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第8話 リベレーター初討伐に向かう

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 ブラッドはふと依頼をやってみようと思った。

「なあ時間が有るし、日帰りで出来る依頼をやろうと思うんだが、どうすればいいんだ?」  

 冒険者登録が終わったので何か依頼をこなしたいと思った。

「あそこに依頼が張り出されていて、その紙に書かれている依頼をこなすようですね」

「分かった。まず見よう」  

 依頼が張り出されている掲示板のところに来たが、ブラッドは字が読めない。タミアは背が小さくて、他の冒険者が邪魔で見えなかった。

 ブラッドも流石に他の冒険者がしている事から、紙を剥がすのだと分かった。だからヒョイッとタミアを担ぎ上げて肩車をした。タミアは予測していて、黙って担がれた。装備として、胸当てだけはしている。心臓を守る為だ。だから胸の辺りを触られても、おっぱいの膨らみだとは中々判らないのだ。

「どんなのがある?」

「北の森のオークの討伐とか、東の森の出口にサイクロプスが出たから討伐、サカマツ山にどうやら盗賊団のアジトが有るらしく調査討伐とか、ゴブリン退治とかかな」

「盗賊団とサイクロプスだとどちらが近い?」

「サイクロプスの方が近いですが、かなり強い筈ですよ?」

「群れじゃなくて一匹だろ?問題ないと思うぞ。じゃあその紙を剥がせ」

 タミアは言われるがままに剥がし、ブラッドは剥がしたのを確認すると後ろに下がった。

「で、この後どうすれば良いんだ?」

「ボクも知らないですよ」

「しゃあないな。で、どこに出るんだって?後何て書いてあるんだ?」

「東の森の出口にサイクロプスが複数回目撃された。討伐達成報酬金貨120枚。ランクBXXXって書いてあります」

「なんだそのBXXXって。何かの符号か整理番号か?」

「何でしょうか?もう一度並んで聞いてきましょうか?」

「多分一時間は並ぶぞ?俺は一時間も並ぶのなんていやだぞ。それに並んでいる間に着くんじゃないのか?」

「馬なら一時間で着きますね」

「歩くとどれ位だ?」

「えっと片道2時間ですね」

「じゃあ何処かで何か食べ物を買ってから向かおうか。馬房に俺の馬があるから、それで行こう」

「ブラッド様は馬をお持ちだったのですか!」

「俺の愛馬だ。報奨の一部として貰ったんだ。最後の戦いの時に命を預けた軍馬だ」

「ボクも乗せてくれるのでしょうか?」

「俺が話すから大丈夫だ」

 結局宿に直行し、お金を払って弁当を作ってもらった。
 タミアがお願いしに行き、ブラッドは愛馬にブラシを掛けたり鞍と面、軽量の鎖帷子を装着し、戦支度をしていた。飼い葉はストレージに大量に入っており、心配する事はない。食料もクソまずい軍用食を是とすれば一軍の一週間分が入っている。

 やがて弁当を持ったタミアが馬房に来た。

「こいつはレイガルドで俺の相棒だ。この坊主は俺の従者だ。悪いが一緒に乗せてやってくれ」

 レイガルドは大型の馬で、吸い込まれそうな澄んだ目を持った黒い馬だ。

「ボクはタミアといいます。宜しくお願いします」

 レイガルドはじっと見たかと思うと頬を舐めた。

「珍しいな。こいつが誰かに懐くとは。まあ女は無条件に乗せる奴だがな」

「ブラッド様の従者として紹介したからじゃないですか?馬は人の子供以上の知能があると聞いた事があります。しかしよくこんな立派な馬をくれましたね」 

「こいつは気性が荒くてな。俺が退役軍人になった後、2人を蹴飛ばして半殺しにしたそうだ。新たな主人を是としなくて、追加で報奨として4日前に連れられてきたんだ」

 ブラッドは先にタミアを乗せ、タミアを前に抱える形で騎乗した。ブラッドは軽量の革鎧を着ており、戦の時にフルプレートメイルを着用していたのと重量に差はない。

 元々フルプレートメイルは好きではなかったのだ。最後の戦の時には装着させられていた。元々以前の戦いの後に戦場で拾われた物だったが、体格が合う者がおらず、捨てるのは忍びないと奴隷だが貰えたのだ。今も持っていたりはするが、冒険者としては重過ぎて使えないがストレージの中に入れている。元々馬と一緒に持ってきたのだ。着れる者がいないからと。

 そうして騎乗し、依頼のある森を目指す。

 王都だとはいえ、町から離れ街道を5分も進めばのほほんとした草原だ。馬の為、徒歩の冒険者を追い越す。時折低木があり、小動物がいる程度で、一時間程度で森が見えてきた。

 大体の予測時間に目的の森に入った。強い魔物が出る事で有名だ。ブラッドが以前の戦いで行軍に参加していた時の先頭はやはりブラッド達奴隷で、サイクロプスも相手をした経験を持ち、ほぼ単独で討ち果たした事が有るのだ。

 主要街道の一つで、危険な魔物が多いので普通はキャラバンを組んで通る。単独で通る者はまず居ない。討伐依頼を受けた冒険者パーティーだけだ。

 ちなみにギルドにてパーティー登録をしたが、パーティー名はリベレーターだ。開放者を意味する。

 レイガルドは早かった。
 約一時間半で森を抜けたのだ。
 途中オークやら熊のような魔物を見掛けたが、ほぼ瞬殺で、殺す度にストレージに入れていった。魔物と遭遇しなければ30分は早かっただろう。タミアにお金になると言われ、倒してはどんどんストレージに入れていった。

 森を抜けると直ぐに違和感が有った。魔物の気配がするのだ。森の中から何かが向かってくる気配がするのだ。戦闘準備をする時間位はある。ブラッドは弓矢を出してタミアに渡し、次にダガーや投げナイフ等も渡していった。

「レイガルド、俺は降りて戦う。タミアは弓を使うから、俺から少し離れて支援してくれ。魔法を使うから近付くなよ」

 レイガルドは軽く嘶いた。賢い馬なので、自分の役割を理解している。

 やがて巨大な棍棒を持った1つ目の巨人が現れた。身長3m程だ。
 ただ、以前のより少し大きいが単独だったから問題ないと思った。

 早速タミアが矢を射掛けた。
 ブラッドは魔力を腕に込めた。タミアとレイガルドにサイクロプスが向かったので時間を稼ぐ事が出来た。

「準備が出来た!レイガルド、こっちに来い!俺を通り過ぎろ!魔法行くぞ!」

 そうしてフレイムランスを2本出し、左右に"握った!"左手でも握れている感覚が何故か有るのだ。

 レイガルドが脇を駆け抜け、正面にサイクロプスが来た。早速フレイムランスを1本は目に、もう一本は胸を目掛けて投げた。すると見事に刺さり、炎を吹き出し藻掻いていたが、致命傷ではない。

 ブラッドは先の戦いの時に奪った宝剣を取り出し、一気に駆けた。そして魔法が使える者であれば誰でも使える魔法陣の一種を発現し、足場とした。一般的にそういう使い方をされているのだ。一気に身長差をカバーし、宝剣を振るった。魔力を込めた宝剣の切れ味は凄まじく、腕ごとその首を刎ねた。

 そしてフレイムランスを消し、死体の所に行き死んでいるのを確かめた。そして回復スキルで傷を治し、素材として高く売れるようにした為、傷の無い死体になった。

 タミアが来たので魔石の抜き取りを指示し、さくっと抜き取った。そして死体等をストレージに入れ、昼に近かったので休憩をした。休憩と言ってもレイガルドに飼い葉と水を与え、自分達は弁当を食べただけだ。

「タミア、よく頑張ったな。しかし、騎乗でよく矢を当てられたな!」

「偶々当っただけですよ!」

 ブラッドはタミアの頭を撫でて褒めていた。
 そうして休憩を取った後、町に戻りギルドに向かう事にしたのであった。
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