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本編2
内緒話
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(前半:優里side 後半:春樹side)
最近忙しいらしい医学部。
必然的に俺と栄の2人で昼食をとる回数が増えた。そして今日も2人で食事している。
「はあ…」
「5回目」
「?何が?」
「食べ始めて優里ちゃんがため息をついた回数」
「え、そんなに?」
「気づいてなかった?」
全く。意外と心労貯まってんのかな。
「何に悩んでんの?黒崎、めっちゃ下手くそだったとか?」
さすが栄銀弥。俺の小さな悩みにも…いや、これだけため息ついてたら誰でも気づくか。
「ううん。そっちは極めて順調。比べる対象がないからわからないけど、たぶんめちゃくちゃ上手い」
栄とアジュは俺たちがこの前のデートの時に初夜?を迎えたことを知っている。
歩けなくなったために大学を休んでノートを見せてもらうことになったときにバレた……恥ずかし。
「じゃあ何に悩んでんの?」
「家」
俺がそう言うと、栄は納得したようだ。
俺の複雑な気持ちを理解してくれる親友。ありがたい。
「雄兄からメール来て。大地が結婚するから結婚式に来いってさ」
「へ~あのやんちゃなお兄さんがねぇ。おめでたいじゃん」
「どうも。それでさ、一回家に帰らなきゃいけないんだけど、春樹がついてきそうなんだよね」
「両親にご挨拶みたいな?」
「そんな感じだと思う」
「でも、絶対ついてこないでって言ったら大丈夫じゃない?」
それは俺も考えた。でも。
「たとえ、今回乗りきったとしても、このまま付き合ってたら結局いつかはさ両親に会うとかそう言う展開になるじゃん。だから春樹に言わなきゃなあと思ってるんだけど」
「まあそうだよね。……言うの怖いの?」
俺の実家を知っているのはアジュと栄のみ。
その2人は俺の家のことを知っても「優里は優里だから」と言ってくれた。
けど、春樹は?
「確かに怖いのかもしれない」
「そっか。でも、言うなら早い方がいいと思う」
「うん」
「何かあったらさ、俺たちがいるじゃん。大丈夫。それに黒崎こそ、"優里は優里だ"って言うと思う。そんなことで消えるような恋ならさっさと捨てた方がいいしね。だから元気だしな?」
「うわーん…」
これだから栄は……心の友と書いて心友なんだ。
「銀弥お兄ちゃん、すき」
「はいはい」
いつだって俺のことを気にかけて話を聞いてくれて、俺が欲しい言葉をくれる。
「俺、栄が親友でよかった」
「俺もだよ、優…」
「えー、それって銀弥だけ?」
急に俺たちの会話に入ってきて驚いて振り向くと、そこにはニヤニヤしたアジュがいた。
「え、アジュ?アジュも親友でよかったけど……忙しいんじゃないの?ここに来て大丈夫?」
「うんとね、ちょっと黒崎について言っておきたいことがあってさ、急いできた」
「春樹のこと?」
なんだろう。
慎重な面持ちで彼が告げる。
「なんか優里に大事な話があって、それを今日しようと思ってるんだって。どうやら別れ話とかではないっぽいんだけどさ」
「大事な話…」
「心当たりある?あいつも結構思い詰めてそうだったけど……優里はすっきりしたようで良かった」
「心当たりは…ない、かも」
大事な話…なんだろう。別れ話とかではないって、浮気とか?
その後、心ここにあらずで2人と別れ、テスト返却よりも緊張しながら家に帰り、リビングに入ると
「おかえり、優里」
「やあ、久しぶり。元気だった?」
あの真っ白なソファーに、いつもより暗い春樹とマドレーヌをもしゃもしゃと食べている彼がいた。
ーーーーーーー
実習やら何やらで忙しい医学部の研究室での準備。
せっかく優里と心も身体も近づいたって言うのに…しかたないけれど。
ただここ数日、優里に元気がない気がする。心配だ。
「なあ空原。優里、最近元気ないんだけど何か知らない?」
空原との共通の話題は優里だけなんだよなぁ。
「は?こっちが聞きたいわ。黒崎が何かしたんじゃないの?」
「いや特には……」
全く心当たりがないが、俺のせいかもしれないのか…でも違うような。
空原は考え込んでいる。
「黒崎じゃないってことはあっちか?」「それなら…」「でもなんで今だ?」などとぶつぶつと独り言を言っている。
何か知っているのだろうか。
「心当たりあるのか?なら教えてくれないか!?」
つい必死になって言うと、彼はとても冷たい目で俺を見つめた後、こう言った。
「心当たり、というか、優里にはあんまり他人に言えない秘密があるんだよ。たぶんそれを黒崎に言うかどうか悩んでる。俺と銀弥はそれを知っているが、俺たちは大したことないことだと思っている。でも優里は違う。たぶん、それのせいで何かあったんだろうな。だから出来るだけ隠してる。きっと、それをお前に言うのが怖いんだ」
優里の…秘密……
「俺はお前はそんなことで優里を嫌ったりしないと思っているがな。まあ、でももし"優里が何者であっても好き"と言いきれないのであれば、今すぐ別れてくれ。優里が傷つくところを見たくない」
そう切実そうに空原が言う。
本当に優里のことを大事に思っているんだな。
「俺は、どんな優里でも好き。何があっても守るし、愛してる」
大学の研究室という、なんとも言えない場所で優里への想いを空原に告げる。
と、彼は
「お前ならそう言うと思ってたよ。ごめん、いきなり。優里は本当に大事な親友だからさ。どうしても確認しておきたくて」
俺の肩に手を置いて申し訳なさそうに笑った。
「いや」
「そういうお前こそ、何か悩んでね?一応友達だし相談のるけど」
空原天藍、さすがの心配り。
優里は良い親友がいるな。
…"闇医者"だと言っていいんだろうか。いや、それを先に知るのは優里がいい。
「空原。優里に今夜、大事な話があるって伝えてくれないか」
「はあ?なに急に」
「今日の予定ではなかったんだが……優里に秘密があって話しにくいなら俺の秘密を先に言えば言いやすくなるかと思って」
「なるほど?」
「だから頼めるか?」
「りょうかーい」
自分で言え、と言わずに頷いてくれた彼はすぐに研究室を出て行った。
「え、今?」
さりげなく準備を俺に押し付けていった空原。
さすがだよ。
最近忙しいらしい医学部。
必然的に俺と栄の2人で昼食をとる回数が増えた。そして今日も2人で食事している。
「はあ…」
「5回目」
「?何が?」
「食べ始めて優里ちゃんがため息をついた回数」
「え、そんなに?」
「気づいてなかった?」
全く。意外と心労貯まってんのかな。
「何に悩んでんの?黒崎、めっちゃ下手くそだったとか?」
さすが栄銀弥。俺の小さな悩みにも…いや、これだけため息ついてたら誰でも気づくか。
「ううん。そっちは極めて順調。比べる対象がないからわからないけど、たぶんめちゃくちゃ上手い」
栄とアジュは俺たちがこの前のデートの時に初夜?を迎えたことを知っている。
歩けなくなったために大学を休んでノートを見せてもらうことになったときにバレた……恥ずかし。
「じゃあ何に悩んでんの?」
「家」
俺がそう言うと、栄は納得したようだ。
俺の複雑な気持ちを理解してくれる親友。ありがたい。
「雄兄からメール来て。大地が結婚するから結婚式に来いってさ」
「へ~あのやんちゃなお兄さんがねぇ。おめでたいじゃん」
「どうも。それでさ、一回家に帰らなきゃいけないんだけど、春樹がついてきそうなんだよね」
「両親にご挨拶みたいな?」
「そんな感じだと思う」
「でも、絶対ついてこないでって言ったら大丈夫じゃない?」
それは俺も考えた。でも。
「たとえ、今回乗りきったとしても、このまま付き合ってたら結局いつかはさ両親に会うとかそう言う展開になるじゃん。だから春樹に言わなきゃなあと思ってるんだけど」
「まあそうだよね。……言うの怖いの?」
俺の実家を知っているのはアジュと栄のみ。
その2人は俺の家のことを知っても「優里は優里だから」と言ってくれた。
けど、春樹は?
「確かに怖いのかもしれない」
「そっか。でも、言うなら早い方がいいと思う」
「うん」
「何かあったらさ、俺たちがいるじゃん。大丈夫。それに黒崎こそ、"優里は優里だ"って言うと思う。そんなことで消えるような恋ならさっさと捨てた方がいいしね。だから元気だしな?」
「うわーん…」
これだから栄は……心の友と書いて心友なんだ。
「銀弥お兄ちゃん、すき」
「はいはい」
いつだって俺のことを気にかけて話を聞いてくれて、俺が欲しい言葉をくれる。
「俺、栄が親友でよかった」
「俺もだよ、優…」
「えー、それって銀弥だけ?」
急に俺たちの会話に入ってきて驚いて振り向くと、そこにはニヤニヤしたアジュがいた。
「え、アジュ?アジュも親友でよかったけど……忙しいんじゃないの?ここに来て大丈夫?」
「うんとね、ちょっと黒崎について言っておきたいことがあってさ、急いできた」
「春樹のこと?」
なんだろう。
慎重な面持ちで彼が告げる。
「なんか優里に大事な話があって、それを今日しようと思ってるんだって。どうやら別れ話とかではないっぽいんだけどさ」
「大事な話…」
「心当たりある?あいつも結構思い詰めてそうだったけど……優里はすっきりしたようで良かった」
「心当たりは…ない、かも」
大事な話…なんだろう。別れ話とかではないって、浮気とか?
その後、心ここにあらずで2人と別れ、テスト返却よりも緊張しながら家に帰り、リビングに入ると
「おかえり、優里」
「やあ、久しぶり。元気だった?」
あの真っ白なソファーに、いつもより暗い春樹とマドレーヌをもしゃもしゃと食べている彼がいた。
ーーーーーーー
実習やら何やらで忙しい医学部の研究室での準備。
せっかく優里と心も身体も近づいたって言うのに…しかたないけれど。
ただここ数日、優里に元気がない気がする。心配だ。
「なあ空原。優里、最近元気ないんだけど何か知らない?」
空原との共通の話題は優里だけなんだよなぁ。
「は?こっちが聞きたいわ。黒崎が何かしたんじゃないの?」
「いや特には……」
全く心当たりがないが、俺のせいかもしれないのか…でも違うような。
空原は考え込んでいる。
「黒崎じゃないってことはあっちか?」「それなら…」「でもなんで今だ?」などとぶつぶつと独り言を言っている。
何か知っているのだろうか。
「心当たりあるのか?なら教えてくれないか!?」
つい必死になって言うと、彼はとても冷たい目で俺を見つめた後、こう言った。
「心当たり、というか、優里にはあんまり他人に言えない秘密があるんだよ。たぶんそれを黒崎に言うかどうか悩んでる。俺と銀弥はそれを知っているが、俺たちは大したことないことだと思っている。でも優里は違う。たぶん、それのせいで何かあったんだろうな。だから出来るだけ隠してる。きっと、それをお前に言うのが怖いんだ」
優里の…秘密……
「俺はお前はそんなことで優里を嫌ったりしないと思っているがな。まあ、でももし"優里が何者であっても好き"と言いきれないのであれば、今すぐ別れてくれ。優里が傷つくところを見たくない」
そう切実そうに空原が言う。
本当に優里のことを大事に思っているんだな。
「俺は、どんな優里でも好き。何があっても守るし、愛してる」
大学の研究室という、なんとも言えない場所で優里への想いを空原に告げる。
と、彼は
「お前ならそう言うと思ってたよ。ごめん、いきなり。優里は本当に大事な親友だからさ。どうしても確認しておきたくて」
俺の肩に手を置いて申し訳なさそうに笑った。
「いや」
「そういうお前こそ、何か悩んでね?一応友達だし相談のるけど」
空原天藍、さすがの心配り。
優里は良い親友がいるな。
…"闇医者"だと言っていいんだろうか。いや、それを先に知るのは優里がいい。
「空原。優里に今夜、大事な話があるって伝えてくれないか」
「はあ?なに急に」
「今日の予定ではなかったんだが……優里に秘密があって話しにくいなら俺の秘密を先に言えば言いやすくなるかと思って」
「なるほど?」
「だから頼めるか?」
「りょうかーい」
自分で言え、と言わずに頷いてくれた彼はすぐに研究室を出て行った。
「え、今?」
さりげなく準備を俺に押し付けていった空原。
さすがだよ。
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