異世界でハズレスキル【安全地帯】を得た俺が最強になるまで〜俺だけにしか出来ない体重操作でモテ期が来た件〜

KeyBow

文字の大きさ
上 下
42 / 49

第42話 エライニスという侍女

しおりを挟む
 執事服を身にまとい、鏡に映る自分を見て、思わず「決まったな」と心の中で呟いていた・・ふと昼の出来事が頭をよぎった。ミカが文字通り腹を抱えて笑っていたのを思い出す。あの時、俺も一緒に笑ったけど、今となってはなんともいえない感覚が残っている。いや、現実離れした状況に俺の思考が逃避していたんだな。こんな異世界で、こんな服を着ることになるとは。

 しかし、今目の前で起きていることは、そんな笑い話とは程遠い。シルフィス様とエライニスという侍女が、俺の目の前で土下座をしている――王女と妙齢の女性が二人揃って土下座するなんて、現実ではまずあり得ない。俺は一瞬固まり、状況が理解できないまま呆然としていた。

「……何の冗談だよ? それともサプライズか?」

 俺は自分に言い聞かせるようにそう呟いた。だが、どうやらこれは本気のようだ。目の前で謝罪している二人の姿がそれを物語っていた。冗談にしてはあまりにも真剣すぎる。

 俺は慌てて膝を折り、二人の肩に手を置いて起こそうとした。その瞬間、シルフィス様が重い口を開き、意味のわからない謝罪を始めた。

「侍女のエライニスは悪くないんです。すべては私の不徳のいたすところ……」

 シルフィス様はそう言うと、さらに頭を下げた。

「え? エライニス?」

 初めて耳にした名前だが、どうやらこの侍女の名前らしい。そして驚くべきことに、彼女は第二王女の悪事を暴くために送り込まれていた密偵だったという。俺はますます混乱してきた。

「どういうことだ……?」

 俺の頭の中は真っ白だった。シルフィス様の話が頭に入ってこない。だが、隣のエライニスが髪型を変え、化粧を落とし、装飾を外した姿になっていた。俺に向かって許しを請い始めた。顔は見ていないが、その声からシルフィス様に付き従う侍女だと分かる。

「お嬢様は何も悪くありません・・・どうか、どうかお許しを・・・欲望を向けられるなら私だけに・・・」

 彼女の涙が俺の胸を突いたが、それでも俺の中で沸き上がる感情が抑えられなかった。

「・・・頭を上げてください。怒ってるわけじゃないから、詳しく事情を話してくれませんか。とりあえず、落ち着いて話しましょう。テーブルに座って。」

 俺はそう言って二人を立たせた。その時、エライニスの顔をしっかりと見た瞬間、全身に震えが走った。

「お・・・……お前が、なぜここにいるんだ・・・!?」

 目の前に立つエライニスの姿は、あの時の俺をはめた女そのものだった。

「よくも……! あんなことして……!」

 気づいた瞬間、俺は無意識にエライニスの細い両肩を強く掴んでいた。俺の中で一気に怒りが燃え上がった。

 シルフィス様は俯き、エライニスは涙を流しながら耐えていた。その姿を見ても、怒りは収まらなかった。俺の手はさらに力を込めて、掴む力が強くなる。

「やめて! やまっち!」

 突然、カナエが俺を羽交い締めにするようにして引き剥がそうとした。しかし、俺の怒りは収まらない。

「お前は……俺をはめたんだ! 許せるわけがないだろ!」

 俺はカナエを振りほどこうと必死になった。けれど、その瞬間、ミカが俺の頭に軽くチョップを入れてきた。

「ちょっと! 女性に何やってんのよ! らしくないわよ、やまっち!」

 その言葉に、一瞬動きが止まった。しかし、頭の中で再び怒りが燃え上がり、俺はカナエを振り払おうとし、さらにエライニスに殴りかからんとした。

「やめなさいってば!」

 ミカが慌てて俺に抱きつくようにして止めに入った。それでも、俺の体は震えが止まらなかった――あの時の屈辱が、どうしても許せなかったのだ。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

処理中です...