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流浪の如く
楽じゃないし、合コンなんて余裕も無い
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この様子を見ていた通行人が仲裁に入り、ケンカは収まった。
随分の向こうっ気の強いヤツだ。
家に戻って、履歴書を書いた。
これで何回目だろうか。
今度こそ真面目に働いて、約束を果たさなきゃ。
翌日、慣れないスーツを着て会社を訪れた。
面接はトントン拍子に就職が決まり、翌日から勤務する事になった。
だが思っていた程、楽な仕事ではない。
段ボールにギッシリと入っているジュース類を補充、消費期限等のチェック。
車に積んである缶やペットボトルを全て補充するまで帰れない。
段ボールの重さはそれ程でもないが、一日に何度も繰り返すと、腕や腰にかなりの疲労が蓄積される。
おまけに道路状況によっては、渋滞していると、時間通りに到着出来ない。
あの男が言ってた通り、楽な仕事じゃなかった。
仕事を始めて半月程経った頃だった。
夜遅くなり、フラフラな状態で家に帰ろうとした時だった。
あの男とばったり会い、会社の玄関口で対峙した。
「だから言ったろ。楽な仕事じゃねえって」
エラそうに、上から目線で言ってきた。
「仕事に楽もキツいも関係ねえ、やらなきゃ生活できねえんだよ、こっちは!」
「お前さぁ、何でこの仕事選んだの?端から見て楽そうだと思ってたんだろ、なぁ?」
図星だった。
ルートさえ覚えれば、後は自販機に補充するだけだと思っていた。
「で、他に何か言うことは?無いなら帰るぞ!オレは明日も仕事だしな」
玄関を出ようとしたが、行く手を遮られた。
「何だよ、しつけえな!」
「ちょっと付き合ってくんないかな、一時間程でいいから」
「はぁ?」
「実はさ、オレ前にキャバクラの黒服やってたんだよ」
「黒服って何だよ?」
「お前、キャバクラ行った事無いのか?」
そんなに珍しいのか、キャバクラに行かないのが?
「要はボーイだよ。キャストを客に応じて振り分けて店内を見て回るんだよ」
「…で、その元黒服が何でこの仕事してんだよ?」
随分な変わりようだな。
「一時間だけでいいから付き合ってくれよ」
「何するんだよ?」
「…合コンだよ」
「パス!オレ無理」
話を聞いて損した。
「ちょっと待った!」
男はオレの腕を掴んで帰そうとしない。
「悪いけどオレ、コミュ障ってやつだから。それに酒飲めないし」
「いや、喋んなくても、飲まなくてもいいから人数合わせの為に一時間だけ来てくれ、なっ?」
「オレ働き始めたばかりだから金無いぞ!」
ただでさえ、家賃の支払いが遅れがちなのに、余計な金なんて無い。
「二千円でいいから!」
「…オレはその二千円でさえもキツいんだよ!」
「…じゃあ、給料入った時でいいから!ここはオレが持つから。な?いいだろ?」
仕方ない…
「じゃ、一時間だけだぞ」
「そうか、じゃ今から行こう」
「何処へ行くんだよ?」
そのまま居酒屋に連れていかれた。
随分の向こうっ気の強いヤツだ。
家に戻って、履歴書を書いた。
これで何回目だろうか。
今度こそ真面目に働いて、約束を果たさなきゃ。
翌日、慣れないスーツを着て会社を訪れた。
面接はトントン拍子に就職が決まり、翌日から勤務する事になった。
だが思っていた程、楽な仕事ではない。
段ボールにギッシリと入っているジュース類を補充、消費期限等のチェック。
車に積んである缶やペットボトルを全て補充するまで帰れない。
段ボールの重さはそれ程でもないが、一日に何度も繰り返すと、腕や腰にかなりの疲労が蓄積される。
おまけに道路状況によっては、渋滞していると、時間通りに到着出来ない。
あの男が言ってた通り、楽な仕事じゃなかった。
仕事を始めて半月程経った頃だった。
夜遅くなり、フラフラな状態で家に帰ろうとした時だった。
あの男とばったり会い、会社の玄関口で対峙した。
「だから言ったろ。楽な仕事じゃねえって」
エラそうに、上から目線で言ってきた。
「仕事に楽もキツいも関係ねえ、やらなきゃ生活できねえんだよ、こっちは!」
「お前さぁ、何でこの仕事選んだの?端から見て楽そうだと思ってたんだろ、なぁ?」
図星だった。
ルートさえ覚えれば、後は自販機に補充するだけだと思っていた。
「で、他に何か言うことは?無いなら帰るぞ!オレは明日も仕事だしな」
玄関を出ようとしたが、行く手を遮られた。
「何だよ、しつけえな!」
「ちょっと付き合ってくんないかな、一時間程でいいから」
「はぁ?」
「実はさ、オレ前にキャバクラの黒服やってたんだよ」
「黒服って何だよ?」
「お前、キャバクラ行った事無いのか?」
そんなに珍しいのか、キャバクラに行かないのが?
「要はボーイだよ。キャストを客に応じて振り分けて店内を見て回るんだよ」
「…で、その元黒服が何でこの仕事してんだよ?」
随分な変わりようだな。
「一時間だけでいいから付き合ってくれよ」
「何するんだよ?」
「…合コンだよ」
「パス!オレ無理」
話を聞いて損した。
「ちょっと待った!」
男はオレの腕を掴んで帰そうとしない。
「悪いけどオレ、コミュ障ってやつだから。それに酒飲めないし」
「いや、喋んなくても、飲まなくてもいいから人数合わせの為に一時間だけ来てくれ、なっ?」
「オレ働き始めたばかりだから金無いぞ!」
ただでさえ、家賃の支払いが遅れがちなのに、余計な金なんて無い。
「二千円でいいから!」
「…オレはその二千円でさえもキツいんだよ!」
「…じゃあ、給料入った時でいいから!ここはオレが持つから。な?いいだろ?」
仕方ない…
「じゃ、一時間だけだぞ」
「そうか、じゃ今から行こう」
「何処へ行くんだよ?」
そのまま居酒屋に連れていかれた。
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