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第2章
失敗した
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太一達は疲れが酷い為早目に休む事にした。
その日の夜は間違って太一が入っている布団に誰かが入って来る事もなく、平和に過ぎていった。
普段だと翌朝朝食を宿で食べてから出発する筈であるのだが、しかし、美夏がまだ安静にしていなければならない為、ゆっくり過ごす事になった。薬が効いたおかげか、美夏の熱や気分の悪さも殆ど消えていた。
食事は部屋に美夏の分を運んでおり、稲生が甲斐甲斐しく食べさせていた。
皆は二人の行く末を微笑ましく見守っていた。どう見てもがさつとしか思えない格闘家の稲生が熱いスープをフーフーと息を吹きかけ冷まし、冷めている事を確認してから食べさせたり、うまく口に運べなくて少し口から溢れたスープ等も手拭きで拭いてあげたりしていた。美夏も義手を着ければ自分で出来るのだが、敢えて稲生のするがままに任せ甘えていた。
太一達が美夏についてふと思った。こいつ本当は素直ないいやつじゃないのかと。
稲生による美夏の食事が終わると美夏は
「その、あ、あの、ありがとね」
かなり恥ずかしそうにお礼を言っていて、稲生は
「まあ、そのなんだな、早く元気になるといいな。こんな事くらいしか出来なくて悪いな」
そんな感じだった
昼頃はかなり元気になっていたが、まだ本調子ではないというのが見て取れた。なので夕方までやっぱり休ませよう、基本的には部屋で寝かせようとなった。常に稲生が面倒を見ている感じだった。着替えや体を拭くのまで、下のお世話は太一のクリーンでするが、それ以外は稲生が全てやっていた。
夕方になった頃には毒の影響はなくなっており、完全に回復していたが、体力は流石に回復しているわけではない。さてそのまま泊まるか、今から一つでも先に進むかを考えていると、突如鐘が鳴り響き始めた。それも3点鐘だった。
「どうやら敵がこの町に来たようだ。少なくとも僕は行かなきゃいけないが皆どうする?一緒に行くか、ここで残り美夏を守るか?」
まだ美夏は戦えない。病み上がりの美夏では最前線に連れて行くのは厳しいとなり、太一が単独で正門の敵を蹴散らせに行く事になった。事後を稲垣に任せ太一は宿を出て街の入り口に向かう。
そこでは既に街に駐留している騎士団と、奴らの戦闘が始まっていた。
駐留部隊と聖騎士団の戦いは一方的になりつつあった。当初の数でこそ同等だったが、門を突破されてからはあっという間に町の中に敵兵がなだれ込んでしまった。太一は咄嗟にこれ以上は街に奴らを入れてなるものかと門の少し手前にて戦いに参加していた。その甲斐あって最初に突破した者以外は順調に倒していき、ついに街の入り口を制圧した。
正確には奪われた門を奪い返しただけなのだ。よしやったぞと一息ついていると宿の方面から煙が立ち込めているのが見え、ハッとなり慌てて宿に駆けて行く。
そう門の方の敵兵の強さの違いが明らかで違和感があった。確かに本番の言っていた通り奴らの力は通常の兵士の10人から20人ぐらいのものに匹敵するだけの力があるように思えたが、今の太一には敵兵が10人から20人束になって来ても勝てる、それだけの力があったのだ。そうこの者達では太一の絶対防壁を突破できないので、攻撃が太一には届かない。太一からの一方的な攻撃で切り裂いてきたからである。ただ、それを考慮しても対して強いとは思えなかったので違和感が有った。慌てて太一は宿に駆け付けるが、宿は半ば燃えていた。
宿を取り囲んでいた兵達を次々と倒していったが、宿の中に入ると凄惨な光景が広がっていた。皆死んでいたのだ。そう太一の仲間が皆死んでいた。
ノエルは床に倒れ、剣を突き立てられて死んでいた。シャロンは胸の中央を貫かれ、壁に縫い付けられ、目を見開いて絶命していた。
由美子は首が半ば切断されており、稲生は美夏に覆い被され、折り重なるように剣が二人の体を貫抜いており、絶命していた。また、稲垣の首は廊下に転がっていた。それ以上はもう見れなかった。太一は泣き叫んだ。
「俺は失敗した、失敗したんだ!やり直しを要求する!くそー!」
と叫んだ。皆を守れなかったのだ。太一は選択を誤ったのだ。必死に皆の名前を叫び、やり直しを要求すると3度叫ぶと、太一の体がボロボロと崩れ始め、周りの景色もボロボロと崩れ始めた。そして無念の中で意識を手放すのであった。
その日の夜は間違って太一が入っている布団に誰かが入って来る事もなく、平和に過ぎていった。
普段だと翌朝朝食を宿で食べてから出発する筈であるのだが、しかし、美夏がまだ安静にしていなければならない為、ゆっくり過ごす事になった。薬が効いたおかげか、美夏の熱や気分の悪さも殆ど消えていた。
食事は部屋に美夏の分を運んでおり、稲生が甲斐甲斐しく食べさせていた。
皆は二人の行く末を微笑ましく見守っていた。どう見てもがさつとしか思えない格闘家の稲生が熱いスープをフーフーと息を吹きかけ冷まし、冷めている事を確認してから食べさせたり、うまく口に運べなくて少し口から溢れたスープ等も手拭きで拭いてあげたりしていた。美夏も義手を着ければ自分で出来るのだが、敢えて稲生のするがままに任せ甘えていた。
太一達が美夏についてふと思った。こいつ本当は素直ないいやつじゃないのかと。
稲生による美夏の食事が終わると美夏は
「その、あ、あの、ありがとね」
かなり恥ずかしそうにお礼を言っていて、稲生は
「まあ、そのなんだな、早く元気になるといいな。こんな事くらいしか出来なくて悪いな」
そんな感じだった
昼頃はかなり元気になっていたが、まだ本調子ではないというのが見て取れた。なので夕方までやっぱり休ませよう、基本的には部屋で寝かせようとなった。常に稲生が面倒を見ている感じだった。着替えや体を拭くのまで、下のお世話は太一のクリーンでするが、それ以外は稲生が全てやっていた。
夕方になった頃には毒の影響はなくなっており、完全に回復していたが、体力は流石に回復しているわけではない。さてそのまま泊まるか、今から一つでも先に進むかを考えていると、突如鐘が鳴り響き始めた。それも3点鐘だった。
「どうやら敵がこの町に来たようだ。少なくとも僕は行かなきゃいけないが皆どうする?一緒に行くか、ここで残り美夏を守るか?」
まだ美夏は戦えない。病み上がりの美夏では最前線に連れて行くのは厳しいとなり、太一が単独で正門の敵を蹴散らせに行く事になった。事後を稲垣に任せ太一は宿を出て街の入り口に向かう。
そこでは既に街に駐留している騎士団と、奴らの戦闘が始まっていた。
駐留部隊と聖騎士団の戦いは一方的になりつつあった。当初の数でこそ同等だったが、門を突破されてからはあっという間に町の中に敵兵がなだれ込んでしまった。太一は咄嗟にこれ以上は街に奴らを入れてなるものかと門の少し手前にて戦いに参加していた。その甲斐あって最初に突破した者以外は順調に倒していき、ついに街の入り口を制圧した。
正確には奪われた門を奪い返しただけなのだ。よしやったぞと一息ついていると宿の方面から煙が立ち込めているのが見え、ハッとなり慌てて宿に駆けて行く。
そう門の方の敵兵の強さの違いが明らかで違和感があった。確かに本番の言っていた通り奴らの力は通常の兵士の10人から20人ぐらいのものに匹敵するだけの力があるように思えたが、今の太一には敵兵が10人から20人束になって来ても勝てる、それだけの力があったのだ。そうこの者達では太一の絶対防壁を突破できないので、攻撃が太一には届かない。太一からの一方的な攻撃で切り裂いてきたからである。ただ、それを考慮しても対して強いとは思えなかったので違和感が有った。慌てて太一は宿に駆け付けるが、宿は半ば燃えていた。
宿を取り囲んでいた兵達を次々と倒していったが、宿の中に入ると凄惨な光景が広がっていた。皆死んでいたのだ。そう太一の仲間が皆死んでいた。
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由美子は首が半ば切断されており、稲生は美夏に覆い被され、折り重なるように剣が二人の体を貫抜いており、絶命していた。また、稲垣の首は廊下に転がっていた。それ以上はもう見れなかった。太一は泣き叫んだ。
「俺は失敗した、失敗したんだ!やり直しを要求する!くそー!」
と叫んだ。皆を守れなかったのだ。太一は選択を誤ったのだ。必死に皆の名前を叫び、やり直しを要求すると3度叫ぶと、太一の体がボロボロと崩れ始め、周りの景色もボロボロと崩れ始めた。そして無念の中で意識を手放すのであった。
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