異世界でハズレスキル【安全地帯】を得た俺が最強になるまで〜俺だけにしか出来ない体重操作でモテ期が来た件〜

第40話 侍女

【侍女視点】

　私はお嬢様の影。表向きは「死んだことになっている」この命、今はただシルフィス様を守るために存在しているのです。しかし、山田様たちに再び顔を見せることが、どれほどの危険を伴うか・・・

　特に山田様が私の過去を知ったとき、どのような反応をするのか――正直、怖いのです。

　やがて、３人の話し合いが終わり、シルフィス様は静かに立ち上がられました。

「さて、話の続きは城に戻る道中に　しましょう。その前に、いくつか準備が必要です。」

　私たちはすぐに身を引き締めました。これからシルフィス様の計画が動き出すのです。私も再びお嬢様の護衛としての役割を果たすことになります。表向きは侍女として振る舞いながらも、いつでも命を懸けて守る覚悟。

　シルフィス様の言葉は続きます。

「ただし、召喚者の男子全てを制御できるわけではありません。その点は覚悟して進めるしかありませんね。」

　シルフィス様の冷静な言葉に、私は内心少し驚きました。全ての召喚者を救うわけではない。あの男子たちの中にいる、どうしようもない者たち――彼らは相手にしないというのです。それでも、お嬢様の決意には一点の曇りもありませんでした。

「では、ギルドマスターにはもう少し待ってもらいましょう。」

　部屋の外に出て、ギルドマスターの方にちらりと視線を向けると、彼は扉の脇で「の」の字を床に書いているではありませんか。山田様は慰めておられます・・・
　私は変装しているからか、今のところ正体はバレておりません。

　どうやらギルドマスター様は自分たちが放置されたことに腹を立てたというか、いじけてしまったようですが、今はそんなことに構っていられません。

　その後、シルフィス様の指示で、ミカとカナエには新しい服が用意されることになりました。私にも出そうです。

「外見からまずは変えていきましょう。あなた方に相応しい服を用意します。」

　そう言って、私たちは街一番の仕立て屋に向かいました。街の名店だけあって、店の従業員は総出で出迎えてくれましたが、既に先触れを出したからでしょう。用意された衣装の豪華さに、ミカとカナエは少し圧倒されているようです。

　試着室では、シルフィス様の侍女が待機しており、次々に衣装が用意されていきます。私自身も騎士としての役割に相応しい装いを整えなければなりません。侍女の一人が私の寸法を測り始め、私は言われるままに衣服を脱ぎました。そのとき、ふと数日前のことが頭をよぎります。あの時、もし――。

　いや、今は任務に集中しなければ。私の過去は、誰にも知られてはならない。

　ミカは渋々ながらも侍女の衣装を身にまとい、カナエはメイドとしての服を整えていきます。髪型も地味に変えられ、メイドとしての雰囲気がより一層際立ってきました。それでも、２人ともその美しさが隠しきれないのが厄介です。私たちが護衛や侍女として、どう見られるのかが気になるところですが――今はまず計画通りに進めなければ。

「準備が整いました。」

　シルフィス様の言葉に、私たちは一礼し、心を引き締めました。これから、城に戻り、いよいよ計画の本格的な実行が始まります。そして――山田様が私の正体を知ったとき、その時、彼はどのような反応を見せるのか。

　正直、私は怖いのです。過去の罪が、いつか全てを崩壊させるのではないかと。