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8月灼熱の後半戦
史上最大のトレード 1
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後半戦がスタートした。
Glanzは本拠地さいたま S Villageで東地区3位の千葉ヤンキースを迎え撃つ。
Glanzは現在東地区首位だが 2位の東北マーリンズとのゲーム差は僅か0.5
そのマーリンズだが 白石が調整により登録抹消と発表された。
表向きは身体をケアする目的による二軍落ちだが 上野監督の逆鱗に触れた為に無期限の二軍落ちが真相だ。
優勝争いをしているにも拘らず 攻守の要でもある白石を二軍に落とすとは 考えられない采配だ。
このままだと白石は潰れてしまう。
類稀なる才能を持つ天才スラッガーをこんな状態で終わらせるワケにはいかない。
榊GMは単身東北に乗り込み GM兼任でもある上野監督と試合前に会談する予定だ。
マーリンズはこの日 本拠地マーリンズフィールドで甲府ブレーブスとの3連戦がスタートする。
球場に着いた榊はマスコミにバレないように変装したのだが そのスタイルがドレッドヘアーのウィッグにサングラス つけ髭というレゲエの様な格好に加え オーダーメイドの赤のスリーピース姿は遠目から見ても目立つ。
「チッ、ヤベェな…変装したのはいいが、これじゃ野球を観戦するスタイルじゃないよな」
それ以前に榊のファッションセンスを疑う。
「何だ、あの派手なヤツは」
「ドレッドヘアーに赤のスリーピースって、センス悪っ」
「野球場に来るような格好じゃないだろ」
「アレ、日本人か?」
誰もが榊の出で立ちを見て首を傾げる。
「見んじゃねぇよ、ったく!」
榊だとバレないよう 足早に来賓席へ向かった。
来賓席はバックネット裏の後方にあるガラス張りになった広い部屋で 高価なアンティークの椅子やソファー 床には幾何学的な模様を施したペルシャ絨毯が一面に敷きつめている。
この室内には榊と上野の2人しかいない。
黒のソファーに腰を下ろし ドレッドヘアーのウィッグとつけ髭を外し ジャケットを脱いでバット柄の紺のネクタイを緩めた。
「フゥ~、それにしても暑ぃな!東北だから少しは涼しいかと思ったけど、首都圏と変わらない暑さだな」
額にはうっすらと汗が滲んでいる。
「東北が一年中涼しいとでも思ったのですか?東北だって夏は暑いですよ」
上野は冷ややかな口調で返す。
「まぁ、夏は暑いのが当たり前だけどな。ところで上野、単刀直入に言うが…白石をウチにくれないか?」
榊はアイスコーヒーを口にした。
「…何を言うかと思えば…そんな事を言うために、わざわざ秋田まで来たのですか?」
呆れた表情を浮かべる。
「あったりめぇだろ!こういう話は、電話よりも直接会って話すのが一番だろ」
上野は榊よりも二世代程離れた年齢で 榊からすれば遥か下の後輩という存在だ。
接点はそれ程無いが それでもプロ野球界の先輩後輩という立場は変わらない。
「榊さん、そんな冗談を言うためにここへ来たのですか?
白石をよこせって…白石はウチにとって必要不可欠な選手ですよ?
それをいとも簡単に手放すなんて、バカも休み休み言ってくださいよ」
その口調は明らかに榊を見下している。
いつもならここでカッとなってパワーボムでもお見舞いするところだが 必死で堪えた。
「必要不可欠な選手を何で二軍に落とすんだよ?
別に怪我してるワケでもないし、不調というワケでもない。
それなのに、何故チームの主役を下に落とすのか?
オレはそれが腑に落ちないんだなぁ」
榊は努めて飄々した口調で答える。
「彼はね、今非常に悩んでいる状況なんですよ。
確かに、試合に出ればヒットも打つし、守備だって完璧にこなす。
でも、それが出来るだけじゃダメなんですよ…
もっと次元の高いところでプレーしないと。
それが彼に与えられた使命なんです」
まるで演説でもしてるかのような話し方だ。
「フッ、何が与えられた使命だ。
その使命を取り上げようとしてるのはお前だろうが」
「何っ!」
「まぁまぁ、そうカリカリすんなよ。オレは何も白石だけ獲って、コッチだけが得をするつもりは無いぜ」
「どういう事ですか?」
上野の目の色が変わった。
「トレードだよ、トレード。
しかも、1対1のトレードじゃねぇ、お前が望めば1対3でも、1対4でも構わねえ」
榊は複数トレードで白石を獲得するつもりだ。
「その言葉、信じていいんですね?」
上野が念を押す。
「榊恭輔に二言は無いっ!」
勝ち誇ったような表情で答える。
上野はどう出るか。
Glanzは本拠地さいたま S Villageで東地区3位の千葉ヤンキースを迎え撃つ。
Glanzは現在東地区首位だが 2位の東北マーリンズとのゲーム差は僅か0.5
そのマーリンズだが 白石が調整により登録抹消と発表された。
表向きは身体をケアする目的による二軍落ちだが 上野監督の逆鱗に触れた為に無期限の二軍落ちが真相だ。
優勝争いをしているにも拘らず 攻守の要でもある白石を二軍に落とすとは 考えられない采配だ。
このままだと白石は潰れてしまう。
類稀なる才能を持つ天才スラッガーをこんな状態で終わらせるワケにはいかない。
榊GMは単身東北に乗り込み GM兼任でもある上野監督と試合前に会談する予定だ。
マーリンズはこの日 本拠地マーリンズフィールドで甲府ブレーブスとの3連戦がスタートする。
球場に着いた榊はマスコミにバレないように変装したのだが そのスタイルがドレッドヘアーのウィッグにサングラス つけ髭というレゲエの様な格好に加え オーダーメイドの赤のスリーピース姿は遠目から見ても目立つ。
「チッ、ヤベェな…変装したのはいいが、これじゃ野球を観戦するスタイルじゃないよな」
それ以前に榊のファッションセンスを疑う。
「何だ、あの派手なヤツは」
「ドレッドヘアーに赤のスリーピースって、センス悪っ」
「野球場に来るような格好じゃないだろ」
「アレ、日本人か?」
誰もが榊の出で立ちを見て首を傾げる。
「見んじゃねぇよ、ったく!」
榊だとバレないよう 足早に来賓席へ向かった。
来賓席はバックネット裏の後方にあるガラス張りになった広い部屋で 高価なアンティークの椅子やソファー 床には幾何学的な模様を施したペルシャ絨毯が一面に敷きつめている。
この室内には榊と上野の2人しかいない。
黒のソファーに腰を下ろし ドレッドヘアーのウィッグとつけ髭を外し ジャケットを脱いでバット柄の紺のネクタイを緩めた。
「フゥ~、それにしても暑ぃな!東北だから少しは涼しいかと思ったけど、首都圏と変わらない暑さだな」
額にはうっすらと汗が滲んでいる。
「東北が一年中涼しいとでも思ったのですか?東北だって夏は暑いですよ」
上野は冷ややかな口調で返す。
「まぁ、夏は暑いのが当たり前だけどな。ところで上野、単刀直入に言うが…白石をウチにくれないか?」
榊はアイスコーヒーを口にした。
「…何を言うかと思えば…そんな事を言うために、わざわざ秋田まで来たのですか?」
呆れた表情を浮かべる。
「あったりめぇだろ!こういう話は、電話よりも直接会って話すのが一番だろ」
上野は榊よりも二世代程離れた年齢で 榊からすれば遥か下の後輩という存在だ。
接点はそれ程無いが それでもプロ野球界の先輩後輩という立場は変わらない。
「榊さん、そんな冗談を言うためにここへ来たのですか?
白石をよこせって…白石はウチにとって必要不可欠な選手ですよ?
それをいとも簡単に手放すなんて、バカも休み休み言ってくださいよ」
その口調は明らかに榊を見下している。
いつもならここでカッとなってパワーボムでもお見舞いするところだが 必死で堪えた。
「必要不可欠な選手を何で二軍に落とすんだよ?
別に怪我してるワケでもないし、不調というワケでもない。
それなのに、何故チームの主役を下に落とすのか?
オレはそれが腑に落ちないんだなぁ」
榊は努めて飄々した口調で答える。
「彼はね、今非常に悩んでいる状況なんですよ。
確かに、試合に出ればヒットも打つし、守備だって完璧にこなす。
でも、それが出来るだけじゃダメなんですよ…
もっと次元の高いところでプレーしないと。
それが彼に与えられた使命なんです」
まるで演説でもしてるかのような話し方だ。
「フッ、何が与えられた使命だ。
その使命を取り上げようとしてるのはお前だろうが」
「何っ!」
「まぁまぁ、そうカリカリすんなよ。オレは何も白石だけ獲って、コッチだけが得をするつもりは無いぜ」
「どういう事ですか?」
上野の目の色が変わった。
「トレードだよ、トレード。
しかも、1対1のトレードじゃねぇ、お前が望めば1対3でも、1対4でも構わねえ」
榊は複数トレードで白石を獲得するつもりだ。
「その言葉、信じていいんですね?」
上野が念を押す。
「榊恭輔に二言は無いっ!」
勝ち誇ったような表情で答える。
上野はどう出るか。
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