I Love Baseball 主砲の一振り 6

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3月・4月 ペナントレース開幕

申告敬遠

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カウントはワンボール ワンストライク。

齋藤が速いテンポから3球目を投げた。

(重心が高い…変化球だな)


外角低めへチェンジアップ。

「ストライクツー!」


「エッ…今の低いだろ?」


財前がバットでコースを指しながら抗議する。


「ストライクだっ!ギリギリ入ってる!」


しかし 主審の判定は覆らない。


「ウソだろ、今のは低いっつーの!」


「それ以上しつこいと退場にするぞっ!」


今日の主審 矢野の判定は少し曖昧な気がする。


「退場にはなりたくねぇんだよな…」


そう言うと 財前は腑に落ちない表情で再びバットを構えた。


カウントはワンボール ツーストライクとなった。


(低めを大きく取るとなりゃ、次は多少クサイ所でも手を出すしかないのか)


バッターには不利な判定になりそうだ。

齋藤がサインを出す。


キャッチャー丸藤は少し内側にミットを構えた。


ややスリークォーターから小気味よいテンポで4球目を投げた。


(重心が低い…ストレートだ!)


インコース低めへ143km/hのストレートが。


財前はこれをフルスイング。



【カァァァァン!】


乾いた打球音とともに打球は右中間へ。




センター姫野 ライト刀根が懸命に打球を追う。


だが 打球は両者の間に割って入る様にポトリと落ちた。


財前が一塁を蹴って二塁へ。


刀根が追いつきボールを二塁へ。


「セーフ!」


財前が滑り込んで僅かに速く二塁へ到達。


ノーアウトから財前のツーベースヒットでGlanz得点のチャンス。


「ヨシ、チャンスだ!」


ここで中田監督はベンチから出て選手の交代を告げた。


【Glanz選手の交代をお知らせします。庵野に代わりまして 徳川…8番ファースト徳川 背番号23】


ネクストバッターズサークルで徳川が満を持して立ち上がった。


人工芝の球場は膝に負担が掛かるから出場しないとゴネていたのだが 中田と勅使川原の強面コンビに脅され
仕方なく代打で出場するハメになった。


心なしか 少し引きつった表情をしている。


「ったく…これだから、人工芝の球場ってイヤなんだよ」


人工芝の球場はアスファルトの上に人工の芝を敷いている為 膝への負担が大きい。


少しでも長く現役を続けたい徳川にとっては 人工芝の球場は是が非でも避けたいところ。


とは言え そんな理屈は首脳陣には通用するハズも無く…


去年は106試合に出場。


規定打席には僅かに届かなったが 
打率.306 本塁打14 打点66 盗塁9 出塁率は.384 OPSは.887とレギュラーの座を獲得した。


一昨年まで23を付けていた結城の後継者とも言われ
柔らかいバットコントロールは結城に勝るとも劣らない。


「フゥ~っ…」


大きく息を吐き 肩口にバットを乗せて構えた。


非常にリラックスしたフォームをしている。



マウンド上では丸藤を含めた内野陣が集まっている。


敬遠か勝負か…


対するGlanzはここは何としてでも得点に結びつけたいところ。



すると酒井監督はベンチを出て主審に申告敬遠をした。


「何だ…結局、歩くのかよ」


徳川は一度もバットを振ることなく一塁へ歩いた。


【ただいま、敬遠が申告されました。徳川選手は一塁に進みます】


場内アナウンスで申告敬遠を説明する。


すると今度はGlanzが代走を告げた。


【Glanz選手の交代をお知らせします…一塁ランナー徳川に代わりまして、藤村。一塁ランナー藤村。背番号46】


俊足の藤村が代走に送られた。


「…オレ、何しに出てきたんだろ?」


首を傾げながら徳川はベンチに下がった。


ベンチでは中田がニヤッと笑っている。


「どうだ、これでも出場なんだから、お前にとっちゃ好都合なんじゃないか?」


「好都合って…初めからこうなる事を分かってて代打に送ったんですか?」


「あたりめーだろ!お前が人工芝の球場にゃ出たくねぇってダダこねるから、こうやって試合に出させてやったんだよ」


「はぁ…」


つまり中田の計算通りというワケだった。


「どうせ、歩かせると思ったんだよ。ここまでは読み通り…勝負はこっからだぜ」


次はラストバッターの筧だ。
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