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本編2
黒
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(春樹side)
家に帰るとマンションの入り口のところに見覚えのあるシルエットの男が立っていた。
「なんでここにいんの、お前」
「君を待っていたのさ」
「不審者だぞ」
もちろんその男とは情報屋マリスこと、スイだ。
仕方なくオートロックを開け、家に招き入れる。
甘ーいコーヒー(だったもの)を淹れ、マドレーヌと共に出す。
「デートはどうだったんだい?」
「知ってんだろ」
「部屋の中までは知らないさ」
どうせ防犯カメラで園内の様子は見ていたに違いない。
スイが入れない防犯カメラのサーバーなんて日本には無いからな。
でも確かに、部屋にはカメラや盗聴器の類いは無かった。
「…まあ善かったよ」
「ふふ。それなら良かった」
相変わらずマドレーヌが好きなんだな。
山のようにあったマドレーヌの3分の1があっという間に消費された。
「というか何の用だ?今日は優里と大事な話があるから、さっさと帰って欲しいんだけど」
「随分冷たいね、親友に対して。でも仕方ないか。恋は人を変える、と言うしね。そして変わった結果、君は今日これから恋人に自分のことを話そうとしているんだよね」
…怖っ。なんで知ってんだよ。
「だからなんだよ」
「そんな君に話題を提供する。これだよ」
彼が見せてきたのは
「結婚式の招待状!?」
「そうだね、裏を見てごらん」
は?参加2名で丸してあるんだが?
…っていうか、これどこのだ?
「僕たちの仲良し白季組の次男のだよ。急に決まったらしい」
「俺たちが知らないくらいだから相当急だな」
「入籍はまだ先で、先に結婚式をするらしいよ」
大事な組織だから急だとはいえ、俺は行くにしても……
「2人って?」
「もちろん優里くんだよ」
「は!?なに勝手に…」
「まあ落ち着いてくれ。これは僕が勝手にやったんじゃない。白季の長男に頼まれたんだよ。どうやら今回の結婚相手が完全に一般人らしくて、相手の友達を結婚式に招待するためにカモフラージュで、一般人っぽい僕たちがいなきゃいけないらしい。これを貰うときに、『お前、恋人いたよな…そういえばあの闇医者にもいるのか?』って聞かれて、『最近できたようですよ』って答えたら、『その恋人も連れてこい』って言われたのさ。僕の返答のせいなのはわかるからそれは謝るけど、一般人が多いから警備はいつもよりしっかりしているようだし、安全だと思う。だから、優里くんにこれについてきてもらう説明をするときに自分のことを話せるいいきっかけになると思ってさ!だから、許して」
ここまで一気に間を置かず話したスイ。
事情はわかったけども。
「理央くんは行くのか?」
「行くよ。白季長男に言われちゃね。行かないって選択肢はないよ」
なら、これはスイのせいじゃない。
あの長男のせいだ。
「別に許すけどさ……どう話し始めたらいいか……」
気が重い。
「じゃあ僕がこの招待状を持ってきたってことを説明するよ。それで『実は自分も関わりがあって…』って言えば……」
ーーガチャガチャ
「ただいま~」
どうやら優里が帰ってきたらしい。
「結城さん!?」
「お邪魔してるよ。大事な話があってね」
「大事な話…」
スイのその言葉に優里が椅子に座りながらこちらを見てきた後、再びスイに視線を戻す。
「あのね、これに来て欲しいんだ」
スイが優里に招待状を見せる。
「結婚式…?」
「そう。僕の知り合いの結婚式でね、パートナーの同席が必要なんだよ」
「…めずらしいですね」
優里は招待状をまじまじと見ている。
結婚式でパートナー同伴必須なんて聞いたこと無いよな。
「そうなんだよ、ちょっと特殊でね。僕の仕事の知り合いなんだけど…」
「うん?待ってください。これって結城さん宛のものですよね?パートナー参加って言っても、俺は関係ないんじゃ…」
スイが見せていた招待状は俺宛のものではなかったらしい。
すると、スイがこちらに目配せしてきた。
「優里くん、いいところに気づいたね。確かに僕のパートナーは理央で、同伴させるのも理央だけど。実はこの招待状、黒崎にも来ているんだ」
「え、春樹に?」
「ほら」
スイは俺宛への招待状を優里に渡した。
それを受け取った優里の瞳が揺れる。
「優里」
名前を呼ぶと、彼はこちらを見つめた。
俺は意を決して告げる。
「優里、俺。闇医者やってるんだ」
「闇医者…?」
「闇医者」
「大事な話のやつ……?」
「そう、隠しててごめん。聞いてくれる?」
「うん」
彼は力強く頷いてくれた。
「俺には血の繋がった家族が3人いた。金だけ置いてすぐにどこかへ行く父。男遊びをして家に男を連れ込む母。と、年子の兄。……今はほとんど交流がないが」
ーーーーーーー
次回、黒崎春樹過去?編
良いお年を~!!
家に帰るとマンションの入り口のところに見覚えのあるシルエットの男が立っていた。
「なんでここにいんの、お前」
「君を待っていたのさ」
「不審者だぞ」
もちろんその男とは情報屋マリスこと、スイだ。
仕方なくオートロックを開け、家に招き入れる。
甘ーいコーヒー(だったもの)を淹れ、マドレーヌと共に出す。
「デートはどうだったんだい?」
「知ってんだろ」
「部屋の中までは知らないさ」
どうせ防犯カメラで園内の様子は見ていたに違いない。
スイが入れない防犯カメラのサーバーなんて日本には無いからな。
でも確かに、部屋にはカメラや盗聴器の類いは無かった。
「…まあ善かったよ」
「ふふ。それなら良かった」
相変わらずマドレーヌが好きなんだな。
山のようにあったマドレーヌの3分の1があっという間に消費された。
「というか何の用だ?今日は優里と大事な話があるから、さっさと帰って欲しいんだけど」
「随分冷たいね、親友に対して。でも仕方ないか。恋は人を変える、と言うしね。そして変わった結果、君は今日これから恋人に自分のことを話そうとしているんだよね」
…怖っ。なんで知ってんだよ。
「だからなんだよ」
「そんな君に話題を提供する。これだよ」
彼が見せてきたのは
「結婚式の招待状!?」
「そうだね、裏を見てごらん」
は?参加2名で丸してあるんだが?
…っていうか、これどこのだ?
「僕たちの仲良し白季組の次男のだよ。急に決まったらしい」
「俺たちが知らないくらいだから相当急だな」
「入籍はまだ先で、先に結婚式をするらしいよ」
大事な組織だから急だとはいえ、俺は行くにしても……
「2人って?」
「もちろん優里くんだよ」
「は!?なに勝手に…」
「まあ落ち着いてくれ。これは僕が勝手にやったんじゃない。白季の長男に頼まれたんだよ。どうやら今回の結婚相手が完全に一般人らしくて、相手の友達を結婚式に招待するためにカモフラージュで、一般人っぽい僕たちがいなきゃいけないらしい。これを貰うときに、『お前、恋人いたよな…そういえばあの闇医者にもいるのか?』って聞かれて、『最近できたようですよ』って答えたら、『その恋人も連れてこい』って言われたのさ。僕の返答のせいなのはわかるからそれは謝るけど、一般人が多いから警備はいつもよりしっかりしているようだし、安全だと思う。だから、優里くんにこれについてきてもらう説明をするときに自分のことを話せるいいきっかけになると思ってさ!だから、許して」
ここまで一気に間を置かず話したスイ。
事情はわかったけども。
「理央くんは行くのか?」
「行くよ。白季長男に言われちゃね。行かないって選択肢はないよ」
なら、これはスイのせいじゃない。
あの長男のせいだ。
「別に許すけどさ……どう話し始めたらいいか……」
気が重い。
「じゃあ僕がこの招待状を持ってきたってことを説明するよ。それで『実は自分も関わりがあって…』って言えば……」
ーーガチャガチャ
「ただいま~」
どうやら優里が帰ってきたらしい。
「結城さん!?」
「お邪魔してるよ。大事な話があってね」
「大事な話…」
スイのその言葉に優里が椅子に座りながらこちらを見てきた後、再びスイに視線を戻す。
「あのね、これに来て欲しいんだ」
スイが優里に招待状を見せる。
「結婚式…?」
「そう。僕の知り合いの結婚式でね、パートナーの同席が必要なんだよ」
「…めずらしいですね」
優里は招待状をまじまじと見ている。
結婚式でパートナー同伴必須なんて聞いたこと無いよな。
「そうなんだよ、ちょっと特殊でね。僕の仕事の知り合いなんだけど…」
「うん?待ってください。これって結城さん宛のものですよね?パートナー参加って言っても、俺は関係ないんじゃ…」
スイが見せていた招待状は俺宛のものではなかったらしい。
すると、スイがこちらに目配せしてきた。
「優里くん、いいところに気づいたね。確かに僕のパートナーは理央で、同伴させるのも理央だけど。実はこの招待状、黒崎にも来ているんだ」
「え、春樹に?」
「ほら」
スイは俺宛への招待状を優里に渡した。
それを受け取った優里の瞳が揺れる。
「優里」
名前を呼ぶと、彼はこちらを見つめた。
俺は意を決して告げる。
「優里、俺。闇医者やってるんだ」
「闇医者…?」
「闇医者」
「大事な話のやつ……?」
「そう、隠しててごめん。聞いてくれる?」
「うん」
彼は力強く頷いてくれた。
「俺には血の繋がった家族が3人いた。金だけ置いてすぐにどこかへ行く父。男遊びをして家に男を連れ込む母。と、年子の兄。……今はほとんど交流がないが」
ーーーーーーー
次回、黒崎春樹過去?編
良いお年を~!!
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