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6月・インターカンファレンス 終盤
主砲の意地
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試合は両投手の投げ合いで無得点のまま 中盤の6回へと進む。
「さぁ6回の表、パイレーツの攻撃は2番の牧田から。
Glanz先発片山はここまで、3安打 2四球という内容ですが、玉井尻さんはどうご覧になられますか?」
「…決して調子が良いとは言えないだろうな。
それでも、悪いなりに抑えてんだから、まずまずという感じなんじゃないかな」
今日の片山はMAX139km/hのストレートに決め球の縦のスライダーが今ひとつ。
となれば 縦のスライダーでカウントを稼いで サークルチェンジで打ち取る従来のスタイルでここまで無得点に抑えた。
「牧田が左打席に入りました。
今年はショートでの出場が16試合、それ以外は指名打者での出場になるのですが、牧田の守備はどうでしょうか?」
「コイツはショート向きじゃないだろ。本職はセカンドなんだろ?」
「そうですね…でも、セカンドはリーグを代表する鬼束がいますからね。
牧田はショート、もしくはサードといったポジションになるのですが」
「ショートなんてのは、近代野球の要じゃん?余程のセンスが無いと務まるポジションじゃないだろ」
パイレーツの欠点は 安心して任せられるショートが不在だという点だ。
牧田がメインでショートに据えているが 如何せん心許ない。
「マウンド上の片山がサインを見る…ノーワインドアップから初球を投げた!
インサイドに決まった、ストライク!
玉井尻さん、今のはツーシームですか?」
「今のはいいコースに決まったな…あれは打っても、ボテボテの内野ゴロだろ」
138km/hのツーシームがインコースギリギリに決まった。
「牧田は第1打席がセカンドゴロ、第2打席がレフトフライに倒れてます。
バットを短く持って寝かせ気味に構えてます」
「そういや、コイツ左ピッチャーからまだヒット打ってないんじゃないか?」
「えぇっと、そう…ですね。
牧田は今年左ピッチャーとの対戦成績は、27打数ノーヒットですね…」
「何でこんなのをスタメンにしてんだ?コイツよりも、右バッターでいいのがいるんじゃないのか?」
玉井尻の言う通り 牧田よりも右バッターをスタメン出場させればいいのだが そうなると守備が不安になる。
案の定 牧田はカットボールを引っ掛けサードゴロに倒れた。
「ワンアウトとなって、次のバッターは昨年新人王の冬野」
3番冬野が左の肘当てを直しながら右打席に入った。
「玉井尻さん、冬野は昨年 打率.286 本塁打26で新人王を獲得しましたが、今年は不調でここまで打率.238 本塁打11…最近になって調子を上げてきましたが、まだ本調子には程遠いんじゃないですか?」
玉井尻が鼻くそをほじくりながら解説する。
「う~ん…2年目のジンクスってヤツじゃないのか。
とにかくコイツが打たなきゃ、次の鬼束が徹底的にマークされるし、このチームは2人が打たないと勝てないしな」
今年は鬼束を歩かせ 次のバッター兼近で勝負をするパターンが多い。
つまり鬼束の前後を打つ 冬野 兼近の打棒にチームが左右される。
冬野を迎え マウンド上の片山が毒島を呼び寄せる。
「ん?何だ…」
何事かと毒島がマウンドに駆け寄る。
グラブに手を当て 二言 三言交わした。
それを見て 投手チーフコーチの高峰もマウンドに向かった。
片山は冬野を歩かせ 鬼束で勝負する旨を伝えた。
「何ぃ、そんな事が出来ると思ってるのかよ!」
「大丈夫だよ、ここでマコト(鬼束)を抑えなきゃ、今日の勝ちどころか、明日の試合だって勝つ事は無理だぜ」
敢えて鬼束との勝負を望むつもりだ。
「…アキオ、抑える自信はあるのか?」
高峰が腕組みをしながら訊く。
「あったり前っすよ!アイツの攻略法はちゃんとインプットされてますよ」
「…そうか…じゃあ、ここはお前に任せる。
但し、必ず抑えろ…いいな?」
「了解っ」
「エッ…コーチ、ホントに勝負するんですか?」
今日の調子じゃ鬼束を抑える事は無理だ。
毒島はそう思った。
「うむ…アキオがここまで言うんだから、何か秘策があるんだろ…」
「はぁ…」
「ヨシ、それじゃ冬野は歩かせて鬼束で勝負だ、頼んだぞ!」
【ハイ!】
高峰はベンチに戻り 中田に説明した。
中田は頷き ベンチを出て審判に申告敬遠を告げる。
「おぉーっと、Glanzここで冬野を歩かせて鬼束で勝負するつもりです!」
「何考えてんだ、勝負する相手が逆だろ」
申告敬遠で冬野が一塁へ向かう。
【4番セカンド鬼束】
その様子を見て 鬼束が険しい表情で打席に向かった。
「さぁ6回の表、パイレーツの攻撃は2番の牧田から。
Glanz先発片山はここまで、3安打 2四球という内容ですが、玉井尻さんはどうご覧になられますか?」
「…決して調子が良いとは言えないだろうな。
それでも、悪いなりに抑えてんだから、まずまずという感じなんじゃないかな」
今日の片山はMAX139km/hのストレートに決め球の縦のスライダーが今ひとつ。
となれば 縦のスライダーでカウントを稼いで サークルチェンジで打ち取る従来のスタイルでここまで無得点に抑えた。
「牧田が左打席に入りました。
今年はショートでの出場が16試合、それ以外は指名打者での出場になるのですが、牧田の守備はどうでしょうか?」
「コイツはショート向きじゃないだろ。本職はセカンドなんだろ?」
「そうですね…でも、セカンドはリーグを代表する鬼束がいますからね。
牧田はショート、もしくはサードといったポジションになるのですが」
「ショートなんてのは、近代野球の要じゃん?余程のセンスが無いと務まるポジションじゃないだろ」
パイレーツの欠点は 安心して任せられるショートが不在だという点だ。
牧田がメインでショートに据えているが 如何せん心許ない。
「マウンド上の片山がサインを見る…ノーワインドアップから初球を投げた!
インサイドに決まった、ストライク!
玉井尻さん、今のはツーシームですか?」
「今のはいいコースに決まったな…あれは打っても、ボテボテの内野ゴロだろ」
138km/hのツーシームがインコースギリギリに決まった。
「牧田は第1打席がセカンドゴロ、第2打席がレフトフライに倒れてます。
バットを短く持って寝かせ気味に構えてます」
「そういや、コイツ左ピッチャーからまだヒット打ってないんじゃないか?」
「えぇっと、そう…ですね。
牧田は今年左ピッチャーとの対戦成績は、27打数ノーヒットですね…」
「何でこんなのをスタメンにしてんだ?コイツよりも、右バッターでいいのがいるんじゃないのか?」
玉井尻の言う通り 牧田よりも右バッターをスタメン出場させればいいのだが そうなると守備が不安になる。
案の定 牧田はカットボールを引っ掛けサードゴロに倒れた。
「ワンアウトとなって、次のバッターは昨年新人王の冬野」
3番冬野が左の肘当てを直しながら右打席に入った。
「玉井尻さん、冬野は昨年 打率.286 本塁打26で新人王を獲得しましたが、今年は不調でここまで打率.238 本塁打11…最近になって調子を上げてきましたが、まだ本調子には程遠いんじゃないですか?」
玉井尻が鼻くそをほじくりながら解説する。
「う~ん…2年目のジンクスってヤツじゃないのか。
とにかくコイツが打たなきゃ、次の鬼束が徹底的にマークされるし、このチームは2人が打たないと勝てないしな」
今年は鬼束を歩かせ 次のバッター兼近で勝負をするパターンが多い。
つまり鬼束の前後を打つ 冬野 兼近の打棒にチームが左右される。
冬野を迎え マウンド上の片山が毒島を呼び寄せる。
「ん?何だ…」
何事かと毒島がマウンドに駆け寄る。
グラブに手を当て 二言 三言交わした。
それを見て 投手チーフコーチの高峰もマウンドに向かった。
片山は冬野を歩かせ 鬼束で勝負する旨を伝えた。
「何ぃ、そんな事が出来ると思ってるのかよ!」
「大丈夫だよ、ここでマコト(鬼束)を抑えなきゃ、今日の勝ちどころか、明日の試合だって勝つ事は無理だぜ」
敢えて鬼束との勝負を望むつもりだ。
「…アキオ、抑える自信はあるのか?」
高峰が腕組みをしながら訊く。
「あったり前っすよ!アイツの攻略法はちゃんとインプットされてますよ」
「…そうか…じゃあ、ここはお前に任せる。
但し、必ず抑えろ…いいな?」
「了解っ」
「エッ…コーチ、ホントに勝負するんですか?」
今日の調子じゃ鬼束を抑える事は無理だ。
毒島はそう思った。
「うむ…アキオがここまで言うんだから、何か秘策があるんだろ…」
「はぁ…」
「ヨシ、それじゃ冬野は歩かせて鬼束で勝負だ、頼んだぞ!」
【ハイ!】
高峰はベンチに戻り 中田に説明した。
中田は頷き ベンチを出て審判に申告敬遠を告げる。
「おぉーっと、Glanzここで冬野を歩かせて鬼束で勝負するつもりです!」
「何考えてんだ、勝負する相手が逆だろ」
申告敬遠で冬野が一塁へ向かう。
【4番セカンド鬼束】
その様子を見て 鬼束が険しい表情で打席に向かった。
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