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本編1
やさしさ
しおりを挟む黒崎の告白から逃げ出したあと、顔の熱が冷めないまま講義を受けた。
その後、俺の周りには割と仲の良いたくさんの友人が集まってきた。
その中で一番仲の良い栄が代表して聞いてくる。
「優里ちゃん!昨日の告白ってやつ本当?」
「まあ、そうだね、どう伝わってるか知らないけど。……ごめん、昨日返信しなくて」
「別に気にしてないよ、返信無かったこと。優里ちゃんはいろんな人から連絡来て大変そうだしな」
「どうも」
「ところで、告白の返事はしたの?講義始まる前、顔真っ赤だったじゃん。黒崎となんかあった?」
ニヤニヤしながら聞いてくる栄。
栄が珍しく優しく言ってくれるから感動していたが、結局そっちが目的かよ!
っていうか、そんなに真っ赤だった??
「おい、栄。そっち目当てかよ。返事は…してない」
「ふーん。顔真っ赤だったのはなんでだろーな?まあ、いいや。何かあったら相談しろよ。話聞いてやる」
栄はそう言うと周りにいた友人たちを連れて去っていった。
彼なりの優しさかな。ひとりにさせてくれたらしい。
栄はなんだかんだ良い奴なんだ。
ひとりで家に帰るとアジュから連絡が来ていた。
『大丈夫?』
『黒崎が優里の連絡先欲しいんだって。送っていい?』
まあ、連絡先くらいならいいか、と了承すると、すぐに黒崎から連絡が来た。
『一条くん、ありがとう』
『ぜひ今度ご飯一緒に食べない?告白は別として友達になりたい』
これはこれは…友達から始めましょうってやつじゃないか?
警戒せずにはいられない。
とはいえ、食事くらいならいいか、と了承。
すぐにうさぎの喜んでるスタンプが送られてきた。
それに対して黒崎ってちょっとかわいいなと思ったり…してない!
次の日、昼食を食べにカフェテリアに行こうとすると、「一条くん」と呼び止められた。
この声は…と振り返るとそこには相変わらずニコニコと笑っているイケメンがいた。
「黒崎」
「一条くん、一緒にご飯いいかな?」
昨日、一緒に食事行くって約束したしな。
「いいよ」と答えると、黒崎は大喜びし、彼の周りには花が咲いているのが見える。
そんなに嬉しいんかな。
黙ったまま2人でカフェテリアに向かう。
その途中、なぜか俺たちが歩くと人が避けていき、道が拓ける。
これが黒崎効果?すごい。
黒崎が歩くところは、人が集まりつつも彼の邪魔にならないようにみんなが移動する。それが黒崎効果……俺が勝手に呼んでるんだけどね。
俺はカルボナーラを注文し、黒崎はグラタンを注文する。
それらを持って席を探すが、相当混んでいて2人で座れそうにない。
しかし、これが黒崎効果!
近くの席に座っていた女子4人組が席を立ち、こちらに譲る。
「ここ使ってください!私たちもう食べ終わったので」
それに対して何も言わない黒崎のかわりに、俺の知り合いの女子たちだったので、俺が「ありがとう」と言うと彼女たちは満足そうに去っていった。
その席に俺たち2人で座る。
黒崎は優雅にグラタンを食べ始める。
言いにくいな。でも友達なら言おう、うん。
「あのさ、黒崎」
「うん?」
「さっき、女子たちがこの席譲ってくれたじゃん。ちゃんと黒崎もお礼言った方がいいと思うんだよね」
黒崎効果でこのような状況に慣れすぎているのかもしれないが、今回のようなときはお礼を言うべきだと思うんだ。
「なんで?あの子たちが勝手にやったことだよ」
「でも、俺たちにここどうぞって声をかけてくれたよね?それは俺たちのためにってことでしょ?」
俺の言葉に少し考えた後、
「なるほど。今度からありがとうって言うね」
と黒崎は答えた。
その後、少し気まずさを感じ会話もせず食べていると、いきなり俺の目の前にグラタンののったスプーンが現れた。
「一条くん、あーん」
反射神経で口を開けると、すかさずスプーンが入ってくる。
「グラタン、美味しい?」
「う、うん」
「さっきは言ってくれてありがとう。ちゃんとお礼言うようにする」
黒崎は見ただけで失神しそうなくらいの美しい満面の笑みを浮かべる。
正直、味なんてわかったもんじゃない。
俺の心臓はドッキドキだ。
黒崎が嬉しそうだからいっか。反省もしてるようだし。
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