Baseball Freak 主砲の一振り 7

オープン戦開幕

本当の二刀流

Glanzはこの日、京都Super Phoenixとのオープン戦を行う。


Super Phoenixは新戦力として、3Aでプレーしていた椎名 光(しいなひかる)投手が先発。

椎名はプロ野球選手初の両投げ両打ちという、左右どちらからでも投げて打つ器用な選手。


右では最速152 km/hのストレートを軸に、スライダー、カーブ、チェンジアップを操り、左では140後半のフォーシームとツーシーム、カットボールとスライダー、スプリットを得意とする。


本人曰く、右での投球がメインで、左の投球はあくまでカウントを稼ぐ為の投球だと言う。

しかし、ストレートの回転数は左の方がはるかに高い。

そしてバッティングでは、左右どちらでもスタンドに運ぶパワーを持つ。


両投げと言えば、Glanzの前身 静岡ピストルズの延原 曹が思い浮かぶが、椎名の場合はスイッチピッチャーでスイッチヒッターと稀有な存在。


首脳陣は椎名を二刀流として器用するかどうかをこのオープン戦で見極めるつもりだ。




マウンド上の椎名は特注の6本指のグラブを右手にはめてる。


左右どちらでも使用出来る為、右で投げた次は左で投げる事が可能だ。


トップバッターの石川が右打席に入る。


右には右で対抗するのがセオリーだが、椎名は左で投げるつもりだ。


キャッチャー三井のサインに頷き、第1球を投げた。


インコースへ食い込む146 km/hのストレートが決まった。


「ストライクワンっ！」


ボールのキレは良く、球速以上に速く感じる。


三井から返球を受けると、今度は左手にグラブをはめた。


背筋をピンと伸ばした状態のノーワインドアップから2球目を投げた。


ボールは真ん中やや低めから外角へ流れるスライダー、これは石川が見送る。


「ボールワンっ！」


左右共にぎこち無い感じは見られず、慣れた様なフォームだ。


今度は再びグラブを右手にはめ、左手でボールを握った。


そして3球目はインコースへ食い込むカットボール。

石川はバットを出すが、根っこの部分に当たりバットが折れた。


当たりはボテボテのセカンドゴロ。

セカンド清水が前進して捌き、一塁へ送球。


「アウト！」


石川はセカンドゴロでワンアウト。



続いて2番の徳川が打席に。


椎名は左投げにスイッチ。


初球ストレートが外れてボールワン。

2球目は外角に決まるスライダーでワンストライク。


3球目、真ん中やや低めのストレートを捕らえるが、左に切れてファール。


4球目はチェンジアップを見送りツーナッシング。


5球目はスライダーを引っ掛けサードゴロでツーアウト。


続くバッターは3番スイッチヒッターの菅原。


菅原は右打席に入った。


すると椎名は右投げにスイッチ。


初球はカーブから入ったが、僅かに外れてボールワン。


2球目、外角低めのストレートが決まってワンストライク。


3球目はスライダーを投じるが、菅原がカットしてファール。


4球目はカットボールでツーストライク。


5球目、インコース低めに151 km/hがズバッと決まるが、球審の判定はボール。


6球目、今度はチェンジアップを投げた。


菅原はこれに反応するが、センターフライに打ち取られスリーアウトチェンジ。


椎名は無難な立ち上がりで初回をゼロに抑えた。