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第1章

第37話 異変

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 一度目覚めたその後は特に夢を見る事もなく、朝までぐっすりと眠る事が出来た。少なくともうなされたりはしなかったようだ。

 朝食は部屋に運んで貰えたので、他の者に注意を払う必要がなく、ゆったりと食事をしてからの出発となった。俺は本来人見知りが激しく、日本では親友以外とは殆どつるまなかった。必要以上に干渉されるのが嫌だったのだ。元々奴隷を受け入れたのは、この世界で生きていく為のガイドの存在が不可欠で、1人ではどう足掻いても手詰まりになるだろうと思ったからだ。

 いざとなれば命令して、最小限の関わりで済まそうと思ったから受け入れていた。しかし、いつの頃からだろうか?仲間と一緒にいるのが楽しくて、時折笑ったりもしている。
 不思議なもので人見知りの激しい俺が、こんなにも短期間で完全とは言えないが打ち解けているのだ。
    自分でも引っ込み思案の性格をどうにかしないとはなと認識しているのと、女性と付き合うのが下手だったのを悩んでいた。

 この世界では不思議と上手くやれていた。異世界も良いもんだなとニコニコしているとイリアとミリアが俺を挟んで俺の事を話していた。

「ねえねえミリア、友安様がまたエッチな事を考えているわよ」

「分かっていましてよ。年頃の殿方ですから、そういうものですわよ。まったくもっていやらしい事ですわね。こそこそしていないで、堂々と私達をお求めになれば良いのですわ」

 等とわざと聞こえるようにして俺をからかっているのだが、そんな2人のいつものやり取りも意外と心地良かったりする。

 宿でお弁当を作って貰っていた。昨夜お金を払いお願いしていたのだ。俺の収納に入れていると時間が止まるから痛まないのだ。

 ただし容量に制限が有る為、例えば食糧に関しては、水で戻したり茹でて食べられる乾物の食材を2日分位入れている。
 だが、まだ当日食べる分の弁当位は余裕だ。勿論水で戻す食材は非常食だ。重さに対する制限の為、水分が飛んでいて軽い方が良いからだ。水は魔法でどうとでもなる。

 道中の馬車の中では、イリアとミリアが何かと俺の世話を焼きたがる。
 お昼のお弁当は俺が収納から出すと即時に奪い、皆に配ってくれるので俺は出すだけだ。奪い取らずに手を出して渡してくるのを待てば良いのに、せっかちだなと不思議に思う。

 俺の口に食べ粕が着いているとハンカチで拭ったり、ちょっと汗をかくとすぐに拭いてくれる。
 朝なんかは俺の着替えも手伝ってくる。確かにあの鎧代わりの革の服は結構着るのが厳しいとはいえ、俺に万歳をさせてから着せてくる。まあ、断るのも可哀想なのでされるに任せ、装着すると大袈裟に感謝してやると上機嫌だ。

 トイレにもついてくるので、一度イリアに抗議した。

「あ、あのなあ、トイレまでついて来ると流石に恥ずかしいぞ」

「私達は従者ですから、友安様のいらっしゃる所が居場所なのですわ」

「またそれか。駄目だぞ。流石に外で用を足している時の見張りはお願いしたいが、宿等にいる時のトイレにはついて来るなよ!心配しなくてもどこかに行ったりしないから!」

 俺が強く抗議したからか、トイレにまでは来なくなった。2人が何をしたいのか良く分からなかったのだ。

 そんな事があったのだが、2人は奴隷開放後は俺にベッタリで、俺を主として仕えると言って聞かないのだ。
 今はまだ開放してから間がないからか、状況の変化についていけなくて俺に縋っているのかな?と2人についての考えに対して自己完結していた。

 昼休憩を終えて出発し、30分程進んだ所で異変があった。今は平原の中の街道を進んでいで、周りにはぽつぽつと樹木があるが、隠れる所が殆ど無い場所だった。そして街道の脇に10騎以上の者達が馬に跨った状態で屯していた。

    俺が異変を感じるとほぼ同時に、ゼツエイの雰囲気が変わった事が分かり、戦闘準備に入るのであった。
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