Strong Baseball 主砲の一振り 続編5

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オールスターゲーム

オールスターゲーム2日目 2

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天海―外崎のバッテリーでアポロリーグの強打者相手にどんなピッチングを披露するのか。


【1回の表、アポロリーグの攻撃は…1番センター陽凪。背番号5 高松マリナーズ】


マリナーズのヒットメーカーでもある陽凪が左打席に入った。


初のオールスターゲームとあって、やや緊張の面持ち。


マウンド上には百戦錬磨のエース天海が立ちはだかる。


(あのピッチャーの事だし、初球は速い球を投げてくるだろう)


オールスターゲームだし、ここは速球しかないとヤマを張った。


ノーワインドアップから流れるモーションで第1球を投げた。


天海の右腕から放たれたボールはゆっくりと弧を描き、アウトコース低めギリギリに入った。

「っ、うわっ…」


速球とヤマを張った陽凪はタイミングを外され、バットが空を切った。


「ストライク!」


97km/hのスローカーブに出鼻をくじかれた。


マウンド上の天海はニヤッと笑みを浮かべた。


「初球から速い球を投げると思ったんかい?甘いな~、ピッチングはココやぞ、ココ!」


人差し指で頭をトントンとやる。


「クソっ…絶対にストレートだと思ったのに」


「ダメだなぁ、そんなにカッカしちゃ。
そんなにカッカしてたら、打てる球も打てなくなるよ」


マスクを被る外崎がからかう様な口調で言う。


「別にカッカしてませんよ、ただ球界を代表するエースがオールスターゲームの初球にあんな緩い球投げるのかなぁって」


「フフ…彼は必ず速い球を投げなきゃならないのか?」


「そうじゃないですが、なんて言うか…もう少し正々堂々としたピッチングをして欲しいというか…」


「バッターに丸分かりな球が正々堂々としたピッチングだとでも言うのかな?」


「いや、その…」


外崎に突っ込まれ、陽凪はしどろもどろになる。


(これじゃ速い球を放る必要は無いな…)


打ち取るのは容易いと判断した外崎は、ボール球を振らせる配球を組み立てた。


(これはどうだろう)


外崎のサインに天海が頷く。


全身を躍動させたフォームで2球目を投げた。


今度はインコースへ。


「あっ、危な…」

陽凪が思わず腰を引くが、ボールはギューンと変化してストライクゾーンに入った。


「ストライクツー!」


インコースから真ん中へ変化するフロントドア(スライダー)で早くもツーストライクと追い込む。


「どうした、陽凪くん…今のはよく見れば打てない球じゃないだろ?」


「あの…少し黙っててもらえないですか?気が散る!」


「おぉ、怖い怖い…」


外崎が肩をすくめる。


(さぁ…次で勝負か、それとも1球外すか?いや、ここはアイツに任せよう)


外崎は天海にサインは任せたとジェスチャーする。


「何や、オレがサイン出せってか?」


「天海ぃ、後はお前の好きなように投げてくれ!」


「あいよ!」


マウンドの土を踏み慣らし足元を固めた。


(足元を整えたって事は、次投げるのは速球に違いない)


今度こそストレートだと陽凪は確信した。


速急に振り遅れないよう、小指1本分短くバットを持った。


天海がサインを出す。


外崎はやや内寄りにミットを構えた。


天海は速いモーションから3球目を投げた。


「あ、あぁ…」


陽凪が思わず声を上げ、バットを振り出すタイミングが狂わされた。


初球のスローカーブとは違い、127km/hのパワーカーブが縦に鋭く変化してミットに吸い込まれた。


「ストライクスリー!」


「速球だと思ったのに…」


ウラをかかれた陽凪はショボーンとしてスゴスゴとベンチに引き揚げた。


「甘い、甘い…速球にヤマを張ったつもりだろうが、あの構えじゃバレバレだぜ」


マウンドから見ると、陽凪は速球狙いに絞った構えをしていた。


「オールスターゲームだからガチガチにキンチョーしてたんじゃないのかな」


外崎の目から見ても、陽凪は速球狙いだと丸分かりだった。


【2番ライト 国分。背番号3 千葉ヤンキース】


ヤンキースの切り込み隊長国分が打席に入った。

スイッチヒッターの国分はトレードマークのこけしバットを短く持ち、上体を揺すらせながらタイミングをとっている。


「ダイスケ(国分)、どうだ調子は?」


「まぁ、可もなく不可もなくって感じですかね」


かつて千葉ヤンキースで攻守の要として活躍した2人だったが、外崎がFAで99ersに移籍してからはヤンキースの戦力がガタッと落ちた。


国分は外崎がFA宣言したのを快く思ってない。


真っ先に批判したのは国分だった。


そんな経緯があったせいか、国分は何が何でも打ってやろうと躍起になる。


(あぁーあ、コイツも気負ってるよ…でもまぁ、サインはアイツに任せたからな)


マウンドでは天海がサインを出している。


(今日は楽だな…ミット構えるだけでいいんだし)


面倒臭いリードは全て天海に任せようとしている。


天海が初球を投げた。


162km/hのバレットがインコース低めに決まった。


「ストライク!」


国分は手を出さず、ボールの軌道をよく見ていた。


「速いなぁ、相変わらず」


「速いだろ?この球お前に打てるか?」


「…打ったらどうします?」


「打ったら…そうだなぁ、お前の好きなもん腹一杯食わせてやるよ」


「今更食いもんなんかで賭けたくないですよ…オレが打ったら、ヤンキースに戻ってきてくださいよ。
これならいいでしょ?」


「…ホームラン打ったら考えとくよ」


国分の本音だ。


「じゃ、ホームラン狙おうかな」


そう言うとタイムをかけ、ベンチに一旦引っ込んでバットを変えて打席に戻った。


「ヘヘッ、これでホームラン狙える」


国分はミドルバランスのバットに変えた。


「お前、マジでホームラン狙うつもりかよ?」


「勿論っすよ!オレがホームラン打ったら、外崎さんがヤンキースに戻ってくるとなれば狙うに決まってるでしょ!」


「やれるもんならやってみな」


目を輝かせてバットを目いっぱい長く持った。


「何やアイツ、非力のクセに長打狙いか?オレの球が打てるもんなら、打ってみぃ!」


天海はオールストレートで勝負するみたいだ。
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