Baseball Freak 主砲の一振り 7

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後半戦

デュアルヒッター 3

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1回の裏、Glanzの攻撃はトップバッターの菅原。


左利きのスイッチヒッターという、日本球界では珍しいタイプで、しかも、左右でフォームもバッティングも異なる。


右打席では小技を使って安打を放つ1番打者タイプ。

左打席では長打を狙うスラッガータイプと両極端だ。


マウンド上の中澤は左腕という事あり、右打席に入った。


右では、やや前傾でバットを短く持ち、グリップの位置はささ下げるフォームだ。


一方の中澤は、150を越えるストレートと落差十分のフォークで三振を奪うピッチングが持ち味だが、ベテランの域に入ってからは、カーブやカットボールを駆使する技巧派にシフトチェンジに成功。

天海と共に、左右の両輪として昨年の日本一に貢献した。



「私わかります(^^)」


いつもの様にひろしが説明する。


「いい加減、それ言うの止めてくんねぇかな」


毎度の事ながら、この言葉にイライラしてくる。


「菅原選手は右の方が打率は高いですち!」


「それ昨日も聞いたよ!んで、左は長打が打てるんだろ?」


「んだな(^_^)」


「昨日と同じ事言ってんじゃねぇ!」


「それと、右の方がバットコントロールは遥かに良いですち!」


ひろし曰く、左投手しかいない世界ならば、4割は確実に狙えるバッターだと明言する。


「そんな逸材が何で育成出身なんだよ?」


「スカウトの見る目が無かったですち!」


「とりあえず、この打席を見りゃ分かるか…」



中澤の第1球はクロスファイア気味にインコースへ148 km/hのストレートが決まった。


「ストライクワンっ!」


初球は見送る。

トップバッターらしく、右では待球戦法で球数を放らせる。


選球眼も良く、出塁率も高い。


2球目は外から真ん中低めにカーブを投げたが、低めに外れてワンボール。



3球目、再度ストレートがアウトコースへ決まるが、これも外れてツーボール。


4球目は、落差のあるフォーク。

菅原はバットを合わせるが、打球はバックネット裏へファール。


これでカウントはツーナッシング。


「この打席は凡退っぽいな」


これは打てない、と榊は思った。


5球目、再びフォークを投げた。


すると、菅原はヒョイとすくい上げるようにバットを振った。


速い打球は綺麗に三遊間を真っ二つ。


「打ちやがったっ!」


「んだな(^ ^)」


レフト前ヒットで昨日に続き2打席連続安打。



見逃せばボールになる球だったが、菅原が上手くレフト前に弾き返した。


「あのフォークを打ち返すのかよ…」


「全ては菅原選手のバッティングセンスですち!」


菅原の持って生まれ才能プラス、二軍で小林打撃コーチとのマンツーマンで開花した技術によるものだと言う。


ノーアウトランナー一塁という場面を作った菅原だが、後続がチャンスを生かせず、1回の裏は三者凡退で終了した。



その後は緊迫した投手戦が続き、試合は中盤から終盤へ。


7回の裏、Glanzの攻撃は9番滝沢から。


打率2割前半の滝沢は必死に粘り、6球目のカットボールが外れてフォアボールで出塁。


打順はトップに返って菅原が3打席目に入った。


第2打席はじっくり見てフォアボールを選び、昨日から三連続出塁をマーク。



「こういう時、シングルヒット打ってもランナーが帰ってこれないしなぁ…
シングルヒットばっかじゃ、点を取るのは難しいんじゃないのか?」


「私もそう思いますち!」


「じゃあ、最初から左で打たせりゃいいじゃねぇかっ!」


「んだな(^^)」


「ホンットにイラつくヤローだな、オメーはっ!!」



多分、誰でもイラつくと思う。


右打席に入った菅原は先程よりもバットを長く持った。


だが、指一本分にも満たない程で、誰にも分からない。


「菅原選手は少しだけバットを長く持ってますち!」


「え~、どれどれ…さっきと変わんねえじゃんかよ!」


ベンチからは分かりにくい。


それを見抜いてしまうんだから、やはりひろしは天才なのか。



マウンド上の中澤はここまで被安打3、無四球、6奪三振の好投。


「何か…投げづらいよな」


初対戦の菅原に対して投げづらさを感じてるみたいだ。



(コイツ、1打席目にフォークを上手く打ち返したからな…落ちる球は得意なのかもしれない)



マスクを被る川上はストレート主体の配球を組み立てる。



サインに頷き、初球を投げた。


力のあるストレートでキレも良い。


だが、菅原はこの球を待ってましたとばかりにジャストミート。


「コイツ、ストレート狙いだったのかよ?!」


川上が思わず声を上げた。


打球は上手く右に流し、ファースト斐川の頭上を越え、ライン際に落ちた。


滝沢は二塁を蹴って三塁へ。

そして打った菅原も二塁へ向かう。


ライト仙道が追いつきセカンドへ送球。


だが、俊足の菅原は悠々セーフ。



「おぉー、上手くライト方向へ打ったもんだなぁ」


「少しバットを長く持ったお陰で、強い打球になったですち!」


「ホントかよ?」


「んだな(^_^)」


これでノーアウトランナー二塁三塁という絶好の場面。


続くバッターは2番のクロフォード。











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