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ゴブリンでも勇者になれますか?

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 事件後、ジェイドを含む翡翠の妖狐のメンバー四百人が逮捕された。
 大罪魔法の魔導書に関しては危険ということで封印処理が施された。燃やしちゃえばいいと思うかもだけど、万が一他国が大罪魔法を使って侵略して来たときの為の抑止力として残しておくというのが上の判断だった。
 それから私事ではあるけれど、お父様からの縁談の話は直接断ってきた。
 私も自分の将来は自分で決めたいと、ゼルとヘイヴィアを見てそう思ったからだ。
 なんてことを二人に恥ずかしい思いをしながら、打ち明けたんだけど、「ふ~ん」とか「あっそ」とか素っ気ない返事しか返ってこなかった。
 私的にはこっち方が重要なことだったんだけど、ゼルとヘイヴィアの二人は違うことに意識が言っていた。


「それじゃあ、早速、報酬を渡していこうか」


 第七師団アジトの酒場に呼び出された私たちはこれから団長の手から翡翠の妖狐の逮捕で得た褒賞金を受け取る。


「キタぁあああああああ!!!!!」
「金貨百枚!!!!」


 ゼルとヘイヴィアはジェイドにかけられた賞金を貰えるとテンションが上がっていた。


「じゃあ、はいこれ」


 ちゃりんっと団長から渡されたのは金貨一枚。


「へ?」
「なにこれ?」


 予想外の事態にゼルとヘイヴィアは固まっていた。


「なにって今回の事件の報酬」
「いやいやいや! だって、賞金額金貨百枚って言ってたじゃん!」
「そうだ! そうだ!」


 いつも喧嘩してばかりの二人が今回に限っては息が合っていた。


「あーそれね。君たち、ユミルの街のことは覚えてる?」
「ああ、あのハム野郎が領主の街だろ?」
「そうそう。そこで君たち何した?」
「なんかしたっけ?」
「さぁ?」


 二人ともあんまり覚えていないらしく、首を傾げていた。


「確か、街がほぼ全壊状態でしたよね」


 レミリアさんの魔法のせいでユミルの街は壊滅状態になっていた。


「それだよそれ。ジェイドの懸賞金に関してはそのほとんどがユミルの街復興のためにあてがわれることになったんだ。で、これがその残った分」
「「なんだって!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」


 息ぴったり叫んだ二人はそのままレミリアさんの元に詰め寄った。


「「どうしてくれるんすか!!!!!!!!!!!!」」
「ははは、わりぃ」


 レミリアさんは悪びれた様子もなく笑っていた。
 せっかくの懸賞金がほぼゼロになってしまったことに落胆し、二人はその場に崩れ落ちた。
 お金にはあまり困っていない私だけど、流石にあれだけの事件を解決して報酬がこれだけって言うのは納得がいかないところではある。


「でも、安心して。みんなにはまだ朗報があるんだ」
「朗報ってなんすか。団長」
「三人とも今回の活躍が認められて二級上がって、八級になったよ」


 嘘! まだ入団して一週間も経ってないのにもう等級が上がったの!?
 これは普通に嬉しい。
 けど、喜んでいるのはどうやら私だけのようで……。


「そんなのどうでもいいから、金くれぇえええええええええ!!!!!」
「うわああああああああ!!! 俺欲しいものあったのに!!!!!」


 二人はお金の方が欲しかったようだ。


「しょうがない。そしたら、君たちに新しい任務だ」
「任務ぅ~? そんなものより金が欲しい……」
「ちなみに次の任務は無事、完遂することが出来たら、報酬金貨一五〇枚!」
「「!!!!!!」」


 報酬の額を聞いて、二人は飛び起きた。


「はいはい!! 俺行く!」
「ばっか、おめぇ! 俺が行く!」
「うんうん、やる気があっていいねぇ」


 どうしてこの二人はこんなにテンションが高いのだろうか。
 先日の事件で金貨一百枚。それよりも報酬が一.五倍ということはそれだけの難易度ということで……。


「憂鬱だわ……」


 私はこれからの任務に不安を感じため息を漏らす。


「おい、マナ! 何してんだ、早く行こうぜ!」


 すでに準備万端のゼル。
 正直、行きたくない。
 けど……。


「ワクワクすんな!」


 私は彼の行く末へ見届けようとそう思っていた。
 魔法が使えない、身体能力も低い。
 そんなゴブリンが勇者になるその日まで。



では、最後に今一度問おう。
『ゴブリンでも勇者になれますか?』
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