【本編完結】大学一のイケメンに好きになったかどうか聞かれています。

羽波フウ

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本編1

不器用な二人(前編)

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 いつも俺がカフェテリアに行く時間まで残り3分。
 大学構内は広い。急がなければ。


 ギリギリいつもの時間に間に合ってカフェテリアに着くが、いつもいるあの背の高い黒崎の姿が見当たらない。
 近くの知り合いに黒崎を見なかったか聞くが、今日は見てないと言う。

 今日は木曜日。黒崎は講義がある日なので絶対に来るはず。なのにまだ来ていないらしい……どうしたんだろうか。
 とはいえ、"約束"はしてないんだよな。
 一緒にごはんを食べても良いとは言ったが、食べることを約束しているわけではない。
 昼食をどこで食べようが黒崎の自由だ。


 最初に公開告白のようなことをされてから2ヶ月。
 そろそろ俺に飽きてきたのかな………いやいや!そんなことは考えるな、俺。
 飽きてきたなら、また惚れさせれば良いだけ。

 でもやっぱり黒崎がいないと寂しいな、と思いながらグラタンを注文する。

 すると、カフェテリアの入り口がなんだか騒がしくなってきた。
 何があったのかとそちらを見ると、大きな緑色の袋を持った黒崎が現れた。





 ーーーーーーー





 突然だが俺、黒崎春樹は闇医者だ。
 これは空原や一条くんをはじめとした、大学の知り合いには言っていない。知っているのは裏の住民のみ。

 高校生の時、闇医者の師匠に勧められて俺は海外へ行き、飛び級のような形で医学を学び、資格を取った。
 日本のものではないが、一応免許を持った立派な医者だ。

 そんな俺がなぜ、わざわざ大学に通っているのかというと、日本の技術を学びたかったからである。
 どこの医学部でも良かったのだが、とりあえず日本で一番頭のいい大学を受けると、見事合格。しかも首席で。

 首席だからなのか、俺の容姿が整っているからなのか、俺は大学に入学するとたちまち注目の的となった。
 しかし、周りの人たちに興味はない。俺はいたって真面目に大学に学びに来ている。



 ーーーだから、一条優里のことは名前と顔くらいしか知らなかった。





 ある日俺は、患者だった男とその仲間から襲撃を受けた。たぶんそれは昔、別の方を優先して治療をしなかった男からの恨みだろう。

 一応裏の住人であるから、それなりの体術を備えてはいるが、刃物を持った手練れの男数人の相手はさすがにキツい。

 死にはしなかったが、それなりに痛めつけられた。
 自分で応急処置をし、師匠へ連絡すると、師匠は最も繋がりの深い白季しき組にいる、とのこと。血だらけの状態で白季組の家に向かうが、途中で力尽きた俺は道端に座り、目を瞑っていると

「大丈夫…?大丈夫ですか!?」

 と声をかけてきたのが一条くんだった。

「どうしよう…救急車?」

「いらない。それは困る」

「でも…」

「君は関わるな。俺は大丈夫だ。病院はやめてくれ」

 俺に関わらない方がいい。どんな危害が彼に加わるかわからない。

「……病院、ダメな人?じゃあ、ちょっと待ってて!人呼んでくる!!」

 そう言って俺の返事を聞かずにどこかへ走り去っていく彼。
 その姿を見送った後、再び目を閉じるとそこで意識を失った。



 次に目が覚めると、俺は白季組の家にいた。
 そこには師匠のセヤもいた。

「なんで俺…ここ……」

「お前と同じくらいの青年が、人が倒れてるから助けてくれと叫んでいたから、そこに行ってみたらお前がいたんだ」

「青年…」

「茶髪の子だよ。会ってないのか?」

 一条くんだ。一条くんが助けてくれたんだ。

「その人、どうした?まだいる!?」

「いや、帰った。用事があるとかで」


 残念だ。会いたかったのに……色々と彼に説明できないことも多いが、とりあえず感謝したい。

 そう思って俺は、大学で周りの人たちに彼のことを聞き、会いに行った。
 すると、彼はたくさんの人に囲まれ、楽しそうに会話している。
 とても俺が話しかけられそうになかった。
 友人との会話を遮って、一条くんに嫌われることは避けなければと思った。

 その後も時間のある時に一条くんに会いに行ったが、いつも友人たちと可愛い笑顔を見せながら楽しそうに会話していた。


 そうして1週間。一条くんは一向に1人になる様子はない。やはり彼は人気者なんだな。

 ただお礼を言うこともできないでどうしたものかと思っていると、医学部に一条くんと同じ高校だった人がいることを思い出した。

 そして一条くんに話しかけるためのアドバイスをもらうためにその人に声をかけた。
 それが空原だった。








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