フリー声劇台本〜1万文字以内短編〜

摩訶子

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1万文字以内短編

永遠にそこにいろ(約20分 男2女2)

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ジャンル【サスペンス・ホラー】

配役 4名
有紗(ありさ)女性・ 高校生くらい
美歩(みほ) 女性・高校生くらい
大地(だいち) 男性・高校生くらい
爽太(そうた) 男性・高校生くらい



○暗闇の空間(有紗の夢の中)

囁く声(美歩役の方):『エイエンニ、ココニイロ……エイエンニ、ココニイロ……』

有紗N:『…誰かの声が聴こえる。正確には、聴こえているわけではない。音という概念を持たず、言葉の意味だけが重く心にのしかかってくるようで、誰の声なのか……誰の言葉なのか、わからない』

有紗:『誰よ! 私に文句があるのなら、堂々と出てきなさい! 私が一声かければ、あなた一人なんか袋叩きにできる人数を集められるわ。…だから怖くて出てこられないのでしょう? 可哀想にね』

爽太:『有紗………』


○駅前

美歩:「おはよう有紗!」
有紗:「遅い。私を待たせるなんて、随分偉くなったのね」
大地:「おいおい、友達に偉いも偉くないもないだろ? 今日はこうしてみんなでお前の誕生日を祝いに来てやってるんだ! もっと嬉しそうにしたっていいだろ~? なぁ爽太?」
爽太:「…なんで僕に振るの? 僕は別に嬉しくないし、今すぐ帰ったっていいんだけど?」
美歩:「ま、まあまあ、みんな! 今日は有紗の誕生日なんだから、ちょっとぐらい有紗のわがままも許してあげよう! ねっ?」
大地:「今日だけじゃない! いつも許してやってんだよ! とくに俺は~!」
美歩:「そりゃあ大地は有紗の彼氏なんだから当然じゃない」
大地:「召使いの間違いじゃねぇのか?」
美歩:「あはは……」
有紗:「………」
美歩:「…? 有紗、どうかした?」
有紗:「……いいえ。ちょっと最近変な声が……耳鳴りがうるさくて。それで、どこに行くっていうの?」
美歩:「今日はね、レンタルルームを用意してるの。そこでみんなでバースデーパーティーしようと思って!」
大地:「美歩すげぇ張り切って準備してたんだぞ?  ちゃんと感謝しろよ?」
有紗:「なんであんたに言われなきゃいけないのよ? 私に指図するんじゃないわ」
大地:「へいへい、すいませんでしたーお姫様ー。あ~、俺って苦労人!」
有紗:「何ですって?」
美歩:「ま、まあまあまあ…」
爽太:「有紗。いい加減にしなよ。みんなこうして有紗のお祝いしようって言って休みの日に集まってるんだ。こっちに祝う気持ちがなくなれば、パーティーなんてそれまでだよ。僕はここで失礼する」
美歩:「ちょっと、爽太…!」
有紗:「えぇ。どうぞ帰って頂戴。私だって誕生日にわざわざこんな陰気な顔なんか見たくないわ」
美歩:「有紗っ!」
有紗:「だいたい、あなたって大地の親友ってだけで、別に私とも美歩とも関係ないじゃない。何でいつも付いてくるのかわからないのよね」
美歩:「有紗! そんなこと言っちゃ…」
大地:「なぁ~に言ってんだよ。俺らいつもこの4人でつるんでんだろ。複雑なこと考えなくていいんだって! ほら爽太もヘソ曲げんなよ~。仲良くお姫様のバースデーパーティーしようじゃないか♪」
爽太:「………」
有紗:「……ふんっ。ここであれこれ言い返したら、私が子供みたいじゃない。行くなら早く行きましょう」
美歩:「え? う、うん! そうだね!」
大地:「はぁ~い、お姫様1名様ご案内~」
美歩:「さすが大地。やっぱ彼氏は違うね~。ね、爽太?」
爽太:「……だから、僕に振らないでくれる?」


○目的地最寄り駅

美歩:「最寄り駅に到着~! ここから少し歩くよ」
有紗:「ねえ、レンタルルームなんてその辺にいくらでもあるんじゃないの? 何でこんなに遠くまで来る必要があるのよ?」
大地:「あちゃ~、電車乗せられすぎてご機嫌損ねちまったぜ」
有紗:「うるさいわね」
美歩:「えーっと……それは着いてからのお楽しみだよ! その辺のレンタルルームとはちょっと違うの。特別な場所を用意してるんだから」
有紗:「特別?」
美歩:「そう。……だって、今日は特別な日だから」
爽太:「………」
大地:「なに妙な顔してんだよ爽太! 特別な日だろ? 有紗が生まれた日なんだからな」
有紗:「あんたも大袈裟よ。恥ずかしいからやめて」
大地:「怒られちゃったー」
美歩:「もうすぐ着くよ。ごめんね、主役をこんなに歩かせて」
大地:「それはいいんだけどよ、」
有紗:「なんであんたが答えるのよ」
大地:「いや、それより随分と寂れた所に来たもんだなぁと思ってさ」
爽太:「…そういえば、急に人けがなくなってきたね」
美歩:「あ! 着いたよ! ここ、ここ」
有紗:「え? ちょっと、着いたってどういうことよ? レンタルルームなんてどこにもないじゃない」
美歩:「あのね、レンタルルームっていうか、みたいなものっていうか、まあ、中に入っちゃえば似たようなものなの!」
大地:「そっか! なら入ろうぜ!」
有紗:「入るってどこによ?」
美歩:「だからぁ、これだよ?」
有紗:「これって……この倉庫のこと言ってるの?」
美歩:「うん!」
有紗:「なんで倉庫なのよ! ちょっと待ってよ、ちゃんと説明して…」
大地:「あ、俺もう入っちゃったけど」
有紗:「バカ。何してんのよ、早く戻って来なさい!」
美歩:「戻る必要なんてないよ? パーティー会場はここなんだから」
有紗:「は? ちょっと美歩、あんたさっきから調子に乗ってんじゃないの?」
美歩:「はぁ~い、入ってくださぁい!(ドン!と有紗を押す)」
有紗:「きゃあ!」
大地:「おっ、と! ナイスキャッチ俺!」
美歩:「……それじゃ、有紗、大地。………楽しいお誕生日を過ごしてね」
大地:「…?」
有紗:「美歩…? 美歩、ちょっと、何してるのよ! 何でドア閉めるの!? 美歩! 美歩!!」
大地:「えっ! な、何!? ドア閉められたのか!? 何で!? おい、美歩!? 爽太!?」
有紗:「開けなさい!!」

爽太:『…有紗』

有紗:「!? 爽太…?」

爽太:『…反省しろ。自分の愚かさを』

有紗:「……え…?」
大地:「美歩! 爽太! おぉい!! ………マジかよ……マジでアイツら……俺らを閉じ込めやがった……?」
有紗:「なん……でよ……なんで? 何でなのよ?」
大地:「有紗?」
有紗:「意味がわからない! 何で私が美歩にこんなことされなきゃいけないっていうの!?」
大地:「おい、落ち着けって」
有紗:「何で!? 私はあの子に感謝こそされても、恨まれる覚えなんて何もないわ!!」
大地:「…感謝……?」
有紗:「そうよ! 子供の頃から、あの子はずっと、私のおかげでいい生活が出来てるのよ!」
大地:「………」
有紗:「小学校の時、あの子の家の工場が倒産しかけて、私の父の会社からの融資で何とか持ち直したの。一家で路頭に迷わずに済んだ上、それをきっかけに私とお友達になれたことで、それまで学校で虐められていたあの子が虐めにも合わなくなったのよ」
大地:「………」
有紗:「中学も、高校も、父の力添えがなかったら私と同じ学校になんて入れなかったわ。美歩は私と一緒にいられることでこんなに幸せに過ごしてこられたのよ! なのに何で……? 何でその私に、美歩がこんなことをするっていうのよ!?」
大地:「………落ち着け、有紗」
有紗:「なによ偉そうに!」
大地:「大丈夫だ。一人で閉じ込められたわけじゃないだろう? …美歩はお前のことを本気で恨んでるわけじゃない。本気だったら、お前を一人にしたはずだ」
有紗:「……それは…」
大地:「俺がいるだろう? 二人なら必ずここから出られる。いくら彼氏だからって、関係ない奴のことまで一緒に見殺しにするほどあいつらも狂った奴らじゃないさ」
有紗:「………そうね。ごめんなさい、大騒ぎして」
大地:「わぁー! 謝った! 有紗様が謝ったぞー!」
有紗:「……バカ」
大地:「はは。落ち着いたみたいだな。さてと、大丈夫だとは言ったものの、あいつらが飽きるのをただボケっと待ってても仕方ない。何か自力で脱出できる方法がないか、ちょっとその辺見てくるよ」
有紗:「わかった。怪我とかするんじゃないわよ」

少し間

囁く声(美歩役の方):『エイエンニ、ココニイロ……』

有紗:「…!?」

有紗N:『ここに……永遠に………?』

美歩(幼少):『有紗ちゃん!! 怖いよぉぉ!! 美歩を一人にしないでええええ!!』

有紗:「!! 嫌……嫌……っ! 助けて! 大地! 大地ぃぃ!!」
大地:「はぁーい?」
有紗:「! 大地!!」
大地:「なんですか~っと……!(有紗を殴る)」
有紗:「(殴られる)…っ!! ………なん………で……? 」
大地:「なんでなんでなんで……お前今日そればっかりですねえ!?」
有紗:「……っ…」
大地:「そんなに知りたきゃ教えてやるよ! 知らねえのお前だけなんだからなあ!!」
有紗:「………?…」
大地:「俺がお前の彼氏だって? 本気でそう思ってたのかめでてえ奴だなテメェはよお! ふざけんな。俺が大事なのは、ガキの頃からずっと美歩だけなんだよ!!」
有紗:「……!? ……な…に……言って…(咳き込む)」
大地:「…俺が何も知らないとでも思ってんのか? ……【あの日】の翌日、俺は美歩に、全部聞いたんだ……」


○幼少時代・公園

有紗(幼少):「もういいかーい」
美歩(幼少):「まあだだよー」

少し間

有紗(幼少):「もういいかーい」
美歩(幼少):「もういいよー」


○幼少時代・物置倉庫内

美歩(幼少):「あーあ…かくれんぼ嫌なのに、有紗ちゃんがやるっていったら、みんなやろうやろうって言うんだもん。……はぁ、この倉庫怖いよぉ。こんな所に隠れるんじゃなかった。早く誰か来ないかな。鬼の有紗ちゃん、早く見つけてくれないかな…」
有紗(幼少):「あ、美歩みーつけた」
美歩(幼少):「有紗ちゃん! よかったぁ。じゃあ次は美歩が鬼ね。みんなの所に…」
有紗(幼少):「見つけたけど、見つけなかったことにする」
美歩(幼少):「え……?」
有紗(幼少):「わたし今、面白い遊びを思いついたの」
美歩(幼少):「え? え……?」
有紗(幼少):「あのね、美歩はずっとここにいるの!」
美歩(幼少):「……え? それ、どういうこと……?」
有紗(幼少):「わたしが『美歩は先に帰っちゃったのかもね』って言ったら、みんな『そうだね!』って言ってお家に帰っちゃうんじゃないかなって、今ふと思ったの!」
美歩(幼少):「………」
有紗(幼少):「だからやってみるの。いい? 美歩はまだ見つかってないから、ずっとここに隠れてるの」
美歩(幼少):「で、でも……みんな帰っちゃった後は……? 美歩も、帰っていいの……?」
有紗(幼少):「んーと………だめ!」
美歩(幼少):「………」
有紗(幼少):「みんなが帰っても、美歩だけ隠れたまま、ずっとここに居たら面白くない?」
美歩(幼少):「有紗ちゃん……」
有紗(幼少):「まあでもどうせ、夜遅くなったら大人達が探しに来ちゃうと思うよ? つまんないけど」
美歩(幼少):「………」
有紗(幼少):「そしたら美歩は、私に言われたって言っちゃだめだからね! かくれんぼが続いてると思って勝手に隠れ続けてたんだって言うのよ? わかった?」
美歩(幼少):「そんなの………」
有紗(幼少):「約束。もしやぶったら、……もう美歩のことは【しらない】から」
美歩(幼少):「! ……や、やだ……有紗ちゃん………」
有紗(幼少):「じゃ、永遠にここにいてね~♪」
美歩(幼少):「待って……待ってよ………怖いよ、……有紗ちゃん、お願い………美歩を一人にしないでえええええ!!」
有紗(幼少):「(遠くで)ねーみんなー、美歩もう先に帰っちゃったんじゃないかなー?」
美歩(幼少):「………!」


○翌日・小学校

大地(幼少):「美歩! 有紗から聞いたぞ! お前昨日夜遅くまで一人で公園の倉庫に隠れてたんだって!?」
美歩(幼少):「大地………」
大地(幼少):「なんでそんなバカなまねしたんだよ!? お前のことだから、何か事情があったんだろ!?」
美歩(幼少):「………」
有紗(幼少):「大地~! 行くわよ~!」
大地(幼少):「へーい! …(小声で)学校終わったら公園に来い。ちゃんと話してくれよ?」
美歩(幼少):「(泣きながら)大地………」


○幼少時代・公園

大地(幼少):「ざっけんな! 何でそこまで言いなりになってんだよ!? 今から先生に言いに行くぞ!」
美歩(幼少):「待って! だめ!」
大地(幼少):「なんで!?」
美歩(幼少):「わたしは……有紗ちゃんがいないとだめなの…。……今はまだ、待って」
大地(幼少):「………」
美歩(幼少):「今は、子供だから何もできないけど……もう少し大人になったら、有紗ちゃんがいなくても、自分の力で生きていけるようになるから。それまでは、このまま……」
大地(幼少):「…大人になるまでなんて、待ってられねえよ」
美歩(幼少):「でもね、大人になったら……もしかしたら、有紗ちゃんも変わるかもしれない」
大地(幼少):「………」
美歩(幼少):「今は、有紗ちゃんも子供だから、よくわからないでいじわるしちゃうだけかもしれない。……もう少し大きくなったら、有紗ちゃんも本当の……優しい有紗ちゃんになってくれるかもしれないから」
大地(幼少):「……それまで黙って見てろってのか?」
美歩(幼少):「変わらないってわかったら、大人になる前でもいい。……その時は、私が自分の手で復讐する。だからその時まで、わたしたちは有紗ちゃんに嘘をつく」
大地(幼少):「……それで、いいんだな?」


○現代・倉庫内

大地:「だから俺達は、今日までずっとお前を見てきた。お前が成長して、美歩の言う『本来の優しい有紗』になるのを、ずっと待ってたんだ」
有紗:「………」
大地:「もういくら待っても無駄だと、俺もあいつもわかった。大人になるにはまだ少し早いが、…もう充分だろ? ……ここで俺と二人になった時にお前が少しでも反省や後悔を見せれば、美歩に連絡して、すぐに解放してやってもいいかと思ってたけど………結局、お前の口から出たのは、一番聞きたくない言葉だった」
有紗:「………私、は……」
大地:「……お前はどうせ、ガキの頃のかくれんぼのことなんか覚えてもいないんだろう? 美歩にとってどんなに恐ろしい夜でも、お前にとっては記憶の片隅にも残らない、どうでもいいことだったんだろうな」
有紗:「………忘れて、ない………」

囁く声(美歩役の方):『エイエンニ、ココニイロ……』

有紗N:『私は……忘れてない………あの声は………』

囁く声(美歩役の方):『エイエンニ、ココニイロ……』

一拍置いて

美歩:「大地、出てきて」
大地:「遅ぇよ」
美歩:「ごめん。…ありがとう」
有紗:「………」
大地:「じゃあな、有紗。……お前は永遠にここに居ろ」


○一人になった倉庫内

有紗N:『……今、何時なんだろう…?』

少し間

有紗N:『…あの時の美歩も、こんな気持ちだったのかな……? …いや、あんなに小さかったんだから、もっとずっと……怖かったんだろうな…』

有紗:「美歩……」

美歩(幼少):『有紗ちゃん! 怖いよぉ! 美歩を一人にしないでえええ!』

有紗:「美歩……ごめん………ごめんね………っ…」

少し間

爽太:「…有紗」
有紗:「……!?」
爽太:「……ボロボロ。…立てる?」
有紗:「爽太……」
爽太:「…ひどい顔」
有紗:「爽太……助けに、来てくれたの…?」
爽太:「……僕は、……その顔が見たかった」
有紗:「……え…?」
爽太:「…きっと、美歩も、大地も……これが見たかったんだろうな」
有紗:「……な、何……?」
爽太:「有紗」
有紗:「嫌……来ないで………あなたも、私が憎かったのね……? ……ふふ、ふふふっ………みんな、私に復讐したかったのか…。関係ないと思ってた爽太にまで、憎まれるようなことを何かしてたんだ。…そっか。……私は、それだけのことをしてたんだね」
爽太:「………………違う」
有紗:「…?」
爽太:「…ねえ、君さ。さっきも、今朝も、僕のこと【関係ない】って言ったよね。……正直、悲しかったな」
有紗:「…爽太……?」
爽太:「僕にとって人生が変えられたことでも、君にとってはすぐに忘れちゃうようなことなんだよね。…わかってても、やっぱりちょっと、悲しくなるな」
有紗:「…え……?」
爽太:「覚えてない? 初めて話した日のこと。中学の時、屋上で……」


○中学時代・学校の屋上

有紗:「そこの男子! 何をしているの!」
爽太:「うるさい!」
有紗:「あ…。あなたよく見たら、私の彼の友達じゃない!」
爽太:「だったら何だ」
有紗:「友達が死んだら彼が悲しむでしょ! そんなの私が許さないわ!」
爽太:「関係ないだろ」
有紗:「関係あるわよ」
爽太:「君らに僕の気持ちなんてわからない! 虐めにあったことのない君らになんて!」
有紗:「理由は虐めってことね。それなら反論の余地はあるわ。あなたは虐められてるにしても、少なくとも一人は友達がいるんだから、死ななくてもいいじゃない」
爽太:「僕はクラス中から虐められてるんだ! よそのクラスの大地1人だけいたって、何も変わらないんだよ!」
有紗:「スケールの小さい話ね。クラスどころか学校中から虐められてても立派に立ち直った子を知っているから、あなたなんてとても小さく見えるわ」
爽太:「君みたいな人間には、僕のこともその子のこともわからないよ!」
有紗:「あの子とあなたを一緒にしないで頂戴。こっちに戻ってくる気があれば、あの子の顔を見せてあげるわ。子供の頃、家が貧乏だからって学校中から虐められていたのに、たった一人友達ができただけで毎日ヘラヘラ笑えるようになった、私の自慢の友達の顔をね!」
爽太:「………」


○現代・倉庫内

爽太:「あの日から、僕らは何となく4人で一緒にいるようになった。君にとっては、僕は彼に付いてくるだけのおまけみたいなものだったのかもしれないけど」
有紗:「………」
爽太:「…僕は子供の頃の君達を知らないから、彼らに話を聞いた時は結構ショックを受けた。そんな復讐めいたことはやめろって言ってやるべきだったんだろうけど……君のいつもの自己中心的な、みんなを蔑ろにするような振る舞いは、確かに目に余る。……僕は君の本心を知っているから、……証明して欲しくて、二人に協力した。ここは僕の家の会社が管理している倉庫なんだ。最初から、誰も君を置き去りにするつもりはないよ」
有紗:「………」
爽太:「……君の泣き顔が見たかったなんて言ったら、まるで変態みたいだね。……でも、本当のことだから」
有紗:「…爽太………」


○数日後

有紗N:それから私達は、もう今までのように4人で仲良く一緒にいることはできなくなってしまったけれど……それは仕方のないことなのだと思う。子供だったら、また何事もなかったように一緒に過ごせるのかもしれないけれど、私達はもう、そんな純粋な歳ではない。
有紗N:エイエンニ、ココニイロ……あの声が、美歩だったのか、大地だったのか、それとも、私自身の声だったのか……わからないまま、もうあの声は聞こえなくなった。
有紗N:自分の愚かさで失ってしまった大切なものは、もう戻らないけれど………それでも、いま隣にいる、一番大切なものだけは。もう二度と傷付けない。私にできることは、きっとここから。

有紗:「ここから少しずつ、私も変わっていこう!」


END
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