5 / 82
キャンプイン
寒空の下
しおりを挟む
3人は地下から寒風吹きすさむ外へ出て、球場のはずれに設置してある喫煙所へ向かった。
ただでさえ喫煙者には肩身の狭い思いだが、受動喫煙防止条例によって喫煙所は屋内以外の場所に定められてしまった。
中田と勅使川原はユニフォームの上にウインドブレーカーを着て、榊はコートを羽織り肩を震わせながらタバコに火をつけた。
「あ”ぁ~っ!寒いな、チクショーっ!」
「大きい声出すな、バカヤロー!」
「それにしても、タバコ吸うのにこんな寒い思いしなきゃなんないのかよ…」
3人とも現役時代からの喫煙者で、特に監督の中田は1日に2箱も吸うヘビースモーカーだ。
「おい、チュン。監督室で吸おうぜ…こんなクソ寒い場所で吸ったら、風邪引いちまうぜ」
「おぅ、そうだな…中ちゃん、監督室行こうぜ」
「ダメなんだよ、前に監督室で吸ったら警報が鳴って大変だったんだよ」
以前、中田は監督室でタバコを吸ったところ、警報器が鳴って警備会社の職員が出動する騒ぎになった。
「マジかよ~っ、だったら感知器外しちまえばいいじゃん」
「そう思うだろ?オレも感知器外して吸ったんだよ…それなのに、警報が鳴ったんだぜ!
ビックリしたよ、ホントに」
「て事は、お前が外した感知器はダミーで、ホントの感知器は見えない場所に設置してあるんじゃないのか」
勅使川原の言う通り、感知器は目の届かない場所に設置してある。
どうせ、吸うなと言っても陰で吸うに決まってる…球団関係者はそう思い、分からない場所に感知器を設置した。
これを機に禁煙すればいいのに…そう思うのは作者だけだろうか。
「そう言えば…さっき思いついたんだけどな」
1本目のタバコを消し、勅使川原は先程閃いた事を話した。
「何を思いついたんだ?」
勅使川原は2本目のタバコに火をつけ、煙を吐き出しながら話を続けた。
「ピッチャーの起用法なんだけどな…終盤を誰に任せるか考えていたら、抑えは真咲がいいと思うんだ」
「真咲を抑えに?」
「いや、アイツを抑えにするのは勿体ないだろ!」
「何で勿体ないんだ?」
「何でって…ほら、アイツが先発すれば敗ける事は無いじゃん」
勅使川原は首を横に振る。
「確かにアイツが先発すれば、勝てる試合になるだろうが、次の登板まで1週間近く間隔が空くだろ?
だったら、アイツを抑えにして相手チームにプレッシャーを与えるんだよ!
リードしておかないと、真咲がマウンドに上がってしまうって、相手は焦るだろ?」
勅使川原は誰を抑えにするか、その為に後ろから順番に決めていた。
先発よりも抑えを誰にするか、それが1番重要であると考えた。
「それ、良いかもしれないな」
榊が同意する。
人を滅多に褒めない榊だが、勅使川原の事は現役時代から一目置いていた。
千葉ヤンキースの守護神として長年活躍してきた勅使川原の1番の武器はコントロールだった。
そのコントロールの良さは、暴君と呼ばれていた榊さえも素直に認める程だった。
その勅使川原が言うからには間違いは無いだろう、そう思った。
「真咲を抑えにするとして、その前は誰に任せるんだ?アクーニャともう1人は必要だろ」
「そりゃ、決まってるだろ!7回はアクーニャ、8回はジェイク、そして最終回は真咲。
この3人のサウスポーで終盤を抑えるんだよ」
三位一体で閃いたのは、アクーニャ、ジェイク、真咲の左腕3人で勝利の方程式を作る事だ。
「左の3人で…でも、最後に真咲って…前の2人が速い球放ったら、真咲の遅い球は打たれるんじゃないのか?」
「いや、そうは思わないなオレは」
榊は投手出身だ。
真咲の遅い球でも十分に抑えが務まると読んだ。
「確かにアクーニャとジェイクは速い球投げるけど、真咲の球はキレがあってコントロールもずば抜けて良い。
おまけに、あの投球術で1イニング限定で投げたら無双状態だぜ」
「さすがGM、伊達に赤いスーツ着てないな」
「だろだろ?オレはその勝利の方程式に賛成だな」
元々投手陣の底上げの為に勅使川原を招聘した。
中田は勅使川原に全幅の信頼を寄せている。
「ピッチャーの事はよく知らないから、テシに任せっきりだしな。
テシがそう言うなら、それでいこうや」
というワケで、勝利の方程式が生まれた。
ただでさえ喫煙者には肩身の狭い思いだが、受動喫煙防止条例によって喫煙所は屋内以外の場所に定められてしまった。
中田と勅使川原はユニフォームの上にウインドブレーカーを着て、榊はコートを羽織り肩を震わせながらタバコに火をつけた。
「あ”ぁ~っ!寒いな、チクショーっ!」
「大きい声出すな、バカヤロー!」
「それにしても、タバコ吸うのにこんな寒い思いしなきゃなんないのかよ…」
3人とも現役時代からの喫煙者で、特に監督の中田は1日に2箱も吸うヘビースモーカーだ。
「おい、チュン。監督室で吸おうぜ…こんなクソ寒い場所で吸ったら、風邪引いちまうぜ」
「おぅ、そうだな…中ちゃん、監督室行こうぜ」
「ダメなんだよ、前に監督室で吸ったら警報が鳴って大変だったんだよ」
以前、中田は監督室でタバコを吸ったところ、警報器が鳴って警備会社の職員が出動する騒ぎになった。
「マジかよ~っ、だったら感知器外しちまえばいいじゃん」
「そう思うだろ?オレも感知器外して吸ったんだよ…それなのに、警報が鳴ったんだぜ!
ビックリしたよ、ホントに」
「て事は、お前が外した感知器はダミーで、ホントの感知器は見えない場所に設置してあるんじゃないのか」
勅使川原の言う通り、感知器は目の届かない場所に設置してある。
どうせ、吸うなと言っても陰で吸うに決まってる…球団関係者はそう思い、分からない場所に感知器を設置した。
これを機に禁煙すればいいのに…そう思うのは作者だけだろうか。
「そう言えば…さっき思いついたんだけどな」
1本目のタバコを消し、勅使川原は先程閃いた事を話した。
「何を思いついたんだ?」
勅使川原は2本目のタバコに火をつけ、煙を吐き出しながら話を続けた。
「ピッチャーの起用法なんだけどな…終盤を誰に任せるか考えていたら、抑えは真咲がいいと思うんだ」
「真咲を抑えに?」
「いや、アイツを抑えにするのは勿体ないだろ!」
「何で勿体ないんだ?」
「何でって…ほら、アイツが先発すれば敗ける事は無いじゃん」
勅使川原は首を横に振る。
「確かにアイツが先発すれば、勝てる試合になるだろうが、次の登板まで1週間近く間隔が空くだろ?
だったら、アイツを抑えにして相手チームにプレッシャーを与えるんだよ!
リードしておかないと、真咲がマウンドに上がってしまうって、相手は焦るだろ?」
勅使川原は誰を抑えにするか、その為に後ろから順番に決めていた。
先発よりも抑えを誰にするか、それが1番重要であると考えた。
「それ、良いかもしれないな」
榊が同意する。
人を滅多に褒めない榊だが、勅使川原の事は現役時代から一目置いていた。
千葉ヤンキースの守護神として長年活躍してきた勅使川原の1番の武器はコントロールだった。
そのコントロールの良さは、暴君と呼ばれていた榊さえも素直に認める程だった。
その勅使川原が言うからには間違いは無いだろう、そう思った。
「真咲を抑えにするとして、その前は誰に任せるんだ?アクーニャともう1人は必要だろ」
「そりゃ、決まってるだろ!7回はアクーニャ、8回はジェイク、そして最終回は真咲。
この3人のサウスポーで終盤を抑えるんだよ」
三位一体で閃いたのは、アクーニャ、ジェイク、真咲の左腕3人で勝利の方程式を作る事だ。
「左の3人で…でも、最後に真咲って…前の2人が速い球放ったら、真咲の遅い球は打たれるんじゃないのか?」
「いや、そうは思わないなオレは」
榊は投手出身だ。
真咲の遅い球でも十分に抑えが務まると読んだ。
「確かにアクーニャとジェイクは速い球投げるけど、真咲の球はキレがあってコントロールもずば抜けて良い。
おまけに、あの投球術で1イニング限定で投げたら無双状態だぜ」
「さすがGM、伊達に赤いスーツ着てないな」
「だろだろ?オレはその勝利の方程式に賛成だな」
元々投手陣の底上げの為に勅使川原を招聘した。
中田は勅使川原に全幅の信頼を寄せている。
「ピッチャーの事はよく知らないから、テシに任せっきりだしな。
テシがそう言うなら、それでいこうや」
というワケで、勝利の方程式が生まれた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる