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インターカンファレンス(交流戦)
一軍半の意地
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マリナーズ先発の池本は先頭の藤村を148km/hのストレートでレフトフライに打ち取り、2番石川にはスプリットで空振りの三振。
3番唐澤に対しては、インコースから鋭く外に落ちるツーシームでショートゴロに打ち取り、1回の表を三者凡退に抑える。
スリーアウトチェンジのコールでマリナーズナインは全力疾走でベンチに戻る。
それはまるで高校球児の様にキビキビとした動きだ。
常に全力プレー、これこそが福田監督の掲げる100%の野球だ。
キャンプの初日、福田監督は全選手の前でこう宣言した。
「ここにいる殆どの選手は二軍暮らしの長い連中ばかりだ。
私が言いたいのはただ一つ!
与えられた役割を全力でやり遂げるんだ!
ミスを恐れず、アグレッシブにプレーしよう!
全責任は監督の私が負うから、皆はプレーする楽しさを感じて欲しい」
ミスをしないよう消極的なプレーをするより、ミスをしても積極的なプレーをする方が選手のレベルアップになると考え、積極的なプレーでミスをしても決して怒らず、むしろそのプレーを褒めた。
褒められた選手は今度こそはミスをせずに頑張ろうという気持ちになり、向上心も湧いてくる。
その代わり、消極的なプレーをする選手には本気で怒る。
しかも、頭ごなしに怒るのではなく、
「お前は選ばれた選手なんだぞ!それなのに、あんな消極的なプレーをしやがって!
多少のミスは気にするな、そんな事よりも、大観衆の前でプレー出来る楽しさを感じるんだ!」
と言われれば、選手はミスをしても積極的なプレーをしようと心がける。
そうやって選手の気持ちを高める事に務めた。
その甲斐あって、四国のファンは新たなチームを応援するようになった。
【1st batter!No.2、ヨシキ ゴトー!】
メジャー風のアナウンスで先頭バッターの後藤が右打席に入る。
1番後藤、2番夏川の二遊間コンビが持ち前の俊足を生かして塁を駆け回る。
後藤は昨年まで琉球マシンガンズの二軍だったが、広い守備範囲と足の速さに目をつけた福田が獲得に動いた。
どんな球にでも食らいつく姿勢に、福田はリードオフマンに任命した。
ベース寄りに立ち、覆い被さる様な構えはある意味玉砕覚悟の表れにもとれる。
「何か、やりづらいな…」
マウンド上の中邑は後藤のフォームを見て顔をしかめる。
インコースへ投げれば当たってしまうようなフォーム。
とは言え、アウトコースばかり投げるワケにはいかない。
(初球はインコースで様子を見よう)
毒島がインコースに要求した。
それを見た中邑が頷き、第1球を投げた。
スピードの乗ったストレートがインコース膝元へ迫り来る。
後藤は左足を開いて素早く振り抜いた。
「ゲッ…」
ジャストミートした打球は低いライナーで三遊間に飛び、サード吉岡、ショート石川が一歩も動けずレフト前へ転がる。
「打ち返しやがった…」
僅か1球でランナーが塁に出た。
「オイオイ…このチーム、案外手強い存在だな」
ほぉ~っと、中田が感心した表情をしている。
「いくら去年まで二軍暮らしとは言え、今はれっきとした一軍の選手なんですよ。
手加減してる余裕は無いですよ」
櫻井は当然だという顔をしている。
【2nd batter!No.8、マサト ナツカワ!】
スイッチヒッターの夏川が左打席に入った。
後藤とは対照的に、ベースから少し離れた位置でバットを短く持つ。
何処と無く、曲者の様な雰囲気を漂わせている。
(初回から送るという事は無いだろう…それに、今どき2番バッターが送りバントなんて時代遅れだ)
毒島は100%送りバントは無いと思った。
セットポジションの体勢に入った。
一塁ランナー後藤はやや大きめなリードをとっている。
中邑が素早く一塁へ牽制。
後藤はヘッドスライディングで返る。
「セーフ!」
ギラギラした野心溢れる目付きでユニフォームに付いた土を払い落とす。
ハングリー精神の塊でもある後藤は、アグレッシブに次の塁を狙う。
後藤と正反対の夏川は、緊張感の無い柔和な表情でバットを構える。
(初球から走ってくるハズ…)
毒島はサインを変えた。
中邑はクイックモーションから初球を投げた。
同時に後藤がスタートを切った。
154km/hのストレートがアウトコースへ。
しかし、夏川はバントの構えに切り替え、上手く三塁線に転がす。
意表を突いたバントにサード吉岡の足が一瞬遅れた。
「く、くそっ…」
猛ダッシュでボールを捕ると、素早く一塁へ送球。
「あぁ、ヤバい!」
中邑が声を上げた。
後藤はそのスキに二塁を蹴って三塁へ。
ファースト徳川がキャッチして夏川はアウト、すぐさま三塁へ送球。
ショート石川がベースカバーに入り、タッチするも間一髪セーフ。
送りバントではなく、バントエンドランでワンナウトランナー三塁と早くもピンチ。
「無謀だけど、随分思い切った事をするもんだな」
「こりゃ、早くも1点取られたかもなぁ」
財前がのほほんとした口調で言う。
「1点はしょうがないか…それにしても、まさかバントエンドランとは」
櫻井はこの試合敗けるかもしれないと感じた。
3番唐澤に対しては、インコースから鋭く外に落ちるツーシームでショートゴロに打ち取り、1回の表を三者凡退に抑える。
スリーアウトチェンジのコールでマリナーズナインは全力疾走でベンチに戻る。
それはまるで高校球児の様にキビキビとした動きだ。
常に全力プレー、これこそが福田監督の掲げる100%の野球だ。
キャンプの初日、福田監督は全選手の前でこう宣言した。
「ここにいる殆どの選手は二軍暮らしの長い連中ばかりだ。
私が言いたいのはただ一つ!
与えられた役割を全力でやり遂げるんだ!
ミスを恐れず、アグレッシブにプレーしよう!
全責任は監督の私が負うから、皆はプレーする楽しさを感じて欲しい」
ミスをしないよう消極的なプレーをするより、ミスをしても積極的なプレーをする方が選手のレベルアップになると考え、積極的なプレーでミスをしても決して怒らず、むしろそのプレーを褒めた。
褒められた選手は今度こそはミスをせずに頑張ろうという気持ちになり、向上心も湧いてくる。
その代わり、消極的なプレーをする選手には本気で怒る。
しかも、頭ごなしに怒るのではなく、
「お前は選ばれた選手なんだぞ!それなのに、あんな消極的なプレーをしやがって!
多少のミスは気にするな、そんな事よりも、大観衆の前でプレー出来る楽しさを感じるんだ!」
と言われれば、選手はミスをしても積極的なプレーをしようと心がける。
そうやって選手の気持ちを高める事に務めた。
その甲斐あって、四国のファンは新たなチームを応援するようになった。
【1st batter!No.2、ヨシキ ゴトー!】
メジャー風のアナウンスで先頭バッターの後藤が右打席に入る。
1番後藤、2番夏川の二遊間コンビが持ち前の俊足を生かして塁を駆け回る。
後藤は昨年まで琉球マシンガンズの二軍だったが、広い守備範囲と足の速さに目をつけた福田が獲得に動いた。
どんな球にでも食らいつく姿勢に、福田はリードオフマンに任命した。
ベース寄りに立ち、覆い被さる様な構えはある意味玉砕覚悟の表れにもとれる。
「何か、やりづらいな…」
マウンド上の中邑は後藤のフォームを見て顔をしかめる。
インコースへ投げれば当たってしまうようなフォーム。
とは言え、アウトコースばかり投げるワケにはいかない。
(初球はインコースで様子を見よう)
毒島がインコースに要求した。
それを見た中邑が頷き、第1球を投げた。
スピードの乗ったストレートがインコース膝元へ迫り来る。
後藤は左足を開いて素早く振り抜いた。
「ゲッ…」
ジャストミートした打球は低いライナーで三遊間に飛び、サード吉岡、ショート石川が一歩も動けずレフト前へ転がる。
「打ち返しやがった…」
僅か1球でランナーが塁に出た。
「オイオイ…このチーム、案外手強い存在だな」
ほぉ~っと、中田が感心した表情をしている。
「いくら去年まで二軍暮らしとは言え、今はれっきとした一軍の選手なんですよ。
手加減してる余裕は無いですよ」
櫻井は当然だという顔をしている。
【2nd batter!No.8、マサト ナツカワ!】
スイッチヒッターの夏川が左打席に入った。
後藤とは対照的に、ベースから少し離れた位置でバットを短く持つ。
何処と無く、曲者の様な雰囲気を漂わせている。
(初回から送るという事は無いだろう…それに、今どき2番バッターが送りバントなんて時代遅れだ)
毒島は100%送りバントは無いと思った。
セットポジションの体勢に入った。
一塁ランナー後藤はやや大きめなリードをとっている。
中邑が素早く一塁へ牽制。
後藤はヘッドスライディングで返る。
「セーフ!」
ギラギラした野心溢れる目付きでユニフォームに付いた土を払い落とす。
ハングリー精神の塊でもある後藤は、アグレッシブに次の塁を狙う。
後藤と正反対の夏川は、緊張感の無い柔和な表情でバットを構える。
(初球から走ってくるハズ…)
毒島はサインを変えた。
中邑はクイックモーションから初球を投げた。
同時に後藤がスタートを切った。
154km/hのストレートがアウトコースへ。
しかし、夏川はバントの構えに切り替え、上手く三塁線に転がす。
意表を突いたバントにサード吉岡の足が一瞬遅れた。
「く、くそっ…」
猛ダッシュでボールを捕ると、素早く一塁へ送球。
「あぁ、ヤバい!」
中邑が声を上げた。
後藤はそのスキに二塁を蹴って三塁へ。
ファースト徳川がキャッチして夏川はアウト、すぐさま三塁へ送球。
ショート石川がベースカバーに入り、タッチするも間一髪セーフ。
送りバントではなく、バントエンドランでワンナウトランナー三塁と早くもピンチ。
「無謀だけど、随分思い切った事をするもんだな」
「こりゃ、早くも1点取られたかもなぁ」
財前がのほほんとした口調で言う。
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櫻井はこの試合敗けるかもしれないと感じた。
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