最強のエンターテイメント

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Roots Of Wrestling 最強

アングル

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チャンピオンは余裕で笑みを浮かべる。
次は俺に質問がきた。
「神宮寺選手、今回の挑戦は同期の財前選手ですが、何か感慨深い思いはありますか?」

今回オレはヒール(悪役)に徹する。
マイクを片手に立ち上がり、ヤツとは反対的に捲し立てた。

「おいっ!こら!よく見とけ!オレはなぁ、こんなヤツ短時間でぶっ潰して%#●§*:ε‐◎‡Η.・※』|ー〇!?だぞ!わかったか、えー、コラァ!」

…しまった。テンパって何を言ってるのか解らなくなってしまった。
こうなりゃとことん暴れて会見をグチャグチャにしてやるだけだ!

「テメーとはここでケリつけてやろうか、おいっ!」

オレは隣に座ってるチャンピオンの胸ぐらを掴みビンタをかました。

【バッチーン!】

ここで関係者が仲裁に入り、オレをおさえつける。
しかし余裕綽々のチャンピオン軽い笑みを絶やさない。

こっちもヒールに徹する以上、後には引けない。

「どけ、コラァ!」

関係者を振りほどき、パイプ椅子をブン回し、挙げ句にはベルトが置かれていたテーブルをひっくり返し、会見をグチャグチャにして強引に終わらせた。

財前はオレと目が合い、一瞬睨んだものの、フッと鼻で笑うようにして袖に消えてった。

…とりあえず一つの役目は果たした。いわゆるアングルというヤツで演出みたいなもんだ。
だが、本来の仕事は試合だ。


プロレスとはマッチメーカーという人物が存在する。
マッチメーカーとは、対戦カードを組んだり、勝敗の結末を作り上げる人物だ。

言わば構成作家のような存在だ。
そのマッチメーカーから言われたのは、今回のタイトルマッチ、俺はジョブ(負け役)だと伝えられた。

確かに、初めてのタイトルマッチに挑戦して王座を奪うという事はまずない。

そして俺と財前、どちらかを選べとなれば、俄然スター性のある財前を会社は選ぶだろう。

会社の上層部の連中からすれば、財前をチャンピオンとし、プロレス界を引っ張っていけるスターだとプッシュしてる。

わかってはいるのだが、負け役は辛い。
がしかし、これもプロレスだ。
俺と財前が観客を熱狂させるような闘いをすれば、会社も俺の事を更にプッシュせざるを得ないだろう。
もっと会社側がオレをプッシュするには試合で観客をこっち側に引き込むような闘い方をするしかない。

財前コールよりも、神宮寺コールの方が上回れば、会社側としても、次期チャンピオンはオレだ、となるに違いない。

それもこれもオレと財前の試合が噛み合わなきゃ名勝負にはならない。

オレは数日後に大会場のメインイベントでヤツと闘うのみ!
俺は道場へと向かい、ひたすらトレーニングをし、スパーリングをして、コンディションを整えた。

後は財前と試合内容を打ち合わせするのみだ。

打ち合わせとは、最初から最後まで細かい事はせずに、大体こういう試合展開で、フィッシュはこういう技で、試合時間も大体このぐらいにしようと双方が納得いくような試合内容にする。勿論試合を裁くレフェリーもこの事は知っている。


財前とは同期だが、何故かウマが合わない。
入門当時からスター街道まっしぐらの財前に対して俺は雑草の如くシゴかれまくった。格闘技経験としては、オレの方が上だが、プロレスセンス、ルックス等から入団時から待遇が違っていた。
すでに格差があった。

オレはインターハイ優勝という実績を持ち、大学からの誘いも蹴ってこの団体に入団した。

そして財前も高校を卒業と同時に入門した。

格闘家経験での実績はオレの方が断然上だ。
だが、財前はプロレス界で何年に1人という程の天才だった。

格闘家経験は無いものの、ルックスと高い身体能力に加え、センスの良さ。
口々に天才レスラーだと評価され、あっという間に破格の扱いでデビューした。

オレは財前から遅れて数ヶ月後にデビューしたが、前座の試合で2年先輩のレスラーに僅か10分足らずでフォール敗けを喫した。


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