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本編2
浮かれてる
しおりを挟むくんくん…なんかいい匂い。おいしそうな匂い……あ、おなか空いてきたなぁ。でもまだいいか…
「……り、ゆうり。優里、朝だよ、起きて」
耳に優しい程よい低音。
「優里も今日朝から講義あるでしょ。遅刻しちゃうよ」
「うーん」
…はいはい、講義ね。ありますよ、朝から。金曜日ですもん。
って!待って!!
「大学!今何時!?」
今までが夢の中であることに気づいた俺は飛び起きた。
「8時だよ」
「やばい!急がなきゃ!!…ってちょっとまって。ここどこ?」
「俺の家」
「うわっ」
そうじゃん、ここ春樹の家じゃん。すっかり忘れてたわ。
昨日引っ越してきたんだった。
慌てる俺に、「一回落ち着いて」とおでこにキスをする春樹。
「朝ごはんできてるから着替えて、顔洗ったらリビングおいで。タオルは洗面台のところのを使っていいよ」
朝からまぶしい笑顔で彼はそう言って、部屋を出ていった。
……今、朝ごはんできてるって言ったよね?新婚?
俺は急いで昨日枕元に置いておいた服に着替え、顔を洗ってリビングに行くと、春樹にキスをされる。
「おはよう。今日もかわいいね」
うひゃあ。
春樹は今日もイケメンだね!…なんて、今の俺の口はパクパクしててそんなこと言えないけど。
用意されていた朝ごはんは完璧。
めちゃくちゃおいしかった。
……これがスパダリってやつですか?
寝坊をしたうえに朝ごはんを味わって食べてしまったので本当に時間がない。
2人で慌てて家を出ると、春樹が呼んでおいたらしいタクシーに乗る。
朝からタクシー。贅沢な生活。
家と大学は意外と近く、普通に間に合った。
代金は春樹が出していた。俺に払わせてくれないらしい、彼氏だからって。
……そんな付き合ってはじめての朝。
俺、一条優里。実は結構浮かれてたりする。
ーーーーーーー
大学構内に入ると黒崎効果が発動することなく、俺ら2人の周りにたくさんの人が集まってくる…ことはなかった。
普通に黒崎効果が発動しました。
俺が昨日、みんなの前で人気のある春樹にキスをしたことで、何か言われたりするかな~と少し期待していたのだが、あーんのせいで既に付き合っていると思われていたのを忘れてた。
今、俺は堂々と春樹と恋人つなぎをしている。
…恥ずかしい。
学部が違うので途中で春樹と別れる。
「今日、俺遅くなるから優里は先に帰ってて。これ合鍵。渡しておくね」
あ、合鍵。セキュリティ高めのマンションの鍵は重みがある。
「できるだけ早く帰るようにするから。また後でね、頑張ってね」
俺のおでこにキスをして、手を振って去って行く春樹。
合鍵にびっくりした俺は手を振り返すことしかできなかった。
鍵を失くさないようにカバンの底にしまい、教室に行こうとすると、たくさんの人が集まってきた。
「優里ちゃん、黒崎くんとめっちゃラブラブじゃん」
「優里ちゃんからキスって嘘だと思ってた」
「黒崎の牽制すごかった…」
「恋人つなぎ…」
え、めっちゃ話しかけてくるじゃん。
春樹がいると話しかけられなかったってことか。
なるほど。
「でも優里ちゃん幸せそうでよかった」
「黒崎くんの片想いじゃなくなったんだね」
みんなが口々にお祝いの言葉を言い、俺の頭を撫でてきたりする。
「なんか、よくわかんないけどありがとう」
どうやら俺、みんなに心配されてたらしい。
俺はいつも通り講義を受けて、栄と昼食を食べて帰る。
今日は午前中で終わるのだ。
医学部は昼食時間にも実験をするらしい。大変だよね。
渡された合鍵を使って部屋に入る。
色んなところに鍵をかざすので失くしたら大変だとわかった。
鍵に何かキーホルダーでもつけようかな。
好きに過ごしていいと言われているので、温かいカフェオレを淹れて、フカフカのソファーに座り、ひと息つく。
現在14:30。
時間があるなあ。ゲームもしたいけど、部屋で来週の数学の予習でもしようかな、と思って立つとちょうどインターホンが鳴った。
宅配とか受け取った方がいいのかな、と思って画面を覗くと、どうやら宅配の人ではなさそうだった。
黒い髪をチャラい感じに巻いてる男の人。
…誰?
とりあえず音声機能で話しかけてみる。
「はい…どちらさまですか」
「???あれ?黒崎…じゃないね?……あ、僕ね、黒崎春樹の友人の結城です。黒崎いるかな?」
「今、いませんが…何か用事ですか?春樹が帰ってくるの遅いと思いますけど上がっていきますか?」
「大丈夫…って言いたいとこだけど、お願いします」
「わかりました」
ロック解除する。慌ててお茶の準備。
………あれ?もしかして家に上げたりしちゃダメだったかな?悪い人じゃなさそうだから通しちゃったけど。
一応春樹に連絡しとこ。
『"ゆうき"さんって人が家を尋ねてきて、家に上げちゃった。用事があるらしい』
よし。
チャイムが鳴って家のドアを開ける。
「いらっしゃい、でいいんですかね?」
「どうもありがとう。お邪魔します」
訪ねてきたのは、深い緑色の髪のチャラそうなイケメンだった。
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