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本編2
実家へようこそ?
しおりを挟む俺はいつも電車と徒歩だが、今回は隣に春樹がいる。
よって、タクシーに乗って実家に行くことにした。
俺にとってはただ実家に帰るだけであるから普段着で良いと思ったが、春樹はスーツを着ている。
かっこいいけど……
「ちゃんとしたの着すぎじゃん?」
「いつもこの格好で白季には行ってるけど?」
「え?」
どうやらちゃんとした格好で行かなければならないらしい、あそこーーー俺の実家。
ちなみに最近の春樹はメガネをかけてたりかけてなかったりする。
本人の視力は2.0あるそう(俺もある)で、かけているメガネは俺のために用意した完全な伊達。
今日はかけてない。
うん、スーツのときはメガネが無いほうが好きかな。
タクシーに乗り込んで目的地へ。
着いたそこ、俺の実家は無駄に立派な門構えの純日本風家屋。
当然俺は家の鍵を持っているが、春樹という客人がいるのでインターホンを鳴らす。
『……はい』
「優里です」
『……?』
あ、通じない人だ。聞いたこと無い声だもんな。
「えーっと、今日ここを訪ねる予定だった白季優里です。雄大いますか?」
『しき…?……雄大さんのお知り合いですか?ちょっと確認してきます』
うーん。鍵で開けたほうが早かったかな…。
でも今の彼が門番なら、俺たちが入ってきたらびっくりして大変だったかも。
うん、これでよかったはず。
「優里のこと、知らない人?」
「ぽいね。門番やるくらいだから幹部候補ではあるとは思うけど。最近の人なのかな?」
しばらくして
『優里ぃぃ~!!いらっしゃい!!!』
という雄兄のインターホン越しの大声と共に門が開いた。
ーーーーーーー
修羅場…いや、地獄…?
なんだかそんな雰囲気の状況に現在、俺、白季優里はいます。
目を輝かせ、「姫様~!」と言っているたぶん門番の彼。
すごく震えている手で俺の隣を指さす雄兄。
そして俺の隣にいる、全く感情の読めない笑顔の春樹。
どこから処理したらいいんやら。
誰か助け船をくれ…と思っていると、急に部屋の扉が開いた。
「もう!雄大!何してるの??優里くんが困ってるじゃない。相手が誰であろうと受け入れるって昨日……え?」
助け船として入ってくれたはずの雄兄の結婚相手のすみれちゃんは雄兄に促されるように俺の隣にいる春樹を見ると、目を見開いて固まり、持っていた客人用のお茶をのせたおぼんから手を離し……さすが俺、ナイスキャッチ。
すみれちゃんはそのまま気を失ってふらふらと倒れてしまった。
……春樹。うちで何した?
ーーーーーーー
えー改めまして。
先ほど俺たちが通されたのは客人用の部屋でしたが、今は家で最も広い部屋に移動しまして、みんな正座で着席しています。
その部屋にいるのは、
父、母。
長男の雄大、とお相手のすみれちゃんは…倒れたまま。
さらに今回結婚予定の次男の大地、とお相手のあかりちゃんはこちらに手を振ってきているので振り返す。
そして愛犬かしわもち。俺のそばによってきて足元をクンクンしてる。
うーん、カオス。
ちなみにさっきの門番くんは仕事があるそうで帰っていき、代わりに俺付きのお世話兼護衛の白兎が登場。お茶出しをしてくれた。
でも白兎は性格が悪いので俺を見てずっとニヤニヤしてます。助け船は出してくれません。
「その犬…」
春樹がかしわもちのほうをみて言った。
「かしわもちのこと?」
「そんなになつくんだな。俺は今まで遠くからしか見たことなかった」
「うん。俺とすみれちゃんにしかなつかないんだよね。今は俺がいるから撫でられるよ。ほら」
「うっわ。フワフワだな、かわいい」
かわいいかわいいかしわもちを撫でている春樹もかわいいよ…なんてね。
ちなみにかしわもちは人懐っこいはずのゴールデンレトリーバー。
もちろん名付け親は俺。数年前の5月5日にやってきたからかしわもち。いい名前でしょ?
……っと。春樹とイチャイチャしたはいいけど、みんな黙ってこっち見てるな。
気になるなら話しかければいいのに。
かしわもちを撫でながら正面に向き直る。
みんな何も話さずにいるが、うちでは長である父か雄兄から話し始めるのが通例だ。
そもそも俺たちを呼んだのは雄兄だしね?なおさら俺からじゃないよねぇ。
けど仕方ない。このままじゃ進まなそうだから。
「……えっと、色々話さなければならないことがありますが、まず大地とあかりちゃん、結婚おめ……」
「優里くん!黒崎!来ちゃった!!」
俺が話し始めてから急に開いた俺の後ろの扉に驚いてふり返ると、そこにはニッコニコ笑顔の結城翠こと情報屋マリスのご登場。
そういえば行くって言ってたな……(遠い目)
一同騒然。
当たり前だよね。大事に隠してた俺がなぜか闇医者ネロだけでなく、かの有名な情報屋とも知り合いだったんだから。
彼が乱入した今、俺には収拾不可です。
俺にどうしろと?
もう無理、誰か助けてくれ。
ーーーーーーー
お待たせしました。閲覧ありがとうございます。
一気に登場人物が増えましたが…記憶がうっすらあれば大丈夫です。
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