81 / 83
ミドル級トーナメント
秒殺
しおりを挟む
あっという間の出来事だった。
1ラウンド1分3秒、コールマンの右ストレートがフライマンの顔面をとらえ、レフェリーは即座にゴングを要請。
たった1発のパンチで試合は呆気なく終了した。
「スゲーっ!!ワンパン(ワンパンチ)で終わっちまったぞ!」
ヒロトは興奮した口調で捲し立てる。
「カンペキに決まったな」
フライマンがタックルに入ろうとした瞬間、コールマンはサイドステップでかわし、カウンターで右ストレートを放った。
フライマンが倒れたと同時にレフェリーは間に入って試合をストップ。
フライマンはまだダウンしたままだ。
【ダメだ、担架だ!早く担架を用意するんだ!】
リングドクターが担架を要請する。
「カウンターでモロに食らったから、かなりのダメージなんだろうな」
「あぁ…何せ、コールマンはボクシングだけでも世界ランカー並のテクニックだしな」
会場内はあまりに早く試合が終わったせいで、観客からのブーイングが鳴り止まない。
「バカか、コイツら!真剣勝負なんだから、あっという間に試合が決まる事だってあるのに、それがイヤならプロレスの試合でも観てろっての!」
ヒロトはブーイングを飛ばす観客を見て吐き捨てる様に言った。
「真剣勝負って…それじゃ、プロレスは真剣勝負じゃないの?」
楓はキョトンとしながらヒロトに質問する。
「ん~、プロレスは何つーか、真剣勝負じゃないけど、真剣勝負なところもあるし…まぁ、ファンタジーな闘いみたいなモンかな、ハハッ」
「ふ~ん、私にはよく分からないや」
リング上では担架が運ばれ、フライマンは数人がかりで担架に乗せられ、リングを下りた。
勝者のコールマンは妻ジェニファーと抱き合い、熱い口づけを交わした。
「それにしても…何もリング上でアツアツぶりを見せつけなくてもいいのに」
「そこが日本人と違うところだろ」
「そうだけどさぁ、リング上でしかも、何万もの観客の前で奥さんとキスするかね、フツー」
「そうかなぁ、私は羨ましいと思うけどなぁ」
楓はああいうラブラブな感じがいいのか。
勝利者賞の盾と表彰を受け取り、観客に手を振ってコールマンはリングを下りた。
メインイベントが終了した。
この後はロイヤルリングサイド、つまりオレたちVIP席の観客は試合を終えた選手達と一緒にレセプションと称した打ち上げに参加出来る。
ヒロトは試合よりもレセプションの方が楽しみだと言う。
「選手と記念撮影撮れるし、サインだって貰えるじゃん!」
「そんな事より、選手に迷惑かけるなよ!」
「大丈夫だよ、まず手始めにコールマンからサイン貰おうかな」
「おい、止めとけって」
そんな事はお構い無しに、ヒロトは会場の隅で談笑しているコールマンにサインをねだった。
コールマンはイヤな顔せず、サラサラとサインを書いてヒロトに渡した。
「やった!センキュー、ミスターコールマン!」
大はしゃぎでヒロトは戻ってきた。
「おい、あんまりデカい声出すなよ!」
「いいじゃねぇかよ、せっかくのレセプションなんだし」
すると、カズがこちらへやって来た。
「相変わらずだな、ヒロトは」
「おぉ、カズ!今日はセコンドだったけど、次の試合はいつだよ」
「そうだよ、再起戦楽しみにしてるぜぇ」
「まだ決まってないけど、いつでも試合できる状態だよ」
大晦日の試合でカズは眼窩底骨折という大怪我を負った。
今は怪我も癒えて、練習を再開している。
「凄かったな、水嶋のカーフキックは」
「ぶっちゃけ、あのカーフキック2発でKOしたようなモンだからな」
「そうだね、彼もあのキックを試合前から狙っていたし」
シウバの足狙いだったワケか。
「ところで、シウバのセコンドはリョースケの兄貴だって聞いたけど…リョースケ、あんなハーフみたいな兄貴いたんだ?」
「う、うん…まぁ、色々あって、な…」
経緯を説明するのが面倒で、テキトーにはぐらかした。
そう言えば、兄はどこだろう?
オレは会場を見渡した。
それらしき姿は無い。
もしかしたら、既に会場を後にしたのだろうか。
1ラウンド1分3秒、コールマンの右ストレートがフライマンの顔面をとらえ、レフェリーは即座にゴングを要請。
たった1発のパンチで試合は呆気なく終了した。
「スゲーっ!!ワンパン(ワンパンチ)で終わっちまったぞ!」
ヒロトは興奮した口調で捲し立てる。
「カンペキに決まったな」
フライマンがタックルに入ろうとした瞬間、コールマンはサイドステップでかわし、カウンターで右ストレートを放った。
フライマンが倒れたと同時にレフェリーは間に入って試合をストップ。
フライマンはまだダウンしたままだ。
【ダメだ、担架だ!早く担架を用意するんだ!】
リングドクターが担架を要請する。
「カウンターでモロに食らったから、かなりのダメージなんだろうな」
「あぁ…何せ、コールマンはボクシングだけでも世界ランカー並のテクニックだしな」
会場内はあまりに早く試合が終わったせいで、観客からのブーイングが鳴り止まない。
「バカか、コイツら!真剣勝負なんだから、あっという間に試合が決まる事だってあるのに、それがイヤならプロレスの試合でも観てろっての!」
ヒロトはブーイングを飛ばす観客を見て吐き捨てる様に言った。
「真剣勝負って…それじゃ、プロレスは真剣勝負じゃないの?」
楓はキョトンとしながらヒロトに質問する。
「ん~、プロレスは何つーか、真剣勝負じゃないけど、真剣勝負なところもあるし…まぁ、ファンタジーな闘いみたいなモンかな、ハハッ」
「ふ~ん、私にはよく分からないや」
リング上では担架が運ばれ、フライマンは数人がかりで担架に乗せられ、リングを下りた。
勝者のコールマンは妻ジェニファーと抱き合い、熱い口づけを交わした。
「それにしても…何もリング上でアツアツぶりを見せつけなくてもいいのに」
「そこが日本人と違うところだろ」
「そうだけどさぁ、リング上でしかも、何万もの観客の前で奥さんとキスするかね、フツー」
「そうかなぁ、私は羨ましいと思うけどなぁ」
楓はああいうラブラブな感じがいいのか。
勝利者賞の盾と表彰を受け取り、観客に手を振ってコールマンはリングを下りた。
メインイベントが終了した。
この後はロイヤルリングサイド、つまりオレたちVIP席の観客は試合を終えた選手達と一緒にレセプションと称した打ち上げに参加出来る。
ヒロトは試合よりもレセプションの方が楽しみだと言う。
「選手と記念撮影撮れるし、サインだって貰えるじゃん!」
「そんな事より、選手に迷惑かけるなよ!」
「大丈夫だよ、まず手始めにコールマンからサイン貰おうかな」
「おい、止めとけって」
そんな事はお構い無しに、ヒロトは会場の隅で談笑しているコールマンにサインをねだった。
コールマンはイヤな顔せず、サラサラとサインを書いてヒロトに渡した。
「やった!センキュー、ミスターコールマン!」
大はしゃぎでヒロトは戻ってきた。
「おい、あんまりデカい声出すなよ!」
「いいじゃねぇかよ、せっかくのレセプションなんだし」
すると、カズがこちらへやって来た。
「相変わらずだな、ヒロトは」
「おぉ、カズ!今日はセコンドだったけど、次の試合はいつだよ」
「そうだよ、再起戦楽しみにしてるぜぇ」
「まだ決まってないけど、いつでも試合できる状態だよ」
大晦日の試合でカズは眼窩底骨折という大怪我を負った。
今は怪我も癒えて、練習を再開している。
「凄かったな、水嶋のカーフキックは」
「ぶっちゃけ、あのカーフキック2発でKOしたようなモンだからな」
「そうだね、彼もあのキックを試合前から狙っていたし」
シウバの足狙いだったワケか。
「ところで、シウバのセコンドはリョースケの兄貴だって聞いたけど…リョースケ、あんなハーフみたいな兄貴いたんだ?」
「う、うん…まぁ、色々あって、な…」
経緯を説明するのが面倒で、テキトーにはぐらかした。
そう言えば、兄はどこだろう?
オレは会場を見渡した。
それらしき姿は無い。
もしかしたら、既に会場を後にしたのだろうか。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる