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第18話 説明

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 ギルドマスターは羨ましそうにしていた。

「あら、この子の事を余程気に入ったのね」

「茶化すな。有能な職員を失いたくはないだろう?」

「あらどうしてそう思うのかしら」

「俺が何の根拠もなくアイリを担当受付嬢に選ん だと思うのか?」

「どう言う事かしら」

「えっとブラッドは一番好みの外観の人の所に並んだんですよ」

「えっ?」

「いや、確かに最初は外観を基準に選ぼうとしたが、皆美人でスタイルもいいから選ぶ事が出来なかったんだ」

「うちのギルドはね、皆いい子揃いで自慢の子達なのよ。でも外観じゃなかったらなんなのかしら?」

「少なくとも受付嬢の中ではアイリが一番できるだろう」

「ほう」

「確かに外観で選ぶ事が出来たらそれに越した事はないが、選ぶ事が出来なかったから、能力で選んだんだ。尤もなんとなくだが、そうだな、オーラが違うんだよ。あんたにも感じるがな」

「まあいいさね。それで紙にでも書けばいいかい?秘密を守るって」

「特に必要ない。あんたは約束を破るような性質じゃないだろ。それに既にスキルを5個持っているというのは、あんたが叫んだからばれているんだよ」

「アタイも驚いたのさ」

「まあいい。じゃあ手短に言うが、俺は殺した相手のスキルを奪う事ができる。俺の能力はそういうものだ。最初の4つは戦争で奪ってきた。5つ目は昨日サイクロプスを倒した時にえた。つまりそのサイクロプスが持っていたんだ。それと聖騎士と同じ名前の力ではなく、聖騎士から奪った力なんだ」

「これは驚いたわね。本気であんたの女にしてもらいたいけど無理ってものね?」

「さてな。俺好みのお淑やかな女になったら考えてやらんでもないぞ。ただし俺との子を抱けない覚悟だけはしてもらわないとな」

「子供が欲しけりゃ養子でも取るさね。孤児は沢山いるからね」

「悪いが俺は女を抱けないからと言って、俺の女になった者を他の男に抱かせるつもりはないぞ。つまり俺の女になるという事は、女の悦びを知る事が出来ないという事だ」

「何も男の象徴がないからといって、それが出来ないという事はないと思うのだけれども、今はそんな事を話す時では無いわね」

「そうだな。秘密は話したが他に何かあるのか?」

「そうさねぇ、国王陛下に話しても良いかしら?」

「どうしてだ?」

「分かるでしょ?貴方の強さが突出している事が周りに知れ渡る事になるわ。そうすると色々詮索を受ける事になるわよ。勿論私は貴方に無断で他言するつもりはないけれども、必ずばれるものよ。それに国王陛下に何故言うかと言うと、スキル持ちの者の処刑を貴方にさせて貰いたいからよ。人を殺す事に対しては別に忌避感なんてないでしょ?貴方が国に協力してくれるのなら、貴方を強くする為に国も協力せざるを得ないのよ。国王陛下の庇護下に入り、懐刀にでもなればちょっかいを掛けて来る者もいないと思うの」

「やはりそうなるか。分かった。但し、あんたが国王に直接言うんだぞ」

「貴方の方がよく分かっていると思うけれども、この国は何故か周りの国から頻繁に狙われるのよ。攻め入れられた時に協力する事になると思うの。尤も冒険者もそうよ。そもそも冒険者も傭兵部隊として王都の防衛に参加させられてしまうの。勿論報酬は出るけれどもね」

「分かった。確かにあんたの言う通りだろうな。奴隷の時と比べると明らかに強さが違うという事がばれるのは時間の問題だな」

「そうそうアタイからも有力な情報を一つあげるわ。確かあの聖騎士というのは、欠損修復が可能だった筈よ。もしやり方が分かったら、貴方もちゃんとした男になれる筈よ。力を奪ったのなら、貴方にもその力がある筈よ。ちなみにもしも復活したら、誰と最初にやるのかしら?うふふ。良かったら是非アタイで試し撃ちをしてみない?」

「考えてもみなかったな。奴隷商も似たような事を言っていたな。本当にあんたで試し撃ちをしてもいいのか?どうやら今日引き取る奴隷がやり方を知っている可能性があるんだ。では俺の試し撃ちをお願いしようかな?」

 急に押し黙った

「やはりそうか。強がっていたんだな。代わりと言ってはなんだが、一つ頼み事を聞いてくれないか?」

「な、何かしら?」

 急に態度が変わり、しおらしくなっていた。

「奴隷商について教えて欲しいんだ。どうやら俺に欠損修復を使えるようになってもらいたいらしい。俺の欠損を治す為に動いている訳ではない筈なんだ。今日引き取る奴隷は本来の価格の数分の1で、しかも俺の有り金とほぼ同じ金額なんだ。味方ならいい。俺を利用するつもりだけならそれもよい。目的を果たした後に暗殺されるなんて御免被るから、警戒しておきたいんだ」

「分かったわ。少し時間を頂戴」

 そうしてギルドマスターの部屋を出た。

 ブラッドは実際問題どうなるか少し考えていた。ブラッド自体女を抱いたのは一度しかない。

 将来を誓っていた幼馴染と初陣の数日前に、帰ったら結婚しようと話し、その時に初めて抱いたのだ。兵士達にはよくある事だ。女もそうだ。もし死んでしまった、の場合を考え、忘れ形見として愛する者の子を身籠ればという想いもあるからだ。

 ブラッドは逃げていた。一緒に戦い生き残った仲間の殆どには妻子がいた。だから滅びた国に帰る事を選んだのだろう。まあ、俺の世話を買ってくれた奴らは独り身だったが。

 ブラッドは思う。もしあいつが生きていたとしたら、もう誰かと結婚しているのだろうと。その後の彼女の生死やその夫の事を確認するのが正直な所怖かった。それより何より生きているとしても、こんな体はとてもではないが見せられたものではない。だが、もしも欠損修復ができたのならば、会いに行かないと自分で決めていた理由がなくなる。その為、会いに行くかと呟くのであった。
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