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0.序
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三つ子の長子である天花が天狗の里に嫁いで数ヶ月経った。
あのやたら顔だけは良い天狗が、まさか天花に惚れるなんて思いもしなかったが、しかし、天花が惚れるのもなんとなく納得できた。それは、天花が甘え下手だからだ。
天花は自分がしっかりしなければと思う節がある。そう思わせている原因は自分でもあるので、申し訳ない気持ちもある。しかしそのおかげで、甘え下手な天花は、甘えられる天狗の次期長となった華月という伴侶に出逢えたのだから良しとしよう。
例え離れても、三つ子の絆は決して揺るがないし、どこに居ても大好きなのは変わらないのだから。
「六花ぁ!?」
「なぁにー? 風花ぁー?」
桜の時期も終わり、夏のような暑さの日もある四月半ば。屋敷の縁側でのんびりしていると、風花の少し棘の含んだ声に呼ばれ起き上がる。
「もう!! またゴロゴロしてる!! 蓮様と恭吾がお勤めに出られるから、銀花様のお守りして」
「ゴロゴロしてるのが僕のお勤めでして」
銀花は、蓮と恭吾の間に産まれた可愛らしい男の子だ。生まれて一年間、名前は両親である蓮と恭吾しか知らず、僕らは赤様と呼んでいた。それは、蓮が育っていた千年以上前は赤子が無事に育つ方が珍しかったので、産まれて一年の祝いで名前を公開していたから……らしい。それが地域的なものなのか、家的なものなのかは蓮も知らないようだったが、その蓮の微かな昔の記憶を恭吾は大事にしたいと言い出したのだ。
三つ子的には早く名前を知りたかったが、親子の時間だけ名前を呼んでやる特別感に特に蓮が幸せそうだったので、仕方なく『赤様』と呼んでいた。
そして、初めて赤様の名前を聞かされ、自分達三つ子と同じ『花』という文字が入り、全て雪にまつわる言葉だと教えてもらった。
その時、蓮はにこりと笑い「こらからもこの子のお兄さんとしてよろしくお願いします」と言ってくれた。
その感動も、数ヶ月経ったしまうと若干薄れてしまうのは致し方ないだろう。
「お前な……銀花様のお相手専門みたいなもんだろ? 嫌なら今すぐ大人の姿になって家事全般をするんだな」
「銀花ぁ! お散歩行こっ!! じぃちゃんち遊び行こうー!!」
風花が胸に抱いていた銀花を颯爽と奪い、紐を使って背におぶる。ずっしりと重みのある一歳児は降ろせと暴れるが、それも気にせず屋敷をあとにした。
山道を下りながら、また少しだけ昔のことを思い出す。
名前のない三つ子の鬼を五十年程前に蓮が引き取り、育ててもらい、その蓮が数年前に恭吾というなんでもないよくある死にかけの人間に命を分けて結婚した。
(ここまでは普通だよな)
その蓮が大好きだった三つ子の長子である天花が、紆余曲折を経て天狗の里の次期長と結婚することになった。その紆余曲折の中で、蓮が四季神という神の中でも相当偉い神様であることを知らされ、更に僕ら三つ子はその神に従う神使だと知った。ついでに蓮の命を分けてもらった恭吾も神としての格が近々与えられるらしい。
だがそんなことになっても、その後の生活は特に変わりない。蓮は山に見回りに行き、それに恭吾が同行する。風花は天花と分担していた家事をほぼ全て担ってくれている。僕といえば、蓮と恭吾の間に産まれた可愛らしい男の子の銀花と、山や川、たまに山の麓に降りてほぼ毎日遊んでいた。
今年の神無月に出雲大社へ天花も含めた全員で行くらしいけれど、まだ夏にもなっておらず秋のことなんて実感もわかない。
「蓮様と恭吾は元人間って言われることもあるらしいけど、銀花は最初から神様なんだろうね」
「あう?」
「そ。神様! 神様は凄い人なんだよー! 多分。まぁ、僕は神使だけど……うーん、なんだろうね。神使って」
何が出来るという訳では無い。ただ、ちょっと妖力が増した気がするが、それは年齢に応じて増えただけとも思える。
結局、よく分からないのだ。
「あー!! うーう!」
「ん? あぁ。着いたよ、降ろすから待って」
目的の場所につき、早く遊びたい銀花に頭を叩かれる。
「まだ暑くないし、庭で遊ぶ?」
「あーう」
「ん。じゃぁ、僕は屋敷の雨戸開けてくるね」
ただ広いだけの何も無い庭を銀花がハイハイをしだしたのを確認し、立ち上がる。
山の麓にあるこの屋敷は、数程前に見つけた場所だ。人が居ないことを確認し、天花と風花の三人でたまに遊びに来ていた。ところがある日、屋敷の雨戸が開いていて人の気配がしたのだ。
それから、天花と風花は寄り付かなくなったが、僕だけはずっと様子を伺っていた。そして、月に数回、白髪混じりの短髪の老人が空気の入れ替えに来ていると突き止めたのだ。
そうなれば、あとはその老人が居ない日を狙えばいいと思っていたのだが……。うっかり昼寝をして、バレてしまった。
不味いと思ったが老人は何も気にせず、起き上がった僕に茶を出してこう言った。
「遊びに来た日は雨戸を開けてくれんか。人が居ない家はすぐに傷んじまう。あとは、気が向いたら掃き掃除でもしてくれ」
と。
こうして、人間の老人と妙な交流が始まった。
最初は蓮や恭吾が心配し、行くのを止めようかと思ったが、その老人がこちらを詮索すること無く、会えばただ世間話をするだけの独り身だと知り、逆に行く回数は増えていった。
「よーし、雨戸終わり!! 少しホコリ溜まってるな」
畳用の箒を手にし、庭を覗く。すると、銀花の姿が見えない。どこかに隠れているのかと、見渡すが確認出来ない。
(ウソ……でしょ!?)
「銀花!! 銀花!!」
「うぉーい、ここだぁー」
おかしな声に振り向くと、件の老人が銀花を抱っこし銀花の手を取って振っている。
「じぃちゃん!! もう!! 驚かせないでよ!!」
「なんだ? ワシが悪いわけじゃないだろ! こんなちっさい子を一人にした六花が悪い!!」
「銀花はもう一歳だもん」
「いやいや、まだ一歳だ。誘拐でもされたらどうすんだ?」
「こんな田舎で?? 商店に行くまで、まだまだ山を下らなきゃいけないこんな山奥で??」
「神隠しがあるかもしれん」
「……」
神様はそんなことしません。少なくともここの神様は蓮なので、そんなことしません。と思いつつ黙っていると、じぃちゃんは溜息を吐いた。
「あんなぁ、六花。この子はお前の大事な大事な弟なんだろ? 目を離したらダメだ。誘拐が無くとも、なんか食ったり、落ちたり、登ったり……一歳だとよく動くだろ?」
「よく知ってるね」
「ははははっ!! 子供は好きだからな。六花、掃き掃除のあとは暇か?」
「――!? うん!!」
思わず大きな声で返事をしてしまった。なぜなら、こうやってじぃちゃんが誘ってくれる時は家においでという意味だからだ。
そして、そこには……テレビがある。あの不思議な四角い画面に映るものは、全てが新鮮に見えた。
じぃちゃんの家は、空き家から車で少し行った場所にある。それでも山の中なので、隣近所には更に車で行くらしい。その隣近所も、ごく稀に行く街ですら正直歩ける距離だけれど、じぃちゃんの足だともう山道はキツいようだ。
出会った頃……たかだか数年前はもっと元気だった気がするが、年並だとじぃちゃんは笑っていた。
「あれとっといた!?」
「ん? あれ?」
じぃちゃんの家の居間で、銀花を抱っこしたまま慣れた手つきでテレビのリモコンを持つ。最初は何故映るのか不思議でしかたなかったが、そういうものだと言われたので、そういうものだと思うようにしている。
この不思議な四角いものに映るものは、遠くの現実の世界を過去と現在を映してくれているらしい。アニメというものも見たが、それよりも興味を引いたものがあった。
「あれだよー! わかってるくせに!」
「あぁ、世界不思議いっぱいか。最新が録画されてるはずだぞ?」
お菓子とお茶を持ってきたじぃちゃんにリモコンを渡し選んで貰う。
「今回はどこだったか?」
「前回はアラスカ、今回はパプワニューギニアだよ!!」
「そうだったな」
そうして、始まった番組を三人で見ながらお茶をする。じぃちゃんも海外に行ったことが無いらしく、こんなこと本当にある? と笑ったり驚いたり、楽しい時間を過ごすのだ。
番組が終わり、最後に大きな地球儀で場所を確認し、僕とじぃちゃん、そして銀花のささやかな旅行体験終了である。
「ふぁー、面白かった!! 動物って本当に場所によって違うね。アラスカとパプワニューギニアじゃ大違いだ」
「日本ですら、沖縄と北海道じゃ全然違うらしいしな」
「じぃちゃんはそこも行ったことないの?」
「ん? あぁ。無いな。恥ずかしいが、この老いぼれは飛行機が怖いんじゃ。なんで飛ぶんだ? 鉄の塊だぞ?」
「はははっ! まぁ、不思議だよね」
人間は便利なものが多い。
夏になればエアコンをつければ涼しいし、乗り物は多様化し、もうそろそろ車も空に飛ぶらしい。食事も、とっくの昔に火を使わずに加熱が出来るようになったと聞いた時は本当に驚いた。
もちろん、それが全て良いとは思わない。時には火の温もりは必要だし、その危険性も幼い頃にしっかりと学ぶべきだと思う。
水は恵みだけれど、大雨が降れば危険を伴う。自然は全て恵みであり畏れだ。
「六花はどこか行きたいところはないんか? まぁ、まだチビだから無理だろうが」
「え? 僕?」
考えたこともなかった。行きたい場所……。
行きたい場所は沢山ある。じぃちゃんの家で一緒に見た場所は全て行ってみたいし、出来るなら宇宙だって行ってみたい。人が月に行ったことがあると聞いた時には、目玉が飛び出るほど驚いた。
(でも、無理だな)
天花が嫁に行き、風花は今とても気が張っている。元々、天花がしてきた仕事を担っている風花に、万が一、僕が居なくなった後にそれも加わると考えると……多分、風花は潰れてしまうだろう。
三人の中で天花が一番繊細そうにみえるが、実は風花が誰よりも気を使っているのだから。
それに、銀花の相手として子供の姿で居させてもらっている間は、銀花が大きくなるまでは……このままでいるべきなのだろう。
「僕はまだ行きたいところは無いなぁ。銀花と離れたくないし! ねぇ、銀花」
そう明るく答え、銀花の頭を撫でくりまわしたのだった。
あのやたら顔だけは良い天狗が、まさか天花に惚れるなんて思いもしなかったが、しかし、天花が惚れるのもなんとなく納得できた。それは、天花が甘え下手だからだ。
天花は自分がしっかりしなければと思う節がある。そう思わせている原因は自分でもあるので、申し訳ない気持ちもある。しかしそのおかげで、甘え下手な天花は、甘えられる天狗の次期長となった華月という伴侶に出逢えたのだから良しとしよう。
例え離れても、三つ子の絆は決して揺るがないし、どこに居ても大好きなのは変わらないのだから。
「六花ぁ!?」
「なぁにー? 風花ぁー?」
桜の時期も終わり、夏のような暑さの日もある四月半ば。屋敷の縁側でのんびりしていると、風花の少し棘の含んだ声に呼ばれ起き上がる。
「もう!! またゴロゴロしてる!! 蓮様と恭吾がお勤めに出られるから、銀花様のお守りして」
「ゴロゴロしてるのが僕のお勤めでして」
銀花は、蓮と恭吾の間に産まれた可愛らしい男の子だ。生まれて一年間、名前は両親である蓮と恭吾しか知らず、僕らは赤様と呼んでいた。それは、蓮が育っていた千年以上前は赤子が無事に育つ方が珍しかったので、産まれて一年の祝いで名前を公開していたから……らしい。それが地域的なものなのか、家的なものなのかは蓮も知らないようだったが、その蓮の微かな昔の記憶を恭吾は大事にしたいと言い出したのだ。
三つ子的には早く名前を知りたかったが、親子の時間だけ名前を呼んでやる特別感に特に蓮が幸せそうだったので、仕方なく『赤様』と呼んでいた。
そして、初めて赤様の名前を聞かされ、自分達三つ子と同じ『花』という文字が入り、全て雪にまつわる言葉だと教えてもらった。
その時、蓮はにこりと笑い「こらからもこの子のお兄さんとしてよろしくお願いします」と言ってくれた。
その感動も、数ヶ月経ったしまうと若干薄れてしまうのは致し方ないだろう。
「お前な……銀花様のお相手専門みたいなもんだろ? 嫌なら今すぐ大人の姿になって家事全般をするんだな」
「銀花ぁ! お散歩行こっ!! じぃちゃんち遊び行こうー!!」
風花が胸に抱いていた銀花を颯爽と奪い、紐を使って背におぶる。ずっしりと重みのある一歳児は降ろせと暴れるが、それも気にせず屋敷をあとにした。
山道を下りながら、また少しだけ昔のことを思い出す。
名前のない三つ子の鬼を五十年程前に蓮が引き取り、育ててもらい、その蓮が数年前に恭吾というなんでもないよくある死にかけの人間に命を分けて結婚した。
(ここまでは普通だよな)
その蓮が大好きだった三つ子の長子である天花が、紆余曲折を経て天狗の里の次期長と結婚することになった。その紆余曲折の中で、蓮が四季神という神の中でも相当偉い神様であることを知らされ、更に僕ら三つ子はその神に従う神使だと知った。ついでに蓮の命を分けてもらった恭吾も神としての格が近々与えられるらしい。
だがそんなことになっても、その後の生活は特に変わりない。蓮は山に見回りに行き、それに恭吾が同行する。風花は天花と分担していた家事をほぼ全て担ってくれている。僕といえば、蓮と恭吾の間に産まれた可愛らしい男の子の銀花と、山や川、たまに山の麓に降りてほぼ毎日遊んでいた。
今年の神無月に出雲大社へ天花も含めた全員で行くらしいけれど、まだ夏にもなっておらず秋のことなんて実感もわかない。
「蓮様と恭吾は元人間って言われることもあるらしいけど、銀花は最初から神様なんだろうね」
「あう?」
「そ。神様! 神様は凄い人なんだよー! 多分。まぁ、僕は神使だけど……うーん、なんだろうね。神使って」
何が出来るという訳では無い。ただ、ちょっと妖力が増した気がするが、それは年齢に応じて増えただけとも思える。
結局、よく分からないのだ。
「あー!! うーう!」
「ん? あぁ。着いたよ、降ろすから待って」
目的の場所につき、早く遊びたい銀花に頭を叩かれる。
「まだ暑くないし、庭で遊ぶ?」
「あーう」
「ん。じゃぁ、僕は屋敷の雨戸開けてくるね」
ただ広いだけの何も無い庭を銀花がハイハイをしだしたのを確認し、立ち上がる。
山の麓にあるこの屋敷は、数程前に見つけた場所だ。人が居ないことを確認し、天花と風花の三人でたまに遊びに来ていた。ところがある日、屋敷の雨戸が開いていて人の気配がしたのだ。
それから、天花と風花は寄り付かなくなったが、僕だけはずっと様子を伺っていた。そして、月に数回、白髪混じりの短髪の老人が空気の入れ替えに来ていると突き止めたのだ。
そうなれば、あとはその老人が居ない日を狙えばいいと思っていたのだが……。うっかり昼寝をして、バレてしまった。
不味いと思ったが老人は何も気にせず、起き上がった僕に茶を出してこう言った。
「遊びに来た日は雨戸を開けてくれんか。人が居ない家はすぐに傷んじまう。あとは、気が向いたら掃き掃除でもしてくれ」
と。
こうして、人間の老人と妙な交流が始まった。
最初は蓮や恭吾が心配し、行くのを止めようかと思ったが、その老人がこちらを詮索すること無く、会えばただ世間話をするだけの独り身だと知り、逆に行く回数は増えていった。
「よーし、雨戸終わり!! 少しホコリ溜まってるな」
畳用の箒を手にし、庭を覗く。すると、銀花の姿が見えない。どこかに隠れているのかと、見渡すが確認出来ない。
(ウソ……でしょ!?)
「銀花!! 銀花!!」
「うぉーい、ここだぁー」
おかしな声に振り向くと、件の老人が銀花を抱っこし銀花の手を取って振っている。
「じぃちゃん!! もう!! 驚かせないでよ!!」
「なんだ? ワシが悪いわけじゃないだろ! こんなちっさい子を一人にした六花が悪い!!」
「銀花はもう一歳だもん」
「いやいや、まだ一歳だ。誘拐でもされたらどうすんだ?」
「こんな田舎で?? 商店に行くまで、まだまだ山を下らなきゃいけないこんな山奥で??」
「神隠しがあるかもしれん」
「……」
神様はそんなことしません。少なくともここの神様は蓮なので、そんなことしません。と思いつつ黙っていると、じぃちゃんは溜息を吐いた。
「あんなぁ、六花。この子はお前の大事な大事な弟なんだろ? 目を離したらダメだ。誘拐が無くとも、なんか食ったり、落ちたり、登ったり……一歳だとよく動くだろ?」
「よく知ってるね」
「ははははっ!! 子供は好きだからな。六花、掃き掃除のあとは暇か?」
「――!? うん!!」
思わず大きな声で返事をしてしまった。なぜなら、こうやってじぃちゃんが誘ってくれる時は家においでという意味だからだ。
そして、そこには……テレビがある。あの不思議な四角い画面に映るものは、全てが新鮮に見えた。
じぃちゃんの家は、空き家から車で少し行った場所にある。それでも山の中なので、隣近所には更に車で行くらしい。その隣近所も、ごく稀に行く街ですら正直歩ける距離だけれど、じぃちゃんの足だともう山道はキツいようだ。
出会った頃……たかだか数年前はもっと元気だった気がするが、年並だとじぃちゃんは笑っていた。
「あれとっといた!?」
「ん? あれ?」
じぃちゃんの家の居間で、銀花を抱っこしたまま慣れた手つきでテレビのリモコンを持つ。最初は何故映るのか不思議でしかたなかったが、そういうものだと言われたので、そういうものだと思うようにしている。
この不思議な四角いものに映るものは、遠くの現実の世界を過去と現在を映してくれているらしい。アニメというものも見たが、それよりも興味を引いたものがあった。
「あれだよー! わかってるくせに!」
「あぁ、世界不思議いっぱいか。最新が録画されてるはずだぞ?」
お菓子とお茶を持ってきたじぃちゃんにリモコンを渡し選んで貰う。
「今回はどこだったか?」
「前回はアラスカ、今回はパプワニューギニアだよ!!」
「そうだったな」
そうして、始まった番組を三人で見ながらお茶をする。じぃちゃんも海外に行ったことが無いらしく、こんなこと本当にある? と笑ったり驚いたり、楽しい時間を過ごすのだ。
番組が終わり、最後に大きな地球儀で場所を確認し、僕とじぃちゃん、そして銀花のささやかな旅行体験終了である。
「ふぁー、面白かった!! 動物って本当に場所によって違うね。アラスカとパプワニューギニアじゃ大違いだ」
「日本ですら、沖縄と北海道じゃ全然違うらしいしな」
「じぃちゃんはそこも行ったことないの?」
「ん? あぁ。無いな。恥ずかしいが、この老いぼれは飛行機が怖いんじゃ。なんで飛ぶんだ? 鉄の塊だぞ?」
「はははっ! まぁ、不思議だよね」
人間は便利なものが多い。
夏になればエアコンをつければ涼しいし、乗り物は多様化し、もうそろそろ車も空に飛ぶらしい。食事も、とっくの昔に火を使わずに加熱が出来るようになったと聞いた時は本当に驚いた。
もちろん、それが全て良いとは思わない。時には火の温もりは必要だし、その危険性も幼い頃にしっかりと学ぶべきだと思う。
水は恵みだけれど、大雨が降れば危険を伴う。自然は全て恵みであり畏れだ。
「六花はどこか行きたいところはないんか? まぁ、まだチビだから無理だろうが」
「え? 僕?」
考えたこともなかった。行きたい場所……。
行きたい場所は沢山ある。じぃちゃんの家で一緒に見た場所は全て行ってみたいし、出来るなら宇宙だって行ってみたい。人が月に行ったことがあると聞いた時には、目玉が飛び出るほど驚いた。
(でも、無理だな)
天花が嫁に行き、風花は今とても気が張っている。元々、天花がしてきた仕事を担っている風花に、万が一、僕が居なくなった後にそれも加わると考えると……多分、風花は潰れてしまうだろう。
三人の中で天花が一番繊細そうにみえるが、実は風花が誰よりも気を使っているのだから。
それに、銀花の相手として子供の姿で居させてもらっている間は、銀花が大きくなるまでは……このままでいるべきなのだろう。
「僕はまだ行きたいところは無いなぁ。銀花と離れたくないし! ねぇ、銀花」
そう明るく答え、銀花の頭を撫でくりまわしたのだった。
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