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7月 オールスターゲーム
セレモニーの裏での不穏な出来事
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今年のオールスターゲームは札幌ウォーリアーズの本拠地 ススキノドームで開催される。
ネプチューンリーグの監督は昨年日本一に輝いた東北マーリンズの上野監督が指揮を執り 千葉ヤンキースの守山監督と名古屋99ersの吉川プレイングマネージャーがコーチとしてベンチ入りする。
アポロリーグでは昨年リーグ優勝した千葉ヤンキースがネプチューンリーグに移籍した為 東京KINGDOMの翔田監督が指揮を執り 琉球マシンガンズの喜屋武監督と長野ニックスの山田監督がコーチとしてベンチ入りしている。
そして今年からは所属チームのユニフォームではなく
新たに作られた各リーグのユニフォームを着用してプレイする。
アポロリーグは赤を基調とした太陽をイメージしたデザインで胸元には【APOLLO】とプリントされている。
ネプチューンリーグは青を基調とし 上半身には【Neptune】と筆記体でプリントされてスタイリッシュなデザインだ。
オールスターゲームは2日間開催され 初日は今年殿堂入りを果たした著名人の表彰式から始まり 両リーグから16人が参加するホームランダービー 同じく両リーグから16人のピッチャーが競い合うストラックアウトを行い 2日目に試合を行う。
オープニングは今年殿堂入りを果たした3名 1人目は千葉ヤンキースの初代オーナーで ヤンキース黄金時代には地域活性化の為 チケット半額でスタジアムを解放した 塗呂 萬太郎(ぬろまんたろう)氏。
2人目は 東京KINGDOMの前監督で 現役時代はKINGDOMの主砲として打撃タイトルを総ナメ その後はメジャーに渡り新人王とMVPを獲得した浅野 聖(あさのこうき)氏。
最後は静岡ピストルズ(現SAITAMA Glanz)優勝時のキャプテンとしてチームを牽引。
歴代7位の493本塁打を記録した名三塁手の高梨 和寿氏が表彰された。
塗呂氏は数十年前に他界しており 現在はヤンキース3代目オーナーで孫にあたる 竿扱 魔羅之助(さおしごきまらのすけ)氏が出席した。
日本プロ野球機構の代表理事会長でもある 玉袋 五十次郎(たまぶくろいじろう)がプレゼンターを務め 超満員のススキノドームに集まったファンから暖かい祝福の声援と拍手が送られた。
その頃 3塁側ネプチューンリーグのベンチでは上野監督と白石が不穏な雰囲気を漂わせていた。
「監督、何で今日のホームランダービーにオレをエントリーしたんですか?」
白石が険しい表情で詰め寄る。
「何でって…分かりきった事を聞くな!
お前は黙って、オレの言う通りに従えばいいんだっ!」
上野は語気を荒らげながら 神経質そうにメガネをクイッと上げた。
「知ってますよね?オレが左足首をケガしてるって事を!
それなのに、お祭り騒ぎのオールスターで無茶しろっていうんですか?」
白石は1週間前に左足首内側をデッドボールで当てられ負傷。
骨には異常無かったが 当たった箇所が紫色にどす黒く変色し 日常生活にも支障をきたす程だったが 責任感の強い白石は怪我をおして試合に出続けた。
そのせいで オールスターゲームはスタメン出場ではなく代打での出場を上野監督にお願いしてもらうよう数日前からお願いしている。
当初は「そうか、ヨシ分かった」と白石の怪我を気遣っていたのだが 舌の根も乾かぬうちにホームランダービーにエントリーさせ スタメン出場をも相談無しに決めてしまった。
「どうせ、大した事ないんだろ?それよりも、ホームランダービーは何がなんでも優勝しろ、いいな!」
その言葉に白石は一瞬絶句したが 気を取り直して冷静に諭すように話した。
「カントク…オールスターとペナントレースどっちが大事なんですか?
確かにオールスターは年に一度の祭典だし、ホームランダービーにも出たいのはヤマヤマですが、ここで無理をすると後半戦に支障をきたします。
申しわけないんですが、自分はホームランダービーもそうですが、試合の方もスタメンではなく、代打でお願い出来ますか?」
この言葉に上野は激怒した。
「ふざけんなっ!!今日は年に一度のオールスターだろっ!!出たくても出られない連中がいるっていうのに、それをお前はたかが足を痛めただけで辞退するというのかっ!」
「ですから、足が万全な状態ならばホームランダービーにも出ますけど、ここで無理はしたくないんです!」
しかし上野は聞く耳を持たなかった。
「言い訳はするなっ!!足のケガぐらい、気合いで乗り越えろっ!大体お前は根性が無いから、ちょっとしたケガでも大袈裟に喚くんだっ!オレが現役の頃は、少しぐらい痛くたって、気合と根性で乗り越えたんだ!
ったく、これだから今の選手は根性が足りないんだ」
天才と称される白石だが 天才にありがちな孤高の存在ではなく 普段は冗談を言ってはチームメイトとじゃれ合うひょうきんな性格だ。
しかし この発言にはさすがの白石も堪忍袋の緒が切れた。
「気合だ根性だって、二言目にはそれしか言えないのか、アンタはっ!!
そんなやり方でリーグ制覇出来ると思ってるのかっ!
アンタは去年までのマーリンズを解体してるだけじゃないか!」
「何だとっ!」
「オレはアンタの下じゃやってらんない!
トレードに出したきゃ、出せばいいだろ!」
そう言うと 白石はバットとグラブを持って通路の奥に消えた。
「おい、白石っ!お前、監督に逆らうつもりかっ!
こうなったら、二度とお前を一軍に上げるつもりは無いからなっ、覚悟しておけ!」
上野の胴間声がベンチ奥に鳴り響いた。
ネプチューンリーグの監督は昨年日本一に輝いた東北マーリンズの上野監督が指揮を執り 千葉ヤンキースの守山監督と名古屋99ersの吉川プレイングマネージャーがコーチとしてベンチ入りする。
アポロリーグでは昨年リーグ優勝した千葉ヤンキースがネプチューンリーグに移籍した為 東京KINGDOMの翔田監督が指揮を執り 琉球マシンガンズの喜屋武監督と長野ニックスの山田監督がコーチとしてベンチ入りしている。
そして今年からは所属チームのユニフォームではなく
新たに作られた各リーグのユニフォームを着用してプレイする。
アポロリーグは赤を基調とした太陽をイメージしたデザインで胸元には【APOLLO】とプリントされている。
ネプチューンリーグは青を基調とし 上半身には【Neptune】と筆記体でプリントされてスタイリッシュなデザインだ。
オールスターゲームは2日間開催され 初日は今年殿堂入りを果たした著名人の表彰式から始まり 両リーグから16人が参加するホームランダービー 同じく両リーグから16人のピッチャーが競い合うストラックアウトを行い 2日目に試合を行う。
オープニングは今年殿堂入りを果たした3名 1人目は千葉ヤンキースの初代オーナーで ヤンキース黄金時代には地域活性化の為 チケット半額でスタジアムを解放した 塗呂 萬太郎(ぬろまんたろう)氏。
2人目は 東京KINGDOMの前監督で 現役時代はKINGDOMの主砲として打撃タイトルを総ナメ その後はメジャーに渡り新人王とMVPを獲得した浅野 聖(あさのこうき)氏。
最後は静岡ピストルズ(現SAITAMA Glanz)優勝時のキャプテンとしてチームを牽引。
歴代7位の493本塁打を記録した名三塁手の高梨 和寿氏が表彰された。
塗呂氏は数十年前に他界しており 現在はヤンキース3代目オーナーで孫にあたる 竿扱 魔羅之助(さおしごきまらのすけ)氏が出席した。
日本プロ野球機構の代表理事会長でもある 玉袋 五十次郎(たまぶくろいじろう)がプレゼンターを務め 超満員のススキノドームに集まったファンから暖かい祝福の声援と拍手が送られた。
その頃 3塁側ネプチューンリーグのベンチでは上野監督と白石が不穏な雰囲気を漂わせていた。
「監督、何で今日のホームランダービーにオレをエントリーしたんですか?」
白石が険しい表情で詰め寄る。
「何でって…分かりきった事を聞くな!
お前は黙って、オレの言う通りに従えばいいんだっ!」
上野は語気を荒らげながら 神経質そうにメガネをクイッと上げた。
「知ってますよね?オレが左足首をケガしてるって事を!
それなのに、お祭り騒ぎのオールスターで無茶しろっていうんですか?」
白石は1週間前に左足首内側をデッドボールで当てられ負傷。
骨には異常無かったが 当たった箇所が紫色にどす黒く変色し 日常生活にも支障をきたす程だったが 責任感の強い白石は怪我をおして試合に出続けた。
そのせいで オールスターゲームはスタメン出場ではなく代打での出場を上野監督にお願いしてもらうよう数日前からお願いしている。
当初は「そうか、ヨシ分かった」と白石の怪我を気遣っていたのだが 舌の根も乾かぬうちにホームランダービーにエントリーさせ スタメン出場をも相談無しに決めてしまった。
「どうせ、大した事ないんだろ?それよりも、ホームランダービーは何がなんでも優勝しろ、いいな!」
その言葉に白石は一瞬絶句したが 気を取り直して冷静に諭すように話した。
「カントク…オールスターとペナントレースどっちが大事なんですか?
確かにオールスターは年に一度の祭典だし、ホームランダービーにも出たいのはヤマヤマですが、ここで無理をすると後半戦に支障をきたします。
申しわけないんですが、自分はホームランダービーもそうですが、試合の方もスタメンではなく、代打でお願い出来ますか?」
この言葉に上野は激怒した。
「ふざけんなっ!!今日は年に一度のオールスターだろっ!!出たくても出られない連中がいるっていうのに、それをお前はたかが足を痛めただけで辞退するというのかっ!」
「ですから、足が万全な状態ならばホームランダービーにも出ますけど、ここで無理はしたくないんです!」
しかし上野は聞く耳を持たなかった。
「言い訳はするなっ!!足のケガぐらい、気合いで乗り越えろっ!大体お前は根性が無いから、ちょっとしたケガでも大袈裟に喚くんだっ!オレが現役の頃は、少しぐらい痛くたって、気合と根性で乗り越えたんだ!
ったく、これだから今の選手は根性が足りないんだ」
天才と称される白石だが 天才にありがちな孤高の存在ではなく 普段は冗談を言ってはチームメイトとじゃれ合うひょうきんな性格だ。
しかし この発言にはさすがの白石も堪忍袋の緒が切れた。
「気合だ根性だって、二言目にはそれしか言えないのか、アンタはっ!!
そんなやり方でリーグ制覇出来ると思ってるのかっ!
アンタは去年までのマーリンズを解体してるだけじゃないか!」
「何だとっ!」
「オレはアンタの下じゃやってらんない!
トレードに出したきゃ、出せばいいだろ!」
そう言うと 白石はバットとグラブを持って通路の奥に消えた。
「おい、白石っ!お前、監督に逆らうつもりかっ!
こうなったら、二度とお前を一軍に上げるつもりは無いからなっ、覚悟しておけ!」
上野の胴間声がベンチ奥に鳴り響いた。
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