奴隷勇者の転生物語

KeyBow

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第三章 リブート編

第85話 指揮官

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 ジークが皆に足場を作り、その足場を伝ってシリウス達が地上に降りた。

 皆地上に降りた直後にもう駆けていた。ジークは皆の一歩後ろを走る感じなので、皆を見ながら必要に応じて各々が必要とする位置に適切に足場を作り出している。障害物が邪魔で、ジャンプで飛び越えたりする為にだ。

 皆己が飛び越えたいと思った時に、既にジャンプするタイミングと場所に足場を出して貰っているが、ジークが作っていると確認はしていないが、確信はしていた。有り難いと思いつつ、補助魔法を掛けて貰っている為にほぼ全力で駆ける事が出来ていた。

 身体能力を強化されているお陰で、クレーター迄は1km程ある筈なのだが、その距離を全力疾走しているにも関わらず、殆ど息が切れないのだ。

 ジークが使ったのはそういう移動補助系の補助魔法である。これもやはり大輝の知識から得ている魔法だ。

 ジークが使う補助魔法に関しては、どれも初級扱いであり、消費する魔力も初級扱いとかなり低い。だが、その効果や中身が上級魔法並みの威力があるというような特殊な補助魔法である。これは召喚勇者の特典であるギフトの為せる技だ。

 防壁から駆ける事3分程で、クレーターの中心部で毒付いている敵の指揮官と思われる魔族と対峙した。

「何だ貴様達は?これはお前らがしでかしたのか?くそが!」

 顔が青白く、額から短い角が生えている。ヒョロ長く陰湿な目付きといかにも悪役といった顔をしている。

 ジークは敵の指揮官が毒付いている間に次の魔法を練り上げていた。

 そして練り上がるとそいつに向かいやはり何かの玉のようなものを投げ付けようとした。

「グラビティーパラライズ!」

 そしてジークが魔法を放った。

 そいつは流石に気が付き、避けようと身を翻した。そして玉はそいつの背後に富んでいったが、その途端に弧を描いてターゲットに対して追尾を始めた。

 躱したと思いジークに魔法を放とうと魔力を練り上げていたが、追尾してきた玉が背中に当たると、その指揮官は驚いた顔をしながら、いきなり崩れ落ちた。

「ば、馬鹿な!?」

 そう唸ったが、その一言をはっすると、ガッ!ガッ!ガーと呻き動けなくなった。  

 そしてジークが、今だと言うと皆が一斉に斬り掛かった。そして四肢を切断し、虫の息の状態にまでした。

 そして脂汗をかいているジークは、溜息をつきつつその首を急ぎ刎ねた。

 その死体と持っていた武器を何とかストレージに入れたが、フラフラになった。ジークの様子がおかしいので、ステージアが慌てて肩を貸した。

 しかし、まともに立てなくなり、ジークがステージアに抱き付き、その胸に顔を埋める形になった。

「ジ、ジーク様、嬉しいのですが、皆が見ている前では流石に恥ずかしいですわ」

 ステージアは一瞬パニックになり、ジークが抱き付き、己の体を求めてきたのだと勘違いした。だがそうではない 。

 ステージアは思わずギュッと強く抱きしめたが、ジークは今にも崩れ落ちそうになり、ハァハァと息が荒かった。そして、がっ!があぁ!と唸ったかと思うと、全身が痙攣を始めた。そして痙攣と共にジークは意識を手放したのである。

 悲鳴を上げ、アイシアはジークに駆け寄り、やはり狼狽えたステージアと共に地面に膝枕で寝かせた。ただ、アイシアは少し冷静な部分もあり、ジークの口にハンカチを突っ込み、舌を噛まないようにした。トライミーとリースティアは片膝を付き、ジークを押さえていた。

 ただ、シリウスだけは慌てている皆とは裏腹に、冷静に周りの警戒をしてくれており、ギャレッジに反対側を警戒するように指示をしていた。

 様子がおかしい事に気が付いたクランメンバー達が、程なくしてクレーターに来た。

 そしてシリウスはジークが倒れたので馬車を持って来てくれと伝え、程なくして馬車を引き連れてキャリンとローシェルが戻ってきた。

 それからなんとか皆でジークをクレーターから運び出して馬車に運び入れた後、急ぎ町に向かって行ったのであった。
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