フリー声劇台本〜モーリスハウスシリーズ〜

摩訶子

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Trust rose (約30分 男4(内3人は少年で男女不問))

後半パート

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○同・ライブラリー(夜)

リチャード:「………今、何と言ったのですか…?」
ジェイク:「………」
リチャード:「ジェイクくん! ねえ、今何て……!?」
ジェイク:「………昨日、あいつらに……あの二人に………………アシュリー先輩が、殺された」
リチャード:「そんな………まさか………」
ジェイク:「本当なんだよ!! リチャード先生! 信じて!!」
リチャード:「………」
ジェイク:「あの二人は、できてる…誰が見たってそうだ。……きっと、デミアンの奴がアシュリー先輩に見とれてるのをマーティンが嫉妬して……それで痴話喧嘩にでもなって……結局、あの人がいるから二人の仲が拗れるとか…そんな結論に落ち着いたんだ」
リチャード:「だからって……そんな………」
ジェイク:「俺だって信じたくない……でも、本当に………本当なんだ」
リチャード:「………君の話を信じるなら……彼の遺体は、今どこに…?」
ジェイク:「………………冷凍庫」
リチャード:「……!」
ジェイク:「………腐敗しないように、だって…」
リチャード:「…………昨日の夜から、ずっと…冷凍庫に、入ってるんですね………それじゃ……確かに………」
ジェイク:「………………」
リチャード:「…警察を呼ばずに、私のところへ来たのは、なぜ?」
ジェイク:「あいつらが、そうしろって………」
リチャード:「でも! いくらでも隙はあったはずです! 学校には他の先生方だっていたし、すぐに警察を呼ぶことだって…」
ジェイク:「警察が来ちゃったら!」
リチャード:「………?」
ジェイク:「………警察が来ちゃったら………………全部……現実になっちゃう……から…」
リチャード:「………」
ジェイク:「……っ…」
リチャード:「君も……本当は、…信じたくないんですよね」
ジェイク:「……(泣きながら)…死んでるなんて、思えなかったんだ………いつもと、同じようにしか見えなかった……」
リチャード:「………」
ジェイク:「…あの人は、……芝居が上手いから……………きっと、これも芝居なんだって………そのうち目あけて、……『芝居っていうのは、こうやるんだよ』って、……いつもみたいに、俺のこと小馬鹿にしたように、笑ってくれるんだって、………そう思って、いたかったから………」
リチャード:「……彼はもう戻って来ないけれど………君が人の道に戻るのは、まだ、間に合います」
ジェイク:「………」
リチャード:「手錠を外して! 今からすぐに警察に…」
デミアン:「残念~。もう間に合わないのでした」
ジェイク:「!?」
マーティン:「先生、怪しい動きをしたら、このナイフがジェイクの喉を突き刺しますよ」
リチャード:「君達………」
マーティン:「お待たせしてすみません。デミアンのやつがメイクにこだわりすぎて、無駄に時間がかかってしまって」
デミアン:「無駄じゃないし! 先生見て~このドレス、ぼくにぴったりでしょ?」
リチャード:「ドレス……?」
マーティン:「僕達は、表向きは演劇部なので」
デミアン:「最後はやっぱり演劇で締めなきゃでしょ?」
ジェイク:「……先生、ごめん……もう無理だ………もう、全部こいつらの思い通りに進んでいくんだ…」
リチャード:「………ねえ、こんな時に引っ掛かることでもないでしょうが、表向きは演劇部って、どういう意味なんです?」
デミアン:「えー? 演劇部だと思ってるのなんて、最初からジェイクだけじゃないの?」
ジェイク:「………は?」
マーティン:「僕達たちの本当の名前は、演劇部でも同好会でもなく、『trust rose(トラスト・ローズ)』。美しいものを愛し、憐れみ、慈しみ、美しいものだけに命を捧げるという素晴らしいサークルです」
ジェイク:「は? 何だよそのふざけたサークル……俺はそんなもんに入った覚えはない!! 呼び名なんて何だっていいけど、俺はあの人のいる演劇部に入ったんだ!!」
デミアン:「ならいいじゃん? アシュリーが在籍してたのは本当なんだし」
マーティン:「本人はそのつもりはなかったみたいだけどな」
ジェイク:「お前ら………」
デミアン:「もう、良い子にしててよジェイク。死にたくないからぼく達の言うこと聞くんでしょ?」
ジェイク:「うるさい!! もうそんなこと知るか!! 俺は…」
マーティン:「それなら、僕達の言うことを聞いて良い子にしていたら、アシュリーを生き返らせてあげるよ」
ジェイク:「………え?」
リチャード:「は…? 君は一体何を言って……」
マーティン:「彼は今、芝居をしているだけなのさ。主役の僕達を引き立たせるために、一生懸命死体の役をやってくれているんだよ」
ジェイク:「………」
リチャード:「何を言っているんですか! ジェイクくん、わかっているでしょう!? 昨日の夜から冷凍庫に入っているっていうのがどういうことなのか…」
ジェイク:「…生きてるのか?」
リチャード:「……!?」
デミアン:「そうだよぉ? お前がちゃんと良い子にしてたら、アシュリーも生きて帰ってくるよ」
ジェイク:「………」
リチャード:「ジェイクくん……」
ジェイク:「わかりました……先輩方の…言うことを…聞いて………良い子に、します…」
リチャード:「………」
マーティン:「良い子だ。それじゃあ、命令を言うよ。……僕達はこれから最後の劇を上演するから、観客のリチャード先生と一緒に終演まで見届けて、……劇が終わって僕達が死んだら、お前が先生を殺すこと」
リチャード:「………」
マーティン:「いいかい、ジェイク? 僕達がリチャード先生を呼びに行かせたのは、舞台を上演するのに観客が必要だからだ。教員の中で一番美しいのはリチャード先生だから、彼が適任だと思って、名誉ある僕らの観客に選んだ。そしてお前は、僕らの後継者なんだよ。美しさを求める僕ら『trust rose(トラスト・ローズ)』が、散々ふるいにかけた中で唯一仲間に入れるに相応しいと認めたのがお前だ。お前は自覚していないようだが、僕達と並んでもそれほど見劣りしない程の美しさを、お前も持っているんだからな。だからお前が責任を持って、僕達のことを知りすぎたリチャード先生を、観客の仕事が全部終わってからその手で始末するんだ。わかったね?」
リチャード:「……何だよ、その話………何もかもがどうかしている………」
ジェイク:「………わかりました」
リチャード:「…ジェイクくん………」
デミアン:「先生、動いたらジェイクが先にナイフで死んじゃうよ~」
リチャード:「………」
ジェイク:「……約束、守ってくれるんですよね?」
マーティン:「勿論さ」
デミアン:「さあ、もう夜だ。会場の食堂に移動するよ。……そこにアシュリーもいるしね」
ジェイク:「………」


○同・食堂(夜)

デミアン:「到着。舞台のセッティングももうできてるからね~」
マーティン:「…さてと、それじゃあ……最後の出演者を連れて来よう」
ジェイク:「…!」
デミアン:「重いと思うよ? 一人で運べる?」
マーティン:「大丈夫。僕はこう見えて鍛えているからね」
デミアン:「わぁ、さすがぼくのマーティン」
マーティン:「……ジェイク、このナイフは今からお前が持つんだ」
ジェイク:「え…」
マーティン:「僕がお前にしていたのと同じように、お前が先生の喉元に向けて持つんだよ。……ほら、こうやって」
リチャード:「うわっ!!」
ジェイク:「! い、嫌だ……」
デミアン:「あれ? ジェイク、言うこと聞かないの?」
ジェイク:「………っ! ……き、聞きます」
リチャード:「………」
ジェイク:「ごめんなさい……」
マーティン:「(軽く笑いながら)よし、連れてくるよ」

 少し間

マーティン:「はい、お待たせ」
リチャード:「!! ア、アシュリーくん…………こんな………こんな………あぁぁぁ……」
ジェイク:「………生きてるんだ……この人は、生きてる……」
リチャード:「ジェイクくん、目を覚まして!! 生きていないのなんて一目でわかる!!」
ジェイク:「生きてるんだ……俺が言うことを聞いて良い子にしていれば、……また目をあけてくれる………」
リチャード:「ジェイクくん!!!」
デミアン:「せんせーはさっきから命知らずだなぁ。動いたら死んじゃうって言ってるのに」
マーティン:「デミアン、出番だ。僕達は舞台に上がるよ。…出演者全員でね」
デミアン:「はーい」
リチャード:「何だよこれ………何もかもが狂ってる………全員が狂ってる………助けてくれ………誰か………」
ジェイク:「先生…ごめんね…」
リチャード:「………」

  × × ×

マーティン:「あぁ、美しい姫よ。君に出会えて僕は幸せだ。これは本当のことだよ」
デミアン:「えぇ。わかっているわ、麗しの王子様。私もあなたのような美しい方に出会えて幸せなのは事実。嘘じゃないわ」
マーティン:「…でも、僕達は恋人同士になるわけではない」
デミアン:「あなたのことは好きよ。でもそれは恋じゃない。私達はそういう意味で愛し合っていない」
マーティン:「僕達を繋いでいるのは、『一蓮托生』という名の絆」
デミアン:「それが恋愛よりも下だなんて、誰が決めたのかしら?」
マーティン:「僕達は共に……同じものを愛する仲間」
デミアン:「私もあなたも、この世で最も美しいものを愛しているの」
マーティン:「あぁ、僕は『彼』以上に美しいものを何も知らない。君もそうだろう?」
デミアン:「えぇ、勿論よ。この世で最も美しいのは、『彼』に他ならないわ」
マーティン:「僕達は共に、美しさというものに対する異常な執着を持って生まれてしまった……それは言わば、同じ病に侵されたもの同士だ」
デミアン:「誰にも理解されない、…こんな恐ろしい病を抱えているのは、きっと私達だけ」
マーティン:「だから僕は君が大切だ。君だけが僕の唯一の『同志』なのだから」
デミアン:「同じ運命を持ったあなたと私には、特別な絆がある」
マーティン:「でも僕達は愛し合ってなどいない」
デミアン:「私が愛しているのは」
マーティン:「僕が愛しているのは」
二人:「彼の美しさ」
デミアン:「それだけよ」
マーティン:「そして僕達は、この世の最高の美に、己の命を捧げることを喜びとする特殊な人間だ」
デミアン:「…これで、彼の美しさは、永久に私達だけのものになる」
マーティン:「共に行こう。……唯一無二の、運命共同体よ」

  × × ×

リチャード:(N)二人は、食堂の特設舞台の上で、互いの心臓を貫いて、嬉しそうに命を絶った。
 私はもう、現実とは思えない狂った世界を目の当たりにして、ほとんど人の心を失っていた。
 私とここにいるのは、完全に精神操作をさるてしまったジェイクだけで……つまりこの後の私の行く末は、この壊れたジェイクに、二人の遺した命令によって殺されるという、……そんな結末しか残っていないのだろう。

リチャード:(N)そう思っていたのだけれど………。

  × × ×

ジェイク:「……先生、ごめんね。怖かったでしょう」
リチャード:「………え?」
ジェイク:「……あいつら、死んだんだよね?」
リチャード:「……(まだ夢現な感じで)…君は………これから…私を殺すんじゃ…ないのかい……?」
ジェイク:「……なぜ?」
リチャード:「……彼らの……命令で…」
ジェイク:「…あいつら、死んだんだから、命令なんてなくなったよ」
リチャード:「………」
ジェイク:「…死んだら、何もなくなるんだからさ」
リチャード:「………」
ジェイク:「永遠の美しさなんて、あるわけないだろ。……(床に膝をついて)冷たくなってもこんなに綺麗だけど……この人は…生きてる時の方がずっと綺麗だったに決まってるだろ……っ…」
リチャード:「………! …ジェイク、くん……」
ジェイク:「演劇に興味を持ち始めた、入学したばかりの俺に、楽しそうに芝居を教えてくれた、あの頃の笑顔が………一番…美しかったんだ………」
リチャード:「……君…おかしくなってたわけじゃ………」
ジェイク:「……先生が、『まだ間に合う』って言ってくれた時、一瞬だけ目が覚めたんだ」
リチャード:「………」
ジェイク:「その後すぐに身動きが取れなくなって、もうだめなのかもって思ってたけど、……心のどこかでは、まだ諦めてなかった。勿論、この人が生きているかもなんて、思ってなかったよ」
リチャード:「じゃあ……」
ジェイク:「…俺は、あんなわけわかんねー信仰心みたいなもんに、この人を渡すことなんて絶対に嫌だから。絶対に…俺が、まっとうな人間として、この人を埋葬してやらなきゃいけないから……! だから、俺は殺されるわけにも殺すわけにもいかなかったんだ!」
リチャード:「………」
ジェイク:「……劇が終われば、あいつらは勝手に死ぬつもりだから……それさえ乗り切れば、俺も先生も助かる。そう思って、あいつらの言う通りにして……全部が終わるのを待ってた」
リチャード:「ジェイクくん……ごめん………私は、先生なのに…最後まで何もできなかった……」

リチャード:(N)少年たちの燃え盛るような命の衝突の前で、自分という大人がどれだけ無力なのかを、思い知らされたようだった。

ジェイク:「…これで、よかったんだよね……? アシュリー先輩………」


○星空の下・???

デミアン:「ねえマーティン? ぼくたちはどうして、あの人に会えないんだろうね? こんなに探しているのに。こんなに求めているのに」
マーティン:「僕達は彼の美しさに命を捧げた。なのに彼に会えないのなら………僕達の命は、どこにあるのだろうか?」


END
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