フリー声劇台本〜モーリスハウスシリーズ〜

摩訶子

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Last Moon (約40分 男5(少年・男女不問))

後半パート

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○戻・モーリスハウス・廊下(朝)

サンディー:「………その翌日に、僕の部屋に花束を持って現れたのか。本当にあなたって人は…」
フレドリック:「寮に戻って冷静に考えてみたら、やっぱり幽霊と生きている人間は別物だと思ってね」
サンディー:「それではつまり………………いや、何も言わなくていい。何も聞きたくないや」
フレドリック:「? あまり面白くなさそうだね。やっぱりこの話はウケないかな…」
サンディー:「……あぁ、本当に、なんでこんな人に」
フレドリック:「ん?」
サンディー、フレドリックの鼻を強く捻る
フレドリック:「ふがっ!? いてててててて、あにふるんふぁ!?(=なにするんだ)」
サンディー:「この鼻がもうちょっとこう、右に曲がっていて……口もこんな感じだったら………うわぁ、面白いカオ。これなら好きにならずに済んだかもしれないのに」
フレドリック:「ふぁんひー(=サンディー)!?」
サンディー:「(離す)あーあ。こんなこと考えてもつまんないや」
フレドリック:「???」


○同・少し離れた位置(朝)
 
リオ:「カズト! 木の棒振り回しちゃダメだってば~!」
カズト:「振り回してるんじゃない! 剣道の稽古だ!」
リオ:「稽古ってこんな廊下で走り回りながらするものなの!?」
カズト:「普通は違うな!」
リオ:「じゃあ違うんじゃん!」
カズト:「何でもいいんだよ! これも全部、強くなってリオを守るための経験値になるんだ!」
リオ:「遊んでるだけにしか見えないよぉ~」
カズト:「ラスト一発~っ!」
リオ:「やめなって!」
カズト:「わっ! 今無理に止めたら危なっ…」
リオ:「え?」

走りながらサンディー・フレドリックらとの距離が近づいて行き、いつの間にかすぐ後ろに。
振り上げた棒の先がフレドリックの頭に命中する。

フレドリック:「どわぁっ!?」
サンディー:「! わぁクリティカル」
カズト:「あ…」
リオ:「あわわわわわわわっ!!」

  × × ×

リオ:「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
フレドリック:「……ハハハ、鼻の次は脳天か」
カズト:「は?」
リオ:「ちょっ!? カズトも謝って!」
カズト:「あー、すんませんっした」
リオ:「そんな謝り方がありますか!」
カズト:「母ちゃんかよおまえは」
フレドリック:「(笑って)一年生はそのぐらい元気なほうがいい」
リオ:「えっ!? 許してくださるんですか!? こんな態度なのに!?」
フレドリック:「この寮はどうにも空気が重くてよろしくない。キミ達が入って賑やかにしてくれて、僕らのほうが助かっているよ」
カズト:「へー、アンタかっこいいな」
リオ:「カズト!!」
フレドリック:「(盛大に笑って)ちょうど君達と仲良くなりたいと思っていたところでね。ご縁ができてよかった」
リオ:「?」
サンディー:「気をつけなよ。その男は、学園一の美少年を2代に渡って落としたプレイボーイだから」
リオ:「えっ?」
カズト:「あ! まさかおまえもリオを狙ってるのか!?」
リオ:「わわっ、またそうやって…」
フレドリック:「…もし、そうだって言ったら?」
リオ:「え…」
サンディー:「……!」
 
ジュリアン:『【嫉妬に狂え】』
 
サンディー:「(微かな声で)離れろ……」
フレドリック:「…?」
 
カズト:「離れろコラ!」
カズト、リオとフレドリックの間に割って入る
サンディー:「……!?(我に返る)」
カズト:「コイツに手ぇだす奴は誰であろうと許さねえぞ!」
フレドリック:「………(肩をすくめる)」
リオ:「もう…またそうやって」
フレドリック:「(笑いながら)異国のナイト様はかっこいいね。なぜそんなに過剰防衛をするのか、よかったら聞かせてくれないかい?」
カズト:「……小学校からこっちに引っ越してきて、国籍の違いで虐められていた俺に、コイツだけは、いつも優しくしてくれた」
フレドリック:「……ふむ」
リオ:「………」
カズト:「そのせいで、自分まで虐められるようになっても、…それでも俺から離れていったりしなかった。コイツは見ての通りひ弱で、簡単にボコボコにされちゃうのに、いつも黙って耐えてて……」
リオ:「…カズト、その話はもういいじゃない?」
カズト:「あの頃は、俺も子供で、人数の力には勝てなかったけど。いつか絶対強くなって、俺1人でもリオを守れるようになるって決めたんだよ!」
フレドリック:「………なるほどねぇ?」
リオ:「も、もう。きみの国は礼節を重んじるんじゃなかったの? 先輩に失礼な態度を取るものじゃないよ!」
フレドリック:「(笑いながら)いいんだよ。僕はお堅い連中と違ってフレンドリーが売りだから。気軽にフレディと呼んでくれて構わないからね」
リオ:「えぇっ、でも先輩…」
フレドリック:「フレディだよ!」
リオ:「は、はぁ」
カズト:「……なんか、すんませんっした。いろいろと失礼なこと言って」
サンディー:「………」
 
サンディー:(あれ…? 僕はさっきまで、何を考えていたんだっけ……?)
 
サンディー:「……まぁ、いいか」
 
ジュリアン:『よくない』
 
サンディー:「……え?」
フレドリック:「? サンディー? どうした?」
 
ジュリアン:『【嫉妬に狂え】』
 
サンディー:「………」
 
ジュリアン:『【あいつが憎い】』
 『【邪魔をする奴も、みんな敵だ】』
 
サンディー:「…はい………」
フレドリック:「おーい、サンディー? マイプリンセス?」
サンディー:「……? あぁ、ごめん、考えごと」
フレドリック:「あ、そう?」
リオ:「それじゃあ、ぼくたちはこのへんで」
フレドリック:「ああ、ちょっと待って!」
リオ:「?」
フレドリック:「今日の夜、僕達と御一緒願いたい所がある」
リオ:「え?」
サンディー:「…? ねえ、その僕『達』って、僕も入っているの?」
フレドリック:「勿論」
カズト:「おまえ、やっぱり悪い虫だったのか!?」
リオ:「わっ、カズト!」
カズト:「(フレドリックを睨みつける)」
フレドリック:「…………真っ直ぐな黒い瞳は美しいね。よかったらキミも一緒にどうだい? それなら構わないだろう?」
カズト:「断る!」
フレドリック:「忘れちゃったのかい? キミ、先輩の頭を木の棒でぶん殴ったんだけど?」
カズト:「あ」
リオ:「ほら……」
サンディー:「こんな時だけ先輩に戻るんだね」
フレドリック:「決まりだね。キミ達を連れていきたいところっていうのは……」


回想・旧校舎プール(夜)

ジュリアン:『……君が本当に、今でも僕を恋人だと思ってくれているのなら』
フレドリック:「何だい?」
 
ジュリアン:『……このプールが取り壊されることは、知っている?』
フレドリック:「あぁ、知っているよ。直接の理由はキミの事件があったことだろうけれど、そもそも使われていないプールなんて、もっと早く取り壊して別のことに敷地を使えばよかったんだ。そうすればキミだって、あんなことにはならなかったのに」
ジュリアン:『それはどうかな? 僕はこのプールじゃなくても、……場所がどこであっても、結局同じことになっていたのかもしれないし』
フレドリック:「ねえ、キミは本当になぜ…」
ジュリアン:『まぁ、それに関してはまた別の機会でいいから。とにかく、この旧校舎のプールが取り壊されるのは、来週なんだ』
フレドリック:「それも知っているよ。それで?」
ジュリアン:『……つまり、来週で………僕の居場所はなくなる』
フレドリック:「え?」
ジュリアン:『さっきも似たようなことを言ったけれど、【月】は、居場所に固執しないんだ。このプールがなくなるのなら、別のどこかへ移動する。平地になっても地縛霊のようにここへ留まったりせず、他のもっと居心地のよい場所を探すだけなんだって』
フレドリック:「月って……」
ジュリアン:『僕は、【月】について行かなければいけないから。ここに居られるのは、取り壊しの前夜までなんだよ』
フレドリック:「なかなか追いつくのが難しい話だな」
ジュリアン:『結論を言えば、君に会えるのもその日までってことさ』
フレドリック:「………」
ジュリアン:『だから、最後のお願いだ。取り壊し工事の前日の夜、月が綺麗に見える時間に、僕に会いに、ここへ来て』
フレドリック:「それは、勿論……勿論来るけれど、ジュリアン、本当にキミとはもう…」
ジュリアン:『赤いドレスのお姫様も、一緒に連れて来てね』
フレドリック:「………………え?」
ジュリアン:『それが僕の、最後のお願いだから。待ってるよ、愛するフレドリック』
フレドリック:「ちょ、ちょっと待ってくれ! まだ話は……」
 
フレドリック:「………消えてしまった…」


○戻・モーリスハウス・廊下(朝)

サンディー:「なんでそんな大事な話、僕に最初に話してくれなかったの!?」
フレドリック:「まぁいいじゃないか。今ここで一緒に聞いたんだから」
サンディー:「いいわけあるか!!」
フレドリック:「? そんなに怒ることかい?」
サンディー:「あなたの今の恋人は僕なのに……なんで僕を一番に優先してくれないの……?」
カズト:「(うろたえて)な、なぁ…」
リオ:「(カズトを制して小声で)いいから。今はぼくたちが口を出しちゃダメ」
カズト:「お、おぅ」
フレドリック:「…? 何だか機嫌を損ねてしまったようだけれど、キミは一緒に来てはくれないのかい?」
サンディー:「……行くよ」
フレドリック:「あぁ、よかった」
サンディー:「絶対一緒に行くから!! 夜だけじゃない!! 僕は一時だってあなたから離れない!! 今の一番は僕なんだ!!」
リオとカズト、「?」という表情で顔を見合わせる
フレドリック:「何だかよくわからないけれど、決まりってことでよさそうだね♪ それじゃあ、また夜に!」
サンディー:「ふんっ!」
リオ:「は、はい……よろしくお願いします」
サンディー、フレドリック、退場
リオ:「………(呆気)」
カズト:「おい、あんまり変なことに関わらないほうがいいよ。だいたい俺ら関係ねぇじゃん。しかも幽霊とか…普通に言われて信じられるかっての。やっぱ今からでも断ろうぜ?」
リオ:「そんなわけにはいかないよ」
カズト:「別に怒られねぇって」
リオ:「でもぼくは行ってあげたい。知らない人だけど、死者に花を手向ける心は、全世界共通でしょ?」
カズト:「……(盛大なため息)。いつか絶対痛い目見るぞ」
リオ:「カズトが守ってくれるんでしょ?」
カズト:「これだよ…」


○同・旧校舎プール(夜)

ジュリアン:『あぁ…今夜の月は最高に美しい。……また君が、ここへ来てくれるからだろうか?』
 
ジュリアン:『【あいつが羨ましい】【あいつが憎い】』
 
ジュリアン:『独りで抱いていた嫉妬の感情は、いまや僕だけのものではない。同じ嫉妬心を抱いている人間に取り入るのは、なんて心地が良いのだろう……』


○同・モーリスハウス・裏門(夜)

フレドリック:「全員来てくれたんだね。嬉しいよ」
カズト:「リオ、絶対俺から離れるなよ!」
フレドリック:「(笑いながら)嫌だなぁ、僕は何もしないよ」
カズト:「アンタもだけど、あとオバケもだ!」
リオ:「なんだ、信じてるんじゃん」
カズト:「うるせー!」
サンディー:「………………」
 
ジュリアン:『【嫉妬に狂え】』
 
サンディー:「………はい」
 
リオ:「……? あの、先輩…? どうかしたんですか…?」
サンディー:「!!(リオを鋭く睨む)」
リオ:「…!?」
カズト:「(間に入って)な、なんすか!?」
サンディー:「………………」
また顔を見合わせるリオとカズト
フレドリック:「? さぁ、行こうか」


○同・旧校舎・プール(夜)

フレドリック:「到着。どうだい1年生達、ここが噂の事件現場だよ」
カズト:「うわぁ……(ドン引き)」
リオ:「あの、お言葉ですが。あまりそういうことを嬉しそうに言うものではないと思います」
フレドリック:「キミは本当に良い子だね。それに……」
リオ:「…?」
カズト:「!(警戒して一歩前に出る)」
フレドリック:「こうして月明かりに照らされた顔は、賑やかな日中に見た時よりも更に美しい。……改めて僕ごのみだ」
カズト:「てめぇやっぱり…!」
サンディー:「フレディやめてよ!! なんでその子なの!? あなたの恋人は僕でしょう!?」
フレドリック:「…勿論だよ。今のはちょっとからかってみただけさ。僕の愛しい恋人は、サンディー、キミだけだ」
カズト:「本物の最低野郎だなてめぇは……」
サンディー:「そんな言葉じゃ信じられない。ねえ、こっちに来てよ。もっと僕を見て。僕だけを見て。ねえフレディ!」
リオ:「お、落ち着いて………ん? あれ……?」
カズト:「どうした?」
フレドリック:「ジュリアンの姿がないな。どこにいるんだ?」
サンディー:「いいから僕を見てよ!」
リオ:「カズト、見て。あれ……ほら、プールの底が、少し揺れてる…」
カズト:「ん? あ、ほんとだ……何だよあれ…」
フレドリック:「おーい、ジュリアン?」
サンディー:「フレディってば!」
フレドリック:「はいはい、愛してるよサンディー」
リオ:「ねえ、変だよ。来た時には水なんて入ってなかったのに、どんどんかさが上がってる!」
カズト:「おい、あれ見えるか? 真ん中のとこ……月が映ってる真っ白いところから、何か出てきた…!」
リオ:「先輩達! 見てください! このプールおかしいです!」
フレドリック:「ごめんねリオくん、ちょっとこっち取り込んでるから」
リオ:「先輩!!」
カズト:「(リオを無理やり引っ張って)リオ! 離れろ!! あれ【腕】だ!! こっちに伸びてくる!!」
リオ:「わっ! え? ……あ! 危ない!!!」
サンディー:「だから! ……え? ……うわっ!」
サンディー、プールから伸びた腕に引きずり込まれる
サンディー:「…!? な、なに…!? わああああぁぁ…(溺れてゆく)」
フレドリック:「え? !? サンディー!?」
サンディー:「(溺れながら)…たす、けて………フレ……ディ……っ…」
 
ジュリアン:『よく来てくれたね……』
サンディー:『誰……? なんで、僕を……』


○ジュリアンの世界

ジュリアン:(N)僕は、月に魅入られて死んだ。
 
ジュリアン:(N)物心ついた頃から、美しいものに執着しすぎるところがあるのは、自分でも何となくわかっていた。
 でも、別に何でもかんでも手に入れたかったわけではない。
 その日はただ、……ただ眺めていたかっただけだったんだ。
 寮の窓から見えた月が、あまりに美しかったから。……だから、もっと近くで。実物でなくてもいいから、もっと近くであの美しい月を見ていたかった。ただ、それだけだったのに……。
 
ジュリアン:(N)出来心で忍び込んだ旧校舎のプールには、誰も使っていないのに、誰も管理をしないから、いつから入っているのかもわからない汚い水で満たされていた。
 それでもそこに映る月は美しかった。
 あまりにも美しくて……【月】が僕を誘うのを、拒めなかった。
 
ジュリアン:(N)僕は、月に取り込まれた。
 一瞬の気の迷いさえなければ、こんなことにはならなかったのに……。
 もう、戻ることはできなくなってしまった。


サンディー:『だからって……なんで僕を……?』
ジュリアン:『僕は君に嫉妬していた。生きてさえいれば、一番美しいのは僕だったのに。なぜ君に取って代わられなければいけないんだと、毎日毎日、君への憎しみばかりが募っていった』
サンディー:『意味がわからない。自分の気の迷いで勝手に死んだくせに、なんで僕が憎まれなきゃいけないわけ?』
ジュリアン:『君も同じじゃないか』
サンディー:『……え?』
ジュリアン:『あの新入生が、君に何をしたというんだい? あの子はただの良い子だ。ただ美しいというだけで、何一つ悪いことなどしていないだろう?』
サンディー:『それは………』
ジュリアン:『……ほら、僕達は同じだ』
サンディー:『は……?』
ジュリアン:『僕と君の嫉妬の心がシンクロした時……言葉にならないほど心地が良かった』
サンディー:『………』
ジュリアン:『【こちら側】に来てから、他の誰かと共鳴することができるなんて思わなかった。……君の心に取り入っているうちに、僕はだんだんその心地良さに溺れていった。君とシンクロしている嫉妬の心は、………【憎しみ】から、【愛】に変わっていたんだ』
サンディー:『……待ってよ……ねえ……僕をどうするつもりなの………?』
ジュリアン:『(笑う)』


○戻・旧校舎プール(夜)

サンディー:「(溺れながら)…助けて……! フレディ……フレドリック……! お願い………助けて……!」
フレドリック:「あ……あぁ………」
サンディー:「(溺れながら)……助け……て…」
フレドリック:「僕は……僕は泳げないんだ」
リオ:「え……?」
カズト:「おい、おまえ……」
フレドリック:「む、無理、無理無理無理! 無理だ!! うわあああああああああ!!」
フレドリック、脱走する
リオ:「嘘でしょ!?」
カズト:「待て!! 逃げんな!!!」
サンディー:「フレ……ディ………………(溺れてゆく)」
リオ:「! カズト、どうしよう!?」
カズト:「……ほっとくわけにいかねーだろ!!」
リオ:「う、うん! 何とかしなきゃ……! 何か……何か掴まれるもの…!」
カズト:「俺達が助けてやっから待ってろ!!」
リオ:「あ! あの木の棒、届かないかな!」
カズト:「短すぎないか?」
リオ:「やってみる!」
カズト:「あ、おい…!」
リオ:「お願い……届いて……!」
 
ジュリアン:『邪魔をするな』
 
カズト:(…? !! 波が襲ってくる!!)
 
カズト:「リオ! だめだ!! 逃げるぞ!!」
リオ:「え!? でも!!」
カズト:「(無理やり引っ張って)いいから来るんだ!!」
リオ:「あの人が!」
カズト:「………無理だ。…諦めるんだ!!」
リオ:「そんな……」
カズト:「……俺は必ずおまえを守るって決めたから。今は逃げるんだ!!」
リオ:「カズト……」


○翌・校舎内・1年生教室(朝)

リオ:「……おはよう。ねえ、なんで今日は先に学校行っちゃったの? …昨日あんなことがあったから……不安だし、心配だし……一緒に行きたかったんだけどな…」
カズト:「ごめん…」
リオ:「いいんだけど……」
カズト:「それより、この騒ぎ……何だか知ってるか?」
リオ:「昨日の、……プールに引きずり込まれた先輩の件じゃないの……?」
カズト:「それはまだ『行方不明』扱いで、捜索願いが出されてるだけらしい」
リオ:「え……じゃあ、この騒ぎは何……?」
カズト:「………………今朝、『新校舎』の、今俺達が授業で使っている新しいプールで、………生徒の死体が発見されたって」
リオ:「………………え……?」
カズト:「……あの最低野郎だった先輩だ」
リオ:「………!」
カズト:「リオ……」
リオ:「……」
カズト:「……あの時俺達が……俺が、あいつを助けてやれれば、……こんなことには、ならなかったのかな……?」
リオ:「カズト……っ!」


○タイトルバック

リオ:(N)その日、即使用中止となった新校舎のプールは、水が全て抜かれると………昼だというのに、彼が浮かんでいた場所に、……まるで水面に映っているように、ゆらゆらと波を打って、月が揺れていた。


ジュリアン:【Last moon】――最後の月に魅入られたのは、誰?


END
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