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Roots Of Wrestling 最強
これが本物のジャーマンスープレックスだ!
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総合格闘技戦後、オレは財前とタッグを組み、外国人レスラー達とセミファイナルで試合をした。
相手の外国人レスラーの1人はザ・ギガンテスという白人で、203㌢155㌔という巨漢と、もう1人はアルディルコ・ロドリゲスという、メキシカンレスラーでメキシコのレスラー伝統のルチャリブレを使う選手だ。
ギガンテスに比べると一回りも二回りも小さいが、183㌢102㌔という、Jr.ヘビー級の選手にしては大きめな方だ。
オレはこの試合を機に、黒のショートタイツに黒のレスリングシューズという、今のレスラーとは逆行するクラシカルなコスチューム、ガウンは着ないでそのままスタイルで先に入場した。
その後に続く財前は白と赤を基調にしたロングタイツに白のニーパッドとレスリングシューズ、真っ赤で袖の無いガウンを着て、花道でいつものパフォーマンスをしてトップロープに上り、歓声を受けていた。
この試合、財前がロドリゲスを必殺のトルネードプレスで勝つというブックになっている。
青コーナーに立っている外国人コンビは身長差がありすぎて凸凹コンビという組み合わせでギガンテスの大きさが際立つ。
対する赤コーナーのオレたちは身長、体重はそれほど変わらない。
オレは186㌢108㌔、財前は188㌢112㌔で財前の方がやや大きめに見える。
オレは総合格闘技に出場した際、ウエイトを落としたままで今日の試合に挑んだ。
それまでは115~118㌔の間で試合をしていた。
コスチュームも黒のロングタイツにニーパッド、黒に白のラインの入ったレスリングシューズを着用していた。
ウエイトを落としたせいか、余分な肉が無く、引き締まった体型とコスチュームにファンはある種の期待をしていた。
総合格闘技で勝利して以来、オレの人気はかなり高く、ブラジリアン柔術家の足を破壊したローキックは格闘技専門誌やライターから高い評価を受けた。
そのローキックを連発するんじゃないか、とファンは期待している。
リングアナウンサーが各選手のコールをする。
オレは財前の前にコールされた。
まだまだプロレスでは財前より格下って事だ。
だが、場内は物凄い歓声だ。
総合格闘技で勝利したという事がそれだけ凄いってワケだ。
過去に何度も苦渋を舐めたブラジリアン柔術の選手に勝ったという事がオレのプロレスラーとしての株が上がった証拠だ。
だが、総合格闘技に勝つだけじゃダメだ。
プロレスと総合格闘技は違う。
いくらガチンコの勝負に勝っても、肝心のプロレスの試合内容が良くないとすぐに飽きられてしまう。
「スゲー人気だな、おい。でも今日はオレがピンフォールを取るから上手くやってくれよ」
財前はそう言ってリングサイドのコーナーに陣取った。
先発はオレとロドリゲスだ。
そしてレフェリーが合図をしてゴングが鳴った。
場内は神宮寺コールに包まれてる。
悪くない気分だ。
今日は財前の引き立て役だが、オレなりのプロレスで財前より注目を浴びてやる…
オレはリング中央でロドリゲスと対峙し、腕を上げた。ロドリゲスも腕を上げ、がっちりと組み合う。
そしてヘッドロックに捕らえ、首投げでロドリゲスを倒し、ハンマーロックでロドリゲスの手首を捻り上げる。
だが、ロドリゲスも軽い身のこなしで前転をクルッとして逆にオレの手首を極める。
オレはすかさずヘッドスプリングで跳ね起き、逆にロドリゲスを腕を後ろに捻り切り返した。
そこからグランドの展開となり、キーロックでロドリゲスの右腕をグイグイと締め上げる。
今キーロックだなんて技を出す選手はあまり見かけない。
こういったプロレスの基本よりも、序盤から飛んだり跳ねたり大技を繰り出す選手が多い。
今ではバックドロップやジャーマンスープレックスでさえも繋ぎ技の1つとなってしまっている。
本来ならフィニッシュホールドであるはずの技でピンフォールを取れなくなってしまっている。
前座の試合でも大技の連発で大味な試合になってしまっている。
ファンがもっと華麗でインパクトの強い技を繰り出すのを期待している。
「最近のプロレスはまるでタフガイコンテストだ」と往年の名レスラーが苦言を呈している。
互いに垂直に頭から落とす技が主流になり、受け身を取りそこなうと大ケガをしてしまう程だ。
そんなプロレスに警鐘を鳴らすかのようにオレはクラシカルで基本に忠実なレスリングをする事で原点回帰するつもりでいる。
試合はロドリゲス相手にグランドの攻防で、ロドリゲスもルチャリブレ仕込みの複合技で攻めてくる。
ルチャリブレと言えば、トペやプランチャーといった飛び技に注目しがちだが、複雑な関節技も多彩だ。
オレは今ではあまり使わない技を繰り出した。インディアンデスロックやコブラツイスト、キャメルクラッチでロドリゲスを追い詰めた。
そしてロドリゲスがロープブレイクで逃れ、技を解いた時にギガンテスとタッチした。
ギガンテスとは以前何度も闘い、高々と抱え上げるハイアングルパワーボムで何度もピンフォール敗けを喫した。
この巨漢相手にどう攻めようか…
いや、ここはとりあえずタッチだ。
オレは財前にタッチした。
財前は勢いよく飛び出し、低空のドロップキックでギガンテスの膝を狙う攻撃をした。
もんどりうって倒れ、財前はアキレス腱固めでギガンテスの足を攻め続ける。
そしてニードロップを叩き込み、ギガンテスは堪らず場外へエスケープした。
財前は来い、このヤロー!とばかりに挑発する。
その隙をついてロドリゲスが背後からドロップキックで財前を襲う。
倒れたところをギガンテスがリングに戻り、パワーを生かしたファイトで攻め立てる。
ラリアットやチョークスラムで叩きつけ、ロドリゲスにタッチした。
ロドリゲスは財前をロープに振って、ジャンプして足を首に挟み、身体ごとスイングするようにして変形のヘットシザースホイップで投げつけた。
そしてロープに向かって走り、トップロープを蹴って、ムーンサルトプレスで身体を浴びせる。
【1,2…】
財前はカウント2で跳ね返す。
そしてすかさずロドリゲスの足を抱えるようにして素早く身体を使って捻った。
ドラコンスクリューという技で、一歩間違えると膝の靭帯を断裂する程の危険な技だ。
そして財前はオレにタッチした。
オレはロドリゲスの身体を持ち上げ、パイルドライバーで叩きつけた。
今までならパワーボムをつかっていたが、これからは使うつもりは無い。
オレは倒れたロドリゲスの片足を取って、逆片エビ固めで締め上げる。
【ギブアップ?】
レフェリーがロドリゲスに問いかける。
悶絶の表情を浮かべ「NO!」と言う。
オレは更に締め上げた。
だが、ギガンテスがカットに入り、ラリアットをモロに食らい、オレは大の字に倒れた。
そこから外国人コンビのツープラトン攻撃を浴び、オレはグロッキーになった。
「タッチだタッチ!」
財前が叫ぶが、オレは捕まったままだ。
【神宮寺、どうした?今さらそんな古臭い技使ってどうすんだよ!】
【総合で使ったローキック出せ!】
【総合行って何勘違いしてんだよ!】
オレに対するヤジが容赦なく飛んでくる。
いつしか会場はブーイングによって包まれ、先程の声援はどこにいったのか、罵声ばかりだ。
オレは反撃をするようにドロップキックでギガンテスを吹っ飛ばし、財前にタッチした。
財前は片足をついているギガンテスの膝をステップにして、シャニングウィザードをヒットさせ、ロドリゲスにはコーナーのセカンドロープに飛び移り、その体勢のままジャンプしてロドリゲスの首を掴むようにDDTでロドリゲスの頭をマットに叩きつけた。
ここから場外乱闘へなだれ込み、オレはロドリゲスを場外のフェンスへ振って、椅子を持って頭に叩きつける。
ギガンテスは財前と場外で揉み合い、ラリアットを炸裂させ、財前は場外でぶっ倒れている。
ギガンテスはリングに上がり、首をかっ切るようなポーズをして、これでフィニッシュだ!というパフォーマンスをしてからリングに上がった財前を高々と抱え上げ、必殺のハイアングルパワーボムで叩きつけようとしたが、抱え上げられた際、財前はギガンテスの頭部にパンチを放ち、脱出した。
そしてオレにタッチし、オレはギガンテスの片足を取ってテイクダウンさせ、腕十字固めに捕らえた。
【ギブアップ!】
「NO!」
ギガンテスはギブアップしない。
勿論オレも完全には極めてない。
プロレス用の関節技と総合格闘技の関節技は形の上では技が極っているように見えるが、実際はギリギリのところでポイントをずらしている。
だから総合格闘技では関節技が極って瞬間、タップするが、プロレスでは必死になってロープへ逃げる。
関節技は完全に極ったらタップするか、脱臼するかのどちらかだ。
プロレスでそれをやってしまったらシュートを仕掛けた事になってしまい、下手するとプロレス界から追放されかねない。
ギガンテスはロープに逃げ、ロドリゲスとタッチした。
オレはロドリゲスをロープに振って、戻ってきたところをコブラツイストに捕らえ、そのままグランドに持ち込み、フォールした。
【1,2…】
ロドリゲスはカウントスリーギリギリで跳ね返す。
そしてロドリゲスを起こし、胴体を持ち上げながら逆さまの体勢にして、ツームストンパイルドライバーでマットに打ち付けた。
そして財前にタッチする。
ここらでフィニッシュだ、財前はロドリゲスをヘッドロックの状態からコーナーポストに駆け上がり、スイング式のDDTで串刺し状態の形になってロドリゲスは倒れた。
「いくぞ~っ!」
財前はフィニッシュとばかりにコーナーポスト最上段に上り、必殺のトルネードプレスをやるぞ!というポーズで会場を沸かす。
ウワ~っ!っという大観衆の中、財前は身体を捻りながらのムーンサルトプレスでロドリゲスの身体に全体重を浴びせた。
すかさずギガンテスがカットに入ってくるが、オレはダッシュしてギガンテス突進を止め、素早くバックに回り、今まで見せた事の無い、鋭くそして低く落とす角度のジャーマンスープレックスを決めた。
【ズダーン!】
マットに叩きつけられた音の衝撃だ。
【1,2,3!】
トルネードプレスでロドリゲスからピンフォールを奪った財前が勝ち名乗りを上げたが、それ以上にオレがギガンテスをジャーマンスープレックスで投げきった事のインパクトの方が凄かったようだ…
【なんだ、あのジャーマンは?】
【スゲー早さだ!】
【ありゃ受け身取れないぞ!】
【ギガンテスをジャーマンで投げたヤツって今までいたか?】
場内は騒然とした。
ジャーマンを食らったギガンテスは脳震盪を起こしたのか、全く動かない。
セコンド陣営が駆けよってギガンテスに声をかけた。
リングドクターまでもがリングに上がり、ギガンテスの様子をチェックし、担架を出すように命じたが、150㌔を越えるギガンテスの身体を担架に乗せるのは難しいだろうという事で、場外に敷いてあるマットを担架代わりにしてギガンテスは花道を去って行った。
最後の最後で財前を食ったような形でオレは観客にインパクトを与えた。
ヤツのトルネードプレスより、オレのジャーマンスープレックスの方が衝撃的だった。
財前、見たか。これが本物のジャーマンスープレックスだ!
高々と抱え上げるジャーマンじゃない、低く鋭角的に落とす、これこそがレスリングのスープレックスだ。
オレは総合格闘技で勝ったという事と、このジャーマンでギガンテスを失神KOさせたという強烈な爪痕を残した。
相手の外国人レスラーの1人はザ・ギガンテスという白人で、203㌢155㌔という巨漢と、もう1人はアルディルコ・ロドリゲスという、メキシカンレスラーでメキシコのレスラー伝統のルチャリブレを使う選手だ。
ギガンテスに比べると一回りも二回りも小さいが、183㌢102㌔という、Jr.ヘビー級の選手にしては大きめな方だ。
オレはこの試合を機に、黒のショートタイツに黒のレスリングシューズという、今のレスラーとは逆行するクラシカルなコスチューム、ガウンは着ないでそのままスタイルで先に入場した。
その後に続く財前は白と赤を基調にしたロングタイツに白のニーパッドとレスリングシューズ、真っ赤で袖の無いガウンを着て、花道でいつものパフォーマンスをしてトップロープに上り、歓声を受けていた。
この試合、財前がロドリゲスを必殺のトルネードプレスで勝つというブックになっている。
青コーナーに立っている外国人コンビは身長差がありすぎて凸凹コンビという組み合わせでギガンテスの大きさが際立つ。
対する赤コーナーのオレたちは身長、体重はそれほど変わらない。
オレは186㌢108㌔、財前は188㌢112㌔で財前の方がやや大きめに見える。
オレは総合格闘技に出場した際、ウエイトを落としたままで今日の試合に挑んだ。
それまでは115~118㌔の間で試合をしていた。
コスチュームも黒のロングタイツにニーパッド、黒に白のラインの入ったレスリングシューズを着用していた。
ウエイトを落としたせいか、余分な肉が無く、引き締まった体型とコスチュームにファンはある種の期待をしていた。
総合格闘技で勝利して以来、オレの人気はかなり高く、ブラジリアン柔術家の足を破壊したローキックは格闘技専門誌やライターから高い評価を受けた。
そのローキックを連発するんじゃないか、とファンは期待している。
リングアナウンサーが各選手のコールをする。
オレは財前の前にコールされた。
まだまだプロレスでは財前より格下って事だ。
だが、場内は物凄い歓声だ。
総合格闘技で勝利したという事がそれだけ凄いってワケだ。
過去に何度も苦渋を舐めたブラジリアン柔術の選手に勝ったという事がオレのプロレスラーとしての株が上がった証拠だ。
だが、総合格闘技に勝つだけじゃダメだ。
プロレスと総合格闘技は違う。
いくらガチンコの勝負に勝っても、肝心のプロレスの試合内容が良くないとすぐに飽きられてしまう。
「スゲー人気だな、おい。でも今日はオレがピンフォールを取るから上手くやってくれよ」
財前はそう言ってリングサイドのコーナーに陣取った。
先発はオレとロドリゲスだ。
そしてレフェリーが合図をしてゴングが鳴った。
場内は神宮寺コールに包まれてる。
悪くない気分だ。
今日は財前の引き立て役だが、オレなりのプロレスで財前より注目を浴びてやる…
オレはリング中央でロドリゲスと対峙し、腕を上げた。ロドリゲスも腕を上げ、がっちりと組み合う。
そしてヘッドロックに捕らえ、首投げでロドリゲスを倒し、ハンマーロックでロドリゲスの手首を捻り上げる。
だが、ロドリゲスも軽い身のこなしで前転をクルッとして逆にオレの手首を極める。
オレはすかさずヘッドスプリングで跳ね起き、逆にロドリゲスを腕を後ろに捻り切り返した。
そこからグランドの展開となり、キーロックでロドリゲスの右腕をグイグイと締め上げる。
今キーロックだなんて技を出す選手はあまり見かけない。
こういったプロレスの基本よりも、序盤から飛んだり跳ねたり大技を繰り出す選手が多い。
今ではバックドロップやジャーマンスープレックスでさえも繋ぎ技の1つとなってしまっている。
本来ならフィニッシュホールドであるはずの技でピンフォールを取れなくなってしまっている。
前座の試合でも大技の連発で大味な試合になってしまっている。
ファンがもっと華麗でインパクトの強い技を繰り出すのを期待している。
「最近のプロレスはまるでタフガイコンテストだ」と往年の名レスラーが苦言を呈している。
互いに垂直に頭から落とす技が主流になり、受け身を取りそこなうと大ケガをしてしまう程だ。
そんなプロレスに警鐘を鳴らすかのようにオレはクラシカルで基本に忠実なレスリングをする事で原点回帰するつもりでいる。
試合はロドリゲス相手にグランドの攻防で、ロドリゲスもルチャリブレ仕込みの複合技で攻めてくる。
ルチャリブレと言えば、トペやプランチャーといった飛び技に注目しがちだが、複雑な関節技も多彩だ。
オレは今ではあまり使わない技を繰り出した。インディアンデスロックやコブラツイスト、キャメルクラッチでロドリゲスを追い詰めた。
そしてロドリゲスがロープブレイクで逃れ、技を解いた時にギガンテスとタッチした。
ギガンテスとは以前何度も闘い、高々と抱え上げるハイアングルパワーボムで何度もピンフォール敗けを喫した。
この巨漢相手にどう攻めようか…
いや、ここはとりあえずタッチだ。
オレは財前にタッチした。
財前は勢いよく飛び出し、低空のドロップキックでギガンテスの膝を狙う攻撃をした。
もんどりうって倒れ、財前はアキレス腱固めでギガンテスの足を攻め続ける。
そしてニードロップを叩き込み、ギガンテスは堪らず場外へエスケープした。
財前は来い、このヤロー!とばかりに挑発する。
その隙をついてロドリゲスが背後からドロップキックで財前を襲う。
倒れたところをギガンテスがリングに戻り、パワーを生かしたファイトで攻め立てる。
ラリアットやチョークスラムで叩きつけ、ロドリゲスにタッチした。
ロドリゲスは財前をロープに振って、ジャンプして足を首に挟み、身体ごとスイングするようにして変形のヘットシザースホイップで投げつけた。
そしてロープに向かって走り、トップロープを蹴って、ムーンサルトプレスで身体を浴びせる。
【1,2…】
財前はカウント2で跳ね返す。
そしてすかさずロドリゲスの足を抱えるようにして素早く身体を使って捻った。
ドラコンスクリューという技で、一歩間違えると膝の靭帯を断裂する程の危険な技だ。
そして財前はオレにタッチした。
オレはロドリゲスの身体を持ち上げ、パイルドライバーで叩きつけた。
今までならパワーボムをつかっていたが、これからは使うつもりは無い。
オレは倒れたロドリゲスの片足を取って、逆片エビ固めで締め上げる。
【ギブアップ?】
レフェリーがロドリゲスに問いかける。
悶絶の表情を浮かべ「NO!」と言う。
オレは更に締め上げた。
だが、ギガンテスがカットに入り、ラリアットをモロに食らい、オレは大の字に倒れた。
そこから外国人コンビのツープラトン攻撃を浴び、オレはグロッキーになった。
「タッチだタッチ!」
財前が叫ぶが、オレは捕まったままだ。
【神宮寺、どうした?今さらそんな古臭い技使ってどうすんだよ!】
【総合で使ったローキック出せ!】
【総合行って何勘違いしてんだよ!】
オレに対するヤジが容赦なく飛んでくる。
いつしか会場はブーイングによって包まれ、先程の声援はどこにいったのか、罵声ばかりだ。
オレは反撃をするようにドロップキックでギガンテスを吹っ飛ばし、財前にタッチした。
財前は片足をついているギガンテスの膝をステップにして、シャニングウィザードをヒットさせ、ロドリゲスにはコーナーのセカンドロープに飛び移り、その体勢のままジャンプしてロドリゲスの首を掴むようにDDTでロドリゲスの頭をマットに叩きつけた。
ここから場外乱闘へなだれ込み、オレはロドリゲスを場外のフェンスへ振って、椅子を持って頭に叩きつける。
ギガンテスは財前と場外で揉み合い、ラリアットを炸裂させ、財前は場外でぶっ倒れている。
ギガンテスはリングに上がり、首をかっ切るようなポーズをして、これでフィニッシュだ!というパフォーマンスをしてからリングに上がった財前を高々と抱え上げ、必殺のハイアングルパワーボムで叩きつけようとしたが、抱え上げられた際、財前はギガンテスの頭部にパンチを放ち、脱出した。
そしてオレにタッチし、オレはギガンテスの片足を取ってテイクダウンさせ、腕十字固めに捕らえた。
【ギブアップ!】
「NO!」
ギガンテスはギブアップしない。
勿論オレも完全には極めてない。
プロレス用の関節技と総合格闘技の関節技は形の上では技が極っているように見えるが、実際はギリギリのところでポイントをずらしている。
だから総合格闘技では関節技が極って瞬間、タップするが、プロレスでは必死になってロープへ逃げる。
関節技は完全に極ったらタップするか、脱臼するかのどちらかだ。
プロレスでそれをやってしまったらシュートを仕掛けた事になってしまい、下手するとプロレス界から追放されかねない。
ギガンテスはロープに逃げ、ロドリゲスとタッチした。
オレはロドリゲスをロープに振って、戻ってきたところをコブラツイストに捕らえ、そのままグランドに持ち込み、フォールした。
【1,2…】
ロドリゲスはカウントスリーギリギリで跳ね返す。
そしてロドリゲスを起こし、胴体を持ち上げながら逆さまの体勢にして、ツームストンパイルドライバーでマットに打ち付けた。
そして財前にタッチする。
ここらでフィニッシュだ、財前はロドリゲスをヘッドロックの状態からコーナーポストに駆け上がり、スイング式のDDTで串刺し状態の形になってロドリゲスは倒れた。
「いくぞ~っ!」
財前はフィニッシュとばかりにコーナーポスト最上段に上り、必殺のトルネードプレスをやるぞ!というポーズで会場を沸かす。
ウワ~っ!っという大観衆の中、財前は身体を捻りながらのムーンサルトプレスでロドリゲスの身体に全体重を浴びせた。
すかさずギガンテスがカットに入ってくるが、オレはダッシュしてギガンテス突進を止め、素早くバックに回り、今まで見せた事の無い、鋭くそして低く落とす角度のジャーマンスープレックスを決めた。
【ズダーン!】
マットに叩きつけられた音の衝撃だ。
【1,2,3!】
トルネードプレスでロドリゲスからピンフォールを奪った財前が勝ち名乗りを上げたが、それ以上にオレがギガンテスをジャーマンスープレックスで投げきった事のインパクトの方が凄かったようだ…
【なんだ、あのジャーマンは?】
【スゲー早さだ!】
【ありゃ受け身取れないぞ!】
【ギガンテスをジャーマンで投げたヤツって今までいたか?】
場内は騒然とした。
ジャーマンを食らったギガンテスは脳震盪を起こしたのか、全く動かない。
セコンド陣営が駆けよってギガンテスに声をかけた。
リングドクターまでもがリングに上がり、ギガンテスの様子をチェックし、担架を出すように命じたが、150㌔を越えるギガンテスの身体を担架に乗せるのは難しいだろうという事で、場外に敷いてあるマットを担架代わりにしてギガンテスは花道を去って行った。
最後の最後で財前を食ったような形でオレは観客にインパクトを与えた。
ヤツのトルネードプレスより、オレのジャーマンスープレックスの方が衝撃的だった。
財前、見たか。これが本物のジャーマンスープレックスだ!
高々と抱え上げるジャーマンじゃない、低く鋭角的に落とす、これこそがレスリングのスープレックスだ。
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