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虎猫姫は冷徹皇帝と月を乞う
虎猫姫は冷徹皇帝と月を乞う-2
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兎杜の言う通り、紫曄の焼きもちは厄介そうだ。そんなに寝ても覚めても凛花に触れていたいのか? それともこれはお仕置きのつもりなのだろうか。
紫曄は凛花を懐に抱き込んで、右手の如雨露を取り上げじゃれついている。
「ちょっ……主上! あ、麗麗! もう、兎杜も見てるじゃないですか! いい加減にしてください!」
照れる凛花と知らんぷりの紫曄を眺め、麗麗はふぅと息を吐いた。
つい先程まで『主上は何を考えているのだろう』と懸念し思案していたが、下らないことを考えていたものだと思ってしまった。
どう見ても、凛花は愛されている。
「麗麗。僕、最近の主上を見ているとちょっと……」
「何かあったのですか? 兎杜」
たった今、二人は心配ないと思ったところなのに。麗麗は眉根を寄せ、兎杜の話を聞こうとしゃがみ込む。
「いえ、その……主上って、朔月妃さまのことが好きすぎますよね? 後宮を開くまでのあの苦労は一体なんだったのだろうかと……」
「……ああ。そっちですか」
後宮などいらないと言い張り、どの妃にも興味すら示さなかったのに、凛花だけが違っていた。神託のおかげだと神月殿が持ち上げられ、神月殿側も、自分たちの手柄だと声高らかにしてるらしい。
「でも、主上のお世話をしている輝月宮の皆は、今とっても喜んでいるんですよ」
「それは有り難いことです。凛花さまもホッとされるでしょう!」
実のところ凛花は、紫曄とのこの朝食会を続けていいものか……と気に掛けていたのだ。
本来なら紫曄の朝食の場は輝月宮のはず。それを週に二度も三度も、最下位の朔月宮が奪っているのだ。あちらの厨房はきっと面白くないだろう。輝月宮で調理された朝食を運び入れることも検討している。
「あ、そこはご心配なく。以前も言いましたが、元々、主上は書庫で朝食を取られることが多かったですし、あちらの厨師長も、食べてくれるだけで……! と涙ぐんでいるくらいです。それから双嵐のお二人も! なんだか最近とってもご機嫌なんですよ?」
お二人の部下の方々も、秘かに朔月妃さまに感謝されているみたいです。と、兎杜はにっこり顔で言う。
「あのお二人が? 少々意外……いえ、そうかもしれませんね」
雪嵐と晴嵐は、ぽっと出の妃に幼馴染みの主を横取りされ、最初は面白く思っていないようだった。警戒もしていただろう。
しかし、あの公開調練での彼らの試しを、凛花は斜め方向に跳び越えてみせ、双子に認められた。紫曄だけでなく、双嵐に、黄老師にと、周囲にも受け入れられたことは凛花にとって大きい。
「輝月宮や側近の方々が凛花さまの後ろ盾とは、有り難いことです」
少し前まで、後宮で一番力を持っていたのは、宦官勢力を後ろ盾とする弦月妃だった。最初に後宮入りし、皇后の最有力候補だと誇っていたのだ。現状を忌々しく思っているのは確実。
凛花の味方を一人でも多く増やしたい状況だ。
「はい。それに、やっぱり自分の主人が幸せそうにしているのは嬉しいものですから! 朔月妃さまが早く望月妃の位についてくださればいいのですが……」
「そうですね」
だが、それを固辞しているのは凛花だ。
周囲はせめてもっと上位の月妃の位を! と勧めたが、凛花はどうしても頷かない。
『位を上げる根拠となる功績が私にはないでしょう?』凛花はそう言って断ったきり、ただ楽しそうに庭の畑を手入れし、小花園へ通っている。
「朔月妃さまも主上を好いてらっしゃるように見えるのですが……。どうして望月妃になってくださらないんでしょう?」
兎杜の目線の先では、凛花が取り上げられた如雨露を取り返そうと手を伸ばし、紫曄がその度に如雨露を振り上げる。するとその筒先からは水が零れ、当たり前のように二人を濡らしている。
一晩中共にいて、朝から尚この睦まじさだ。
兎杜の疑問はもっともであるし、麗麗も同じように不思議に思う。
「私には分かりませんが、きっと凛花さまには何かお考えがあるのでしょう」
「お考えですか。軋轢を避けるため……じゃ普通すぎますね。あ、功績か。もっと目立つ手柄をもって望月妃となるおつもりなのかな……?」
兎杜はうう~んと首を捻り、独り言を呟く。
分からないことは分からない。それならば、自分の目に見えているものを信じるだけ。麗麗はそう結論付け、自分よりも賢い子供の頭をぽんと撫でた。
そして、パンパン! と手を叩き、主たちの戯れを止めに入る。
「さあさあ、お二人とも! 水遊びは後ほど、湯殿でごゆっくりどうぞ!」
「朝食の用意ができてますよ! 主上、朔月妃さま」
麗麗は凛花の背を押し、兎杜はクスクス笑いながら紫曄の腰をぐいぐいと押す。畑で遊んでいた二人の足元は泥だらけだ。
これでは本当に、この後は湯を使う必要があるな。麗麗はそう思った。
「まったく仕方のない方々だ。……ああ、兎杜も食べていきますよね?」
「はい! もちろんです! 僕、そのために朝からお使いをしたんですから」
主たちの背中の後ろで、凸凹の二人は笑った。
◆◆◆
すっかり定番となってしまった庭先の食卓には、温かな料理が並んでいた。
本日の献立は、鮮やかな色をした緑の豆の羹、粥には、混ぜ込まれた黄色い玉蜀黍の粒がつやつや輝いている。それからあっさりとした鶏の燻肉、トロトロになるまで煮込まれた甘辛い豚の角煮など。
「このお粥、ほのかに甘い……! 玉蜀黍ね!」
凛花は上機嫌で粥を口に運び、紫曄はとろみのついた羹をのんびり食している。食欲は出てきても、朝に弱い体質なのは変わらないらしい。
早起きして動いていたのだろう兎杜は、二杯目の粥を玉米鬚とはと麦のお茶で流し込んでいる。玉米鬚は、元は玉蜀黍のひげである生薬だ。
「麗麗は、今日も一緒に食べないんですか?」
小さな口に大きな角煮を押し込んで兎杜が言う。
この庭の食卓は無礼講と決まっている。だから紫曄の侍従でもある兎杜が、こうして席に着いているのだ。
「ええ。明明だけに給仕をさせるわけにはいきません。――はい、兎杜には一足先に甜点の『葡萄の糖蜜煮』ですよ」
「わぁ! 大粒ですね!」
とろりとした蜜が初夏の日差しにきらきら煌めいている。これは齧るか一口で頬張るか、迷う大きさだ。一口でいったなら、蜜と一緒に葡萄の果汁がじゅわっと口に広がるだろう。
さて、どう食べようか。
糖蜜煮を睨む子供らしい兎杜の姿に、紫曄と凛花はぷっと笑い声を掛ける。
「兎杜、喉に詰まらせるなよ?」
「慌てないで食べて、兎杜」
「……主上、朔月妃さま。今だけご無礼をお許しください!」
兎杜はそう言うと、行儀作法を無視をして、大口を開けて葡萄を口に放り込んだ。そして目を見開き頬を押さえ「美味しい!」と瞳を輝かせた。
「美味しかったけど……なんだか、粒つぶしいものが多くなかった?」
食後のお茶を飲み、凛花がボソリと呟いた。
玉蜀黍に豆、それから葡萄。どれも時期のものであるが、粒が集まった食物だ。
「……お前、ここをどこだと思っているんだ?」
紫曄がちょっとばつが悪そうな顔を見せて言う。
うんざりとは違う、その少し照れたような顔を凛花は不思議に思った。
「朔月宮ですが……」
「凛花さまったら。ここは後宮でございますよ?」
「子孫繁栄の縁起担ぎですね」
桃を盛った大皿を運んできた、明明と麗麗が笑って言った。
あの事件の後、明明は書庫付きとなったが、凛花の侍女としても働きたい! と、限られた時間のみ朔月宮に顔を出している。逃げた明明を弦月妃がどう思っているか、まだ不安が残っているからだ。
実が多く生る食物は多産の象徴。凛花が朔月宮へ来てひと季節が過ぎたことで、厨房も期待と願いを滲ませたのだろう。
「桃も縁起の良い果実ですしね! これ、老師に届けられたんですが『朔月妃さまにもぜひ』って言ってたそうです」
「そ、そうなの……。ありがとう」
まさか厨房や客にまでそんな意味と期待を向けられるとは……! と、凛花は改めて後宮の妃という役割に頬を赤らめた。最近の夜の悩み事とも繋がっていて、これは本当によく考えないと面倒なことになりそうだと思う。
「まったく。余計なお世話だ」
紫曄はプイと顔を背けると、少し俯いた凛花の頭を軽く撫でた。
凛花の密かな悩みを知っているのか知らないのか、それとも紫曄にも何か思うところがあるのか。凛花に見えないその顔はどんな表情をしているのだろう? と覗き込むが、撫でる掌で頭を押さえられてしまい見せてもらえない。
「ふふ。お二人は本当に仲良しですね! 主上、今年の星祭の祈念舞はやっぱり朔月妃さまですよね?」
嬉しそうにそう言う兎杜に、凛花は首を傾げる。
「あ、星祭といえば! 麗麗、ご依頼の資料、黄老師から預かってまいりました」
「おお、さすがお早い。凛花さま。本日は星祭について色々とご相談がございますので、小花園へ行くのはお休みしてくださいね」
「え?」
皆が訳知り顔で話す中、凛花だけがきょとんとしていた。
「凛花。星祭前のこの時期、女たちは忙しいのではないか?」
「ああ、まあ……暇ではないと思いますけど……?」
あれ? と凛花は大きく首を傾げた。
『星祭』とは、夏に各地で行われる祝祭のこと。
月の女神を崇めるこの国では、月にちなんだ祝祭は多く盛大だ。宮中でも、観月会をはじめ数々の行事や祭りがある。
そんな中、星祭は数少ない星――月を象徴とする皇帝の、その周囲を飾る星は月妃とされている――つまり、女たちが主役の祭りだ。
星河を挟んだ恋物語のお伽噺もあり、恋人たちが集う祭りの側面もあるが、一般的には書道や裁縫の上達を祈る祭りだ。
「そうですね。衣装の手配や儀式に向けての準備など、大変なのは朔月宮の者たちでしょうか。ねえ、麗麗、明明?」
兎杜が無邪気に訊ねると、侍女二人は少々げんなりした顔で頷いた。
「その通りです。ですが凛花さまも覚えることが沢山ございますよ!」
「黄老師から、歴代の望月妃による祝詞集をお借りしてきました。それから祈念舞の指南役も探さないといけませんね」
――望月妃による祝詞? 祈念舞?
凛花は困惑した顔で腕組みし呟いた。
「それ、『月妃』がやるの? 星祭の祈念役って『清らかな乙女』でないといけないはずじゃ……?」
自分はまだ乙女だが、一応は後宮妃だ。星祭の主役にはなり得ないはずではないか?
「乙女……ですか? 元々はそうだったのでしょうか」
「女性が自分で織ったり縫ったり、刺繍したりした衣装を着るお祭り……ですよね?」
麗麗と明明が『そうよね?』と顔を見合わせた。
おかしい。自分が知っている星祭と違う。凛花は益々混乱を強める。
「待って。星祭って『清らかな乙女が織った衣をまとい、秋の豊穣を祈る』豊穣祈念のお祭りよね?」
えっ、と。皆が驚き顔で凛花を見つめた。
「なるほど。各地方によって少しずつ内容が違うと聞いてはいたが……。雲蛍州では豊穣祈念の祭りになっていたか」
紫曄がくくっと笑う。
「薬草三昧の田舎州で大変失礼しました」
凛花はちょっと拗ねた赤い頬で桃をかじって言った。
凛花の故郷・雲蛍州では、夏に行われる星祭は、やがて迎える秋の実りを祈る祭りとしての意味合いが強かった。特産の薬草は季節ごとに様々採れるが、やはり冬場には少ない。だから厳しい冬を迎える前に、最後の薬草収穫と五穀豊穣を祈るのだ。
そんな雲蛍州ならではの事情と一般的な星祭とが混ざり合い、『清らかな乙女が織った衣をまとい、秋の豊穣を祈る』祭りになったのだと思われる。
ちなみに雲蛍州では、星河を挟んだ恋人たちの伝説よりも、恋人に会うために河を渡った虎のお伽噺のほうがよく知られている。ちょっと変わった虎伝説の多い土地なのだ。
「凛花、拗ねるな。教えなかったこちらの落ち度だな。それで麗麗、準備は進んでいるのか?」
「はい。進めてはおりますが……。侍女として未熟な私の落ち度でございます」
「まずは衣装か? 凛花の衣装は良いものだと思うが」
「凛花さまが雲蛍州から持ち込まれたものが多いのです。少しずつ仕立てております」
言われてみれば、と凛花は自身の衣装を思い浮かべる。
雲蛍州は国の端だが、近隣には織物や染色を得意にしている郡領や州が多い。緑豊かな雲蛍州では、養蚕を行っている地域もあり、田舎と呼ばれてはいるが布地に困ったことはない。
「星祭のことは神月殿に任せていたが……。皇太后やさきの月妃がいない後宮というのは初めてのことだったな」
庭にフッと沈黙が落ちた。
後宮の奥にいるだろう皇太后や前月妃がいないのは、紫曄が追放したからだ。様々な噂を耳にしてはいるが、凛花はその行方についてまだ聞けないでいる。
星祭は月妃にとって一大事だが、紫曄にとっては皇帝として臨席するだけの祝祭。それほど気に掛けていなかったが、よく考えてみれば妃を迎えて初めての星祭だ。前回と同じにはいかない。
「そうですよ、主上。それに今回は、民たちの前に月妃さま方が初めてお目見えになるのですから――」
「えっ?」
兎杜の言葉に凛花が思わず声を上げた。
「待って、月華宮内で行われる祭りではないの?」
「違う。皇宮の前に広場があるだろう? 一番大きな秋の月祭と星祭の時だけは広場を開放し、皇帝や妃たちが祈念する姿を民に見せるのだ」
「知らなかった……!」
雲蛍州の祭りでは、州侯一族は挨拶をする程度で、民と一緒に祭りを楽しむことはなかった。凛花がこっそり祭りに参加することはあっても、祈りを捧げる役目は街一番の乙女のもの。そして虞家が行う星祭は、一族の特別な場所で祝宴を開き祈るものだった。
「麗麗、ごめんなさい! 私も共に準備をします。あと、星祭について詳しく教えてくれる?」
「もちろんです。私こそ、段取りができてからお話ししようと思っていたのですが、遅くなってしまい申し訳ございません」
凛花は謝罪する麗麗の手を取り「いいのよ」と微笑む。
まさか星祭の在り方がここまで違っているとは、凛花も紫曄たち皇都の者も、思ってもみなかったことだったので仕方がない。
「いや、祭りについて何も伝えず、指南役を付けなかった俺がいけなかった。麗麗、許せ。それから凛花、祈念舞や祝詞の奏上については後日あらためて話そう」
「はい!」
そして紫曄を見送って、凛花はふと思った。
――星祭での祈念舞や祝詞の奏上役とは、月妃にとって特別な意味のあるお役目なんだろうか? と。
◆
その日の午後、凛花が麗麗から星祭について説明を受けていると、朔月宮に意外な訪問者が現われた。
「――朔月妃さま。お変わりなくお過ごしのようで何よりですわ」
報せを聞き、駆け付けた凛花をゆったりと迎えたのは、弦月妃・董白春だ。
揃いの銀簪を挿し、紅梅色の衣装をまとった侍女を複数人従え、堂々と微笑む姿はまるでここの主のよう。
室の隅には、突然の訪問に大慌てで客間を整えた女官たちが、疲れを隠せないまま並んでいる。
「弦月妃さまにおかれましてはご機嫌麗しく。本日は弦月宮からわざわざお越しいただきまして……何か大事でもございましたでしょうか」
凛花は麗麗を従え、下位の妃として跪き礼を取る。
「まあ、お楽になさって? 朔月宮はあなたの宮ですもの」
弦月妃は扇で口元を隠し、ふふ、とたおやかに微笑む。
その言葉で凛花は顔を上げ笑顔を返すが、顔を伏せたままの麗麗や女官たちは『なんと図々しい』と眉をひそめた。
本来、訪問の際には数日前に先触れを出し、約束を取り付けるものだ。
それは月華宮に限ったことではなく、よほど親しい仲や身内でない限り、当たり前に行われること。この手順を飛ばしての訪問は、普通なら無作法者と見られ、常識のない者として相手にされなくなる。
だが、現在最上位の月妃である弦月妃が、最下位の凛花に対して行ったとなると、その解釈は少々変わってくる。
弦月妃は、最上位は自分なので無礼にはあたらない。または無礼をしても構わない。それと、寵姫である凛花よりも、自分のほうが上位であると誇示したかったのかもしれない。
(でも、上位であるなら、それこそ礼にかなった言動をするべきと思うけど……)
目の前の弦月妃は、相変わらず豪奢な衣装をまとった美少女だ。高慢な視線は凛花を見上げても尚、上から目線を隠していない。
(とはいえ、まだ十六だものね。最下位の私が寵姫と呼ばれる現状が我慢ならなかったのかも)
幼稚な嫌がらせをするわけではなく、『上位の者』として振る舞うあたりはさすがお嬢様だ。月妃の位を返上し後宮を去った、元眉月妃と比べれば品位はある。
凛花は内心で溜息を吐いたが、気を取り直して弦月妃にお茶をすすめた。
何の用だか知らないけど、いい機会だ。宦官を祖父に持つ完璧なお嬢様なら、月華宮での星祭についても詳しいだろうし、ここは図々しく聞いてやろう! 凛花はそう思い、茉莉花茶を一口飲んだ。
「本日はこちらをお持ちしましたの。どうぞ、ご覧になって?」
そう言って、弦月妃が差し出したのは箱に入った古い巻物だった。
かすれているが、そこには流麗な文字で『小花園図』と書かれている。
「これ……」
凛花は紐をそっと解き、ゆっくりと巻物を広げてみた。
「すごい……。このようなものが残っていたのですね」
そこに描かれていたものは、小花園の季節ごとの植栽図だった。
『小花園』は昔の望月妃が皇帝から賜り、作り上げた薬草園だ。後宮の奥にあり、歴代の望月妃に継承され、次第に宦官が管理するようになった。今は凛花が管理を任されているが。
(いつの時代のものかは分からないし、畑の形も今とは少し違っている。でも、この記録があれば、荒れ放題になっている小花園を整備するのにどれだけ役立つか……!)
しかし、弦月妃が凛花にこれを渡す意図が不明だ。
(弦月妃さまは小花園の花から美容液を作っていた。それからあの事件で使われた香も、原料は同じ……)
紫曄は凛花を懐に抱き込んで、右手の如雨露を取り上げじゃれついている。
「ちょっ……主上! あ、麗麗! もう、兎杜も見てるじゃないですか! いい加減にしてください!」
照れる凛花と知らんぷりの紫曄を眺め、麗麗はふぅと息を吐いた。
つい先程まで『主上は何を考えているのだろう』と懸念し思案していたが、下らないことを考えていたものだと思ってしまった。
どう見ても、凛花は愛されている。
「麗麗。僕、最近の主上を見ているとちょっと……」
「何かあったのですか? 兎杜」
たった今、二人は心配ないと思ったところなのに。麗麗は眉根を寄せ、兎杜の話を聞こうとしゃがみ込む。
「いえ、その……主上って、朔月妃さまのことが好きすぎますよね? 後宮を開くまでのあの苦労は一体なんだったのだろうかと……」
「……ああ。そっちですか」
後宮などいらないと言い張り、どの妃にも興味すら示さなかったのに、凛花だけが違っていた。神託のおかげだと神月殿が持ち上げられ、神月殿側も、自分たちの手柄だと声高らかにしてるらしい。
「でも、主上のお世話をしている輝月宮の皆は、今とっても喜んでいるんですよ」
「それは有り難いことです。凛花さまもホッとされるでしょう!」
実のところ凛花は、紫曄とのこの朝食会を続けていいものか……と気に掛けていたのだ。
本来なら紫曄の朝食の場は輝月宮のはず。それを週に二度も三度も、最下位の朔月宮が奪っているのだ。あちらの厨房はきっと面白くないだろう。輝月宮で調理された朝食を運び入れることも検討している。
「あ、そこはご心配なく。以前も言いましたが、元々、主上は書庫で朝食を取られることが多かったですし、あちらの厨師長も、食べてくれるだけで……! と涙ぐんでいるくらいです。それから双嵐のお二人も! なんだか最近とってもご機嫌なんですよ?」
お二人の部下の方々も、秘かに朔月妃さまに感謝されているみたいです。と、兎杜はにっこり顔で言う。
「あのお二人が? 少々意外……いえ、そうかもしれませんね」
雪嵐と晴嵐は、ぽっと出の妃に幼馴染みの主を横取りされ、最初は面白く思っていないようだった。警戒もしていただろう。
しかし、あの公開調練での彼らの試しを、凛花は斜め方向に跳び越えてみせ、双子に認められた。紫曄だけでなく、双嵐に、黄老師にと、周囲にも受け入れられたことは凛花にとって大きい。
「輝月宮や側近の方々が凛花さまの後ろ盾とは、有り難いことです」
少し前まで、後宮で一番力を持っていたのは、宦官勢力を後ろ盾とする弦月妃だった。最初に後宮入りし、皇后の最有力候補だと誇っていたのだ。現状を忌々しく思っているのは確実。
凛花の味方を一人でも多く増やしたい状況だ。
「はい。それに、やっぱり自分の主人が幸せそうにしているのは嬉しいものですから! 朔月妃さまが早く望月妃の位についてくださればいいのですが……」
「そうですね」
だが、それを固辞しているのは凛花だ。
周囲はせめてもっと上位の月妃の位を! と勧めたが、凛花はどうしても頷かない。
『位を上げる根拠となる功績が私にはないでしょう?』凛花はそう言って断ったきり、ただ楽しそうに庭の畑を手入れし、小花園へ通っている。
「朔月妃さまも主上を好いてらっしゃるように見えるのですが……。どうして望月妃になってくださらないんでしょう?」
兎杜の目線の先では、凛花が取り上げられた如雨露を取り返そうと手を伸ばし、紫曄がその度に如雨露を振り上げる。するとその筒先からは水が零れ、当たり前のように二人を濡らしている。
一晩中共にいて、朝から尚この睦まじさだ。
兎杜の疑問はもっともであるし、麗麗も同じように不思議に思う。
「私には分かりませんが、きっと凛花さまには何かお考えがあるのでしょう」
「お考えですか。軋轢を避けるため……じゃ普通すぎますね。あ、功績か。もっと目立つ手柄をもって望月妃となるおつもりなのかな……?」
兎杜はうう~んと首を捻り、独り言を呟く。
分からないことは分からない。それならば、自分の目に見えているものを信じるだけ。麗麗はそう結論付け、自分よりも賢い子供の頭をぽんと撫でた。
そして、パンパン! と手を叩き、主たちの戯れを止めに入る。
「さあさあ、お二人とも! 水遊びは後ほど、湯殿でごゆっくりどうぞ!」
「朝食の用意ができてますよ! 主上、朔月妃さま」
麗麗は凛花の背を押し、兎杜はクスクス笑いながら紫曄の腰をぐいぐいと押す。畑で遊んでいた二人の足元は泥だらけだ。
これでは本当に、この後は湯を使う必要があるな。麗麗はそう思った。
「まったく仕方のない方々だ。……ああ、兎杜も食べていきますよね?」
「はい! もちろんです! 僕、そのために朝からお使いをしたんですから」
主たちの背中の後ろで、凸凹の二人は笑った。
◆◆◆
すっかり定番となってしまった庭先の食卓には、温かな料理が並んでいた。
本日の献立は、鮮やかな色をした緑の豆の羹、粥には、混ぜ込まれた黄色い玉蜀黍の粒がつやつや輝いている。それからあっさりとした鶏の燻肉、トロトロになるまで煮込まれた甘辛い豚の角煮など。
「このお粥、ほのかに甘い……! 玉蜀黍ね!」
凛花は上機嫌で粥を口に運び、紫曄はとろみのついた羹をのんびり食している。食欲は出てきても、朝に弱い体質なのは変わらないらしい。
早起きして動いていたのだろう兎杜は、二杯目の粥を玉米鬚とはと麦のお茶で流し込んでいる。玉米鬚は、元は玉蜀黍のひげである生薬だ。
「麗麗は、今日も一緒に食べないんですか?」
小さな口に大きな角煮を押し込んで兎杜が言う。
この庭の食卓は無礼講と決まっている。だから紫曄の侍従でもある兎杜が、こうして席に着いているのだ。
「ええ。明明だけに給仕をさせるわけにはいきません。――はい、兎杜には一足先に甜点の『葡萄の糖蜜煮』ですよ」
「わぁ! 大粒ですね!」
とろりとした蜜が初夏の日差しにきらきら煌めいている。これは齧るか一口で頬張るか、迷う大きさだ。一口でいったなら、蜜と一緒に葡萄の果汁がじゅわっと口に広がるだろう。
さて、どう食べようか。
糖蜜煮を睨む子供らしい兎杜の姿に、紫曄と凛花はぷっと笑い声を掛ける。
「兎杜、喉に詰まらせるなよ?」
「慌てないで食べて、兎杜」
「……主上、朔月妃さま。今だけご無礼をお許しください!」
兎杜はそう言うと、行儀作法を無視をして、大口を開けて葡萄を口に放り込んだ。そして目を見開き頬を押さえ「美味しい!」と瞳を輝かせた。
「美味しかったけど……なんだか、粒つぶしいものが多くなかった?」
食後のお茶を飲み、凛花がボソリと呟いた。
玉蜀黍に豆、それから葡萄。どれも時期のものであるが、粒が集まった食物だ。
「……お前、ここをどこだと思っているんだ?」
紫曄がちょっとばつが悪そうな顔を見せて言う。
うんざりとは違う、その少し照れたような顔を凛花は不思議に思った。
「朔月宮ですが……」
「凛花さまったら。ここは後宮でございますよ?」
「子孫繁栄の縁起担ぎですね」
桃を盛った大皿を運んできた、明明と麗麗が笑って言った。
あの事件の後、明明は書庫付きとなったが、凛花の侍女としても働きたい! と、限られた時間のみ朔月宮に顔を出している。逃げた明明を弦月妃がどう思っているか、まだ不安が残っているからだ。
実が多く生る食物は多産の象徴。凛花が朔月宮へ来てひと季節が過ぎたことで、厨房も期待と願いを滲ませたのだろう。
「桃も縁起の良い果実ですしね! これ、老師に届けられたんですが『朔月妃さまにもぜひ』って言ってたそうです」
「そ、そうなの……。ありがとう」
まさか厨房や客にまでそんな意味と期待を向けられるとは……! と、凛花は改めて後宮の妃という役割に頬を赤らめた。最近の夜の悩み事とも繋がっていて、これは本当によく考えないと面倒なことになりそうだと思う。
「まったく。余計なお世話だ」
紫曄はプイと顔を背けると、少し俯いた凛花の頭を軽く撫でた。
凛花の密かな悩みを知っているのか知らないのか、それとも紫曄にも何か思うところがあるのか。凛花に見えないその顔はどんな表情をしているのだろう? と覗き込むが、撫でる掌で頭を押さえられてしまい見せてもらえない。
「ふふ。お二人は本当に仲良しですね! 主上、今年の星祭の祈念舞はやっぱり朔月妃さまですよね?」
嬉しそうにそう言う兎杜に、凛花は首を傾げる。
「あ、星祭といえば! 麗麗、ご依頼の資料、黄老師から預かってまいりました」
「おお、さすがお早い。凛花さま。本日は星祭について色々とご相談がございますので、小花園へ行くのはお休みしてくださいね」
「え?」
皆が訳知り顔で話す中、凛花だけがきょとんとしていた。
「凛花。星祭前のこの時期、女たちは忙しいのではないか?」
「ああ、まあ……暇ではないと思いますけど……?」
あれ? と凛花は大きく首を傾げた。
『星祭』とは、夏に各地で行われる祝祭のこと。
月の女神を崇めるこの国では、月にちなんだ祝祭は多く盛大だ。宮中でも、観月会をはじめ数々の行事や祭りがある。
そんな中、星祭は数少ない星――月を象徴とする皇帝の、その周囲を飾る星は月妃とされている――つまり、女たちが主役の祭りだ。
星河を挟んだ恋物語のお伽噺もあり、恋人たちが集う祭りの側面もあるが、一般的には書道や裁縫の上達を祈る祭りだ。
「そうですね。衣装の手配や儀式に向けての準備など、大変なのは朔月宮の者たちでしょうか。ねえ、麗麗、明明?」
兎杜が無邪気に訊ねると、侍女二人は少々げんなりした顔で頷いた。
「その通りです。ですが凛花さまも覚えることが沢山ございますよ!」
「黄老師から、歴代の望月妃による祝詞集をお借りしてきました。それから祈念舞の指南役も探さないといけませんね」
――望月妃による祝詞? 祈念舞?
凛花は困惑した顔で腕組みし呟いた。
「それ、『月妃』がやるの? 星祭の祈念役って『清らかな乙女』でないといけないはずじゃ……?」
自分はまだ乙女だが、一応は後宮妃だ。星祭の主役にはなり得ないはずではないか?
「乙女……ですか? 元々はそうだったのでしょうか」
「女性が自分で織ったり縫ったり、刺繍したりした衣装を着るお祭り……ですよね?」
麗麗と明明が『そうよね?』と顔を見合わせた。
おかしい。自分が知っている星祭と違う。凛花は益々混乱を強める。
「待って。星祭って『清らかな乙女が織った衣をまとい、秋の豊穣を祈る』豊穣祈念のお祭りよね?」
えっ、と。皆が驚き顔で凛花を見つめた。
「なるほど。各地方によって少しずつ内容が違うと聞いてはいたが……。雲蛍州では豊穣祈念の祭りになっていたか」
紫曄がくくっと笑う。
「薬草三昧の田舎州で大変失礼しました」
凛花はちょっと拗ねた赤い頬で桃をかじって言った。
凛花の故郷・雲蛍州では、夏に行われる星祭は、やがて迎える秋の実りを祈る祭りとしての意味合いが強かった。特産の薬草は季節ごとに様々採れるが、やはり冬場には少ない。だから厳しい冬を迎える前に、最後の薬草収穫と五穀豊穣を祈るのだ。
そんな雲蛍州ならではの事情と一般的な星祭とが混ざり合い、『清らかな乙女が織った衣をまとい、秋の豊穣を祈る』祭りになったのだと思われる。
ちなみに雲蛍州では、星河を挟んだ恋人たちの伝説よりも、恋人に会うために河を渡った虎のお伽噺のほうがよく知られている。ちょっと変わった虎伝説の多い土地なのだ。
「凛花、拗ねるな。教えなかったこちらの落ち度だな。それで麗麗、準備は進んでいるのか?」
「はい。進めてはおりますが……。侍女として未熟な私の落ち度でございます」
「まずは衣装か? 凛花の衣装は良いものだと思うが」
「凛花さまが雲蛍州から持ち込まれたものが多いのです。少しずつ仕立てております」
言われてみれば、と凛花は自身の衣装を思い浮かべる。
雲蛍州は国の端だが、近隣には織物や染色を得意にしている郡領や州が多い。緑豊かな雲蛍州では、養蚕を行っている地域もあり、田舎と呼ばれてはいるが布地に困ったことはない。
「星祭のことは神月殿に任せていたが……。皇太后やさきの月妃がいない後宮というのは初めてのことだったな」
庭にフッと沈黙が落ちた。
後宮の奥にいるだろう皇太后や前月妃がいないのは、紫曄が追放したからだ。様々な噂を耳にしてはいるが、凛花はその行方についてまだ聞けないでいる。
星祭は月妃にとって一大事だが、紫曄にとっては皇帝として臨席するだけの祝祭。それほど気に掛けていなかったが、よく考えてみれば妃を迎えて初めての星祭だ。前回と同じにはいかない。
「そうですよ、主上。それに今回は、民たちの前に月妃さま方が初めてお目見えになるのですから――」
「えっ?」
兎杜の言葉に凛花が思わず声を上げた。
「待って、月華宮内で行われる祭りではないの?」
「違う。皇宮の前に広場があるだろう? 一番大きな秋の月祭と星祭の時だけは広場を開放し、皇帝や妃たちが祈念する姿を民に見せるのだ」
「知らなかった……!」
雲蛍州の祭りでは、州侯一族は挨拶をする程度で、民と一緒に祭りを楽しむことはなかった。凛花がこっそり祭りに参加することはあっても、祈りを捧げる役目は街一番の乙女のもの。そして虞家が行う星祭は、一族の特別な場所で祝宴を開き祈るものだった。
「麗麗、ごめんなさい! 私も共に準備をします。あと、星祭について詳しく教えてくれる?」
「もちろんです。私こそ、段取りができてからお話ししようと思っていたのですが、遅くなってしまい申し訳ございません」
凛花は謝罪する麗麗の手を取り「いいのよ」と微笑む。
まさか星祭の在り方がここまで違っているとは、凛花も紫曄たち皇都の者も、思ってもみなかったことだったので仕方がない。
「いや、祭りについて何も伝えず、指南役を付けなかった俺がいけなかった。麗麗、許せ。それから凛花、祈念舞や祝詞の奏上については後日あらためて話そう」
「はい!」
そして紫曄を見送って、凛花はふと思った。
――星祭での祈念舞や祝詞の奏上役とは、月妃にとって特別な意味のあるお役目なんだろうか? と。
◆
その日の午後、凛花が麗麗から星祭について説明を受けていると、朔月宮に意外な訪問者が現われた。
「――朔月妃さま。お変わりなくお過ごしのようで何よりですわ」
報せを聞き、駆け付けた凛花をゆったりと迎えたのは、弦月妃・董白春だ。
揃いの銀簪を挿し、紅梅色の衣装をまとった侍女を複数人従え、堂々と微笑む姿はまるでここの主のよう。
室の隅には、突然の訪問に大慌てで客間を整えた女官たちが、疲れを隠せないまま並んでいる。
「弦月妃さまにおかれましてはご機嫌麗しく。本日は弦月宮からわざわざお越しいただきまして……何か大事でもございましたでしょうか」
凛花は麗麗を従え、下位の妃として跪き礼を取る。
「まあ、お楽になさって? 朔月宮はあなたの宮ですもの」
弦月妃は扇で口元を隠し、ふふ、とたおやかに微笑む。
その言葉で凛花は顔を上げ笑顔を返すが、顔を伏せたままの麗麗や女官たちは『なんと図々しい』と眉をひそめた。
本来、訪問の際には数日前に先触れを出し、約束を取り付けるものだ。
それは月華宮に限ったことではなく、よほど親しい仲や身内でない限り、当たり前に行われること。この手順を飛ばしての訪問は、普通なら無作法者と見られ、常識のない者として相手にされなくなる。
だが、現在最上位の月妃である弦月妃が、最下位の凛花に対して行ったとなると、その解釈は少々変わってくる。
弦月妃は、最上位は自分なので無礼にはあたらない。または無礼をしても構わない。それと、寵姫である凛花よりも、自分のほうが上位であると誇示したかったのかもしれない。
(でも、上位であるなら、それこそ礼にかなった言動をするべきと思うけど……)
目の前の弦月妃は、相変わらず豪奢な衣装をまとった美少女だ。高慢な視線は凛花を見上げても尚、上から目線を隠していない。
(とはいえ、まだ十六だものね。最下位の私が寵姫と呼ばれる現状が我慢ならなかったのかも)
幼稚な嫌がらせをするわけではなく、『上位の者』として振る舞うあたりはさすがお嬢様だ。月妃の位を返上し後宮を去った、元眉月妃と比べれば品位はある。
凛花は内心で溜息を吐いたが、気を取り直して弦月妃にお茶をすすめた。
何の用だか知らないけど、いい機会だ。宦官を祖父に持つ完璧なお嬢様なら、月華宮での星祭についても詳しいだろうし、ここは図々しく聞いてやろう! 凛花はそう思い、茉莉花茶を一口飲んだ。
「本日はこちらをお持ちしましたの。どうぞ、ご覧になって?」
そう言って、弦月妃が差し出したのは箱に入った古い巻物だった。
かすれているが、そこには流麗な文字で『小花園図』と書かれている。
「これ……」
凛花は紐をそっと解き、ゆっくりと巻物を広げてみた。
「すごい……。このようなものが残っていたのですね」
そこに描かれていたものは、小花園の季節ごとの植栽図だった。
『小花園』は昔の望月妃が皇帝から賜り、作り上げた薬草園だ。後宮の奥にあり、歴代の望月妃に継承され、次第に宦官が管理するようになった。今は凛花が管理を任されているが。
(いつの時代のものかは分からないし、畑の形も今とは少し違っている。でも、この記録があれば、荒れ放題になっている小花園を整備するのにどれだけ役立つか……!)
しかし、弦月妃が凛花にこれを渡す意図が不明だ。
(弦月妃さまは小花園の花から美容液を作っていた。それからあの事件で使われた香も、原料は同じ……)
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