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第5話 一つのベッド

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 湯船に浸かり少しのんびりしていると、タミアが先に出ますと言って慌てて出ていった。女のような小さな尻だな?と鍛えさせないといけないなと思うブラッドだ。

 着替え終わる頃を見計らいブラッドも風呂を出た。

「前はいいから背中を拭いてくれ」

「は、はい。その、ボクの背だと首が拭きにくいです」
 
「ああ、そうだな。しゃがむから言ってくれ」 

 風呂を上がると痩せているとはいえ、タミアは何故か妙に色気がある。

「そう言えばお前はいつ頃奴隷になったんだ?」

「はい。2週間前です」

「何があった?」

「ブラッド様が戦ったあの国の師団がボクのいた村を襲い、戦の資金にと兵隊と言うのを隠して奴隷商に売ったのです。ボクは一生奴隷のままなのでしょうか?」

 ブラッドは押し黙った。

「悪いが俺は聖人君子じゃない。だが、俺が買った金額を貯めたら俺から買い戻せ。そうだな、分け前は宿の費用とか有るから、7対3で3がお前の取り分だ。言っておくが普通は1だぞ。俺も鬼じゃない。やる気を出してその分頑張り、1日も早く奴隷から抜けられるようにしろ。俺は開放奴隷だ。一生飼い殺すなんて奴隷のやる気を削ぐ以外の何者でもないのさ」

「は、はい。頑張ります」

「よし、まず飯を食って、それから部屋に戻り明日からの予定を決めよう」

「は、はい」

 はいとしか返事をしないが、正直訳が分からなかった。
 タミアはこの男を信用したものかどうか悩むのだが、そもそも選択肢がないのだと思い出した。

 とりあえず聞いた話からすると、奴隷の主とみれば破格の扱いをしているのは解る。

 昼を食べた時、他の奴隷は床に座り、粗末な食事をしていた。しかしこの男は自分と同じのを食べさせてくれた。とりあえず捨てられないように甲斐甲斐しく世話をしようとタミアは決めた。

 そして食事の後部屋に行くと、そこは確かに2人部屋なのだが、ダブルベッドが1つだった。ブラッドは酒を飲んでおり、肩を貸している状態だった。

 小さなテーブルが有り、椅子が2脚あった。

「確かに2人部屋だな」

「ボ、ボクは床で寝ますのでブラッド様はベッドで寝てください」

「駄目だ。一緒にベットで寝ろ」

 タミアは震えて涙を流した。

「あのなぁ、俺はな、いくら奴隷だったからとはいえ、尻の穴は守り通したし、誰かの尻の穴を掘るなんてしないぞ。まさかお前、俺に衆道の気が有るとか思っていないか?俺は女しか抱かんぞ!だから心配すんな。それに背中を向けて寝れば良いだけだろう?」

 タミアは眼を擦りながら頷いた。

「明日は朝一番で冒険者ギルドに行くぞ!そこで冒険者登録をする」

「冒険者ではなかったのですか?」

「色々あってな。色んな仕事の募集に行ってもコレを理由に断られるんだ。残るは最早冒険者だけってところになっちまったのさ」

「お察しします。苦労されたのですね」

「分かるかい!?てめえのズボンも中々下ろせなくてさ、分かるだろ?片手で小便の時に小便を真直に飛ばすのに苦労するのさ。油断するとパンツが迫り上がってくるからな。いかん、酒を飲んじまったから変な話をしているな。まあ、明日からは飲めねえからな。今日で飲み収めさ」

 タミアはパッと明るくなった。

「何か有るのですか?」

「一つに冒険者が酔っていたら命取りだ!二つ目に願掛けだ。職に就いたら断酒するって決めたんだ。ただ、トラブルを避けるのに貴族や依頼主から注がれた酒は飲まないとだから、自分からは注文しないって事りゃ…」

 段々酔いが回り、呂律が回らなくなってきた。

「なる程。ボクも酒の入ったブラッド様は怖いと思いますから、止められた方が女性受けが良いと思います」

「やっぱりそうか。兵士仲間からも酒癖が悪いと言われひゃんだよな。でぇもな、奴隷の兵士ってのは使い捨てでな…、しょのな…、くそょみたえな…扱いを…実際…お前女みたいだな。実は女だったりしてな…なんかおっぱいがある?…ぐぅぐぅ」

 タミアに半ば覆いかぶさるようにしてブラッドは寝ていった。タミアは複雑な気持ちで頭を撫でて布団を掛け直した。本当に床で一度横になったが、柔らかい布団の誘惑には勝てず、結局ブラッドの背中に背を向けて布団に潜り込んだ。

 奴隷になってから初めての布団だ。その心地良さに涙を流した。

 タミアは今日一日の事を思い返していた。良さそうな人だったなと。ぶっきらぼうだが、基本的に奴隷の自分に対していばらないし、温かな食事をくれた。勿論冒険者としての仲間としてやっていくのに体力を付ける為だろう。それだったら、奴隷食を多目で出せば良い。しかし、自分が頼んだのと同じのを頼んでくれた。

 元奴隷だからと言うのもあり、奴隷の辛さを知っているのも有るだろう。魔法を使えるようで、病気を治してくれた。幸い自分の事を勘違いしてくれている。奴隷は嘘をつけない。嘘をつくと首輪が反応し、激痛が走るからだ。
 偶々聞かれなかったからばれなかったのだ。例え正体がばれて犯されたりしてもそれは奴隷の主人の権利だが、出来れば避けたい。このまま都合よく勘違いをして欲しい。風呂場でも何故かバレなかった。それとも知っていて自分が子供だと見做したから手を出してこなかったのか?

 どの道彼が自分を犯そうとしたら、自分には抵抗のしようがない。その時はその時だが、もしもそうなったら不本意だが、転売されないようにより一層気に入られるようにこびへつらう必要がある。どうなるかな?と溜息をついてから眠るのであった。
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