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第9話 レイガルド

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 レイガルドについてブラッドはタミアに教えていた。

「こいつは耳の後ろを撫でてやると特に気持ちが良いらしく、ほらこんな感じに喜ぶんだ。やってみろ」

「あっ!本当ですね」

「どうやら坊主はレイガルドに気に入られたようだから、レイガルドを連れて出かけた時は戦闘時に俺が馬を降り、代わりにお前がレイガルドに乗る事もある。こいつは特に何も言わなくても、自分がやる事を分かってくれているから、弓を放つ時などはお願いすればいい」

「しかし立派な子ですね」

「いつだったか、奴隷部隊の一部を試験的に騎馬隊にする時に用意された馬なんだ。どの馬を誰のにするのかは馬自身に選ばせたんだ。こいつは何故か俺の所に来てな。それからの付き合いだ。時折噛むが、まあこいつのおかげて何度命が助かった事か」

 そんな話を休憩時にしていたが、長居は無用となり帰路についた。

 そこからは特に魔物にも遭遇せず、王都に戻った。
 王都の出入りは冒険者は別扱いで、冒険者カードを見せればそのまま中に入る事が出来る。

 大きな町は例外なく高い壁で囲まれており、魔物から身を護るのだ。

 取り敢えずレイガルドを宿の馬房に戻した。ギルドに連れて行くとトラブルが起こる可能性があるからだ。

 ギルドに着くと、閑散としていた。朝と大違いだ。
 受付を見ると、アイリを始め、受付嬢は暇そうにカウンターを拭いたり、モップで床を拭いていた。

 2人の顔を見てアイリは一瞬固まった。この時間に何用かと。

「あら?こんな時間にどうされたのですか?」

「はい。ブラッド様が依頼を終わらせて来たので来ました」

「あっ!ちょっと待って、私貴方達に依頼の受け方を教えてないわよね?どうやったの?」

「こいつに掲示板にある依頼を剥がさせて、そこに書いてある所に行き、魔物を退治してきたんだが、何か違うのか?」

「うん、一応担当の受付嬢に受託する依頼を見せて欲しいの。実力通りの依頼かどうかとか、その依頼の注意事項を伝えるの。場合によっては依頼を受けないように説得するのよ。それでどの依頼かしら?」

「これだ」

 ブラッドはストレージから依頼書を出し、アイリに渡した。

「ちょっと待って!駄目よこんな依頼を受けては!死にたいの?」

「どう駄目なんだ?」

「その前に依頼の見方を話すわ。まずこのBXXXね。ここが難易度の目安で、自分の実力に見合った難易度を選ぶの。一般の依頼は難易度はFからスタートし、A迄あり、その上は特別依頼のSランク依頼となるの。しかもこのXは依頼を失敗した数なの。つまりこれはBランク査定の依頼として3回失敗した依頼なの。もし次に失敗したらAランクになり、金額も上げなければならないの。だから実際はAランクに相当するの。一応どの依頼を受けるのも自由だけれども、Sだけはギルドマスターの承認が必要なの。だからね、なりたての人が受ける依頼じゃないの。こんなのやりに行ったら命が幾つ有っても足りないわよ」

「心配してくれるのはありがたいが、倒して来たと言ったら驚くか?」

「そんなの当たり前じゃないの。と言うかね、ひょっとして貴方達、倒してきちゃったの?サイクロプスよ!はぁ。ブラッドさんは嘘をつくタイプの人じゃないわよね?ってやっぱり本当なの?」

「サイクロプスを見るか?」

「ちょっと待って?どういう事なの?」

「死体を持って帰った。素材として買い取りが出来ないか?」

「念の為聞きますが、まさかまるごと一体をお持ちなのですか?」

「今この場で出そうか?」

「だ、出せるのですか?」

「出せるぞ」

「じゃあ解体場があるので、そこでお願いします」

「分かった。で、何処だ?」

「ついてきてください」

 制服はタイトスカートにブラウスとキャリアウーマンチックだ。スカートが短い。

「スカートがやたらと短いな」

「そうなんです。だから下着を見られないようにするのに苦労しているんですよ!ほら、好きな人になら良いケド、他の男には見られたくないじゃないですか」

「そうなのか」

「そうなんですよ。って着きますよ。解体場はここですよ。サイクロプスは馬車の中にでも有るのですか?キャッ!」

 いきなり目の前にサイクロプスを出したのだ。

「エエエ!何で?」

「パンツがもろに見えているぞ」

 アイリは驚きから尻もちをつき、ブラッドにまともに下着を見られたのだ。

「エッチ!」

「依頼達成って事で良いよな?」

「す、凄いわ。エッチなだけじゃないのね!聖騎士を倒したのは偶然じゃないのね?」

「君は秘密を守れるか?」

「勿論よ」

「一つに聖騎士の剣だ。それと聖騎士が持っていたストレージの腕輪だ。これを奪い、俺の物にした。総大将は敵兵が回収したと思ったようだがな。聖騎士はこの剣の使い方を知らなかったようだ」

「そうなのですね!どう使い方を知らなかったのですか?」

「剣に魔力を流し込むと、有り得ないくらいの切れ味になるんだ」

「あのう、それとどうやって倒したのですか?魔石を取り出した所以外の傷がないのですが?」

「俺のスキルに回復があるだろ?首を刎ねて殺した後、あれでくっつけたんだ。どうも死んでいたり、手足が千切れてもくっつくようだ」

「でもブラッドさんは左手を失くされたのですよね?」

「乱戦でね。元々あの性騎士もとい聖騎士と斬り結んでいる時に半ば切断され、倒した後治療する間もなく乱戦になり、必死に逃げたのさ。流石に敵大将を殺ったから、目の敵にされてね。生きた心地がしなかったが、気が付いたら千切れていたんだ。まあ次から次へと群がってきたよ」

 アイリは左腕を取った。

「無神経に聞いてしまいました。千切れたって想像を絶する痛みだったのでしょ?」

「どうだろう?出産の痛みの方が辛いんじゃないのか?」

「そうなのですか?」

「さあな。後、夕方もう一つ秘密を教えてやるよ。こいつは金になるのか?」

「こんなの聞いた事がないし、私では査定が出来ないわ。査定師を呼んでくるから少し待って!」

「ああ頼むよ。それと驚かせて悪かったな。ちょっと肩に触れるぞ」

 そっとクリーンを掛け、尻もちをついた時に汚れた部分を綺麗にしたのであった。
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