18 / 24
マーメイドライン
18話
しおりを挟む
それから何日か過ぎ、千佳ちゃんから先日に話していたモデルを探している知り合いの人が私にぜひ会ってみたいとのことだったので私は仕事を終えてから待ち合わせの駅前へと向かった。
『あっ、美咲さーん! こっちこっち』
私は手を振る彼女とその隣に千佳ちゃんより少し年上に見える個性的なファッションの女性の方へと向かった。
『おまたせ! さっき仕事終わって急いできたよ』
『私達もさっきついたばかりなんです。 あっ、こちらが私の先輩の佳奈《かな》さんです』
その佳奈さんという女性は『はじめまして』と笑顔で私に軽くお辞儀をし私も返した。
そして彼女は私をつま先から頭の先までゆっくりと見渡した。
『ねっ、美咲さんとても綺麗な方でしょ?』と千佳ちゃんは佳奈さんを下から覗き込むようにして笑った。
佳奈さんは『うん』と深く頷いて肩から下げているバックから小さいケースを取り出し、その中から名刺を一枚両手で私に手渡した。
『ウェディング…… 結婚式場か何かで働かれてるんですか?』と私は名刺を見ながら尋ねた。
『結婚式場ではないんですが、海外での挙式などのブライダル関係の会社です。 今、うちの会社の広告モデルを探しているんですが……千佳に誰か綺麗な人いない?って聞いたら美咲さんが適任だ!って言われたんです』
『へぇー、そうなんですね』と私は少し苦笑いで頷いた。
『良ければ、うちの上司に美咲さんの事紹介させてもらってもいいでしょうか?』
『私、そういうの全くしたことなくって広告モデルなんて出来るかな……』と私は少し目線を落とした。
千佳ちゃんは私たちの間にピョンと入って
『とりあえず撮影だけでもしてみる!っていうのはどうですか? もしダメだったらその時はその時で! まぁ絶対大丈夫だと思いますけど』とニコッと笑った。
『しっかりとプロの方々に撮影してもらえるので、その辺は安心して下さい』と佳奈さんも優しく私を見つめた。
『……じゃあ、とりあえず撮影だけでも。 うまくいかなかったらごめんなさい』と私はしぶしぶ了承した。
それから、佳奈さんは会社に送る用と言ってスマホで私の全身を何枚かと上半身のアップの写真も数枚撮った。
そしてその写真を撮った後に佳奈さんは会社の方へと電話している様子だった。
『楽しみですねー! 撮影!』と千佳ちゃんは満面の笑みで私を見た。
『うーん……もう緊張してきた……』
写真なんて最後に撮ったのはいつだろう。
そんなに撮る機会もないから忘れてしまった。
……きっと最後に撮ったのは成人式の振袖の写真とその後の同窓会の時が最後だったと思う。
こういう時の撮影って一体どういった顔をしたらいいんだろう。
千佳ちゃんは笑顔でいいよとは言っていたけれど私は笑顔というものがあまり得意ではない。
『——美咲さん美咲さん! 今佳奈さんの電話の話聞いてたら撮影ウェディングドレスですって!』
『……えぇ!?』
私はギョッとして電話している佳奈さんの方に顔を向けた。
佳奈さんは電話で話しながらキラキラとした目の千佳ちゃんと動揺して慌てている私を交互に見てなんとも言えない表情をした。
ウェディングドレスって……
どうしよう……
『あっ、美咲さーん! こっちこっち』
私は手を振る彼女とその隣に千佳ちゃんより少し年上に見える個性的なファッションの女性の方へと向かった。
『おまたせ! さっき仕事終わって急いできたよ』
『私達もさっきついたばかりなんです。 あっ、こちらが私の先輩の佳奈《かな》さんです』
その佳奈さんという女性は『はじめまして』と笑顔で私に軽くお辞儀をし私も返した。
そして彼女は私をつま先から頭の先までゆっくりと見渡した。
『ねっ、美咲さんとても綺麗な方でしょ?』と千佳ちゃんは佳奈さんを下から覗き込むようにして笑った。
佳奈さんは『うん』と深く頷いて肩から下げているバックから小さいケースを取り出し、その中から名刺を一枚両手で私に手渡した。
『ウェディング…… 結婚式場か何かで働かれてるんですか?』と私は名刺を見ながら尋ねた。
『結婚式場ではないんですが、海外での挙式などのブライダル関係の会社です。 今、うちの会社の広告モデルを探しているんですが……千佳に誰か綺麗な人いない?って聞いたら美咲さんが適任だ!って言われたんです』
『へぇー、そうなんですね』と私は少し苦笑いで頷いた。
『良ければ、うちの上司に美咲さんの事紹介させてもらってもいいでしょうか?』
『私、そういうの全くしたことなくって広告モデルなんて出来るかな……』と私は少し目線を落とした。
千佳ちゃんは私たちの間にピョンと入って
『とりあえず撮影だけでもしてみる!っていうのはどうですか? もしダメだったらその時はその時で! まぁ絶対大丈夫だと思いますけど』とニコッと笑った。
『しっかりとプロの方々に撮影してもらえるので、その辺は安心して下さい』と佳奈さんも優しく私を見つめた。
『……じゃあ、とりあえず撮影だけでも。 うまくいかなかったらごめんなさい』と私はしぶしぶ了承した。
それから、佳奈さんは会社に送る用と言ってスマホで私の全身を何枚かと上半身のアップの写真も数枚撮った。
そしてその写真を撮った後に佳奈さんは会社の方へと電話している様子だった。
『楽しみですねー! 撮影!』と千佳ちゃんは満面の笑みで私を見た。
『うーん……もう緊張してきた……』
写真なんて最後に撮ったのはいつだろう。
そんなに撮る機会もないから忘れてしまった。
……きっと最後に撮ったのは成人式の振袖の写真とその後の同窓会の時が最後だったと思う。
こういう時の撮影って一体どういった顔をしたらいいんだろう。
千佳ちゃんは笑顔でいいよとは言っていたけれど私は笑顔というものがあまり得意ではない。
『——美咲さん美咲さん! 今佳奈さんの電話の話聞いてたら撮影ウェディングドレスですって!』
『……えぇ!?』
私はギョッとして電話している佳奈さんの方に顔を向けた。
佳奈さんは電話で話しながらキラキラとした目の千佳ちゃんと動揺して慌てている私を交互に見てなんとも言えない表情をした。
ウェディングドレスって……
どうしよう……
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。
海月いおり
恋愛
昔からプログラミングが大好きだった黒磯由香里は、念願のプログラマーになった。しかし現実は厳しく、続く時間外勤務に翻弄される。ある日、チームメンバーの1人が鬱により退職したことによって、抱える仕事量が増えた。それが原因で今度は由香里の精神がどんどん壊れていく。
総務から産業医との面接を指示され始まる、冷酷な精神科医、日比野玲司との関わり。
日比野と関わることで、由香里は徐々に自分を取り戻す……。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる