石やアイテム、獣や亜人、魔物などを召喚できるカードがドロップする。ダンジョンの中ではステータスが見え、レベルが上がるとステータスが上がる(魔力だけ)。

 この仕組みは解明されていないが、ダンジョンのコアを破壊すると新たなダンジョンが現れるため、共生することが選ばれた。いや、選択するしかなかったのだ。基本的にはハンター協会やギルドの職員と一緒にダンジョンに1時間入ればハンターとなるが、ダンジョンの中に充満する魔力が体を作り変えると言われている。最初にダンジョンに入りハンターとなった時に能力値が決まり、自力では魔力以外一生変わることがないと言われている。ステータスはレベルアップで上がるのは魔力だけで、もし上がっていたとしても基本的にレベルアップと関係なく、鍛えた結果でしかない。つまり、レベルが上がっても魔力が上がる程度でほとんど強さには影響がないと言われている。ステータスの魔力=魔力の総量と威力からの数日と言われており、レベルが上がれば使える魔力が増え、魔法の使用回数が増えるので、それにより戦闘力が上がるには上がる。また、鍛える以外に大幅に能力を上げる手段がなくはない。

 鍛えれば握力や肺活量が上がるが、いわゆるゲーム的なステータスのところに混ざるので、ややこしいが鍛えた人としての強さもステータスに現れる。

 ダンジョンで稀にドロップするアイテムを使うことだ。ダンジョンのフロアボス(レア度は低い)、ダンジョン最下層のボス(レア度は高い)を倒すとドロップすることがある。また、ダンジョンコアを外に持ち出したり、コアを破壊すると得られるために、こぞってダンジョンを潰していたのだ。

 高校生の市河銀治もハンターとなり、ダンジョンに潜っていた。しかし、彼は最低ランクの「洋梨」と揶揄される存在だった。父は自衛隊員としてダンジョンで行方不明となり、銀治は経済的に母親を助けるためにダンジョンに潜っている。
 死体がないからまともな額の遺族年金が出なかったのだ。

 ハンターになった時にスキルを1つ得るのが一般的だが、極稀に2つ得る者がいる。

 日本にはスキルを2つ持つ者はおらず、もし現れれば驚きと共にスカウトが殺到するはずだった。銀治はそのダブルスキルを持つ世界でも数人しか知られていないうちの1人で、彼のスキルは【自己回復(小)】と【幸運の兆し(ラッキーオーメン)】というもので、どちらも一見すると戦闘にはあまり役に立ちそうにないように見える。そのため、スカウトたちは銀治のスキルの内容を聞いて落胆し、彼をバカにすることが多かった。

【自己回復(小)】は戦闘で受けた小さな傷をゆっくりと癒す能力だが、大きな怪我や致命傷には止血する程度の回復力しかない。

【幸運の兆し(ラッキーオーメン)】は、生命力が下がるほど運が良くなるユニークスキルで、具体的な効果はランダムだ。例えば、敵の攻撃が外れたり、アイテムが突然現れたりするが、発動するかどうかは完全に運任せであるため、周囲からは【運任せ】としてバカにされることが多い。しかし、このスキルはレベルアップと共に成長し、効果が強化されるのだが数人しか例がなく、スキルを秘匿する者が多いためその真価はあまり知られていない。

 銀治のレベル1のステータスは、他のFランクハンターと同様に悲惨なものだった。力、敏捷性、魔力のすべてが最低ランクで、ほとんど戦闘については役に立たない。唯一の救いは体力だけがEランク相当で、多少の打撃には耐えられるということだが、それも【少しマシ】という程度でしかない。

 ---

 名前: 市河銀治  
 レベル: 1  
 力: 14 (F)  
 敏捷性: 12 (F)  
 魔力: 10 (F)  
 体力: 21 (E)  
 スキル: 自己回復(小)、幸運の兆し(ラッキーオーメン)

 ---

「これで本当にハンターとしてやっていけるのか・・・?」銀治はハンターとなった当初、そんな不安を抱えながらも、どうにか生活の糧を得るために戦い続けてきた。しかし、Fランクのままでは、パーティを組めず、大きな収入を得ることも強くなることもほとんど望めない。

 そして最弱と呼ばれる銀治は、1人でダンジョンに入っており、とてもではないが1階層より下にはいけなかった。行く場合、荷物持ちの募集で参加し、基本的に戦闘に参加しない場合のみだった。

 スライムだとか、小さな虫のようなのしか倒せず、毎回千円程度の稼ぎしかない。ゴブリンが出たら全力で逃げるしかなかった。2階層に潜れたら学校帰りに行っても2時間ほどで5千円程の稼ぎになるんだけど。また、ポーターの仕事は月に1度、5万円ほどになり、今の俺にはありがたい仕事だ。1階層で1日中ちまちまやっても5千円から1万円ほどにしかならないからだ。

 また、稀に魔物やボスを倒すとカードがドロップし、最低でも1千万円はし、レアなのは数億円にもなるらしい。俺には縁のない話だ。また、そのカードに描かれた者を呼び出すと、ダンジョンの中だけだが配下として使役できる。

 人の形をしたのや、動物など様々な形態があり、俺の周りにはカードを持った者はいない。学校で先生は別として、どうやらカード持ちが1人いるらしい。何かしらのスキルを持ち、ソロとしてやっていける強力なのもあるらしいが、そんなウルトラカードを持てたらなと思う今日このごろだ。
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