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新年
兄のことで頭がいっぱい
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とある密室での会話。
「Contar seus pecados(お前の犯した罪を数えろ)」
男はポルトガル語で歩み寄り、追い詰めた。
「…な、何だよ、何言ってるか全然分からねえよ!」
もう一方の男は日本語で答える。
だが、男は恐怖に怯えていた。
「Você se lembra do meu rosto?(まさか俺の顔を忘れたワケじゃないよな?)」
男は尚もポルトガル語で日本人へ質問する。
「…だから何言ってるか全然分からねえんだよ!」
日本人の男は後退りする。
「お前をコロス…」
ポルトガル語を操る男は、日本語で殺すと告げた…
「な、何で俺が殺されなきゃならないんだよ!」
「自分の胸に手を当ててみろ…」
そう言うやいなや、ポルトガル語の男は素早く首に絡み付き、力を込めて日本人と男の首をへし折った。
一瞬の出来事だった。
声を上げる間もなく、日本人の男は息絶えた。
「No inferno se arrependa(地獄で後悔しろ)」
男はそう言い放ち、密室の扉を開け、外へ出ていった。
オレはヒロトと楓の3人で初詣へと出掛けた。
だが、オレの頭の中には兄の事でいっぱいで、他に何も考えがつかない。
あれだけ会いたいと思っていた兄がKINGDOMの大会のセコンドに付いていたとは…
おまけにおじさんは以前から兄の存在を知っていたのに、オレには全く教えてくれなかった。
何故だ、どうしてだ?
「…亮輔。おい、亮輔」
ヒロトの声で、ふと我にかえった。
「…え?何だよ」
「お前、さっきからボーッとしてどうしたんだよ?まさかアニキの事か?」
ヒロトの言うとおりだ。
先程、控え室で兄と初めて会った時からずっと兄の事ばかりを考えていた。
「いいじゃん、亮ちゃんにお兄ちゃんが出来たんだから、無理もないよ」
楓はオレの手を繋ぎながら、フォローしてくれる。
「…んー、まぁビックリしたって言えばビックリしたけど。
でもまさかあんな場所で会うとは思いもよらかったからな」
邂逅というのだろうか、こういう場合は。
「それにしても寒いなぁ~。早いとこ帰ろうぜ」
賽銭を済ませ、オレたちは神社を後にした。
駅でヒロトと別れ、オレと楓の二人だけになった。
「…ねぇ、亮ちゃん」
「ん?」
楓は何か言おうとしていた。
「…あのね。今日はまだ少し付き合ってくれるかな?」
下を向きながら、モジモジしながら楓はボソッと言った。
「えっ?別にいいけど、何処へ行く?」
「…二人きりになれる場所で…」
二人きりって、まさか元旦からホテルかよ?
「ダメ?」
上目遣いでオレを見た。
「…いや、ダメじゃないけど」
残念ながら、今はそんな気分じゃないんだよな。
「じゃあ、行こうよ」
楓はオレの手を引っ張りながら、家とは逆方向の電車に乗り込んだ。
「Contar seus pecados(お前の犯した罪を数えろ)」
男はポルトガル語で歩み寄り、追い詰めた。
「…な、何だよ、何言ってるか全然分からねえよ!」
もう一方の男は日本語で答える。
だが、男は恐怖に怯えていた。
「Você se lembra do meu rosto?(まさか俺の顔を忘れたワケじゃないよな?)」
男は尚もポルトガル語で日本人へ質問する。
「…だから何言ってるか全然分からねえんだよ!」
日本人の男は後退りする。
「お前をコロス…」
ポルトガル語を操る男は、日本語で殺すと告げた…
「な、何で俺が殺されなきゃならないんだよ!」
「自分の胸に手を当ててみろ…」
そう言うやいなや、ポルトガル語の男は素早く首に絡み付き、力を込めて日本人と男の首をへし折った。
一瞬の出来事だった。
声を上げる間もなく、日本人の男は息絶えた。
「No inferno se arrependa(地獄で後悔しろ)」
男はそう言い放ち、密室の扉を開け、外へ出ていった。
オレはヒロトと楓の3人で初詣へと出掛けた。
だが、オレの頭の中には兄の事でいっぱいで、他に何も考えがつかない。
あれだけ会いたいと思っていた兄がKINGDOMの大会のセコンドに付いていたとは…
おまけにおじさんは以前から兄の存在を知っていたのに、オレには全く教えてくれなかった。
何故だ、どうしてだ?
「…亮輔。おい、亮輔」
ヒロトの声で、ふと我にかえった。
「…え?何だよ」
「お前、さっきからボーッとしてどうしたんだよ?まさかアニキの事か?」
ヒロトの言うとおりだ。
先程、控え室で兄と初めて会った時からずっと兄の事ばかりを考えていた。
「いいじゃん、亮ちゃんにお兄ちゃんが出来たんだから、無理もないよ」
楓はオレの手を繋ぎながら、フォローしてくれる。
「…んー、まぁビックリしたって言えばビックリしたけど。
でもまさかあんな場所で会うとは思いもよらかったからな」
邂逅というのだろうか、こういう場合は。
「それにしても寒いなぁ~。早いとこ帰ろうぜ」
賽銭を済ませ、オレたちは神社を後にした。
駅でヒロトと別れ、オレと楓の二人だけになった。
「…ねぇ、亮ちゃん」
「ん?」
楓は何か言おうとしていた。
「…あのね。今日はまだ少し付き合ってくれるかな?」
下を向きながら、モジモジしながら楓はボソッと言った。
「えっ?別にいいけど、何処へ行く?」
「…二人きりになれる場所で…」
二人きりって、まさか元旦からホテルかよ?
「ダメ?」
上目遣いでオレを見た。
「…いや、ダメじゃないけど」
残念ながら、今はそんな気分じゃないんだよな。
「じゃあ、行こうよ」
楓はオレの手を引っ張りながら、家とは逆方向の電車に乗り込んだ。
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