28 / 32
本編2
大好き
しおりを挟むあとから乱入してきた有名な情報屋一名。
彼のせいで全員が一瞬にして固まったが、一番はじめに動き出したのは長男雄兄だった。
「お前!!どうやってここに入ったんだ!?許可してないぞ!」
結城さんを指さしながらそう叫ぶ。
「門番の子に普通に通してもらえたけど?なんて言ったってそこにいる優里くんと黒崎の友人だからね」
鼻高々とそう言う結城さん。今の状況……楽しんでますね?
そして混乱に陥る雄兄。
「いつから優里が…」「騙されているんだろうか」「偶然?いやそんなはずない…」などとブツブツ言っているようだが聞こえない聞こえない。
まあ実際、これまで両親や兄たちが一生懸命、俺が裏の道に進まなくていいようにいろんな所から隠してくれていた。
それなのに運命とでも言うのだろうか、結局はその世界へ自ら進もうとしているのだ。
彼らが頭を抱えるのも無理はない………ちょーっと過保護だけどね。
今までたくさん大事にされてきたんだよね、俺は。
でもこれは俺の人生。
今さら春樹と別れるなんて考えられないし、そもそも最初から戻れないところにいたんだ。
だからみんなと同じ世界で生きていこうと思うよ。
「父上、お母さん、雄兄、大地。大事なお話があります。聞いてください」
結城さんと言い争っている雄兄たちの方を向いて膝を正す。
すると俺に気づいた母が雄兄を止め、静かにさせてくれた。
「俺は今、春樹と付き合っています。春樹は同じ大学の医学部に通っていて、出会いは一応アジュの紹介でした」
「あら、天藍くんのお友達なの?」
母はにこにことそう尋ねた。
他の人たちはみんな無表情で俺の話を聞いている。
「そう。アジュも医学部だからね。でも、前に会ったことがあるらしい。父上、覚えてる?俺が血まみれの人を拾ってきたの。あれ、春樹だったんでしょ?」
「……そうだ」
父はそれだけ答えた。
「それがきっかけでね、アジュに紹介を頼んだんだって。そうでしょ、春樹」
「うん」
俺が春樹のほうを見ると彼は微笑んで頷く。
「どっちもお互いがそういう人だって知らなかったんだ、最初は。だから恋人になったのは偶然だよ」
そう断言すると雄兄はホッと息を吐いた。
「恋人に至るまでは…春樹に絆されたっていう感じだけど、今はちゃんと春樹が好き。一緒に住んでるし、デートも行くし、ずっと一緒だし…とにかくラブラブなの!みんなが心配するのもわかるし、反対したくなるのもわかるけど、俺は春樹が好きなの。だから、」
「あぁー!わかったよ!」
俺の言葉は雄兄によってさえぎられた。
「わかってる、優里が本気でそいつのことが好きなんだろうってのは見ただけでわかるよ。でもさ、心配なんだよ俺は。優里には幸せになって欲しいからさ、わかる?」
「うん」
そう俺が素直に頷くと雄兄はこちらに移動してきて俺の頭を撫でたあと、俺の隣で黙って正座している春樹の方を見た。
「おい、闇医者。覚悟は出来てんのか?」
「はい」
「命を懸けてでも守れよ」
「当然」
躊躇うことなくそう答えた春樹。うーん、好き。
雄兄は「ふん」と鼻をならしてもともと座っていたところに戻ると、父に
「俺は認める」
と宣言し、父は深く頷いた。
すると、春樹はいきなり俺のことを横からぎゅーっと抱きしめた。
「わっ」
「大好きだよ、優里」
みんなの前でやめてよ、恥ずかし……
「おい、俺の前でそういうことするなんて度胸あるなぁ」
不穏な空気を雄兄が醸し出し始めた。
「優里は俺のですから」
「まだそこまでは認めてない」
「は?」「あ?」
……えっと、認められたってことですか?
ーーーーーーー
その後、我が家はお寿司を大量に頼み、組員を巻き込んだお祭り騒ぎだった。
もともと大地とあかりちゃんの結婚祝いもあったけれど、「姫が相手を連れてきたんだからお祝いしないわけにはいかないでしょ!」だそうなので、より大規模になりました。
俺の別名ってうちが言い始めた訳じゃないよね?本気で俺のこと姫だと思ってないよね??
結城さんはというと、最初は"こいつなんでいるんだ?"という顔をされていたが今はみんなとわいわい騒いでいる。
俺もサーモンとえびをパクパクしながら、小さい頃からいる組員とお話ししている。楽しい。
すると母が近寄ってきた。
「ねえねえ、さっきの雄大、私より姑してなかった?」
「たしかに?」
「私は相手が誰であろうと優里が選んだんだからその人と付き合うのは賛成だったんだけどね。お父さんが息子は誰にもやらん精神で、それを雄大が受け継いだのよ。数日前の電話から大変だったんだから。相手は誰だって」
そう上品に笑って「素敵な人と出会えて良かったわね」と言い残して父の方へ去っていった。
そりゃ素敵に決まってますよ、だって俺にとって春樹は世界一ですから。
ずっとずっと一緒にいたい大好きな人。
あの時、助けなかったら知らない人のままだった。アジュがいなかったら出会わなかった。偶然が重なって……運命ってこういうことなのかもね。
「春樹」
すぐ隣にいる恋人に呼びかける。
「うん?」
こちらを向く姿すらもかっこいい。
「春樹、大好き!」
「俺も」
あいしてる、だってさ。
おわり
76
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説


顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!
小池 月
BL
男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。
それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。
ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。
ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。
★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★
性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪
11月27日完結しました✨✨
ありがとうございました☆

「じゃあ、別れるか」
万年青二三歳
BL
三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。
期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。
ケンカップル好きへ捧げます。
ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。

憧れのスローライフは計画的に
朝顔
BL
2022/09/14
後日談追加しました。
BLゲームの世界の悪役令息に憑依してしまった俺。
役目を全うして、婚約破棄から追放エンドを迎えた。
全て計画通りで、憧れのスローライフを手に入れたはずだった。
誰にも邪魔されない田舎暮らしで、孤独に生きていこうとしていたが、謎の男との出会いが全てを変えていく……。
◇ハッピーエンドを迎えた世界で、悪役令息だった主人公のその後のお話。
◇謎のイケメン神父様×恋に後ろ向きな元悪役令息
◇他サイトで投稿あり。

王様お許しください
nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。
気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。
性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。
メランコリック・ハートビート
おしゃべりマドレーヌ
BL
【幼い頃から一途に受けを好きな騎士団団長】×【頭が良すぎて周りに嫌われてる第二王子】
------------------------------------------------------
『王様、それでは、褒章として、我が伴侶にエレノア様をください!』
あの男が、アベルが、そんな事を言わなければ、エレノアは生涯ひとりで過ごすつもりだったのだ。誰にも迷惑をかけずに、ちゃんとわきまえて暮らすつもりだったのに。
-------------------------------------------------------
第二王子のエレノアは、アベルという騎士団団長と結婚する。そもそもアベルが戦で武功をあげた褒賞として、エレノアが欲しいと言ったせいなのだが、結婚してから一年。二人の間に身体の関係は無い。
幼いころからお互いを知っている二人がゆっくりと、両想いになる話。


俺は完璧な君の唯一の欠点
白兪
BL
進藤海斗は完璧だ。端正な顔立ち、優秀な頭脳、抜群の運動神経。皆から好かれ、敬わられている彼は性格も真っ直ぐだ。
そんな彼にも、唯一の欠点がある。
それは、平凡な俺に依存している事。
平凡な受けがスパダリ攻めに囲われて逃げられなくなっちゃうお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる