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シリアルキラー

殺人鬼としての覚醒

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達也とソンヒョクが、地下室で寝食を共にするようになり、一年程経過した。

最初のうちは、ソンヒョクのこなすトレーニングやスパーリングに付いていけず、ボロボロだった。

しかし、飲み込みの早い達也は、あっという間に上達。
ソンヒョクにも劣らない程の、殺しのスキルを身につけた。

ソンヒョクは銃を使わない。
以前に何故、銃を使わないのか?と達也は聞いたことがあるが、ソンヒョクの答えは

「達也、格闘技って元々は何のためにあるのか知ってるか?武道だなんだと言ってるが、本来は素手で人を殺める術、それが格闘技だ。
空手だって、試合には使えないような裏技がいっぱいあるだろ?あれだって相手が刃物を持った時、銃を構えた時に対抗すべく、禁じ手というのがかならずあるんだ。
これはソンセンの教えでもあるんだが、【武器は己の肉体と体術のみ】って、口酸っぱく言われたせいもあるのかな」

「でも銃は使わないけど、刃物は使ってるじゃないか」

「剣道や居合い抜きみたいなのもあるだろ?
忍者だって、カンフーだって、暗器使って仕留めるだろ?
それに比べると、銃は的を絞って構えて撃つまでどれだけの時間を要する?
プロのスナイパーならともかく、一度や二度、銃を使ったぐらいのヤツなんかより、鍛え抜かれたこの身体と格闘術があれば十分だ。
それに撃った後、どうやって遺体を始末する?意外と面倒なんだよ、銃ってのは」

ソンヒョクには、ソンヒョクなりのこだわりの殺り方がある。

達也はと言えば、殺すのに素手も凶器も関係無い。
ただ一方的になぶり殺す、それだけだ、という考え方だ。

ソンヒョクと仕事をするようになって、何人もの人間を闇に葬った。

だが、達也の殺り方はあまりにも猟奇的過ぎる。

前回はターゲットを暗い夜道に追い込み、安全靴の爪先で喉仏を蹴った。
それだけで、相手は気道が塞がり、死に至る。
だが、達也はその後も動かなくなった相手に、鋲の付いたオープンフィンガーグローブで滅多打ちした。

その後、踵からナイフを取り出し、手足をスパッと切断した。

「バカヤロー、オレたちの仕事は殺すだけだ!ここまでイカれた殺り方したら、後ろに手が回ってしまうぞ!」

グチャグチャの肉の塊になったターゲットの始末方法すら、考えてなかった。

依頼されたら殺す、その後はどうなろうと関係無い。そんな考えから、ソンヒョクと達也との間に溝が入った。

「こんな通りで、バラバラなんかにしやがって…後始末してる時間なんて無えぞ!」

ソンヒョクは激怒するが、達也は物足りない…と言うだけ。

ソンヒョクすら、押さえつけられない程の殺人鬼へと覚醒してしまった。

(コイツ、手のつけられ無いような、イカれた殺人鬼になってしまったかも)

ソンヒョクは達也と仕事をするのを止め、一人で行う事を決めた。

「何でだよ、ソンヒョク!オレ、ちゃんとターゲット始末してるじゃねえかよ!なぁ、何で降りろって言うんだよ」

達也は殺し屋ではなく、ただの快楽殺人を行っている、サイコパスへ変貌していった。

「あのバラバラにした死体、ニュースで大々的に報じてるぞ!
しかも、周辺には防犯カメラも設置されてんだよ!
バレたらどうすんのか、分かってるのか、おい!」

冷静沈着なソンヒョクが、声を荒げた。

「…バレたら?じゃあ、見つけたヤツを殺りゃいいじゃねえか…ククク…」

この男、狂ってる…まるで、殺人を楽しむかのように。

一緒に仕事をやろう、と言った事を後悔した。

ソンヒョクの殺しは、マフィアからの依頼を受けてから実行する。

それも誰にも分からぬよう、闇に葬る。
それが、ソンヒョクの与えられた仕事だ。

だから、私情で殺人を犯すなんて事は絶対にしない。


だが、達也は違った。
とにかく、人を殺したくてウズウズしている。

仕事があろうが無かろうが、とにかく人を殺したい。

とにかく壊したいという衝動にかられていた。

「…あぁ、殺してぇ…誰でもいいから、殺してえ」

人を殺すことに快感を得た達也は、仕事の依頼が無い時でも、単独で行動するようになった。

そして達也は、橋の下で暮らしているホームレスを襲撃した。

殴る蹴るの繰り返しで、ホームレスがピクリとも動かなくなっても、お構い無しに攻撃を止めない。

最後は懐に忍ばせていた、青竜刀のような刃物でバラバラに切り刻み、川に投げ捨てた。

ターゲットはホームレスだけじゃなく、一般人にも及んだ…
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