I Love Baseball 主砲の一振り 6

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7月 オールスターゲーム

作戦会議

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ちょうどその頃 榊 中田 勅使川原の3人は中田宅でオールスターゲームを観戦していた。


ガチャっとリビングのドアが開くと同時に妻美沙の大きな声が部屋中に響き渡る。


「うわっ!!何この煙は!…っ、タバコ臭い!」


美沙は手をバタバタさせながらまとわりつく煙を追いやった。


「そんなに驚く程のモンじゃないだろ。タバコの煙ぐらいでガタガタ言うなよ」


リビングの中央に鎮座する大きなテーブルには 焼酎の瓶が数本に2Lのウーロン茶のペットボトルが置かれ
チーズやサラミ等の皿に大きめなガラス製の灰皿は吸い殻で山盛りになっている。


「何言ってんですか!今は受動喫煙でタバコを吸わない人も煙で吸ってしまうんですよ!」


顔を顰めながら窓を開けて換気をした。


「そりゃ悪うござんしたねぇ。何せ、オレらはタバコを吸うのが何よりの楽しみなんですからね」


咥えタバコで画面を観ている。


「そろそろ禁煙してもいいんじゃないの?もう若くないんだし、健康に気をつける事も考えて下さいな」


「タチの悪い冗談だな。オレからタバコを取り上げたら、何の楽しみも残らねえじゃねえか」


「そうだな、せめてタバコぐらいは死ぬまで吸い続けていたいもんだな」


「そんな事言って、近いうちにポックリと逝っちゃったりしてな」


2人も中田の意見に同調する。



「それなら、もう少し吸う本数を減らすとか、身体の事を考えて吸ってくださいね」


リビングの白い壁はタバコのヤニで黄色く変色している。

いくら拭き取っても中田が吸い続けるもんだからキリがない。




画面の中では4回の裏が終わって1対1の同点。

アポロリーグは2回の裏に陽凪がライトスタンドへのソロで1点を先制すると お返しとばかりに3回の表 飛鳥 北斗の連続ツーベースヒットで同点に追いついた。


マウンドにはこの回からKnightsの金城が登板。


5回の表 ネプチューンリーグの攻撃は5番の森高から。


「白石出さねぇつもりなのかよ、上野は」


「そういや、昨日のホームランダービーにも出てないし、スタメンでもないし」


「代打で出す予定なんじゃねぇのか」


3人はその白石獲得の為にこうやって集まって1杯飲みながら話をしていたところだ。


白石はベンチからメガホン片手に声を出している。


「ところで、トレードとなれば誰を出すのか」


「向こうは1対1のトレードには応じないだろ」 


「2人…もしくは3人コッチが出してって事になるだろうな」


複数トレードを見据えての作戦でもある。



「今年の白石の成績は、打率.358 本塁打18 打点75 
盗塁21…出塁率は.403で長打率が.556、OPSは.959か…」


「数字だけじゃなく、目に見えないところでもチームに貢献してるぜ」


う~んと榊が腕を組んでいる。


「マーリンズがこんなチーム状態なのに優勝争い出来るのはコイツがいるからな」


攻守において白石は多大な貢献をしている。


獲得するのはシーズンが終わってからにする予定だったが 榊が獲れるものなら今すぐにでも獲ろう!
と言い出し 結局残りの2人も巻き込んでどんな方法で獲得しようか話し合ってる。



「マーリンズは上野がGMを兼任してるんだろ?
コイツ、かなりの欲張りだからなぁ…」


「いくら欲張りだからって、白石1人に4人も5人も出せとは言わないだろ」


「いや、どうかな。コイツなら有りうるぜ」


球団関係者の間でも上野の評判は芳しくない。



マーリンズの監督をやる前はレッズで守備走塁コーチを務めていたが その指導法は極めて理不尽なやり方で昔の精神主義第一の考え方は選手との間に溝を深めた。


「何でこんなのが監督やってんだよ?」


中田が不思議そうな表情を浮かべる。


「OB連中に気に入られてるんだよ。上の者には上手く取り入って監督になったようなもんだからな」


上野はマーリンズOBから可愛がられている。


そのお陰でGM兼監督という最高のポストを用意してもらった。


「白石ばっかりが注目されがちだけど、他の選手もコイツの事嫌ってんだろ?」


「そりゃそうだよ、レギュラークラスの連中はコイツの事を良く思ってないだろ」



果たして誰を交換要員としてトレードを画策するのか。
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