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全寮制高校での3年間
道具買い揃えようぜ!
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オレたちは週三回、夕飯後の二時間レクリエーションルームで小久保さんから総合格闘技を学ぶようになった。
と言ってもサンドバッグやグローブ、ヘッドギア等何も無く、
最初の頃は基礎体力を養う為、腕立て伏せや腹筋、スクワットという筋トレを行っていた。
別に総合格闘技じゃなくても良かったのだが、どうせ鍛えるなら格闘技が出来る方が良いという気軽な考えでトレーニングをしてみたが、これがかなりキツい…
「おいおい。まだ少ししかやってないんだぞ!もうバテたのか?」
小久保さんがオレたちの体力の無さに呆れる程、基礎体力は皆無に等しかった。
運動はキライじゃないが、筋トレはどうも…
特にヒロトはスクワットをしても息が上がってへばってしまう。
オレとカズはそれなりに小久保さんの言われた通りの回数をこなす事が出来るが、次の日筋肉痛で体育の授業の時はまともに動けない。
それでも3人で決めて小久保さんにお願いした手前、やっぱ無理です!
なんて事はカッコ悪くて言えない。
もしこれが一人だったらソッコーで止めていただろうが、3人でやっているから何とか筋トレも一通りこなせるようになってきた。
やがて身体に筋肉が付いてきて、部屋では意味も無く上半身裸になって鏡に映る自分の姿を何度も見て、腹筋が割れてきた、とか上腕二頭筋が発達してきたとか言い合ってボディビルダーのようにポージングして鍛え上げられてきた身体を見てはウットリしていた。
ヒロトもポッチャリな体型から徐々にスリムというか、引き締まった身体になり、上半身が徐々に筋肉に覆われていく姿を見る度にまた頑張ろう、と言って黙々とトレーニングに励んだ。
ただ問題なのはいつになったらパンチやキックの打ち方、寝技の技術を教えてくれるのだろうか?
小久保さんは何も言わず、いつものように筋トレをこなせ、としか言わない。
「やっぱさぁ、グローブとかサンドバッグあった方がいいよなぁ」
ヒロトの言うとおり、レクリエーションルームにはジムみたいなサンドバッグやグローブなんて置いてない。
来る日も来る日も筋トレ、しかも段々と回数は増えてくる。
「…これじゃただの筋トレだよね」
練習が終わり、汗だくになりながらカズはシャツを脱ぎ、タオルで汗を拭いていた。
確かにそうだよな、いつになったら格闘技っぽいトレーニングを教えてくれるのやら…
そもそも道具も何も無い場所で行っているし、勝手にサンドバッグやらグローブやらを置いておくワケにはいかない。
しかも床はフローリングで、もし寝技の練習をするにしても柔道やレスリングのように畳かマットが必要になる。
小久保さんにいつになったら本格的な打撃や寝技のトレーニングを教えてくれるのか何度も聞いてみたが、まだ基礎体力が十分じゃないお前らにはまだ早い、と言われてしまい、オレたちは徐々にヤル気を失っていた。
「どうする?もう止めようか?」
部屋でオレは二人に聞いてみた。
やる事は変わらず、筋トレばかりだ。
「…もうちょっとだけ頑張ってみようよ」
カズは3人の中でも一番基礎体力があり、吸収力も早い。
「今思ったんだけどさ、サンドバッグとかグローブって自前で揃えなきゃならないのかな?」
…そうか、自前で揃えなきゃダメかも。
ヒロトの言う通りかもしれない。
「じゃ、オレたちで金出し合ってグローブとかミット買おうぜ。お前らいくらか出せるか?」
オレはヒロトとカズに持ち金がいくらあるのか聞いてみた。
「う~ん、オレあんまり親から金貰ってないし、出しても一万ぐらいだなぁ」
「オレ、三万ぐらいなら何とか…」
ヒロトが一万でカズは三万か…
となるとオレが残りの金を出すしかないな…
幸いおじさんから貰った数十万の金は手を付けてない。
オレたちは部屋で格闘技専門ショップのHPを開き、人数分のオープンフィンガーグローブとヘッドギア、マウスピースにレガース、サンドバッグは許可なしに吊るしておくワケにはいかないので、キックミットとパンチングミットを二つづつ購入した。
「出来るだけ長持ちするよう、良いヤツを買おうぜ」
「お前、一万しか出さないクセに高い物買おうとしてんのかよ!」
合計で10万以上かかってしまった…
結局ほとんどの金はオレが出すはめになってしまったが、商品が届いた時は嬉しくて思わずグローブをはめ、レガースを付けて、ヒロトがキックミットを持ち、オレがバスーン!と蹴りを入れてみた。
「スゲー、いいよこれ!この感触たまんねぇよ!」
「オレも、打ってみるからリョースケ構えて…」
オレは両手にパンチングミットをはめ、カズの前で構えた。
【スパーン!】
「うおっ…危ねっ!」
カズのあまりのパンチ力にオレは後ろに吹っ飛ばされた。
スゲーな、コイツのパンチ力は…
「とにかく明日小久保さんが来る前に用意しておこうぜ」
「そうだな、これ見て小久保さん驚くだろうな」
「早く明日になんないかな…」
オレたちはその夜、いつもなら勉強するはずなのに、届いたばかりのグローブやヘッドギア等を見ては、タオルや手拭いで丹念に磨いて、いつの間にか寝てしまった。
翌日、レクリエーションルームで道具を揃えて小久保が来るのを待っていた。
「おーし、今日もやるか!…っ!何だ?お前らミットやグローブ買ったのか?」
レクリエーションルームの扉を開け、小久保さんはオレたちがオープンフィンガーグローブをはめ、ヘッドギアを被り、脛にはレガースを着用しているのを見て、しばし固まっていた。
これを機に本格的な総合格闘技の技術を習う事になった。
と言ってもサンドバッグやグローブ、ヘッドギア等何も無く、
最初の頃は基礎体力を養う為、腕立て伏せや腹筋、スクワットという筋トレを行っていた。
別に総合格闘技じゃなくても良かったのだが、どうせ鍛えるなら格闘技が出来る方が良いという気軽な考えでトレーニングをしてみたが、これがかなりキツい…
「おいおい。まだ少ししかやってないんだぞ!もうバテたのか?」
小久保さんがオレたちの体力の無さに呆れる程、基礎体力は皆無に等しかった。
運動はキライじゃないが、筋トレはどうも…
特にヒロトはスクワットをしても息が上がってへばってしまう。
オレとカズはそれなりに小久保さんの言われた通りの回数をこなす事が出来るが、次の日筋肉痛で体育の授業の時はまともに動けない。
それでも3人で決めて小久保さんにお願いした手前、やっぱ無理です!
なんて事はカッコ悪くて言えない。
もしこれが一人だったらソッコーで止めていただろうが、3人でやっているから何とか筋トレも一通りこなせるようになってきた。
やがて身体に筋肉が付いてきて、部屋では意味も無く上半身裸になって鏡に映る自分の姿を何度も見て、腹筋が割れてきた、とか上腕二頭筋が発達してきたとか言い合ってボディビルダーのようにポージングして鍛え上げられてきた身体を見てはウットリしていた。
ヒロトもポッチャリな体型から徐々にスリムというか、引き締まった身体になり、上半身が徐々に筋肉に覆われていく姿を見る度にまた頑張ろう、と言って黙々とトレーニングに励んだ。
ただ問題なのはいつになったらパンチやキックの打ち方、寝技の技術を教えてくれるのだろうか?
小久保さんは何も言わず、いつものように筋トレをこなせ、としか言わない。
「やっぱさぁ、グローブとかサンドバッグあった方がいいよなぁ」
ヒロトの言うとおり、レクリエーションルームにはジムみたいなサンドバッグやグローブなんて置いてない。
来る日も来る日も筋トレ、しかも段々と回数は増えてくる。
「…これじゃただの筋トレだよね」
練習が終わり、汗だくになりながらカズはシャツを脱ぎ、タオルで汗を拭いていた。
確かにそうだよな、いつになったら格闘技っぽいトレーニングを教えてくれるのやら…
そもそも道具も何も無い場所で行っているし、勝手にサンドバッグやらグローブやらを置いておくワケにはいかない。
しかも床はフローリングで、もし寝技の練習をするにしても柔道やレスリングのように畳かマットが必要になる。
小久保さんにいつになったら本格的な打撃や寝技のトレーニングを教えてくれるのか何度も聞いてみたが、まだ基礎体力が十分じゃないお前らにはまだ早い、と言われてしまい、オレたちは徐々にヤル気を失っていた。
「どうする?もう止めようか?」
部屋でオレは二人に聞いてみた。
やる事は変わらず、筋トレばかりだ。
「…もうちょっとだけ頑張ってみようよ」
カズは3人の中でも一番基礎体力があり、吸収力も早い。
「今思ったんだけどさ、サンドバッグとかグローブって自前で揃えなきゃならないのかな?」
…そうか、自前で揃えなきゃダメかも。
ヒロトの言う通りかもしれない。
「じゃ、オレたちで金出し合ってグローブとかミット買おうぜ。お前らいくらか出せるか?」
オレはヒロトとカズに持ち金がいくらあるのか聞いてみた。
「う~ん、オレあんまり親から金貰ってないし、出しても一万ぐらいだなぁ」
「オレ、三万ぐらいなら何とか…」
ヒロトが一万でカズは三万か…
となるとオレが残りの金を出すしかないな…
幸いおじさんから貰った数十万の金は手を付けてない。
オレたちは部屋で格闘技専門ショップのHPを開き、人数分のオープンフィンガーグローブとヘッドギア、マウスピースにレガース、サンドバッグは許可なしに吊るしておくワケにはいかないので、キックミットとパンチングミットを二つづつ購入した。
「出来るだけ長持ちするよう、良いヤツを買おうぜ」
「お前、一万しか出さないクセに高い物買おうとしてんのかよ!」
合計で10万以上かかってしまった…
結局ほとんどの金はオレが出すはめになってしまったが、商品が届いた時は嬉しくて思わずグローブをはめ、レガースを付けて、ヒロトがキックミットを持ち、オレがバスーン!と蹴りを入れてみた。
「スゲー、いいよこれ!この感触たまんねぇよ!」
「オレも、打ってみるからリョースケ構えて…」
オレは両手にパンチングミットをはめ、カズの前で構えた。
【スパーン!】
「うおっ…危ねっ!」
カズのあまりのパンチ力にオレは後ろに吹っ飛ばされた。
スゲーな、コイツのパンチ力は…
「とにかく明日小久保さんが来る前に用意しておこうぜ」
「そうだな、これ見て小久保さん驚くだろうな」
「早く明日になんないかな…」
オレたちはその夜、いつもなら勉強するはずなのに、届いたばかりのグローブやヘッドギア等を見ては、タオルや手拭いで丹念に磨いて、いつの間にか寝てしまった。
翌日、レクリエーションルームで道具を揃えて小久保が来るのを待っていた。
「おーし、今日もやるか!…っ!何だ?お前らミットやグローブ買ったのか?」
レクリエーションルームの扉を開け、小久保さんはオレたちがオープンフィンガーグローブをはめ、ヘッドギアを被り、脛にはレガースを着用しているのを見て、しばし固まっていた。
これを機に本格的な総合格闘技の技術を習う事になった。
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