45 / 82
6月 ・7月 ペナントレース再開
右の天才バッター
しおりを挟む
先頭打者の高野はツーナッシングから4球目のカットボールに詰まらせ セカンド正面のゴロ。
筧が難なく捌いて一塁へアウト。
【2番ショート白石。背番号5】
一昨年 昨年と2年連続首位打者の白石がヘルメットを右手に持ち 右打席へ入った。
昨年の成績は打率.347 本塁打29 打点98 盗塁27 出塁率.416 長打率.603 OPS1.019
獲得したタイトルは 首位打者 最高出塁率 ベストナイン
ゴールドグラブ。
文句無しのMVP候補だが 僅差で天海が受賞した。
今年も打率トップの.362で史上4人目の3年連続首位打者を狙う。
今年8年目となる26才の若き天才スラッガーは攻守でチームを盛り上げ マーリンズ初の連覇へ向けて邁進する。
「…はぁ」
打席で小さくため息をついた。
力感が全く感じられず 脱力の状態でかろうじてバットを持つ様なフォームだ。
だが このフォームからインパクトの瞬間 バットに全身の力を込めて鋭く振り抜く打球は弾道が低く 弾丸ライナーで一気にスタンドインする程のパワーを持つ。
左右の違いはあれど 結城や唐澤のスイングにも似ており 白石を【右の天才バッター】と評価する声が多い。
その様子を見て毒島は何処に何を投げればいいのやら苦心する。
(一見すると隙だらけの構えなんだが、実はとんでもないワナだったりするんだよな)
何処に投げても打たれそうな雰囲気だ。
どんな天才バッターでも4割を超える事は無い。
そう考えれば 打ち取る可能性の方が高いのだが 何故か打たれる可能性の方が高く感じる。
(いくら考えても仕方ない…これでどうだ)
毒島がサインを出した。
伊達は中腰の体勢でサインを覗き込み 大きく頷いた。
ノーワインドアップから長身を活かしたスリークォーター気味のフォームで初球を投げた。
インコース低めにキレのあるストレートがズバッと決まった。
「ストライクワンっ!!」
バックスクリーンのオーロラビジョンには144km/hと表示された。
「うぉ~、速いなぁ」
白石はヘルメットを取り ダークブラウンの前髪をかき分ける。
185cm 78kgという均整のとれた体格は野球選手というよりモデルの様な佇まいだ。
おまけに精悍な顔つきで一見するとハーフに間違えられる程の彫りの深さ。
「あれでまだ18かよ…スゲーな」
「ホントにスゲーよな…オレなんか、18の時は二軍で体力付けるトレーニングばかりさせられてたよ」
「へぇ、そうなんすか?オレもそんな感じでしたね」
毒島と二言三言交わし 足元を固めながらバットを構えた。
いくらスゴいと言っても 所詮は18才のルーキー。
目の前に立ちはだかるのはリーグを いや日本を代表するスラッガー白石だ。
打席では威圧感さえ漂う風格。
物怖じしない方が無理というものだ。
そんなスラッガー相手にどう攻めればいいのか 毒島は迷う。
(打たれてもまだ初回だし…ここはルーキーらしく、ドンドン強気で押すピッチングをさせよう)
サインを出した。
伊達は軽く頷き 速いモーションから2球目を投げた。
今度はアウトコースへのストレート。
「…単調な攻めだ」
「エッ…」
毒島は「しまった!」と思ったが 時すでに遅し。
流れるようなフォームから紫電一閃 振り抜かれたバットから弾道の低いライナーがグーンとライトへ伸びた。
ライトを守るルイスが俊足を飛ばして懸命に追うが 打球は失速すること無く スタンド中段に突き刺さった。
白石は打球の行方を追わず ゆっくりとベースを回っている。
「やっぱ、打たれたか…これはオレの責任だな」
毒島が完敗だとばかりに呟く。
白石の第17号ソロでマーリンズが早くも先制した。
筧が難なく捌いて一塁へアウト。
【2番ショート白石。背番号5】
一昨年 昨年と2年連続首位打者の白石がヘルメットを右手に持ち 右打席へ入った。
昨年の成績は打率.347 本塁打29 打点98 盗塁27 出塁率.416 長打率.603 OPS1.019
獲得したタイトルは 首位打者 最高出塁率 ベストナイン
ゴールドグラブ。
文句無しのMVP候補だが 僅差で天海が受賞した。
今年も打率トップの.362で史上4人目の3年連続首位打者を狙う。
今年8年目となる26才の若き天才スラッガーは攻守でチームを盛り上げ マーリンズ初の連覇へ向けて邁進する。
「…はぁ」
打席で小さくため息をついた。
力感が全く感じられず 脱力の状態でかろうじてバットを持つ様なフォームだ。
だが このフォームからインパクトの瞬間 バットに全身の力を込めて鋭く振り抜く打球は弾道が低く 弾丸ライナーで一気にスタンドインする程のパワーを持つ。
左右の違いはあれど 結城や唐澤のスイングにも似ており 白石を【右の天才バッター】と評価する声が多い。
その様子を見て毒島は何処に何を投げればいいのやら苦心する。
(一見すると隙だらけの構えなんだが、実はとんでもないワナだったりするんだよな)
何処に投げても打たれそうな雰囲気だ。
どんな天才バッターでも4割を超える事は無い。
そう考えれば 打ち取る可能性の方が高いのだが 何故か打たれる可能性の方が高く感じる。
(いくら考えても仕方ない…これでどうだ)
毒島がサインを出した。
伊達は中腰の体勢でサインを覗き込み 大きく頷いた。
ノーワインドアップから長身を活かしたスリークォーター気味のフォームで初球を投げた。
インコース低めにキレのあるストレートがズバッと決まった。
「ストライクワンっ!!」
バックスクリーンのオーロラビジョンには144km/hと表示された。
「うぉ~、速いなぁ」
白石はヘルメットを取り ダークブラウンの前髪をかき分ける。
185cm 78kgという均整のとれた体格は野球選手というよりモデルの様な佇まいだ。
おまけに精悍な顔つきで一見するとハーフに間違えられる程の彫りの深さ。
「あれでまだ18かよ…スゲーな」
「ホントにスゲーよな…オレなんか、18の時は二軍で体力付けるトレーニングばかりさせられてたよ」
「へぇ、そうなんすか?オレもそんな感じでしたね」
毒島と二言三言交わし 足元を固めながらバットを構えた。
いくらスゴいと言っても 所詮は18才のルーキー。
目の前に立ちはだかるのはリーグを いや日本を代表するスラッガー白石だ。
打席では威圧感さえ漂う風格。
物怖じしない方が無理というものだ。
そんなスラッガー相手にどう攻めればいいのか 毒島は迷う。
(打たれてもまだ初回だし…ここはルーキーらしく、ドンドン強気で押すピッチングをさせよう)
サインを出した。
伊達は軽く頷き 速いモーションから2球目を投げた。
今度はアウトコースへのストレート。
「…単調な攻めだ」
「エッ…」
毒島は「しまった!」と思ったが 時すでに遅し。
流れるようなフォームから紫電一閃 振り抜かれたバットから弾道の低いライナーがグーンとライトへ伸びた。
ライトを守るルイスが俊足を飛ばして懸命に追うが 打球は失速すること無く スタンド中段に突き刺さった。
白石は打球の行方を追わず ゆっくりとベースを回っている。
「やっぱ、打たれたか…これはオレの責任だな」
毒島が完敗だとばかりに呟く。
白石の第17号ソロでマーリンズが早くも先制した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。



後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる