Baseball Freak 主砲の一振り 7

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キャンプイン

ニュータイプのキャッチャー

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庵野を見逃しの三振に抑え、続くバッターは左の小早川。

(確か皐月さんの球種はストレートにカーブ、後は縦に変化するジャイロボール…ジャイロボールって何だ?)


そもそも皐月の球は120 km/h台だが、昨年引退した真咲同様、球速以上の速さを感じる。

そのスピードを生かすには、カーブと縦に変化するジャイロボールが有効。


皐月本人はジャイロボールと命名しているが、軌道は縦のスライダーと酷似している。


(結局は縦のスライダーじゃん!)


そう思ったのだが、本人がジャイロボールというのなら、ジャイロボールにしておこうと思い、敢えて言わない事にした。



(んじゃぁ、初球はこれで)


初球から最後に打ち取る球数までを概算で考え、配球の組み立てをしっかりと考えている。


「この打席で打ち取る事が出来たら、自分は正捕手の座を彼に譲りますよ」


滝沢は後継者に南方を指名したという事か。


初球はインコースへ126 km/hのストレートを投げた。


「ボールワン!」


僅かに外れてボール。


(外れたか…では、次はこれで)


躊躇無く次のサインを出す。


2球目、再びストレートがボール1個分内に入った。


「ストライクワン!」


皐月は新人ながら、昨年ローテーションを守り通した結果、10勝10敗 防御率3.76の好成績を残した。

それだけではなく、成績以上に収穫があったのは、制球力の上達だ。


プロの世界はボール半個分でもコントロールミスをすれば痛打される。


それを身をもって知った皐月は、制球力の精度を上げる練習に費やした。


制球力が向上すれば、自然と勝ち星は増えるし、防御率も良くなる。


皐月も南方も今年は2年目。


更なる飛躍をする為には、レベルアップが必要となる。



再度南方がサインを出す。


皐月は全く首を振らない。


南方のキャッチャーの適正があるかどうか試しているのだろう。


3球目を投げた。


今度は一転して外へ変化するジャイロボールを投げた。


小早川はバットを出すが、打ち損じてボテボテのサードゴロ。


サードを守る乃木が軽快に捌いて一塁へ。


「アウト!」



「合格ですね」


滝沢が立ち上がり、南方の下へ向かう。


「今年はキャッチャーのいろはを徹底的に教えるから、しっかり勉強しろよ」


「ハ、ハイっ!」


滝沢が正捕手の座を明け渡した。


「中田監督」


「ん?」


「南方が正捕手となれば、自分はもう打席に立つ事は無いでしょう」


「何でだ?」


前々から思ってたことを中田に伝えた。


「知っての通り、オレはバッティングがまるっきりダメです。
正捕手と言われながらも、何とか攻撃面で貢献したいと思いながらもバッティングを練習してきましたが、どうしても成績が上がらない…
今年兼任でコーチをやらせてもらってますが、いい機会なので、バッティングは断念して、キャッチャーとして守る事だけに専念したいのです」


滝沢自身も打撃の限界を感じていた。


「打席に立つのを止めるって…じゃあ、どうやってキャッチャーだけをやるんだよ?」


「簡単な事です。ピッチャーに抑えがあるように、キャッチャーにも抑えがあった方がいいと思うんです」


「て事は、お前は抑えと一緒に最終回だけマスクを被るって事か?」


「ハイ」


抑えのキャッチャーとして滝沢は出場する事を提案した。



「私わかります(^-^)」


ここでひろしが入ってきた。


「何が分かるんだよ、オマエに!」


「滝沢コーチは終盤の守備力強化に打ってつけの選手ですち!」


ひろしの野球論として、序盤は攻撃重視、中盤から終盤にかけては守備を重視した戦術こそが勝ちに繋がると言う。


「つまり、僅差のゲームで最終回に抑えのバッテリーが登場して試合を締めくくるって事か?」


「んだな(^ ^)」


「自分も宇棚監督と同じ考えです」


滝沢も同じことを考えていた。


「参ったね、2人ともそんな事を考えていたとはなぁ」


「いいじゃねぇか、中(チュン)。オレもその考えに賛成だよ」


今年からバッテリーマネージャーに就任した勅使川原が賛同する。


「う~ん、確かに悪くない考えだな…それじゃ、オープン戦で試してみようか」


「ただ…」


「ん、何だ?」


「現段階では、南方を正捕手にするのは無理があります」


滝沢が待ったをかけた。


「経験不足ってヤツか?」


「ハイ。彼には今年1年キャッチャーの勉強をしてもらい、ある程度の能力に達したら、マスクを被った方がいいと思うんです」


「じゃあ、それまではオマエがマスクを被るのか?」


現時点でのキャッチャーは滝沢の他に第二捕手の比村とベテランの七海の三人だ。


「当面の間、比村がマスクを被って、そのサポートを七海さんと自分が行うんです」


「じゃあ、南方は今年もDHか」


「キャッチャーに仕立て上げるまでの間です。期間は彼次第になりますが」


「まぁ、そういう事になるか」



「これでGlanzの弱点が解消しましたち!」


「簡単に言うな!」


「んだな(^-^)」


南方が正捕手になれば、バッティングだけではなく、盗塁も二桁は期待出来る。


今までにない、走攻守万能なニュータイプのキャッチャーが誕生する。



「おい、南方!オマエ、本気でキャッチャーやるんだろ?」


「ハイ、キャッチャーになるのが夢でした」


「そうと決まれば、キャッチャーに変身させなきゃなぁ」


南方のキャッチャー転向計画がスタートした。
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