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ペナント真っ只中
投の秘密兵器に、打の秘密兵器!
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寶井の後を受け、真咲は得意の緩急を使ったピッチングでブレーブス打線を翻弄する。
対する高山もバックの守りに助けられながらもGlanz打線を封じる。
0対0のまま、8回の表へ。
この回先頭の中山がライト前に運んで2本目のヒットを放つ。
7番毒島はボールをよく見てフォアボールで出塁。
ノーアウトランナー一塁、二塁となり、8番ジョーンズの打席に櫻井は動いた。
「財前くん、頼んだよ」
財前に言葉を掛けると、審判に代打を告げた。
【Glanzぅ、選手の交代をお知らせしまぁす!8番ジョーンズに代わりまして~、財前!8番指名打者ぁ、財前~、背番号3~】
ここのウグイス嬢はどんな顔してアナウンスしてるのだろうか。
まぁ、それはさておき、代打財前がコールされた。
今年は助監督という立場からか、ド派手な出で立ちは封印している。
黒に染め直した短髪、左右別のカラコン、シルバーアクセサリーを外し、膝下までストッキングを見せるクラシックスタイルのユニフォームを着こなす。
「さぁて、一発カマしてくるかな」
目の状態は一時期に比べると回復に向かっている。
「お~い、チョット待った!」
「ん?」
振り返ると、畑中打撃コーチが黒のバットを手にしている。
「財前、このバットを使え」
「バット?オレはいつもこのバットを使ってるじゃん」
財前はメイプル産のミドルバランスを使用している。
「いいから、このバット使ってみろよ」
「…何だ、これ?軽いバットじゃん」
畑中が渡したバットは850gとかなり軽い。
「その方がお前に合ってるぞ」
財前のバットは930gと重い。
「軽過ぎだなぁ…大丈夫かなこれで」
「問題ナッシング!このバットでスタンドに叩きんでやれ!」
ワハハハハ、と笑いながら畑中は背中をパシーンと叩いた。
「こんな軽いバットで打てったって…」
戸惑いながら財前は右バッターボックスに入った。
マウンド上では内野陣が集まっている。
「高山くん、ここが踏ん張りどころだ!
ここを抑えたら勝利は目前だ」
「ハ、ハイ!」
「ヨシ、上原くんと青島くんは左寄りに守ってくれ、いいな?」
「ハイ」
「了解!」
ショートの青島がサードとショートの中間を守り、セカンドの上原がショートの定位置で守るシフトを敷いた。
「はは~ん、オレ用のシフトってか…面白ぇ」
ニヤッと笑うと、右打席から左打席に移った。
「えぇぇ!何で左打席に?」
「マジかよ…」
「左に対して左打席って…アイツ、アホだろ!」
「フフフ、これは面白くなりそうだ」
普通スイッチヒッターは相手投手が右だと左打席に、左投げだと右打席で打つ。
それに対して財前は高山が左投げにもかかわらず左打席に入った。
「オレが投の秘密兵器なら、アイツは打の秘密兵器…
これで勝てなきゃ、優勝は夢のまた夢…かもな」
真咲はベンチ前でキャッチボールをしながらその様子を見ている。
(三遊間を狭めたシフトに対抗して左打席に入ったんだろうが、それだけじゃ高山くんを打ち崩す事は出来ない!)
結城が編み出したフォーメーションはデータを駆使したシフトで、アウトの確率は約86.7%
圧倒的にピッチャー有利のシフトを敷いている。
「どうせアウトコースにしか投げないんだろうが…アウトコースだけじゃオレを抑える事は出来ないぜ」
財前はバットの先端を高山に向けた。
「おい、ルーキー。
プロの厳しさを教えてやるよ」
「…プロの厳しさ?左ピッチャーに対して左打席がプロの厳しさなのかよ、あぁ!」
高山も並のルーキーではない。
向こう気の強さはプロ顔負けだ。
「へ~、言うじゃねぇかよ、ヒヨっ子が」
「上等だ、打てるもんなら打ってみろや!」
高山が初球を投げた。
アウトローへ148km/hのストレートが唸りを上げる。
「…これで勝つ!」
財前は肉眼では捕えられない程の速いスイングで弾き返した。
打球はライトへグーンと伸びる。
ライト鴻上が懸命にバックする。
「アウトローのストレートを引っ張ってライト方向に打つとは…」
結城は打球の行方を追う。
鴻上がフェンス手前でジャンプ、グラブを差し出す。
だが打球は鴻上の頭上を越えてスタンドに入った。
「ヨシ、この試合勝ったぞ」
櫻井は確信する。
「ウォォ、スゲー!さすが財前さん、カッコイイ!」
「助監督、ナイスバッティング!」
「やったー、ホームランだ!」
ベンチでは蜂の巣をつついた様に大騒ぎしている。
「ウソだろ…オレの渾身のストレートを引っ張ってライトスタンドなんて」
高山は膝から崩れ落ちると、ガックリ項垂れた。
「よぉ、ルーキー!いい球だったぜ」
ベースを回りながら高山に声を掛けた。
「…」
高山は項垂れたまま動かない。
財前の代打勝ち越しスリーランでGlanzが3点を先制した。
「投げる方では真咲さん、打つ方では財前さんと2人の曲者にやられた…
さすがだな、でも次は必ず勝つ」
ブレーブスは出来たばかりのチームで発展途上…
これから色んな経験を積んで強くなっていく。
結城の表情は晴れやかだった。
この3点が決勝点となり、Glanzは3対0で完封勝ちした。
対する高山もバックの守りに助けられながらもGlanz打線を封じる。
0対0のまま、8回の表へ。
この回先頭の中山がライト前に運んで2本目のヒットを放つ。
7番毒島はボールをよく見てフォアボールで出塁。
ノーアウトランナー一塁、二塁となり、8番ジョーンズの打席に櫻井は動いた。
「財前くん、頼んだよ」
財前に言葉を掛けると、審判に代打を告げた。
【Glanzぅ、選手の交代をお知らせしまぁす!8番ジョーンズに代わりまして~、財前!8番指名打者ぁ、財前~、背番号3~】
ここのウグイス嬢はどんな顔してアナウンスしてるのだろうか。
まぁ、それはさておき、代打財前がコールされた。
今年は助監督という立場からか、ド派手な出で立ちは封印している。
黒に染め直した短髪、左右別のカラコン、シルバーアクセサリーを外し、膝下までストッキングを見せるクラシックスタイルのユニフォームを着こなす。
「さぁて、一発カマしてくるかな」
目の状態は一時期に比べると回復に向かっている。
「お~い、チョット待った!」
「ん?」
振り返ると、畑中打撃コーチが黒のバットを手にしている。
「財前、このバットを使え」
「バット?オレはいつもこのバットを使ってるじゃん」
財前はメイプル産のミドルバランスを使用している。
「いいから、このバット使ってみろよ」
「…何だ、これ?軽いバットじゃん」
畑中が渡したバットは850gとかなり軽い。
「その方がお前に合ってるぞ」
財前のバットは930gと重い。
「軽過ぎだなぁ…大丈夫かなこれで」
「問題ナッシング!このバットでスタンドに叩きんでやれ!」
ワハハハハ、と笑いながら畑中は背中をパシーンと叩いた。
「こんな軽いバットで打てったって…」
戸惑いながら財前は右バッターボックスに入った。
マウンド上では内野陣が集まっている。
「高山くん、ここが踏ん張りどころだ!
ここを抑えたら勝利は目前だ」
「ハ、ハイ!」
「ヨシ、上原くんと青島くんは左寄りに守ってくれ、いいな?」
「ハイ」
「了解!」
ショートの青島がサードとショートの中間を守り、セカンドの上原がショートの定位置で守るシフトを敷いた。
「はは~ん、オレ用のシフトってか…面白ぇ」
ニヤッと笑うと、右打席から左打席に移った。
「えぇぇ!何で左打席に?」
「マジかよ…」
「左に対して左打席って…アイツ、アホだろ!」
「フフフ、これは面白くなりそうだ」
普通スイッチヒッターは相手投手が右だと左打席に、左投げだと右打席で打つ。
それに対して財前は高山が左投げにもかかわらず左打席に入った。
「オレが投の秘密兵器なら、アイツは打の秘密兵器…
これで勝てなきゃ、優勝は夢のまた夢…かもな」
真咲はベンチ前でキャッチボールをしながらその様子を見ている。
(三遊間を狭めたシフトに対抗して左打席に入ったんだろうが、それだけじゃ高山くんを打ち崩す事は出来ない!)
結城が編み出したフォーメーションはデータを駆使したシフトで、アウトの確率は約86.7%
圧倒的にピッチャー有利のシフトを敷いている。
「どうせアウトコースにしか投げないんだろうが…アウトコースだけじゃオレを抑える事は出来ないぜ」
財前はバットの先端を高山に向けた。
「おい、ルーキー。
プロの厳しさを教えてやるよ」
「…プロの厳しさ?左ピッチャーに対して左打席がプロの厳しさなのかよ、あぁ!」
高山も並のルーキーではない。
向こう気の強さはプロ顔負けだ。
「へ~、言うじゃねぇかよ、ヒヨっ子が」
「上等だ、打てるもんなら打ってみろや!」
高山が初球を投げた。
アウトローへ148km/hのストレートが唸りを上げる。
「…これで勝つ!」
財前は肉眼では捕えられない程の速いスイングで弾き返した。
打球はライトへグーンと伸びる。
ライト鴻上が懸命にバックする。
「アウトローのストレートを引っ張ってライト方向に打つとは…」
結城は打球の行方を追う。
鴻上がフェンス手前でジャンプ、グラブを差し出す。
だが打球は鴻上の頭上を越えてスタンドに入った。
「ヨシ、この試合勝ったぞ」
櫻井は確信する。
「ウォォ、スゲー!さすが財前さん、カッコイイ!」
「助監督、ナイスバッティング!」
「やったー、ホームランだ!」
ベンチでは蜂の巣をつついた様に大騒ぎしている。
「ウソだろ…オレの渾身のストレートを引っ張ってライトスタンドなんて」
高山は膝から崩れ落ちると、ガックリ項垂れた。
「よぉ、ルーキー!いい球だったぜ」
ベースを回りながら高山に声を掛けた。
「…」
高山は項垂れたまま動かない。
財前の代打勝ち越しスリーランでGlanzが3点を先制した。
「投げる方では真咲さん、打つ方では財前さんと2人の曲者にやられた…
さすがだな、でも次は必ず勝つ」
ブレーブスは出来たばかりのチームで発展途上…
これから色んな経験を積んで強くなっていく。
結城の表情は晴れやかだった。
この3点が決勝点となり、Glanzは3対0で完封勝ちした。
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