I Love Baseball 主砲の一振り 6

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3月・4月 ペナントレース開幕

強心臓の持ち主

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齋藤は2番石川をセカンドゴロに  
3番唐澤をライトフライに打ち取り三者凡退で1回の表が終了。

1回の裏 Super Phoenixの攻撃。

マウンド上にはこれまた初の開幕投手に任命された左腕の片山が緊張した表情で投球練習をしている。


「おい、アキオ!」


マスクを被る毒島がマウンドへ駆け寄る。


「な、何だよ」


「へぇ~、やっぱお前でも開幕投手ともなれば緊張するんだ」


「き、緊張?し、してねぇよ、緊張なんて」


片山はチームでも1,2を争う程の強心臓の持ち主だ。


「緊張してる方が良いピッチング出来るんじゃないのか」


「だから、緊張してねぇって…」


「とにかく、今日からペナントレースが始まるんだ。
初っ端だし、気合い入れていこうぜ」


片山の腰をポーンと叩いて守備についた。


「緊張というか、何か雰囲気が違うんだよな、開幕戦は」


マウンドから球場全体を見渡し、いつもと違う雰囲気を一身に感じる。


「でも、開幕投手なんてそう滅多に出来る事じゃないし…ここは、この緊張感とやらを存分に味わってみようかね」


大きく息を吐くと緊張が少し和らいだ。


【1回の裏 京都Super Phoenixの攻撃は…1番ライト刀根。背番号9】


今年から背番号を32から9に変えた刀根が軽く素振りをしながら左打席に入った。


昨年は打率.296 本塁打6 打点46 盗塁56で盗塁王を獲得。

出塁率は.381 得点は105とリードオフマンに相応しい成績を挙げた。


刀根が塁に出れば得点に絡むチャンスが大きくなる。


逆に言えば Glanzは刀根を塁に出さない事がSuper Phoenixを抑える。



淡い紫のユニフォームに身を包み黒のリストバンドを直し 丹念に足元を固めながらバットを構える。


(さぁて、初球はこれでどうだ?)


毒島がサインを出した。


「…!?」


予想の斜め上を行くサインに思わずプレートを外した。


「おい、マジかよ…」


ロージンバッグを手にし やや困惑の表情をしている。


(おい、いいから早く投げろ)


毒島はサインを変えない。


「大丈夫かよ、ホントに…」


仕方がない とばかりに頷いて第1球を投げた。


「な…」


刀根がビックリしたまま固まっている。


片山の投げたボールは 超スローボールで山なりの軌道を描いてド真ん中に構えたミットに吸い込まれた。



「ストライクワン!」


「ハ、ハハハ…上手くいったよ」


投げた片山も思わず苦笑する程のスローボールだ。



「はぁ~…まさか、第1球が超スローボールとは」


刀根は呆れた表情をしている。


(次は速い球だろう…それを狙い打ちしてやる!)




毒島は刀根の表情をくまなく観察した。


(フフ、どうせ次は速球だと思ってるんだろ)


そう思い 今度は片山がサインを出せと合図した。


「オレがサイン出すのかよ」


片山がサインを出した。


同時に毒島が外寄りにミットを構えた。


(ん?キャッチャーが外に寄った…アウトコースのストレート。…いや、待てよ…ストレートならわざわざ外に寄らなくてもいいハズ…
て事は、変化球?それも、外へのスライダーでは?)


刀根の頭の中では変化球が来るという結論に至った。


(ヨシ、ならば外のスライダーをぶっ叩く!)


グリップを肩口の高さまで上げ 少し長めに持った。


マウンド上の片山がオーソドックスなオーバースローから2球目を投げた。


「もらった!」


刀根が踏み込んでバットを出した。


だが ボールはアウトコースではなくインコースを抉るツーシームだった。


「ヤバっ…当たるっ」


咄嗟に腰を引いてボールが当たるのを避けたが バットは止まらない。


「ストライクツー!」


見送ればボールになる141km/hのツーシームを振ってしまった。


カウントはツーストライクで早くも追い込んだ。


(3球勝負は無いだろ…)


次で決める事は無いだろうと刀根は思った。


「さぁて、次は何を投げようか」


次も片山がサインを出す。


片山の球種はフォーシーム ツーシーム スライダー カーブ サークルチェンジと呼ばれるチェンジアップを投げる。

次で決めてくるとなればサークルチェンジを投げてくるだろう。


「じゃあ、ここで決めようか」


片山がサインを出した。


オフには新たな変化球をマスターした。


ここで投げてくるのだろうか。



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