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新団体設立
プレ旗揚げ戦を提案
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オレは一足先に帰国した佐藤さんと、新事務所の社長室で話し合いをした。
「あのルールは何ですか?立ち技と総合のルールとは良いとして、問題はレスリングのルールです。
あのスタイルじゃ、道場でやってるスパーリングと変わらないじゃないですか!
一体誰があの試合形式に決めたんですか?」
オレはレスリング部門のルールが細かすぎて納得がいかない。
従来のプロレススタイルでいいじゃないか、斬新なアイデアを打ち出すのは構わない。だが、あのスタイルのレスリングで客は満足するのだろうか?甚だ疑問だ。
佐藤さんも困惑気味にルールを決めた経緯を話した。
「うーん、確かにお前の言う通り、あのレスリングスタイルじゃ観客は満足しないだろうな…
だがな、会長(カイザー大和)の連れてきたスポンサーというのが、大の格闘技ファンなんだが、プロレスに偏見を持っているらしいんだ。
もっとルールに則ったスタイルのレスリングにしてくれって言われてな…
それがスポンサーになる条件というらしいんだ」
会長の連れてきたスポンサーはIT企業でもかなり有名な会社で、経営面に関しては何の問題も無い。
だがスポンサーって言うが、元々はWWAのオーナーがWFEとTMNを兼ねて行うんじゃないのか?
何故、新しいスポンサーが必要なのだ?
オレは経営面の事は全く分からない。だがオーナーがいるのにわざわざ新しいスポンサーを見つける必要があるのだろうか。
「佐藤さん、もしかしてTMNはWWAから完全独立する為に新たなスポンサーが必要だったんじゃないですか?」
オレはその疑問をぶつけてみた。
「…いずれ分かる事だろうから、正直に話すと、会長がWWAを今のオーナーに売却して、新たに団体を作る考えだったらしい。
公の場では、その売却した金で隠居生活を送る、なんて言ってたが、本心はWWAから離れて新たな団体を設立するつもりだったらしい。
まぁ、その辺は会長とスポンサーとの間でどんな条件で話をしたのか知らんが、とにかく会長はWWAに見切りをつけて自分が先頭に立ってTMNという団体を作りたかったらしい…
何せ、現役時代から自分が目立つ事なら何でもやる人だったからな。
まぁ、そのお陰でオレや山田さんもあの人に振り回されっぱなしだよ」
結局はあの人が目立ちたいが為に作った団体がTMNだということなのか?
「話が全然違うじゃないですか!プロレス路線と格闘技路線の二つに分ける為にこの団体を作ったんじゃないですか?
申し訳ないですが、こんな事ならオレは抜けます。
オクタゴンのリングでも構わない、立ち技、総合という部門があってもそれはそれで斬新なアイデアだと思いますが、あのレスリングスタイルだけは納得いきません。
いいじゃないですか、従来のプロレスで。
そのスポンサーがプロレスに偏見を持っているというなら、他のスポンサーでも何の問題は無いでしょう?」
あの細かすぎるルールのレスリングだけは出来ない。
ただひたすら寝技になって関節を取り合う打撃無しの総合格闘技みたいなもんだ。
プロレスってもっと曖昧でダイナミックで子供から年寄りまでが楽しめる試合だ。
それをこんな形に変えてしまうなんて。
「今お前に抜けられるとウチは非常に困る!神宮寺、とにかくやるだけやってみてくれないだろうか。頼む、この通りだ」
佐藤さんは頭を下げてオレに頼み込んでいるが、そう簡単に首を縦に振る事は出来ない。
「旗揚げの前に、小規模の会場でプレ旗揚げ戦をやってみるのはどうでしょうか?
このスタイルで大晦日に旗揚げ戦をやるのにはちょっと難しいような気がするんです。
ですから、旗揚げ戦の前にプレ旗揚げを行って観客のリアクションで様子を見るという事はダメですかね?」
オレはぶっつけ本番で旗揚げ戦を行うにはあまりにも不安要素でいっぱいだ。
その前にプレ旗揚げ戦を行い、ファンはどう捉えるか、オレは旗揚げ戦を成功させるにはこの方法が一番良いと思った。
勿論その時は佐藤さんや山田さん、会長のカイザー大和に新たなスポンサーも会場で試合を観戦してもらう。
「うーん、果たして会長が良いと言うかどうか…」
佐藤さんの歯切れの悪い言葉しか出て来ない。
「佐藤さんもかつてはプロレスラーだったから分かるでしょう?あんなルールにがんじがらめになった試合をプロレスだなんて誰が言うと思いますか?」
プレ旗揚げ戦でエキシビションマッチのような事をやって、こういうスタイルをやります、とアピールしてファンはどう評価するのか。
もしこのスタイルでファンの反応がイマイチならば、ルールを改訂すればいい。
オレの今後のプロレス人生にも関わる大事な旗揚げ戦だ、何がなんでも成功させなければならない。
その為にプレ旗揚げ戦は重要だ。
「お前の言い分も分かるんだがな…何せあの会長の事だ、事前に知ってもらうよりも、本番であっと驚く事をやるのが好きなタイプだしなぁ」
いくらTMNの代表取締役とは言え、WWA時代の社長であり、先輩レスラーであるカイザー大和の前では何も言えない立場なのだろう。
それを知っての上で、敢えてオレは佐藤さんに進言した。
多分、会長のカイザー大和はそんな事する必要は無い、と言うだろう。
それならばオレも考えもがある。
「もし、プレ旗揚げ戦がノーと言うのなら、オレをフリーとして参戦する事にして下さい。
とてもじゃないけど、今のこのスタイルでTMNの所属だなんてとても無理です」
オレはあくまでもこのスタイルで貫き通すと言うのなら、フリーになり、スポット参戦という形でTMNの試合をしようと考えた。
「ちょっと待て!フリーって何だ?お前はここの団体所属選手って事で契約書にサインしたじゃないか!今更それを反故にするってのか?」
佐藤さんが血相を変えて声を荒げた。
契約書を盾にされたら、こっちは何も出来ない…
だが、契約書にサインした時点では、オフィシャルルールすら作成されていなかった。
こんなルールになるという事が分かってたらサインはしていない。
こっちも弁護士をたてて争おうかとも考えた。
だが、佐藤さんや山田さんはオレのワガママを聞いてくれて、イギリスで一年間のレスリング修行に行かせてくれた恩もある。
致し方ない、ここは佐藤さんの顔を立ててフリーになるのを断念した。
旗揚げまで後3ヶ月、どんな選手がリングに上がってくるのだろうか?
新道場もまだ完成していない…
どうしてWWAが二つに分裂しなきゃならないんだ?
プロレス界は昔から新団体の設立、消滅の繰り返しだ。
そんな結末にならなきゃいいんだが…
TMNという団体は吉と出るか、凶と出るか…
この時点では誰も何も予想出来なかった。
「あのルールは何ですか?立ち技と総合のルールとは良いとして、問題はレスリングのルールです。
あのスタイルじゃ、道場でやってるスパーリングと変わらないじゃないですか!
一体誰があの試合形式に決めたんですか?」
オレはレスリング部門のルールが細かすぎて納得がいかない。
従来のプロレススタイルでいいじゃないか、斬新なアイデアを打ち出すのは構わない。だが、あのスタイルのレスリングで客は満足するのだろうか?甚だ疑問だ。
佐藤さんも困惑気味にルールを決めた経緯を話した。
「うーん、確かにお前の言う通り、あのレスリングスタイルじゃ観客は満足しないだろうな…
だがな、会長(カイザー大和)の連れてきたスポンサーというのが、大の格闘技ファンなんだが、プロレスに偏見を持っているらしいんだ。
もっとルールに則ったスタイルのレスリングにしてくれって言われてな…
それがスポンサーになる条件というらしいんだ」
会長の連れてきたスポンサーはIT企業でもかなり有名な会社で、経営面に関しては何の問題も無い。
だがスポンサーって言うが、元々はWWAのオーナーがWFEとTMNを兼ねて行うんじゃないのか?
何故、新しいスポンサーが必要なのだ?
オレは経営面の事は全く分からない。だがオーナーがいるのにわざわざ新しいスポンサーを見つける必要があるのだろうか。
「佐藤さん、もしかしてTMNはWWAから完全独立する為に新たなスポンサーが必要だったんじゃないですか?」
オレはその疑問をぶつけてみた。
「…いずれ分かる事だろうから、正直に話すと、会長がWWAを今のオーナーに売却して、新たに団体を作る考えだったらしい。
公の場では、その売却した金で隠居生活を送る、なんて言ってたが、本心はWWAから離れて新たな団体を設立するつもりだったらしい。
まぁ、その辺は会長とスポンサーとの間でどんな条件で話をしたのか知らんが、とにかく会長はWWAに見切りをつけて自分が先頭に立ってTMNという団体を作りたかったらしい…
何せ、現役時代から自分が目立つ事なら何でもやる人だったからな。
まぁ、そのお陰でオレや山田さんもあの人に振り回されっぱなしだよ」
結局はあの人が目立ちたいが為に作った団体がTMNだということなのか?
「話が全然違うじゃないですか!プロレス路線と格闘技路線の二つに分ける為にこの団体を作ったんじゃないですか?
申し訳ないですが、こんな事ならオレは抜けます。
オクタゴンのリングでも構わない、立ち技、総合という部門があってもそれはそれで斬新なアイデアだと思いますが、あのレスリングスタイルだけは納得いきません。
いいじゃないですか、従来のプロレスで。
そのスポンサーがプロレスに偏見を持っているというなら、他のスポンサーでも何の問題は無いでしょう?」
あの細かすぎるルールのレスリングだけは出来ない。
ただひたすら寝技になって関節を取り合う打撃無しの総合格闘技みたいなもんだ。
プロレスってもっと曖昧でダイナミックで子供から年寄りまでが楽しめる試合だ。
それをこんな形に変えてしまうなんて。
「今お前に抜けられるとウチは非常に困る!神宮寺、とにかくやるだけやってみてくれないだろうか。頼む、この通りだ」
佐藤さんは頭を下げてオレに頼み込んでいるが、そう簡単に首を縦に振る事は出来ない。
「旗揚げの前に、小規模の会場でプレ旗揚げ戦をやってみるのはどうでしょうか?
このスタイルで大晦日に旗揚げ戦をやるのにはちょっと難しいような気がするんです。
ですから、旗揚げ戦の前にプレ旗揚げを行って観客のリアクションで様子を見るという事はダメですかね?」
オレはぶっつけ本番で旗揚げ戦を行うにはあまりにも不安要素でいっぱいだ。
その前にプレ旗揚げ戦を行い、ファンはどう捉えるか、オレは旗揚げ戦を成功させるにはこの方法が一番良いと思った。
勿論その時は佐藤さんや山田さん、会長のカイザー大和に新たなスポンサーも会場で試合を観戦してもらう。
「うーん、果たして会長が良いと言うかどうか…」
佐藤さんの歯切れの悪い言葉しか出て来ない。
「佐藤さんもかつてはプロレスラーだったから分かるでしょう?あんなルールにがんじがらめになった試合をプロレスだなんて誰が言うと思いますか?」
プレ旗揚げ戦でエキシビションマッチのような事をやって、こういうスタイルをやります、とアピールしてファンはどう評価するのか。
もしこのスタイルでファンの反応がイマイチならば、ルールを改訂すればいい。
オレの今後のプロレス人生にも関わる大事な旗揚げ戦だ、何がなんでも成功させなければならない。
その為にプレ旗揚げ戦は重要だ。
「お前の言い分も分かるんだがな…何せあの会長の事だ、事前に知ってもらうよりも、本番であっと驚く事をやるのが好きなタイプだしなぁ」
いくらTMNの代表取締役とは言え、WWA時代の社長であり、先輩レスラーであるカイザー大和の前では何も言えない立場なのだろう。
それを知っての上で、敢えてオレは佐藤さんに進言した。
多分、会長のカイザー大和はそんな事する必要は無い、と言うだろう。
それならばオレも考えもがある。
「もし、プレ旗揚げ戦がノーと言うのなら、オレをフリーとして参戦する事にして下さい。
とてもじゃないけど、今のこのスタイルでTMNの所属だなんてとても無理です」
オレはあくまでもこのスタイルで貫き通すと言うのなら、フリーになり、スポット参戦という形でTMNの試合をしようと考えた。
「ちょっと待て!フリーって何だ?お前はここの団体所属選手って事で契約書にサインしたじゃないか!今更それを反故にするってのか?」
佐藤さんが血相を変えて声を荒げた。
契約書を盾にされたら、こっちは何も出来ない…
だが、契約書にサインした時点では、オフィシャルルールすら作成されていなかった。
こんなルールになるという事が分かってたらサインはしていない。
こっちも弁護士をたてて争おうかとも考えた。
だが、佐藤さんや山田さんはオレのワガママを聞いてくれて、イギリスで一年間のレスリング修行に行かせてくれた恩もある。
致し方ない、ここは佐藤さんの顔を立ててフリーになるのを断念した。
旗揚げまで後3ヶ月、どんな選手がリングに上がってくるのだろうか?
新道場もまだ完成していない…
どうしてWWAが二つに分裂しなきゃならないんだ?
プロレス界は昔から新団体の設立、消滅の繰り返しだ。
そんな結末にならなきゃいいんだが…
TMNという団体は吉と出るか、凶と出るか…
この時点では誰も何も予想出来なかった。
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