【R18.BL】愛月撤灯

麦飯 太郎

文字の大きさ
13 / 17

12.告白

しおりを挟む
 恥ずかしいくらいに泣き続け、もう疲れて涙も出なくなった頃にようやく心が軽くなった。
 大切だと思った全てを愛し続ける。そんな蓮の性格をよく知っていたはずなのに、一年近く無駄に悩み情緒が不安定になっていた。恥ずかしいけれど、何となくあるがままの自分をようやく自分自身で受け入れられた様な気がした。
 蓮に頭を下げようとしたら、その頭を抱えられ撫でくり回され「大丈夫、風花さんなら。でもたまにはこんな風に甘えてくださいね」と笑われてしまった。
 乾いた涙の跡がカピカピになっているそのままで、一人庭に出る。日が暮れ始め、薄暗い闇が訪れた。
 ふぅと息を吐くと、白い息が真っ直ぐに伸びて消える。

「よ、風花」
「……夏様」

 来るとは思っていたが、本当にやってきた夏に笑いそうになるのを堪えて顔を向けた。

「蓮は?」
「恭吾のところです」
「そっか。…………心が決まったか?」

 酷い顔には全く触れず、優しく微笑んで聞いてきた。その問いに答えようとした時、夏はハッとした顔をして今度は寂しそうに笑う。
 きっと、こちらの表情で答えは察したのだろう。しかし、返事はきちんとしなければ。これは、ケジメだ。

「夏様。俺、夏様と」
「ちょょぉぉっっと待ったぁぁぁぁ!!」
「!?」

 突然、しんみりとした静かな二人の間を裂くような声が響いた。
 驚いて二人で声のした方向を見ると、やたら背が高く体格の良い男が二人走ってくる。

「――!? 誰!? え、でか!!」

 誰? と聞いたものの、見た目で誰かはすぐに判別できた。大きくガタイも良くなってる……が、どう見ても大和と暁だ。しかし、あまりに成長し過ぎている上に今の状況がよく分からず開いた口が塞がらない。
 走ってきた暁はこちらを守るように前を、背後から支えるように大和が間に入る。
 美しい淡い水色の髪が乱れているが気にする素振りも無い双子は、無言で夏を睨む。すると、夏は何故かニヤリと笑った。

「今さ、俺は風花の告白聞いてんだけど??」

 いや、告白はしようとしていないが……。

「悪いけど、ふーちゃんは渡せない」
「風花さんは私達で守るので」

 いやいや、双子のものでもないけれど? それに神程の力は無いけれど守られるほど弱いつもりもない。

「うーん、それはお前らが決めることじゃないだろ? 風花はお前らが居るから悩んだんだ。それならオレの傍でオレだけを見て、オレも風花だけを見た方が幸せに決まってる。分かるか? オレを見てみろ。お前らより神としての力がある。それにイケメンで一途だ。風花を幸せにできる最高物件だろ?」
「それは今だからだろ!! お前は風花に飽きたら次を産む。産めるんだ。目に見える」
「私達は確かに神としての力は少ないです。しかし、四季神のように強くないからこそ私達は産み出すことは出来ません。私達は風花さん無しでは存在できない。風花さんを二人で一途に愛せます。二人なので二倍です。あと、私達の方がイケメンです」
「あぁ!? 俺の方が面は良いし、でろっでろに甘やかせるのは力があるからだろ!」
「力が全てと思っているうちは愛されないぞ?」
「暁、てめぇ!!」
「いい加減にしろ!!」

 好き勝手言い合う三人に痺れを切らし、思わず大声を出す。ビクリと三人は肩を揺らしてこちらを見た。
 余裕そうな表情の夏と、不安そうな双子。それを見比べてからため息を吐いた。

「俺の事を勝手に決めないでくれる? あと、大和に暁。あと夏様も!! 俺はどっちのものにもならないから。今回は夏に断る為に話してたのに!!」
「え? そうなの?」

 目を瞬かせる双子は、どうやら止めに入ってはいるが夏を受け入れる可能性の方が大きいと考えていたようだ。
 確かに、蓮と話す前までは揺らいでいたので完全に間違っているとはいえないけれど、なんとなくモヤモヤとしてしまう。
 そんな雰囲気をぶち壊すように夏が大袈裟に身体を伸ばしながら声を出した。

「あーあー、まったく。上手く風花のお断りを濁せると思ったのに。そしたらまだチャンス大アリだったのによぉ。じゃぁ行くわ。風花、その気になったらいつでも来いよ!」

 そう言うと、あっさりと夏は去っていった。
 残されてしまった三人は暫らく無言で夏が居た場所を見ていた。

「あ、あいつ――、やっぱり本気じゃなかったんだな!?」
「遊びは他でしてもらいたいですね」
「…………」

 双子はそう言っているが、先程の夏は……いや、ここ数週間で見てきた夏が時折見せる眼差しは本物だったと思う。
 蓮のこと、双子のこと、こんなちっぽけな神使に……他の神使には見向きもせず、下らない悩みに付き合ってくれている時点でかなり本気だったのでは。しかし、そんなことを口にするのは無粋というものだ。
 まだブーブーと文句を垂れている、双子を見上げる。ついこの前までは小さくてヤンチャな子供だった双子は、今では自身より大きくなってしまっている。
 大和は腰までの長い髪を垂らしたままで、暁はよく見たら肩辺りで適当に切られている。それが昇ってきた月に照らされ美しく輝く。
 さらに、顔付きも少年から端々まで整っている。大和の瞳は知性的に少し端が垂れて黒目が優しく、暁は鋭さが赤目と相まって、意志の強さを感じられた。
 随分と成長したものだ。

「はぁー、お前らだって俺の事を母親みたいに思ってるのを勘違いしてるだけだろ? 俺が誰とどうなろうと関係無くないか?」

 と言いつつ、母親みたいな気分になっているのは自身なのかもしれないと自嘲気味に笑みを浮かべると、双子は膝を曲げて顔を近付けてきた。
 整った顔が二つ近付き、後退りしそうになる。真剣な瞳に釘付けになりそうだ。

「違う。風花を愛してる」

 真剣な暁の言葉に、思わず視線を逸らす。

「ははっ、じゃぁ双子で愛するの? 喧嘩になるじゃん」
「いや、それはちゃんと話し合います。二人で愛するので、重いですけど……風花さんが困るくらい、もう充分と音を上げるまで愛します」
「はははっ、じゃぁ、とりあえずどんなのか見せてよ」

 何を馬鹿なことを言っているのやら。そう思って思わず出た一言だが、この適当に言ってしまったがこの言葉を後悔することになろうとは全く知る由もなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...