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本編1
はじまり
しおりを挟む「一条くん。どう?……俺のこと好きになってくれた?」
誰もが惚れるような、つよつよ顔面の持ち主は首を傾げて大変かわいらしい仕草をしている。185cmの大男でもイケメンならばかわいく見えるものなんだなぁ……ってそうじゃない!!
仕草は完璧でも、言ってることはよくわからん!
何が "好きになってくれた?" だ!
最近の悩みは専らこの男の、この謎行動である。
悩みなんてほとんどない俺が悩んでいるんだから、相当なものだ。
俺の受ける講義がある日は必ず大学に来ていて、そして俺に話しかけてくる。毎度毎度俺のところに来て、俺に"好きにになった?"と聞いてくる変な男……黒崎春樹。
実はこの男、大学一のモテ男だったりするから困ったものだ。
ーーーーーーー
俺の名前は一条優里。
日本で最高峰のT大の2年生。理工学部で宇宙工学を専門に学ぼうと思っている。
難関大学に通えているくらいだから頭は良いが、身長は165cmあるかないか。顔はダンディな父に似ず、どちらかといえば母似の顔だ。くるくる茶髪だし。つまりちょっと可愛い系?童顔?
だから女の子からモテはしない。
そんな俺は昔から周りを大人たちで囲まれていたということもあり、社交的で友達が多く、顔が広いので大学で2番目に有名人だ。
みんなに"優里ちゃん"なんて呼ばれてよく話しかけられている。
まあ、現状は悪くない。満足はしてる、一応。モテないけど。
そして俺よりも有名なのがこの日本で最高峰のT大の医学部に首席で合格した黒崎春樹。同じく2年生。
身長は俺と頭一つ分違い、背が高い。
サラサラの黒髪で少しつり目。瞳は灰色かかっている。
頭も良く、顔も良く、スタイリッシュで女子から人気がある。
しかし中身は愛想がなくて社交的ではない。人にあまり興味がなく、話しかけられても、うんとかすんとかしか言わないらしい。
俺は友達として女子に話しかけられるが、黒崎は顔がいいだけで デートの誘いなどで女子から話しかけられて羨ましい限りだ。
…なんて思っていた数ヶ月前が懐かしい。
ーーーーーーー
今思えば、おかしかったんだ。
……俺が好きな子のタイプを聞かれるなんて。
そのときは、俺にもモテ期が!!なんて思ったりもした。
浮かれ過ぎて気付かなかったんだ。
誰が俺のタイプを気にしているのか、なんて。
始まりは親友のアジュが
「優里のことが気になってる子がいて、タイプ聞いて欲しいって頼まれてさ」
と俺のタイプを聞いてきたことだった。
"気になってる子"なんて思わせぶりな言い方。
わざとだろ絶対!女の子だと思うじゃん!!
…今ならそれが黒崎だったってわかるけど。
ちなみに、アジュとは俺の高校時代からの親友で医学部生の空原天藍。陽キャの権化。
アジュというあだ名は天藍色、つまりアジュールから来ている。
アジュにそんなことを聞かれ、ノリノリで答え、俺のことが気になってる女の子ってどんな子なんだろうとウキウキして過ごしていたある日。
女子たちが、黒崎がいつもはかけていない眼鏡をかけていると噂しているのを耳にした。
大学の構内を歩くだけで女子たちが集まり、黒崎がいるところはいつも人が集まってきているのでよく目立つ。
その日たまたまその集団に目を向けると、女子たちに囲まれている中にアジュと眼鏡をかけている黒崎の姿を見つけた。
アジュもこちらに気付いたのか手を振ってきたので振り返す。
するとアジュは黒崎に何かを伝えると、集団はこちらに向かってきた。
黒崎は俺の目の前に来ると、いつもじゃ考えられないほどの笑顔を俺に向けて話しかけてきた。
「一条くん。初めまして、黒崎春樹です。一条くんは眼鏡かけてる子が好きだって聞いたんだ。それで眼鏡。どうかな?かっこいい?好きに……なってくれた?」
「は?」
どういうことかとアジュに視線を送ると、
「ほら、優里のこと気になってる子だよ。タイプ聞いたじゃん」
あ~それで眼鏡ね!……ってならん!!!
確かに言いましたよ?「眼鏡かけてるのとかかわいいよね」って。
でも違う。そうじゃない。女子たちは騒ぎ立ててたけど。
「え、あれ女の子じゃないっけ、聞いてきたの」
「俺、"女の子"なんて言ってないけど?」
………嵌められた。
俺を好きな女の子がいなかったことに俺が絶望していると「一条くん大丈夫?」と心配そうに声をかけてくる黒崎。
さっきからいつもの黒崎と様子が違いすぎる。
いつもは表情筋が仕事してないのに、今は目がうるうるしてなんか全体的にかわいい……これも俺がかわいい子がタイプって言ったから?
ふと周りを見ると、女子たちの視線がこちらに集まっている。
いつもとは違う黒崎に対する女子たちのキラキラとした視線。俺に対する悪意のこもった視線。そして一番強烈なのは、黒崎からの真っ直ぐな視線。
人からの視線なんて慣れているはずなのに、たくさんの視線が怖くなった俺はその場から走って逃げた。
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