I Love Baseball 主砲の一振り 6

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キャンプイン

寒空の下

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3人は地下から寒風吹きすさむ外へ出て、球場のはずれに設置してある喫煙所へ向かった。


ただでさえ喫煙者には肩身の狭い思いだが、受動喫煙防止条例によって喫煙所は屋内以外の場所に定められてしまった。


中田と勅使川原はユニフォームの上にウインドブレーカーを着て、榊はコートを羽織り肩を震わせながらタバコに火をつけた。


「あ”ぁ~っ!寒いな、チクショーっ!」


「大きい声出すな、バカヤロー!」


「それにしても、タバコ吸うのにこんな寒い思いしなきゃなんないのかよ…」


3人とも現役時代からの喫煙者で、特に監督の中田は1日に2箱も吸うヘビースモーカーだ。


「おい、チュン。監督室で吸おうぜ…こんなクソ寒い場所で吸ったら、風邪引いちまうぜ」


「おぅ、そうだな…中ちゃん、監督室行こうぜ」


「ダメなんだよ、前に監督室で吸ったら警報が鳴って大変だったんだよ」


以前、中田は監督室でタバコを吸ったところ、警報器が鳴って警備会社の職員が出動する騒ぎになった。


「マジかよ~っ、だったら感知器外しちまえばいいじゃん」


「そう思うだろ?オレも感知器外して吸ったんだよ…それなのに、警報が鳴ったんだぜ!
ビックリしたよ、ホントに」


「て事は、お前が外した感知器はダミーで、ホントの感知器は見えない場所に設置してあるんじゃないのか」


勅使川原の言う通り、感知器は目の届かない場所に設置してある。


どうせ、吸うなと言っても陰で吸うに決まってる…球団関係者はそう思い、分からない場所に感知器を設置した。



これを機に禁煙すればいいのに…そう思うのは作者だけだろうか。





「そう言えば…さっき思いついたんだけどな」


1本目のタバコを消し、勅使川原は先程閃いた事を話した。



「何を思いついたんだ?」


勅使川原は2本目のタバコに火をつけ、煙を吐き出しながら話を続けた。


「ピッチャーの起用法なんだけどな…終盤を誰に任せるか考えていたら、抑えは真咲がいいと思うんだ」



「真咲を抑えに?」


「いや、アイツを抑えにするのは勿体ないだろ!」


「何で勿体ないんだ?」


「何でって…ほら、アイツが先発すれば敗ける事は無いじゃん」


勅使川原は首を横に振る。



「確かにアイツが先発すれば、勝てる試合になるだろうが、次の登板まで1週間近く間隔が空くだろ?
だったら、アイツを抑えにして相手チームにプレッシャーを与えるんだよ!
リードしておかないと、真咲がマウンドに上がってしまうって、相手は焦るだろ?」



勅使川原は誰を抑えにするか、その為に後ろから順番に決めていた。


先発よりも抑えを誰にするか、それが1番重要であると考えた。


「それ、良いかもしれないな」


榊が同意する。


人を滅多に褒めない榊だが、勅使川原の事は現役時代から一目置いていた。


千葉ヤンキースの守護神として長年活躍してきた勅使川原の1番の武器はコントロールだった。


そのコントロールの良さは、暴君と呼ばれていた榊さえも素直に認める程だった。


その勅使川原が言うからには間違いは無いだろう、そう思った。


「真咲を抑えにするとして、その前は誰に任せるんだ?アクーニャともう1人は必要だろ」


「そりゃ、決まってるだろ!7回はアクーニャ、8回はジェイク、そして最終回は真咲。
この3人のサウスポーで終盤を抑えるんだよ」



三位一体で閃いたのは、アクーニャ、ジェイク、真咲の左腕3人で勝利の方程式を作る事だ。


「左の3人で…でも、最後に真咲って…前の2人が速い球放ったら、真咲の遅い球は打たれるんじゃないのか?」


「いや、そうは思わないなオレは」


榊は投手出身だ。


真咲の遅い球でも十分に抑えが務まると読んだ。



「確かにアクーニャとジェイクは速い球投げるけど、真咲の球はキレがあってコントロールもずば抜けて良い。
おまけに、あの投球術で1イニング限定で投げたら無双状態だぜ」



「さすがGM、伊達に赤いスーツ着てないな」



「だろだろ?オレはその勝利の方程式に賛成だな」


元々投手陣の底上げの為に勅使川原を招聘した。


中田は勅使川原に全幅の信頼を寄せている。


「ピッチャーの事はよく知らないから、テシに任せっきりだしな。
テシがそう言うなら、それでいこうや」


というワケで、勝利の方程式が生まれた。
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