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インターカンファレンス(交流戦)
トレードされた恨み
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開幕から1ヶ月以上経った。
今年のペナントは開幕早々から様々な出来事が起こった。
開幕戦で財前が日米史上初のサイクルホームランを達成。
キングダムを飛び出し、アメリカでコーチをしていた吉川が4年ぶりに日本球界に復帰。
そのキングダムは翔田のスランプで最下位に転落し、無期限の登録抹消。
更には浅野監督が辞意を表明。
新たに生まれ変わった名古屋99ersが首位を独走し、スカイウォーカーズとの試合には売上の10%を賞金に賭けるという提案が採用された。
ちなみに両チームとも、その賞金の使い道は全て支援活動に回し、球場の一部シートを購入して子供たちを招待する事や、福祉団体に寄付する事でプロ野球機構からOKが出た。
そして気になる順位表だが、
1名古屋99ers
2武蔵野スカイウォーカーズ1.5差
3長州レボリューションズ3.0差
4東北マーリンズ4.5差
5北陸レッズ5.5差
6東京キングダム10.5差
昨年スカイウォーカーズと最終戦まで優勝を争ったマーリンズは4位に低迷、キングダムはぶっちぎりの最下位という、波瀾含みの展開。
そして今日から約1ヶ月に及ぶ、交流戦(インターカンファレンス)がスタートする。
スカイウォーカーズは大阪に移動し、昨年まで奈良に本拠地を構えたドルフィンズとの二連戦が始まる。
今年から本拠地を大阪に移し、【大阪ドルフィンズ】というチーム名に変えたドルフィンズは、現在アポロリーグ2位と絶好の位置をキープしている。
かつては球界を代表するエース、天海昴が在籍。
トレードでスカイウォーカーズに入った鴻池もかつてはドルフィンズに所属。
更には現在投手3部門を独占する真咲もドルフィンズでプロ生活をスタートした。
そういう意味では、ドルフィンズはスカイウォーカーズと深い関係がある。
ドルフィンズの新球場、Osaka Dolphin Centerは収容人数約4万人、左右対称の新古主義のデザインが特徴の屋外球場で、外野やファールグラウンドが広く、中堅から本塁へ向かって吹く風が打球を押し戻すことも手伝い、本塁打が出にくい。
ドルフィンズは監督の矢幡拓郎、息子で4番を打つ正捕手の聖という親子鷹のチームでもある。
拓郎は球場が投手有利という利点を生かし、投手力に力を入れた守りの野球で、首位の千葉ヤンキースに0.5ゲーム差と猛追する。
試合前の練習中、一塁側ドルフィンズベンチから加勢が挨拶に出向いた。
「お久しぶりです…どうすか、調子は?」
榊に対し、帽子を取って頭を下げた。
「おぉ~、久しぶりだな!
んー、まぁまぁってとこかな」
加勢はスカイウォーカーの中継ぎエースとして、昨年の日本一に貢献した。
ドルフィンズに移っても、中継ぎエースとして活躍。
現在3勝0敗、8ホールド、2セーブ。防御率は2.37と安定した成績を残している。
「そうすか…まぁ、ボクが出てきたら皆打てないと思いますけど、お手柔らかにお願いしますよ」
柔らかな口調だが、言葉にはトゲが含んでいる。
「何だよ、随分と挑戦的な事言うじゃねえか」
「だって、誰かのせいでボクは大阪に吹っ飛ばされたんですから…」
白地の赤の文字で【Dolphins】とプリントされたユニフォームを着て、背中にはスカイウォーカーズの時と同じ39の背番号を背負っている。
「何だテメー…トレードされた事を根に持ってるのかよ」
穏やかな榊の表情が一変した。
「いえ、トレードはプロ野球選手にとって付きものですから、その辺は全く恨んでないです」
薄ら笑いを浮かべながら答える。
「それにしては、やたらと強気じゃねぇかよ」
「そうですかぁ…そう見えるだけじゃないすか?」
「で、何の用だよ?」
加勢はベンチの左隅を指した。
「自分はトレードされた事は全く気にしてないんです。
ただね…よりによって、ボクのトレードの相手があんなヤツだったせいか、物凄いガッカリしましたよ」
加勢はベンチの隅でボーッとしている鴻池の隣に座った。
「やぁ、人気球団に移った感想はどうだい?」
「ん?なんや自分?」
鴻池は訝しげな表情で加勢を見る。
「キミと入れ替わりでドルフィンズに移った加勢という者だが…なる程、不人気球団から人気球団に移籍すると、不人気球団の選手を相手にしなくなるのか」
加勢は嫌味を言う。
「あぁ、オレとトレードでコッチに移ったヤツか。
どうだ、ソッチは?
まぁ、一癖も二癖もある連中ばっかやけど、せいぜい頑張ってくれや」
「せいぜい頑張れってか…
フフっ…
ふざけるなっ!何でオレが、こんなヤツの為にトレードされなきゃならないんだ!」
「おい、加勢!
テメー、そんなつまんねぇ事を言いにここへ来たのかっ!」
榊が胸ぐらを掴んだ。
「へっ、二言目にはそれかよ…
でもまぁ、これで良かったよ。
何せ、こんな暴力監督から離れる事が出来たんだ。
ありがとうございます、暴力監督様」
「テメー、調子に乗ってんじゃねぇ!」
榊がブチ切れた。
「止めて下さい、監督!」
「榊さん、これから試合だと言うのに、ケンカしてる場合ですかっ!」
選手やコーチが必死になって榊を止める。
「離せ、おいっ!
加勢っ!テメー、ケンカ売ってんのか、コラァ!」
「あ~ぁ、こんな暴力監督のせいで日本のプロ野球はダメになるんだよな…
まぁ、他所のチームだしオレには関係ないか。
そんなワケで今日はヨロシク頼みますよ、榊大監督…」
不敵な笑みを浮かべ、加勢は自軍のベンチに戻った。
「あのヤロー、ふざけたマネしやがって!
アイツがマウンドに上がったら、空振りしたフリしてバット投げつけてやれ!」
「バカヤロー、そんな事指示したら球界追放になるぞ!」
中田野手総合コーチが一喝する。
「それにしても、加勢くんはウチにいた時と比べて、随分ふてぶてしくなったなぁ」
櫻井の言う通り、加勢の顔つきが以前と比べて野性味が増している。
ヒゲをたくわえたせいもあるが、スカイウォーカーズにいた頃は、少し軟弱なイメージがあった。
ドルフィンズに移籍後、ピッチングをガラッと変え、更なるパワーアップを成し遂げた。
今年のペナントは開幕早々から様々な出来事が起こった。
開幕戦で財前が日米史上初のサイクルホームランを達成。
キングダムを飛び出し、アメリカでコーチをしていた吉川が4年ぶりに日本球界に復帰。
そのキングダムは翔田のスランプで最下位に転落し、無期限の登録抹消。
更には浅野監督が辞意を表明。
新たに生まれ変わった名古屋99ersが首位を独走し、スカイウォーカーズとの試合には売上の10%を賞金に賭けるという提案が採用された。
ちなみに両チームとも、その賞金の使い道は全て支援活動に回し、球場の一部シートを購入して子供たちを招待する事や、福祉団体に寄付する事でプロ野球機構からOKが出た。
そして気になる順位表だが、
1名古屋99ers
2武蔵野スカイウォーカーズ1.5差
3長州レボリューションズ3.0差
4東北マーリンズ4.5差
5北陸レッズ5.5差
6東京キングダム10.5差
昨年スカイウォーカーズと最終戦まで優勝を争ったマーリンズは4位に低迷、キングダムはぶっちぎりの最下位という、波瀾含みの展開。
そして今日から約1ヶ月に及ぶ、交流戦(インターカンファレンス)がスタートする。
スカイウォーカーズは大阪に移動し、昨年まで奈良に本拠地を構えたドルフィンズとの二連戦が始まる。
今年から本拠地を大阪に移し、【大阪ドルフィンズ】というチーム名に変えたドルフィンズは、現在アポロリーグ2位と絶好の位置をキープしている。
かつては球界を代表するエース、天海昴が在籍。
トレードでスカイウォーカーズに入った鴻池もかつてはドルフィンズに所属。
更には現在投手3部門を独占する真咲もドルフィンズでプロ生活をスタートした。
そういう意味では、ドルフィンズはスカイウォーカーズと深い関係がある。
ドルフィンズの新球場、Osaka Dolphin Centerは収容人数約4万人、左右対称の新古主義のデザインが特徴の屋外球場で、外野やファールグラウンドが広く、中堅から本塁へ向かって吹く風が打球を押し戻すことも手伝い、本塁打が出にくい。
ドルフィンズは監督の矢幡拓郎、息子で4番を打つ正捕手の聖という親子鷹のチームでもある。
拓郎は球場が投手有利という利点を生かし、投手力に力を入れた守りの野球で、首位の千葉ヤンキースに0.5ゲーム差と猛追する。
試合前の練習中、一塁側ドルフィンズベンチから加勢が挨拶に出向いた。
「お久しぶりです…どうすか、調子は?」
榊に対し、帽子を取って頭を下げた。
「おぉ~、久しぶりだな!
んー、まぁまぁってとこかな」
加勢はスカイウォーカーの中継ぎエースとして、昨年の日本一に貢献した。
ドルフィンズに移っても、中継ぎエースとして活躍。
現在3勝0敗、8ホールド、2セーブ。防御率は2.37と安定した成績を残している。
「そうすか…まぁ、ボクが出てきたら皆打てないと思いますけど、お手柔らかにお願いしますよ」
柔らかな口調だが、言葉にはトゲが含んでいる。
「何だよ、随分と挑戦的な事言うじゃねえか」
「だって、誰かのせいでボクは大阪に吹っ飛ばされたんですから…」
白地の赤の文字で【Dolphins】とプリントされたユニフォームを着て、背中にはスカイウォーカーズの時と同じ39の背番号を背負っている。
「何だテメー…トレードされた事を根に持ってるのかよ」
穏やかな榊の表情が一変した。
「いえ、トレードはプロ野球選手にとって付きものですから、その辺は全く恨んでないです」
薄ら笑いを浮かべながら答える。
「それにしては、やたらと強気じゃねぇかよ」
「そうですかぁ…そう見えるだけじゃないすか?」
「で、何の用だよ?」
加勢はベンチの左隅を指した。
「自分はトレードされた事は全く気にしてないんです。
ただね…よりによって、ボクのトレードの相手があんなヤツだったせいか、物凄いガッカリしましたよ」
加勢はベンチの隅でボーッとしている鴻池の隣に座った。
「やぁ、人気球団に移った感想はどうだい?」
「ん?なんや自分?」
鴻池は訝しげな表情で加勢を見る。
「キミと入れ替わりでドルフィンズに移った加勢という者だが…なる程、不人気球団から人気球団に移籍すると、不人気球団の選手を相手にしなくなるのか」
加勢は嫌味を言う。
「あぁ、オレとトレードでコッチに移ったヤツか。
どうだ、ソッチは?
まぁ、一癖も二癖もある連中ばっかやけど、せいぜい頑張ってくれや」
「せいぜい頑張れってか…
フフっ…
ふざけるなっ!何でオレが、こんなヤツの為にトレードされなきゃならないんだ!」
「おい、加勢!
テメー、そんなつまんねぇ事を言いにここへ来たのかっ!」
榊が胸ぐらを掴んだ。
「へっ、二言目にはそれかよ…
でもまぁ、これで良かったよ。
何せ、こんな暴力監督から離れる事が出来たんだ。
ありがとうございます、暴力監督様」
「テメー、調子に乗ってんじゃねぇ!」
榊がブチ切れた。
「止めて下さい、監督!」
「榊さん、これから試合だと言うのに、ケンカしてる場合ですかっ!」
選手やコーチが必死になって榊を止める。
「離せ、おいっ!
加勢っ!テメー、ケンカ売ってんのか、コラァ!」
「あ~ぁ、こんな暴力監督のせいで日本のプロ野球はダメになるんだよな…
まぁ、他所のチームだしオレには関係ないか。
そんなワケで今日はヨロシク頼みますよ、榊大監督…」
不敵な笑みを浮かべ、加勢は自軍のベンチに戻った。
「あのヤロー、ふざけたマネしやがって!
アイツがマウンドに上がったら、空振りしたフリしてバット投げつけてやれ!」
「バカヤロー、そんな事指示したら球界追放になるぞ!」
中田野手総合コーチが一喝する。
「それにしても、加勢くんはウチにいた時と比べて、随分ふてぶてしくなったなぁ」
櫻井の言う通り、加勢の顔つきが以前と比べて野性味が増している。
ヒゲをたくわえたせいもあるが、スカイウォーカーズにいた頃は、少し軟弱なイメージがあった。
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