142 / 182
キャンプイン
ニュータイプのキャッチャー
しおりを挟む
庵野を見逃しの三振に抑え、続くバッターは左の小早川。
(確か皐月さんの球種はストレートにカーブ、後は縦に変化するジャイロボール…ジャイロボールって何だ?)
そもそも皐月の球は120 km/h台だが、昨年引退した真咲同様、球速以上の速さを感じる。
そのスピードを生かすには、カーブと縦に変化するジャイロボールが有効。
皐月本人はジャイロボールと命名しているが、軌道は縦のスライダーと酷似している。
(結局は縦のスライダーじゃん!)
そう思ったのだが、本人がジャイロボールというのなら、ジャイロボールにしておこうと思い、敢えて言わない事にした。
(んじゃぁ、初球はこれで)
初球から最後に打ち取る球数までを概算で考え、配球の組み立てをしっかりと考えている。
「この打席で打ち取る事が出来たら、自分は正捕手の座を彼に譲りますよ」
滝沢は後継者に南方を指名したという事か。
初球はインコースへ126 km/hのストレートを投げた。
「ボールワン!」
僅かに外れてボール。
(外れたか…では、次はこれで)
躊躇無く次のサインを出す。
2球目、再びストレートがボール1個分内に入った。
「ストライクワン!」
皐月は新人ながら、昨年ローテーションを守り通した結果、10勝10敗 防御率3.76の好成績を残した。
それだけではなく、成績以上に収穫があったのは、制球力の上達だ。
プロの世界はボール半個分でもコントロールミスをすれば痛打される。
それを身をもって知った皐月は、制球力の精度を上げる練習に費やした。
制球力が向上すれば、自然と勝ち星は増えるし、防御率も良くなる。
皐月も南方も今年は2年目。
更なる飛躍をする為には、レベルアップが必要となる。
再度南方がサインを出す。
皐月は全く首を振らない。
南方のキャッチャーの適正があるかどうか試しているのだろう。
3球目を投げた。
今度は一転して外へ変化するジャイロボールを投げた。
小早川はバットを出すが、打ち損じてボテボテのサードゴロ。
サードを守る乃木が軽快に捌いて一塁へ。
「アウト!」
「合格ですね」
滝沢が立ち上がり、南方の下へ向かう。
「今年はキャッチャーのいろはを徹底的に教えるから、しっかり勉強しろよ」
「ハ、ハイっ!」
滝沢が正捕手の座を明け渡した。
「中田監督」
「ん?」
「南方が正捕手となれば、自分はもう打席に立つ事は無いでしょう」
「何でだ?」
前々から思ってたことを中田に伝えた。
「知っての通り、オレはバッティングがまるっきりダメです。
正捕手と言われながらも、何とか攻撃面で貢献したいと思いながらもバッティングを練習してきましたが、どうしても成績が上がらない…
今年兼任でコーチをやらせてもらってますが、いい機会なので、バッティングは断念して、キャッチャーとして守る事だけに専念したいのです」
滝沢自身も打撃の限界を感じていた。
「打席に立つのを止めるって…じゃあ、どうやってキャッチャーだけをやるんだよ?」
「簡単な事です。ピッチャーに抑えがあるように、キャッチャーにも抑えがあった方がいいと思うんです」
「て事は、お前は抑えと一緒に最終回だけマスクを被るって事か?」
「ハイ」
抑えのキャッチャーとして滝沢は出場する事を提案した。
「私わかります(^-^)」
ここでひろしが入ってきた。
「何が分かるんだよ、オマエに!」
「滝沢コーチは終盤の守備力強化に打ってつけの選手ですち!」
ひろしの野球論として、序盤は攻撃重視、中盤から終盤にかけては守備を重視した戦術こそが勝ちに繋がると言う。
「つまり、僅差のゲームで最終回に抑えのバッテリーが登場して試合を締めくくるって事か?」
「んだな(^ ^)」
「自分も宇棚監督と同じ考えです」
滝沢も同じことを考えていた。
「参ったね、2人ともそんな事を考えていたとはなぁ」
「いいじゃねぇか、中(チュン)。オレもその考えに賛成だよ」
今年からバッテリーマネージャーに就任した勅使川原が賛同する。
「う~ん、確かに悪くない考えだな…それじゃ、オープン戦で試してみようか」
「ただ…」
「ん、何だ?」
「現段階では、南方を正捕手にするのは無理があります」
滝沢が待ったをかけた。
「経験不足ってヤツか?」
「ハイ。彼には今年1年キャッチャーの勉強をしてもらい、ある程度の能力に達したら、マスクを被った方がいいと思うんです」
「じゃあ、それまではオマエがマスクを被るのか?」
現時点でのキャッチャーは滝沢の他に第二捕手の比村とベテランの七海の三人だ。
「当面の間、比村がマスクを被って、そのサポートを七海さんと自分が行うんです」
「じゃあ、南方は今年もDHか」
「キャッチャーに仕立て上げるまでの間です。期間は彼次第になりますが」
「まぁ、そういう事になるか」
「これでGlanzの弱点が解消しましたち!」
「簡単に言うな!」
「んだな(^-^)」
南方が正捕手になれば、バッティングだけではなく、盗塁も二桁は期待出来る。
今までにない、走攻守万能なニュータイプのキャッチャーが誕生する。
「おい、南方!オマエ、本気でキャッチャーやるんだろ?」
「ハイ、キャッチャーになるのが夢でした」
「そうと決まれば、キャッチャーに変身させなきゃなぁ」
南方のキャッチャー転向計画がスタートした。
(確か皐月さんの球種はストレートにカーブ、後は縦に変化するジャイロボール…ジャイロボールって何だ?)
そもそも皐月の球は120 km/h台だが、昨年引退した真咲同様、球速以上の速さを感じる。
そのスピードを生かすには、カーブと縦に変化するジャイロボールが有効。
皐月本人はジャイロボールと命名しているが、軌道は縦のスライダーと酷似している。
(結局は縦のスライダーじゃん!)
そう思ったのだが、本人がジャイロボールというのなら、ジャイロボールにしておこうと思い、敢えて言わない事にした。
(んじゃぁ、初球はこれで)
初球から最後に打ち取る球数までを概算で考え、配球の組み立てをしっかりと考えている。
「この打席で打ち取る事が出来たら、自分は正捕手の座を彼に譲りますよ」
滝沢は後継者に南方を指名したという事か。
初球はインコースへ126 km/hのストレートを投げた。
「ボールワン!」
僅かに外れてボール。
(外れたか…では、次はこれで)
躊躇無く次のサインを出す。
2球目、再びストレートがボール1個分内に入った。
「ストライクワン!」
皐月は新人ながら、昨年ローテーションを守り通した結果、10勝10敗 防御率3.76の好成績を残した。
それだけではなく、成績以上に収穫があったのは、制球力の上達だ。
プロの世界はボール半個分でもコントロールミスをすれば痛打される。
それを身をもって知った皐月は、制球力の精度を上げる練習に費やした。
制球力が向上すれば、自然と勝ち星は増えるし、防御率も良くなる。
皐月も南方も今年は2年目。
更なる飛躍をする為には、レベルアップが必要となる。
再度南方がサインを出す。
皐月は全く首を振らない。
南方のキャッチャーの適正があるかどうか試しているのだろう。
3球目を投げた。
今度は一転して外へ変化するジャイロボールを投げた。
小早川はバットを出すが、打ち損じてボテボテのサードゴロ。
サードを守る乃木が軽快に捌いて一塁へ。
「アウト!」
「合格ですね」
滝沢が立ち上がり、南方の下へ向かう。
「今年はキャッチャーのいろはを徹底的に教えるから、しっかり勉強しろよ」
「ハ、ハイっ!」
滝沢が正捕手の座を明け渡した。
「中田監督」
「ん?」
「南方が正捕手となれば、自分はもう打席に立つ事は無いでしょう」
「何でだ?」
前々から思ってたことを中田に伝えた。
「知っての通り、オレはバッティングがまるっきりダメです。
正捕手と言われながらも、何とか攻撃面で貢献したいと思いながらもバッティングを練習してきましたが、どうしても成績が上がらない…
今年兼任でコーチをやらせてもらってますが、いい機会なので、バッティングは断念して、キャッチャーとして守る事だけに専念したいのです」
滝沢自身も打撃の限界を感じていた。
「打席に立つのを止めるって…じゃあ、どうやってキャッチャーだけをやるんだよ?」
「簡単な事です。ピッチャーに抑えがあるように、キャッチャーにも抑えがあった方がいいと思うんです」
「て事は、お前は抑えと一緒に最終回だけマスクを被るって事か?」
「ハイ」
抑えのキャッチャーとして滝沢は出場する事を提案した。
「私わかります(^-^)」
ここでひろしが入ってきた。
「何が分かるんだよ、オマエに!」
「滝沢コーチは終盤の守備力強化に打ってつけの選手ですち!」
ひろしの野球論として、序盤は攻撃重視、中盤から終盤にかけては守備を重視した戦術こそが勝ちに繋がると言う。
「つまり、僅差のゲームで最終回に抑えのバッテリーが登場して試合を締めくくるって事か?」
「んだな(^ ^)」
「自分も宇棚監督と同じ考えです」
滝沢も同じことを考えていた。
「参ったね、2人ともそんな事を考えていたとはなぁ」
「いいじゃねぇか、中(チュン)。オレもその考えに賛成だよ」
今年からバッテリーマネージャーに就任した勅使川原が賛同する。
「う~ん、確かに悪くない考えだな…それじゃ、オープン戦で試してみようか」
「ただ…」
「ん、何だ?」
「現段階では、南方を正捕手にするのは無理があります」
滝沢が待ったをかけた。
「経験不足ってヤツか?」
「ハイ。彼には今年1年キャッチャーの勉強をしてもらい、ある程度の能力に達したら、マスクを被った方がいいと思うんです」
「じゃあ、それまではオマエがマスクを被るのか?」
現時点でのキャッチャーは滝沢の他に第二捕手の比村とベテランの七海の三人だ。
「当面の間、比村がマスクを被って、そのサポートを七海さんと自分が行うんです」
「じゃあ、南方は今年もDHか」
「キャッチャーに仕立て上げるまでの間です。期間は彼次第になりますが」
「まぁ、そういう事になるか」
「これでGlanzの弱点が解消しましたち!」
「簡単に言うな!」
「んだな(^-^)」
南方が正捕手になれば、バッティングだけではなく、盗塁も二桁は期待出来る。
今までにない、走攻守万能なニュータイプのキャッチャーが誕生する。
「おい、南方!オマエ、本気でキャッチャーやるんだろ?」
「ハイ、キャッチャーになるのが夢でした」
「そうと決まれば、キャッチャーに変身させなきゃなぁ」
南方のキャッチャー転向計画がスタートした。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる