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後半戦
デュアルヒッター 3
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1回の裏、Glanzの攻撃はトップバッターの菅原。
左利きのスイッチヒッターという、日本球界では珍しいタイプで、しかも、左右でフォームもバッティングも異なる。
右打席では小技を使って安打を放つ1番打者タイプ。
左打席では長打を狙うスラッガータイプと両極端だ。
マウンド上の中澤は左腕という事あり、右打席に入った。
右では、やや前傾でバットを短く持ち、グリップの位置はささ下げるフォームだ。
一方の中澤は、150を越えるストレートと落差十分のフォークで三振を奪うピッチングが持ち味だが、ベテランの域に入ってからは、カーブやカットボールを駆使する技巧派にシフトチェンジに成功。
天海と共に、左右の両輪として昨年の日本一に貢献した。
「私わかります(^^)」
いつもの様にひろしが説明する。
「いい加減、それ言うの止めてくんねぇかな」
毎度の事ながら、この言葉にイライラしてくる。
「菅原選手は右の方が打率は高いですち!」
「それ昨日も聞いたよ!んで、左は長打が打てるんだろ?」
「んだな(^_^)」
「昨日と同じ事言ってんじゃねぇ!」
「それと、右の方がバットコントロールは遥かに良いですち!」
ひろし曰く、左投手しかいない世界ならば、4割は確実に狙えるバッターだと明言する。
「そんな逸材が何で育成出身なんだよ?」
「スカウトの見る目が無かったですち!」
「とりあえず、この打席を見りゃ分かるか…」
中澤の第1球はクロスファイア気味にインコースへ148 km/hのストレートが決まった。
「ストライクワンっ!」
初球は見送る。
トップバッターらしく、右では待球戦法で球数を放らせる。
選球眼も良く、出塁率も高い。
2球目は外から真ん中低めにカーブを投げたが、低めに外れてワンボール。
3球目、再度ストレートがアウトコースへ決まるが、これも外れてツーボール。
4球目は、落差のあるフォーク。
菅原はバットを合わせるが、打球はバックネット裏へファール。
これでカウントはツーナッシング。
「この打席は凡退っぽいな」
これは打てない、と榊は思った。
5球目、再びフォークを投げた。
すると、菅原はヒョイとすくい上げるようにバットを振った。
速い打球は綺麗に三遊間を真っ二つ。
「打ちやがったっ!」
「んだな(^ ^)」
レフト前ヒットで昨日に続き2打席連続安打。
見逃せばボールになる球だったが、菅原が上手くレフト前に弾き返した。
「あのフォークを打ち返すのかよ…」
「全ては菅原選手のバッティングセンスですち!」
菅原の持って生まれ才能プラス、二軍で小林打撃コーチとのマンツーマンで開花した技術によるものだと言う。
ノーアウトランナー一塁という場面を作った菅原だが、後続がチャンスを生かせず、1回の裏は三者凡退で終了した。
その後は緊迫した投手戦が続き、試合は中盤から終盤へ。
7回の裏、Glanzの攻撃は9番滝沢から。
打率2割前半の滝沢は必死に粘り、6球目のカットボールが外れてフォアボールで出塁。
打順はトップに返って菅原が3打席目に入った。
第2打席はじっくり見てフォアボールを選び、昨日から三連続出塁をマーク。
「こういう時、シングルヒット打ってもランナーが帰ってこれないしなぁ…
シングルヒットばっかじゃ、点を取るのは難しいんじゃないのか?」
「私もそう思いますち!」
「じゃあ、最初から左で打たせりゃいいじゃねぇかっ!」
「んだな(^^)」
「ホンットにイラつくヤローだな、オメーはっ!!」
多分、誰でもイラつくと思う。
右打席に入った菅原は先程よりもバットを長く持った。
だが、指一本分にも満たない程で、誰にも分からない。
「菅原選手は少しだけバットを長く持ってますち!」
「え~、どれどれ…さっきと変わんねえじゃんかよ!」
ベンチからは分かりにくい。
それを見抜いてしまうんだから、やはりひろしは天才なのか。
マウンド上の中澤はここまで被安打3、無四球、6奪三振の好投。
「何か…投げづらいよな」
初対戦の菅原に対して投げづらさを感じてるみたいだ。
(コイツ、1打席目にフォークを上手く打ち返したからな…落ちる球は得意なのかもしれない)
マスクを被る川上はストレート主体の配球を組み立てる。
サインに頷き、初球を投げた。
力のあるストレートでキレも良い。
だが、菅原はこの球を待ってましたとばかりにジャストミート。
「コイツ、ストレート狙いだったのかよ?!」
川上が思わず声を上げた。
打球は上手く右に流し、ファースト斐川の頭上を越え、ライン際に落ちた。
滝沢は二塁を蹴って三塁へ。
そして打った菅原も二塁へ向かう。
ライト仙道が追いつきセカンドへ送球。
だが、俊足の菅原は悠々セーフ。
「おぉー、上手くライト方向へ打ったもんだなぁ」
「少しバットを長く持ったお陰で、強い打球になったですち!」
「ホントかよ?」
「んだな(^_^)」
これでノーアウトランナー二塁三塁という絶好の場面。
続くバッターは2番のクロフォード。
左利きのスイッチヒッターという、日本球界では珍しいタイプで、しかも、左右でフォームもバッティングも異なる。
右打席では小技を使って安打を放つ1番打者タイプ。
左打席では長打を狙うスラッガータイプと両極端だ。
マウンド上の中澤は左腕という事あり、右打席に入った。
右では、やや前傾でバットを短く持ち、グリップの位置はささ下げるフォームだ。
一方の中澤は、150を越えるストレートと落差十分のフォークで三振を奪うピッチングが持ち味だが、ベテランの域に入ってからは、カーブやカットボールを駆使する技巧派にシフトチェンジに成功。
天海と共に、左右の両輪として昨年の日本一に貢献した。
「私わかります(^^)」
いつもの様にひろしが説明する。
「いい加減、それ言うの止めてくんねぇかな」
毎度の事ながら、この言葉にイライラしてくる。
「菅原選手は右の方が打率は高いですち!」
「それ昨日も聞いたよ!んで、左は長打が打てるんだろ?」
「んだな(^_^)」
「昨日と同じ事言ってんじゃねぇ!」
「それと、右の方がバットコントロールは遥かに良いですち!」
ひろし曰く、左投手しかいない世界ならば、4割は確実に狙えるバッターだと明言する。
「そんな逸材が何で育成出身なんだよ?」
「スカウトの見る目が無かったですち!」
「とりあえず、この打席を見りゃ分かるか…」
中澤の第1球はクロスファイア気味にインコースへ148 km/hのストレートが決まった。
「ストライクワンっ!」
初球は見送る。
トップバッターらしく、右では待球戦法で球数を放らせる。
選球眼も良く、出塁率も高い。
2球目は外から真ん中低めにカーブを投げたが、低めに外れてワンボール。
3球目、再度ストレートがアウトコースへ決まるが、これも外れてツーボール。
4球目は、落差のあるフォーク。
菅原はバットを合わせるが、打球はバックネット裏へファール。
これでカウントはツーナッシング。
「この打席は凡退っぽいな」
これは打てない、と榊は思った。
5球目、再びフォークを投げた。
すると、菅原はヒョイとすくい上げるようにバットを振った。
速い打球は綺麗に三遊間を真っ二つ。
「打ちやがったっ!」
「んだな(^ ^)」
レフト前ヒットで昨日に続き2打席連続安打。
見逃せばボールになる球だったが、菅原が上手くレフト前に弾き返した。
「あのフォークを打ち返すのかよ…」
「全ては菅原選手のバッティングセンスですち!」
菅原の持って生まれ才能プラス、二軍で小林打撃コーチとのマンツーマンで開花した技術によるものだと言う。
ノーアウトランナー一塁という場面を作った菅原だが、後続がチャンスを生かせず、1回の裏は三者凡退で終了した。
その後は緊迫した投手戦が続き、試合は中盤から終盤へ。
7回の裏、Glanzの攻撃は9番滝沢から。
打率2割前半の滝沢は必死に粘り、6球目のカットボールが外れてフォアボールで出塁。
打順はトップに返って菅原が3打席目に入った。
第2打席はじっくり見てフォアボールを選び、昨日から三連続出塁をマーク。
「こういう時、シングルヒット打ってもランナーが帰ってこれないしなぁ…
シングルヒットばっかじゃ、点を取るのは難しいんじゃないのか?」
「私もそう思いますち!」
「じゃあ、最初から左で打たせりゃいいじゃねぇかっ!」
「んだな(^^)」
「ホンットにイラつくヤローだな、オメーはっ!!」
多分、誰でもイラつくと思う。
右打席に入った菅原は先程よりもバットを長く持った。
だが、指一本分にも満たない程で、誰にも分からない。
「菅原選手は少しだけバットを長く持ってますち!」
「え~、どれどれ…さっきと変わんねえじゃんかよ!」
ベンチからは分かりにくい。
それを見抜いてしまうんだから、やはりひろしは天才なのか。
マウンド上の中澤はここまで被安打3、無四球、6奪三振の好投。
「何か…投げづらいよな」
初対戦の菅原に対して投げづらさを感じてるみたいだ。
(コイツ、1打席目にフォークを上手く打ち返したからな…落ちる球は得意なのかもしれない)
マスクを被る川上はストレート主体の配球を組み立てる。
サインに頷き、初球を投げた。
力のあるストレートでキレも良い。
だが、菅原はこの球を待ってましたとばかりにジャストミート。
「コイツ、ストレート狙いだったのかよ?!」
川上が思わず声を上げた。
打球は上手く右に流し、ファースト斐川の頭上を越え、ライン際に落ちた。
滝沢は二塁を蹴って三塁へ。
そして打った菅原も二塁へ向かう。
ライト仙道が追いつきセカンドへ送球。
だが、俊足の菅原は悠々セーフ。
「おぉー、上手くライト方向へ打ったもんだなぁ」
「少しバットを長く持ったお陰で、強い打球になったですち!」
「ホントかよ?」
「んだな(^_^)」
これでノーアウトランナー二塁三塁という絶好の場面。
続くバッターは2番のクロフォード。
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